サトーとセンパイは怪異対策組織・ムラクモに所属する特殊公務員(非常勤)である   作:不知東西屋

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今日も2人が動き出す。


第5話:サトーとセンパイと満足した豚

 か細い山道を小型4WD(ジ〇ニー)が行く。

 余程の田舎道でも最低限舗装されているのは日本のすごいところだろう。

 

 今日も運転席にはサトー。

 助手席でだらけているのはセンパイである。

 

「満足した豚よりも、不満足なソクラテスであれ。って言葉知ってるか?」

 道路わきの深い茂みを見るともなしに眺めながらセンパイが口を開く。

 

「ジョン・スチュアート・ミルですね。正確には“満足な豚であるより不満足な人間である方が良い。満足した愚者であるより不満足なソクラテスである方が良い”です。それがどうしたんですか。」

 スラスラと吐き出される知識にセンパイはお見それしましたとばかりに、小さく肩をすくめた。

 

「いや、まあエライ人はそう言うけどよ。不満たらたらで生きるよりも、たとえ豚でも満足してた方が幸せじゃねえかな。」

「まあ、そういう意見もあるでしょうね。で、センパイは自分は満足した豚だと言いたいんですか?」

 

 単なる雑談なので、互いに大して考えもせずに言葉を投げ合う。

 

「いや、俺は不満足な豚だよ。低俗なうえに、不平不満ばっかりだからな。」

「一番だめな奴じゃないですか。それ」

 あきれたようにいうサトーに対し、センパイはニヤリと笑う。

「ふっ」

 

「いや、なんでちょっと得意げなんですか。」

 いつも通りの馬鹿話をしながら2人が向かっているのは×△市。

 

 △□県の北部、2000m級の山々が連なる×□連峰のはずれに位置し、温泉、スキーと言った観光業とレタスなどの高原野菜を栽培する農業が主要産業である。

 

「仕事をサッと終わらせて、温泉でビール。しめに山菜ソバとしゃれこみたいねえ」

 口調から、本気でそう願っているが、同時に期待薄であると考えているのがうかがえた。

 

「いいですね。最近はジビエ料理も名物らしくて、猪の味噌漬け焼きとかもおいしいらしいですよ。」

 サトーも期待はしていないが、願う気持ちは理解できるので素直に同意する。

 

 ×△市では、ここ数日で行方不明者が複数発生し、先行した調査員も連絡を断っていた。

 

「そういえば、センパイはお金欲しいとか。働きたくないとかはよく言いますけど、不老不死になりたいとかは言わないですね」

 とはいえ、到着前から緊張していもしょうがない。

 

 たいして考えもせず、サトーは雑談を投げかけた。

「何言ってんだ。そんなの当たり前だろう。」

 

 センパイの発言にサトーは首をかしげる。

「そうですか。この業界で目にする低俗な悪党って大抵、金、力、女ぁ!!を経てから不老不死!!って感じじゃないですか。」

 

「うん、とりあえず俺を低俗な悪党扱いするところから改めようか。」

 失言を悟り、サトーは素直に謝罪した。

「すいませんでした。悪党ではなかったですね。いい人とも言えませんけど」

 

「おっと?そう来たか。低俗ってところは全然撤回してない上に、悪党の部分も余計な一言追加されてるじゃねえか。」

 

「まあ、いいじゃないですか。」

 サトーは大人げないセンパイをたしなめた。

 

「いいかどうか決めるのはこっちだと思うんですけど……。まあ、でも考えてみろよ。もし俺が不老不死とかすげえ超パワーみたいなの手に入れたとして」

「手に入れたとして?」

 

「それを使いこなす甲斐性が俺にあるか?今現在だって人生を持て余しぎみだぞ。」

「あぁ~」

 納得の声を漏らすサトー。

 

「な?」

 なぜか得意げなセンパイ。

 

「根本的に向いていないんですね。小物ですし。・・・良い意味で」

「良い意味で、ってつければなんでもポジティブになるわけじゃないからな。」

 

「まあまあ、もうすぐ×△市ですから、気を引き締めていきましょう。」

 

 なお、ダッシュボードの上のフラダンス人形(瘴気センサー)が高速で腰を振り、甲高い音を発し始めるのは、およそ5分後のことである。




明日も投稿します。
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