ドブカスのヒーローアカデミア   作:善人直哉

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2話 個性把握テストinドブカス

「まさかお前が雄英に来るとはな直哉」

 

「真希ちゃんを見習ったんや。出来た従弟やろ?」

 

 4月。

 雄英への道中、禪院直哉と真希は世間話をしていた。

 ちなみに彼が雄英に入った動機は真希を見習ったわけではない。アッチ側であるオールマイトの母校だからだ。大嘘だ。

 

「女を見習えるんだな。尻しか見てねぇと思ったぜ」

 

「失礼やなぁ。胸も見とるわカス」

 

 煽り合う2人、彼らは呪術世界と違ってそこまで仲は悪くない。

 

「じゃあ私は2年だからここで別れるぞ直哉。精々、初日から除籍されないようにな」

 

「除籍?されんわカス。俺は禪院家次期当主やカス。カスとは違うんやカス」

 

「カスカス言い過ぎなんだよ。消しカス君かお前は」

 

 そう言って2人は分かれる。そして直哉は数分もしないうちに目的の場所、A組の教室前へと到着する。

 

「ドアがデカいな。バリアフリーか?あほくさ」

 

 直哉は早速、教室の中に入り席に着き眠りにつく。そして数分後、彼は叩き起こされることになる。

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の制作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ、てめー!どこ中だよ端役が!」

 

(なんや、やかましくて敵わんわ)

 

 真面目そうなメガネの生徒とチンピラのような生徒が言い争いをしている。

 なんでもチンピラの態度が悪いことを端に発した言い争いのようだ。

 直哉が顔をしかめていると教室に人が集まりそれに比例するように騒がしくなっていく。すると………

 

「お友達ごっこがしたいなら余所へ行け。ここは………ヒーロー科だぞ」

 

 寝袋に入ったままの小汚い人間がゼリー飲料を一瞬で飲み干しながらそう言った。

 そして彼は寝袋から出てきて教壇に立った。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君達は合理性に欠くね」

 

(コイツ………何者かは分からんがかなりできるな。歩き方で分かるわ)

 

 直哉は相澤の重心と体幹の取り方に感心する。対する生徒達は謎の不審者が仕切り出して困惑する。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね。早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」

 

 不審者はまさかの担任であった。

 相澤はそう言うと戸惑う生徒達を残してグラウンドへと向かう。生徒達は困惑しつつも更衣室に向かい急いで着替えてグラウンドへと向かう。

 

「集まったな。ではこれから個性把握テストを行う」

 

「「「個性把握テストォォ!?」」」

 

 相澤のいきなりの発言にグラウンドへ集まったばかりの生徒達は口をそろえてざわめく。

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

 茶髪の女性生徒、麗日は困惑しつつも相澤へと問いかける。

 

「ヒーローになるんならそんな悠長なことしてる暇はないよ。ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を録って平均を作り続けている。まぁ文部科学省の怠慢だよ。そうだなぁ。実技テスト1位の禪院。中学の時のソフトボール投げ何mだった?」

 

「13kmや」

 

「真面目に答えろ」

 

「………60mくらいや」

 

「じゃあ禪院。個性を使ってやってみろ円から出なきゃ何してもいい早よ」

 

(円の中は小さい、加速するには………独楽(こま)やな)

 

 直哉は脚を軸に独楽のように回り始めた。その速度は徐々に速くなり始める。やがてそれは亜音速に匹敵し始めるほどになる。

 

「うおお!凄い速さだ!」

「人間の早さじゃねぇ。オクロックや直毘人のように加速系の個性か?」

「まさか遠心力を利用してボールを飛ばすのでは?」

 

 生徒達は口々にそう言う。そしてその時がきた。

 直哉は1つの動きを作り、ハンマー投げのようなフォームでボールを投げ飛ばした。『投射』による超加速により投げられたボールの初速は音速を超える。

 

「………オラッ!!!」

 

 ボールはソニックブームを放ちながら射出された。すぐにボールは視認できなくなる。

 一方の直哉は徐々に減速していく。彼の動きが止まってしばらくした後、相澤はこう言いながら端末の液晶を生徒達に見せつける。

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 端末には2402.9mと書いてあった。

 

「なんだこれすげー面白そう!」

「すげー!キロを軽々と超えやがった!」

「個性思いっきり使えるんだ!流石ヒーロー科!」

 

 生徒達は大盛り上がりだ。普段はあまり大々的に使えない個性をフルに使えるのだ無理もない。

 だがここは雄英、飴があるならもちろん鞭もある。

 

「…………面白そうか。ヒーローになる為の3年間をそんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

 相澤の言葉に生徒達は一瞬で押し黙る。この言葉の意味が分からない阿呆はいないようだ。

 

