サトーとセンパイは怪異対策組織・ムラクモに所属する特殊公務員(非常勤)である 作:不知東西屋
いまさらではあるが、人に害なす怪異の討伐がサトーとセンパイの主任務である。
しかし、常に討伐任務ばかりこなしているわけでもない。
怪異対策組織・ムラクモはある種、特異な組織ではあるが、公的な性格を持つが故、その構成員であるサトーとセンパイもお役所的書類仕事を行うことがあるのだった。
「はぁ~」
「………」
事務所の一角、隣り合ったデスクの前、PCに向かって報告書を作成していたセンパイが大げさにため息をついていた。
「はぁ~」
「………」
もう一度、大げさにため息をついた。
「はぁ~」
「………」
さらにもう一度。
「はぁ「いや、何なんですか。さっきから、これ見よがしにため息吐いて」
さすがに面倒くさくなったサトーが口を開く。
「お、サトー、聞いてくれるか。」
「いや、正直、聞きたくはないですけど」
この後輩、心底嫌そうである。
「そうか、聞いてくれるか」
「いや、聞きたくはないですけど。……、まあいいです。どうぞ話してください。」
その感情、まさしく諦めだ。
「金が欲しい。働かずに飯が食いたい。」
「心底、しょうもない」
そして、呆れた。
「しょうもなくないぞ。どうしようもなく働きたくないんだ。」
「宝くじでも買ってみればいいんじゃないですか。もしかしたら当たるかも」
投げやりなサトーの返答に、センパイはあらためて深々とため息をついた。
「はあ~、バカ。」
「明らかに自分より馬鹿な人に言われると、流石にイラつきますね。」
センパイじゃきゃ殴っているところだったと、後にサトーは語った。
「ばかサトー、俺は別に宝くじに当選したいって話はしてないんだよ。」
「ハァ」
こと、ここに及んでついにサトーの表情から感情が消えた。
「いいか、俺はただ、何の脈略もなく口座に500億円振り込んで欲しいだけなんだ。」
「なるほど」
「わかってくれるか」
ただ、テキトウに相づちをうっただけだ。
「はい、思った以上にセンパイの頭はお気の毒なんですね。」
「そうなんだよ。500億円が存在しないせいで、気の毒な俺は今もこうして労働の苦しみを味わっているんだ。」
「あれ、我ながら結構厳しめの罵倒を浴びせたのに、効いてない?」
サトーは少しだけ衝撃を受けた。
「はぁ~、しかたねえ。働くとするか、500億円ないし。確か今日はこれから×〇市の異変調査だったな」
「あ、はいそうです。」
クソみたいなぼやきが急に仕事の話に連結されサトーは戸惑う。
その隙にセンパイは立ち上がると、上着を羽織って歩き出す。
「おい、サトー。なにぼんやりしてんだ。さっさと行くぞ。」
「え~、なにこれ。なぞの敗北感ある。」
釈然としない気持ちを抱えながら、サトーも慌ててあとを追った。
明日も投稿します。