エレザールの鎌、前の世界で斗和子の知識によって作られた武法具である。獣の槍という規格外を除けば、最強の武器といってもよかった。
今、斗和子が持っているのはそれをこの世界の技術と素材によって更に進化させたものである。
その性能はユグドラシルの伝説級装備に匹敵するレベルで、今彼女が使っている、『エレザールの鎌・触』は前述したように痛みを与えることに特化しているが、普通に斬り合いに使う事もできる。
その性能と自身の力を以って、斗和子はアルベドと互角の戦いを繰り広げていた。
「くっ、この!!」
アインズが傷つけられた恨みを晴らそうと苛烈な攻撃を繰り出すアルベド。しかし斗和子がその攻撃をいなし、自らの望みを叶えられないことに彼女は苛立っていた。
(この強さと精神の幼さが釣り合わない感じ。やはりプレイヤーかNPCの可能性が高そうね)
一方、斗和子は相手の様子を冷静に観察し、相手の正体について考察する余裕があった。
(まるで力だけが強い子供……全く、厄介な存在ね、プレイヤーは。おっと、こんなことを思ったら御方様に叱られてしまうかしら)
内心でプレイヤーを侮蔑しながら、自らの主の夫もプレイヤーであることを思い出して自重する斗和子。
そして戦闘に意識を集中する。アルベドの攻撃をかいくぐり、その鎧に一撃を叩き込む。するとガキンという音が響き、鎌が弾かれた。
「あら、硬いのね」
アルベドはパーティの盾となるのが役割のタンクタイプで、防御に重点をおいている。そのため装備にも神器級の鎧が与えられていた。その強度に対しエレザールの鎌・触では力不足だったようだ。
それを理解した斗和子は、一旦、跳び引いて仕切り直すと何処からか別の武器を取り出してそれに持ち替えた。
「これなら貴方の鎧でも傷つけることができるわ」
彼女が持ち替えた武器は『エレザールの鎌・斬』。
総合性能では『触』と同じく伝説級だが、切れ味に重点を置いており、神器級の防具にも対抗できる攻撃力を備えている。
一方、アルベドの方も小休止を置いたことで冷静さを少し取り戻していた。
(落ち着きなさい。腹立たしいけど、目の前の女は無闇に攻めても勝てる相手じゃないわ。だからといって敵わない訳じゃない。冷静に戦えば確実に勝てるわ)
斗和子の強さはレベル90のアタッカータイプ程度、アルベドはそう判断を下していた。それに対しアルベドはレベル100のタンクタイプ。ユグドラシルではレベル10の差はほぼ決定的な差だ。先程まで互角だったのは、彼女が怒りのあまり雑な攻め方をしてしまったためだと分析する。
そうして仕切り直そうとした時、彼女の後ろで痛みに苦しんでいた筈のアインズが立ち上がり、声をかけてきた。
「ぐっ、アルベドよ」
「アインズ様!? 大丈夫なのですか!?」
アインズは未だかなりふらつき、腕は小刻みに震えていたが、先程までと比べれば落ち着きを取り戻したようだ。
「ああ、痛みはひいてきた。それよりもだ。お前はあの相手に勝てるか?」(本当はかなり未だかなり痛いけど、それでもさっきよりはマシだ)
耐え切れない程の激痛が、なんとか耐えきれるぐらいの痛みに変わったことで、やせ我慢をして、支配者ムーブをとるアインズ。ここでアルベドが自信の無い答えを返してきたのなら、全力で撤退を指示するつもりでいた。その見極めをするために、無理をして立ち上がったのだ。
「はい!! 偉大なる御方の前で醜態を見せてしまい申し訳ありません。ですが確実に勝利してみせますわ!!」
それに対して愛しく、そして敬愛する相手に問われたアルベドは、大見得をきった答えを返した。とはいえ、それは実際に勝算があるからの言葉でもある。
それに対してアルベドの分析通り、”今の自分”よりも彼女の方が強いことを理解しながら、斗和子は不敵に笑った。
「ふふ、確かに私一人では貴方たちの相手は少し厳しいかもしれないわね。でも私、一人だと言ったかしら?」
彼女が言葉を発すると、その背後に昆虫を連想する形の、巨大な緑色の怪物が現れる。その怪物の名は『くらぎ』、斗和子と同様に白面の分身であり、配下である存在であった。
「言っておくけど。この子は私よりも強いわよ」
斗和子がそう宣言する。言葉通りなら、アインズが無理をおして戦場にたったとしてもこの場の戦力はほぼ互角ということになる。
もっともそれは2対2ならばの話だ。そもそも今、周囲を包む霧は何なのか、それをアインズやアルベドは理解していなかった。
そしてアインズ達にとっての窮地はそれだけではなかったのだ。
「アルベド、ナザリックに連絡を。こちらも戦力を……」
「それはやめてもらうぞ」
慎重派のアインズは確実に勝てる状況を作ろうと、救援を呼ぼうとして、そこに新たに現れた人物によって止められた。
「!!」
その姿を見た瞬間、アルベドは息を飲む。現れた人物は美しい女だった。ナザリックには美姫と呼べるような美しい女が複数人存在し、アルベドもその中の一人といえる。
しかしそんな彼女ですら一瞬、嫉妬を抱いてしまう程の美貌とそれにも勝る存在感を伴った女。”傾国の美女”そんな言葉が脳内をよぎる。
「御方様!!」
「ク、クズハ様!!」
チャイナ服のような服を身に纏ったその女に対し、斗和子とこの状況を黙って見ていたニグンが反応し、彼女の名を呼んだ。
クズハと呼ばれた女はアインズの方を向く。
「我は戦禍を拡大する気は無い。現状は双方が被害を受けた状態。”お互い様”ということで、手打ちにせよ」
彼女の口から飛び出た言葉は提案というより命令だった。その態度にアルベドは再び激昂しそうになるが、アインズが遮って問いかけをする。
「被害とはアルベドが殺した兵士と私が破壊した天使のことか? そしてこちらの被害とは私が攻撃を受けたことか?」(まあ、確かにそれなら互いに軽微な被害か?)