「よし、トータル成績が最下位の者は見込み無し判断し除籍処分としよう」

 

「「「はああああ!?」」」

 

「いや脅しでしょ」

「そうだよ、流石に初日で除籍するわけがない」

「そうとも限らへんで」

 

 半信半疑な様子の生徒達に異論を唱えるものがいた。そう、直哉だ。

 彼の言葉にクラスの注目が集まる。

 

「真希ちゃんは実際に除籍されたはずや」

 

「真希ちゃん?」

 

「1つ上の俺の従姉や。彼女も雄英生でな、1年生の時に除籍されたんや。笑えるやろ」

 

「は?」

 

(まあ後で復籍されたんやけどな。この情報は知らせん方がおもろいから黙っとこ)

 

 生徒達はまさかの証人(直哉)から除籍がガチだということを知らされ、彼らは戦慄する。

 

「そういうことだ。生徒の如何は俺たちの自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 こうして個性把握テストが始まった。

 

 第1種目:50m走

 

『3秒04!』

 

 飯田が好記録を叩き出す。彼の個性はエンジン、見ての通り足が速い。だがそれよりも速い男がいる。

 韋駄天、禪院直哉だ。

 

(50m、1フレーム平均で2mくらいで動けば1秒代も余裕やな)

 

 そう言って『投射』をフルに使い移動する。

 すると結果は………

 

『1秒32!』

 

「まさか直線の移動で俺が負けるとは………」

 

「がんばり賞ってとこやね」

 

 飯田は悔しそうな表情をにじませ直哉は煽る。飯田はターボヒーロー「インゲニウム」の弟だ。故に速さで負けたことが途轍もなく悔しい。

 

 第2種目:握力

 

 これは普通の記録しか出せなかった。

 呪術世界と違って呪力で体を強化できない直哉にとってパワー不足は課題の1つだ。

 

 第3種目:立ち幅跳び

 

『投射』である程度、物理法則を無視すればそこそこの記録を出せる。

 

『20.28m!』

 

「ま、こんなもんやね」

 

「いや十分に凄いから」

 

 第4種目:反復横跳び

 

「残像や」

 

 直哉は動きを作りながら反復横跳びを行う。彼は24fpsで動ける。故に1秒間で24回も横跳びが出来る。それが20秒間続く。結果は圧倒的だ。

 

「嘘だろ、オイラ以上の記録がでるなんて!」

 

「これが格の違いや」

 

「イケメンが!ムカつくぜ!」

 

 峰田はそう言って血涙を流す。

 

 第5種目:ソフトボール投げ

 

 直哉は既に投げたのでお休みだ。

 ここでは麗日という女子生が∞という結果を叩き出した。

 

「やるやん自分。見てくれも悪くないし禪院家の女にするのも悪ないな」

 

 直哉は麗日に向けてそう言う。

 彼女のことなど優秀な胎盤としか思ってない。

 禪院家は男尊女卑がデフォの価値観の家なのだ。

 

「ちょ、ちょっと、いきなりなんや!気持ち悪いからやめて!」

 

「………おんなじ地方出身やな。なら知っとるやろ禪院の話くらい」

 

「関西の禪院………知ってるけど、個性婚を繰り返してる前時代的な価値観の家だって」

 

「前時代的やけど仕方ないねん。この超人社会を守るためには強いヒーローが必要や。だから個性婚も必要悪や」

 

「と、とにかく!そういうのはお断り!」

 

 そう言って麗日は直哉から距離を取る。流石に見てくれがよくても発言がキモすぎた。そして生徒達は順々にボールを投げる。そして緑谷の番になった。

 

『46m』

 

「な…今、確かに個性を使おうって」

 

「個性を消した。つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のような奴でも入学できてしまう」

 

「消した!あのゴーグル!そうか!抹消ヒーロー「イレイザーヘッド」!」

 

 緑谷は個性を消されたことで相澤の正体を看破する。

 

(個性を消す個性。厄介やな)

 

 直哉の目の前では緑谷が相澤によって指導を受けていた。

 

「緑谷くんはこのままだとマズイぞ……」

 

「個性を使ってないように見えるが………」

 

「ったりめーだ。無個性のザコだぞ!」

 

「んなわけないやろカス」

 

「あぁ!?」

 

 直哉の「カス」発言に爆豪がキレる。

 

「ここは天下の雄英やで。無個性のゴミが入学できるほど温ないわ。そんなことも分からんのかカス」

 

「ああ!?」

 

「人の事をゴミだのカスだの酷いな禪院くん!」

 

「禪院、爆豪、飯田、静かにしろ」

 

 緑谷の指導が終わった相澤から注意が飛んでくる。

 

