「ねえ、
スレイン法国の最強部隊、漆黒聖典。その中でも最強の人物であるアンティリーネは
その態度は非常に気安く、まるで母に甘える娘のようだった。
「プレイヤーと思われる方は仮面で顔を隠していたが、気配からして
「なあんだ。どっちも子供作れそうにないなあ」
がっかりした様子をみせるアンティリーネ。呆れた様子をみせる
「お前もいい加減、自分よりも強い男の子供を産みたいというのは諦めたらどうだ?」
「うーん、まあ、スルシャーナ様も
漆黒聖典の2席と3席の名を挙げるアンティリーネ。
ティーナとはアンティリーネの遠縁で、彼女の母がアンティリーネの父親とは別の男性との間に儲けた子供の子孫である。プレイヤーの血を覚醒させた”神人”であり、人類最強の
そしてクレマンティーヌは元々、この世界の基準で英雄級の資質を持っていたが、より優秀な兄と比較されることでコンプレックスをこじらせて、後少しで道を踏み外す、そんな状態になった過去がある人物である。しかしそのタイミングで試しとばかりに白面が自分の力をほんの少しだけ分け与えてみたところ、そのねじ曲がった性格と陰の気の相性がよかったのか奇跡的なパワーアップを果たし、現在では漆黒聖典4強の一人となっている。
この2人は漆黒聖典の隊長と協力し3対1ならば、アンティリーネとも互角に戦える実力者だった。
ちなみに隊長はと言うとアンティリーネに一度負けた程度で精神がポッキリ折れてしまった辺りが、彼女にはアウト判定されている。
「だったら、ティーナの子供にでも期待するのだな」
「あっ、隊長の婚約者なんだっけ?」
覚醒した神人同士ということで、次代に強い血筋を残すため、上層部の命令で二人は婚約者とされていた。とはいえ、これは本人達の意思をまるっきり無視しているという訳でもない。
隊長とティーナの二人は元々幼馴染で、互いに神人ということでお互いを唯一自分と対等な存在として認め合ってきており、もっとも大切な人と公言しあってきた関係である。
それもあって、上層部も二人を婚約者にしたのだが、お互いの距離が近過ぎるせいで恋愛とか性の対象にするのには躊躇いがあるらしかった。とはいえ、白面からみれば、二人がくっつくのも時間の問題という感じである。
「あのふたりなら、3,4人、子供を作ればその中には強い子も産まれよう」
「そうね。期待しようかな」
和やかな会話。アンティリーネの産みの母は前述したようにティーナの祖先だ。しかしアンティリーネの生物学的な父と彼女は両者の同意の上で結ばれた訳ではなかった。エルフの王だった父親が無理やり彼女を孕ませたのだ。
当時、エルフ国と法国は同盟国で、両国の共同任務中にエルフ王が彼女を拐かし、他のエルフが王を恐れるが故に隠蔽に協力したため、その発覚が遅れた。
その結果、産まれたのがアンティリーネという訳だ。その後、
間違いに対し声をあげる勇気か、あるいは王と
まあ、そんなことはどうでもいい。
しかし精神的に酷いトラウマを抱えた彼女の母に対し、
「孫が産まれたら直ぐに見せにくるね、お母さん」
「気が早すぎるぞ」
そして育てる者がいなくなったアンティリーネはエルフの国で見つかったエルフと六大神の混血の子孫ということにして、スルシャーナと
そのため法国国民全てを我が子と呼ぶ
「それでは分かったことを報告せよ」
「はっ」
アインズが
その間に分かったことをデミウルゴスが報告する。
「申し訳ありません。未だ、不明な点も多いのですが……」
「たった一月しか経っていないのだ。それは当たり前だ。分かったことだけで良い。報告せよ」
正直なところ、アインズは退屈していた。物を食べることも寝ることも出来ない、生活のほぼ全てだったユグドラシルをやることももう出来ない。モノは無いにしろ、命令すれば女の子NPCに触ったりは出来るかも知れないがそれは支配者ロールプレイと薄れつつあるも未だ残る倫理観、NPCを創造したギルメンへの罪悪感が許さなかった。
そのため、中間報告でもなんでも聞いて、暇を解消したかったのだ。
(我ながら気が抜けてるとは思うけど。退屈って、まじで辛いんだなあ)
世界全体がブラックなリアルでは、味わいたくても味わえないある意味贅沢な悩みであったが、実際にその状況に置かれると深刻な悩みでもあった。
「はい。現在のところ、確認出来た大きな国家は全部で6つ。リ・エスティーゼ王国、バハルス帝国、スレイン法国、ローブル聖王国、竜王国、アーグランド評議国。それ以外は全て小規模な亜人国家です。ただし、霜の竜王と呼ばれる存在が治める領域は中規模国家と呼んでも良いかもしれません。大層な肩書ですが、尚、竜王自体はたいした強さではありません」
「ふむ、まず平均的な強さから確認させてもらおう。この世界で強者と呼ばれるのはどの程度のレベルだ?」
「話にならない低さです。レベル30で英雄、40で逸脱者等と呼ばれ、レベル50を超える存在はほぼ皆無でした」
(うわっ、想像以上に低いな。あのニグンって奴、もしかしてマシな方だったのか?)