「そうだ。それと貴様が邪魔をしたせいでこちらの計画が潰れたことよ。これは寛大な提案なのだぞ」
「この下等生物が!!! 至高の御方が傷つけられたこととその程度が同等だと言うの!!? 不敬、いやそんな言葉ではすまないわ!!!!!!」
アインズはそこで慌てて、アルベドを止め、何とか交渉を成立させる。
「いいだろう。ここは引こうではないか」(た、助かったああ。この女の人、周りの態度から明らかに大物っぽいし。同格以上の相手に数で負けてる状況なんて、絶対戦いたくない)
中身が一般人でしかないアインズには
「くくっ、賢い童は嫌いではないぞ。褒美として賢い童にもう一つ教えてやろう。先程、お前を切り付けた鎌はこういった交渉ができるように苦痛を抑えたものだ。本当に心を折るためのものであれば、この程度ではすまんぞ」
「ふっ、そうか」(嘘!? 今でもかなり痛いのに。これでまじで手加減してるの!? 怖ーー!!!!)
先程、痛みで叫んでしまった手前、支配者ムーブも取りづらく短い言葉で表面を取り繕うのが精一杯だった。そうして虚勢を張りつつ、内心で怯えるアインズ。そんな彼を見て
「これからは身の程を弁えて生きるのだな。そうすれば、そして我等に手を出さぬ限りには歓迎してやろうではないか」
そして
「ク、クズハ様……。申し訳ありません、あなたのお手を煩わせてしまい」
死亡した兵士を蘇生させた後、神と崇める存在の手を借りてしまったことに謝罪するニグン。それに対し、
「よい。幼子が失敗したからといって、怒る母親はいないであろう。それと同じこと。我はお前たちの頑張りを認めておるぞ」
「お、おおお!!!」
声をあげるニグン。幼子扱いされたことに対し、彼に怒りや悲嘆はなかった。神と崇める存在の愛に彼は、彼等は、ただ感激をしていた。
(しかし折角、婢妖を使い、
一方、
獅子は我が子を……等と言いつつ、過保護な所もあるのが彼女だった。
尤もこれは単に過保護なのではなく、前世の獣の槍というストーカーに追っかけ回されたことが少しばかしトラウマになっており、恨みを買うのはなるべくさけるべきとの判断も含まれているのだが。
(斗和子と同等以上の強さ。これ程の力を持つものが突然、湧いてくるとは考えにくい。ほぼ間違いなく、プレイヤーかNPCだろう。全く余計なことをしてくれる。今回の件で懲りて自重をしてくれれば良いがな)
今回、彼女がアインズを見逃したのは寛大さからくる慈悲もあるが、同時にプレイヤーを警戒している部分もあった。いや、正確に言えば彼女が警戒しているのはプレイヤーではない。彼女にとって本当に脅威なのは”NPC”と”ワールドアイテム”だった。
(恐らくはNPCと思われるあのアルベドとかいう女。他のNPCもああいった奴等であればよいが、無感情なタイプが複数居るとなれば面倒だ)
白面は自身に負の感情を向ける相手の攻撃を無効、もしくは大幅に減衰させてしまう能力を持っている。故に彼女にとって天敵となるのは獣の槍の使い手のような生粋の”陽の者”か無感情な機械のような存在だ。
それは陽の気の充満によって弱体化していたとはいえ、自衛隊のミサイルでダメージを受けたことからも明らかである。
更に世界の理を崩すこともできるワールドアイテムや始原の魔法は不死に近い存在である
苦手なものを2つ揃えている可能性のあるユグドラシルから来た存在は、最強たる彼女の天敵になり得るのだ。
(できれば相手をしたくないな。だが、この白面に、我が子達に手を出すのならば、ただで済むと思うなよ)
しかしたとえ天敵であっても、それは彼女に勝るということを意味しない。何故ならば彼女は世界の意思によって産み出されたとも言える本当の化け物なのだから。
スルシャーナと結ばれ愛を知った今も、その凶悪さは眠っているだけなのだから。
愛を知って目に光が宿った白面(人間形態)はがちの美人さんです。
妲己モデルと思われる彼女が傾城傾国を使えない訳がない(確信)
そして前書きにも書いた白面<ナザリック(総戦力)というのはナザリック最強の戦力である8階層のあれらとルペドが白面にとって相性が悪いから、そしてワールドアイテムを11個も保有してるからです。
言葉通りに総戦力で攻めたりするとカルママイナスのメンバーが多いナザリックは逆に不利になったりします。
後、転生の際に一旦力がリセットされ、今の白面は平安時代の頃位の強さです。