サトーとセンパイは怪異対策組織・ムラクモに所属する特殊公務員(非常勤)である 作:不知東西屋
「おれ、宗教を立ち上げようと思うんだけど。」
夏の日の夕暮れ。
つぶやくセンパイの横顔は紅蓮の炎と夕日に照らされて、橙色に色づいていた。
「……、炎上する新興宗教の集会場を眺めながら聞くと、なかなか味わい深いものがある台詞ですね。」
傍らに腰を下ろしているサトーの顔も同様だった。
「朝昼晩、3回の食事の前に太陽の方向に向かって礼拝を行う。大体年に千回くらい礼拝する計算になるから宗教法人・千拝会だ。」
「せ、センパイ会」
サトーはおののいた。考えうる限り最悪の宗教法人名であった。
「上手く軌道に乗せられれば、信者の皆さんに養ってもらえんじゃないか。」
「まあ、脈略なく500億円振り込まれるのを待つとかよりは実現可能性があるでしょうね。」
とりあえず、否定はしない方向で話を進めることにした。
否定するほうが面倒だと判断したのである。
「だろ?今ならお前の席も用意しとくぜ。事務方のトップでどうだ?」
「ありがとうございます。行けたら行きますね。」
サトーは笑顔で応じた。ビジネスライクなスマイルである。
「それ来ないヤツじゃねえか。」
センパイは苦笑した。
「しかし、『1日3回食前に』なんて言うと薬か何かみたいですですね。」
サトーは話を雑にそらしたが、先輩は気にする様子もない。
「そうだな。キャッチフレーズは『用法用量をまもって信仰しましょう。』だな」
センパイはドヤァ顔でそう言った。
「………。」
「どうした。変な顔して」
「いや、邪神召喚に手を染めた新興宗教を、呼び出された邪神の眷属ごと爆破炎上させた人が言うと結構
偽らざる本心である。何とか生き残ったことで、気が抜けている。
「教祖も信者も呼び出した眷属にひき肉にされちまって、結局何がしたかったやら。」
こちらも本心だろう。くたびれた表情の奥にやりきれなさがにじんでいる。
「攫われた生け贄候補の内、何人かは助け出せましたから、それでよしとしましょうよ。」
いいところ探しだが、確かな成果でもある。
サトーの言葉にセンパイも素直にうなずいた。
「まあ、そうだな。」
「そうですよ。」
踏ん切りがついたのか、センパイが踵を返して車へと向かう。サトーも後に続く。
「はぁ~、じゃあ帰るとするか。ラーメン行くか?おごってやるよ。」
「ごちそうさまです。流石、センパイ。マジ、リスペクトっす。」
「それバカにしてる言い方じゃねえか。」
「サーセンしたぁ」
「それもバカにしてるやつじゃねえか」
なお、センパイはとんこつ・餃子セット、サトーは醤油とんこつ・炒め野菜と煮卵トッピングであった。
明日も投稿します。