「ごめんちゃい♡」

「ケッ!」

「すみませんでした!」

 

 その言葉を受けてグラウンドは静かになる。そして緑谷が投球を行う。

 

「SMASH!」

 

 風が辺りを貫く。ボールが凄まじい速度で発射されすぐに見えなくなった。そして緑谷の指は内出血で紫色に変色している。

 端末に表示された記録は『705.3m』。ヒーローの卵らしい記録だ。

 

「やっぱな、ええ個性持ってるやん。真希ちゃんあたりと掛け合わせれば良い個性が生まれそうや」

 

 そうして残りの種目は恙なく進行していく。そして結果発表となった。

 

「んじゃパパっと結果発表」

 

 そうして相澤は端末から結果を表示する。1位には禪院直哉と書いてあった。そして最下位は緑谷だ。

 

「最下位二キは緑谷くんか。誰や緑谷くんって?」

 

「僕です」

 

「おお君か、じゃあおつかれさん」

 

「ちなみに除籍は嘘な。君達の個性を引き出す合理的虚偽」

 

「「「はあああああ!」」」

 

 相澤の言葉に生徒達は衝撃を受ける。

 

「じゃあ禪院くんの従姉が除籍されたのはどういうことなの!?」

 

「……………あいつらは本当に除籍した」

 

 相澤がそう言って直哉の代わりに答える。それに生徒達は更に衝撃を受ける。そして「それは合理的虚偽ではないんかい」と言わんばかりの顔をする。

 

「これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類あるから目ぇ通しとけ」

 

 そう言って相澤はグラウンドから立ち去る。これで初日は終わった。

 直哉は熱海にある別荘へと戻る。関西にある禪院本家から静岡にある雄英は遠いのでここを拠点にして登校しているのだ。

 そこでは彼は潮風に揉まれながら実父である直毘人と電話をしていた。

 

「それでどうだ、雄英は?」

 

「おもろい個性持ちがたくさんやね。何人かは禪院に取り込みたいくらいやわ」

 

「ブッハッハ!それはなにより。それと八百万のご令嬢と良い仲になっておけ。奴らの財力は魅力的だ。さらに娘の個性は『創造』であったはず、個性の格も高い」

 

「八百万、胸の大きい子やね。まあやるだけやってみるわ」

 

「………それと青山には気をつけろ」

 

「ん?臍から光線を出しとった奴か」

 

「青山家のせがれは無個性で困っていると相談を受けたことがある。後になって個性の発現が遅かっただけと言われたが………どうにもきな臭い」

 

 青山家は自分の息子が無個性なことに悩み方々を駆け巡った。その中には個性の名家、禪院も入っている。

 直毘人は海千山千のヒーローにして計略家だ。その彼がこう言うのだから警戒するに越したことはないだろう。直哉は意図を瞬時に察する。

 

「なるほどやね、つまりはAFOの関与が疑われると。せやけどアイツはオールマイトが倒したんちゃう?」

 

「奴がそう簡単に倒されるわけがあるまい。どこかで牙を研いでるに違いあるまい」

 

 AFO、個性を与え奪う個性の持ち主。裏社会の全てを支配していたという闇の帝王。

 死穢八斎會の老人達が死亡説が囁かれてもなお畏れていたように、あの時代を生き抜いた直毘人も彼のことを警戒している。

 

「なら青山が裏切り者かもしれんことを公安かオールマイトに言えばええんやない?」

 

「そう簡単にはいかん、儂は甚爾と近しかったから信用されないだろう。それにオールマイトとAFOが共倒れするくらいが禪院にとっても丁度いいだろうよ」

 

 禪院家は甚爾というヴィランを輩出したこともあり公安からの信用はあまりない。

 更には禪院家にとってオールマイトは目の上のたんこぶである。今までヒーロー界を牛耳っていたというのに彼の登場によりお株を奪われた。

 どうせならオールマイトが倒されてその後に禪院家が弱ったAFOを倒すくらいが丁度いいと思っているのだろう。

 

「まあええわ、じゃあこれで切るな。父ちゃんも酒は控えや」

 

「ハッ!飲みたいもん飲んで体に悪いわけがないだろう」

 

 そう言って直毘人は電話を切る。そして直哉は1人で背伸びをする。

 

(AFO、オールマイトに重傷を負わせた存在、奴もアッチ側の存在やな。次期当主として警戒せんとな)

 

 直哉は覚悟を決める。

 ドブカスのヒーローアカデミアはまだまだ始まったばかりだ。




父ちゃんも酒は控えや(俺がプロになる前に死んだら甚壱くんに家督取られるかもしれんやろ。だから身体に悪いことすんなやボケの意味)
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