サトーとセンパイは怪異対策組織・ムラクモに所属する特殊公務員(非常勤)である 作:不知東西屋
朝焼けの中、街を見下ろす丘の上の洋館に2人の人間の姿があった。
そう、怪異対策組織・ムラクモの職員、サトーとセンパイである。
「死んでるみたいに生きたくない」
センパイのつぶやきに、サトーが応じる。
「急に自虐なんてどうしたんですか。」
「え?」
「え?」
2人は顔を見合わせた。
「いや、前に何かの小説で読んだ言葉を思い出しただけなんだけど」
「そうだったんですか。たぶん、その小説は井坂幸○郎ですね。」
センパイは自身のつぶやきを補足し、サトーはうなずいた。
「へえ、そうなんだ。てか、今さらっと俺のこと死んでるみたいに生きてる扱いしたよね。」
「まあ、少なくとも目は死んでますよね。」
サトーは悪びれない。、
センパイは戦慄した。
「あれ、なんだコイツ。否定しないうえに、たたみかけてきた。」
「それにしても、センパイでも本とか読むんですね。」
「そして、スルー。しかもさらっと失礼な追撃。すげえな。逸材かよ。」
センパイは震えている。
サトーは気にせずに口を開いた。
「死んでるみたいに生きたくない。考えさせられる言葉ですね。もっとも、現状で生きてるみたいに死んでる奴らに囲まれていて、それどころじゃないわけですが」
洋館の建つ丘、その下から朝もやの中、無数の
大元の吸血鬼は退治したが、配下たる喰屍鬼は町中に広がっていて、その多くが未だ残っているのだ。
「サトーも結構図太くなってきたな。すげえな。逸材だわ。」
呆れたような言うセンパイだが、その声に悲嘆の響きはない。
ろくな装備もない、まさしく絶望的な状況だが、2人とも全く諦めてはいなかった。
「動きが鈍いうえに知能も低いですからね。まだ勝ち目はありますよ。とりあえず、納屋の中にあったトラックで包囲を突破して、退路を確保した上で端から殲滅しましょう。」
言いながら、すでに運転席に向かっている。
「マジかよ。それ完全に徹夜残業コースじゃねえか。」
「つべこべ言わずに乗ってください。それとも置き去りをご希望ですか。」
尻を叩かんばかりのサトーの勢いに、先輩はため息つきつつ助手席に乗り込んだ。
「はぁ~。ほんと、頼もしくなっちまったなぁ」
「明日は友人の結婚式でスピーチしなきゃいけないんですから、さっさと片づけて帰りましょう。」
「マジかよ、ご祝儀いくら?」
「3万円です。ちくしょーッ!くそったれがぁー!!」
独り者の咆哮に応じるように、トラックが重低音を響かせて喰屍鬼の群れに突進した。
これでおしまい。
エンディングは各自、ゲットワイルド流しておいてください。