前の戦いのことを思い出す。実際、ニグンは上澄みも上澄みだ。タレントというこの世界独自の特殊能力で召喚天使を強化することが出来、彼自身の強さも第3位階まで魔法が使えれば一流というこの世界であと少しで第5位階に手が届くというレベルである。召喚した天使を強さに含めて良いのなら、この世界の人類でトップ10に入れる人物だった。
「それでは次に私達の基準で、強者と呼べる存在が確認された国家はあるか? そうだな、プレアデス単独以上の強さとしよう」(まあ、ユグドラシルだとそれ以下は論外だしな)
レベルの低さを知り、自分達が強者の位置にいることを確信したアインズは本題である自分達にとっての脅威について確認する。
その問いかけにデミウルゴスは軽く顎をひいて答えた。
「はい、それでしたらアーグランド評議国が該当します。この国は5人の議長によって治められる多種族国家なのですが、議長のうち3人までは竜種で彼らは竜王と呼ばれていました。同じ竜王でも霜の竜王とは別格らしいということ以外、その実力は未だ正確に測りきれていませんが、竜種は古竜と若いドラゴンで大きな力の差があることが分かっています。そして古竜の一体と接触することには成功しました」
「ほう、っと、言う事はその一体の実力が分かったのか?」
「はい、レベル70程でした」
「70!」
この世界のレベルの低さに慣れてきたところに飛び出した大きな数字にアインズは声を上げた。70は100レベルのプレイヤーが召喚出来る最上位
すなわち100レベルの存在からしても戦力としてカウント出来る強さということになる。
まああくまでカウント出来るだけで一対一なら瞬殺なのだが。
「ただの古竜でレベル70ならば、竜王は最低でも80。90以上もあり得るな」
「はい。十分あり得るかと。重要事項として、一刻も早く調査させていただきます」
「いや、今は、敵対しないことが第一だ。慎重に進めよ」(こっちが調べてることに気づかれたら、絶対、不快に思われるしな)
「分かりました」(なるほど。まずは
「
「申し訳ありません。スレイン法国は秘密主義で、防衛も他とは桁が違うため、発覚のリスクも高く、諜報を送り込むことも難しい状態です」
「そうか。いや良い。敵対はするなと言ったのは私だ。いいか、もう一度、念を押す。スレイン法国に敵意があると取られるようなことはするな」
「はい、勿論心得ております」(この念の入れよう、やはりアインズ様は
(スレイン法国だけ強調しちゃったけど、他の国にあんま楯突くのもやっぱ不味いよな。でも、あんまり細かく言うのも支配者っぽく無いし。それで失望されて反逆されたら困る。まあ、言わないでも勝手に国を攻め落とすような真似はしないだろう)
見事にすれ違う創造主とNPC。
そしてアインズは暇つぶしと真剣な情報収集を兼ねて、更に問いかけをした。
「ちなみに国家以外で気になる存在はあったか?」
「そうですね。リ・エスティーゼ王国の姫とこの国の冒険者ギルドは多少興味深いかと」
次回は冒険者ギルドについて。