ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件   作:ブルーコスモスへの鎮魂歌

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長くなりそうなので分割しました。


オーブの夜に SideG【前編】

 ファウンデーションの暴走を止めて早一ヶ月。

 世界はあの事件で受けた傷痕を癒やす為にユーラシアや残らせたファウンデーション国民達への復興に力を注いでいた。

 最早戦争をやっている余裕などなく、皮肉にもファウンデーションの暴走が各国の協調を強める結果となった。

 世界は、束の間の平和を手に入れ────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コンディションレッド発令! コンディションレッド発令! パイロットは各自機体への搭乗を!』

 

 

「はいうそっす。見栄張りました。世界(コズミック・イラ)のテロリストどもは今日も元気爆発(物理)っす……」

 

 やさぐれた顔で舌打ちするラビにルナマリアが腕を引っ張った。

 

「馬鹿なこと言ってないで、早く来る!」

 

「りょ〜かぁい……」

 

 ミレニアムのパイロット達は自分の機体に搭乗する。

 アークエンジェルが破壊され、現在ミレニアムのパイロットは六人。

 ムウ・ラ・フラガをトップにヒルダとシン。

 ルナマリアとアグネス。そしてラビの六人で活動している。

 今回は、民間コロニーを占拠している旧ジャガンナート派の残党の制圧だった。

 コノエ艦長がパイロット全員に伝わる形にムウへ通信を入れる。

 

『コロニー周辺に戦艦二隻と中隊規模のモビルスーツが展開されてます。内部の方は不明ですが、まぁ多く見積もっておいて損はないでしょうな』

 

『了解だ。ミレニアムから発進後、シンとハーケン大尉はコロニー内部に突入し、民間人の安全を最優先にモビルスーツを無力化。ルナマリアとアグネスは俺とコロニー外部の敵機を撃墜しつつ、その援護だ』

 

 各パイロットが了解と返事する。

 そこでラビが質問する。

 

「隊長ー。あたしはー?」

 

『お前はミレニアムの護衛だ! いいか? 絶対にコロニーに近付いて撃つなよ! 前回みたいに誤射されたら堪らんからな!』

 

「りょ、了解っす……」

 

 小さくなるラビ。

 前回、ブルーコスモスのテロ鎮圧に地上に降りた戦闘で、ミサイルを迎撃しようとして狙いを外してしまい、博物館に穴を空けた。

 幸いして避難は完了しており、人的被害は無かったが、コロニーでやられたら本当に洒落にならない。

 ミレニアムで急行し、モビルスーツの発進可能距離までコロニーに近付いた。

 モビルスーツがカタパルトに移動する。

 

『ムウ・ラ・フラガ! ムラサメ、出るぞ!』

 

 ユーラシアで中破したムウ専用のムラサメを修理し、変わらず彼の愛機として搭乗していた。

 

『ヒルダ・ハーケン。ドム、出るよ!』

 

 ヒルダが乗るのは、かつてクライン派として行動していた時に乗っていたドムだ。

 乗っていたギャンはアグネスのギャンとのパーツの共食いに使われ、これなら新しいのを持ってきた方が早いという結論になり、ターミナル経由でドムを回して貰った。

 

『シン・アスカ。インパルス、行きます!』

 

 シンが乗るのはかつての愛機であるインパルス。

 コンパスが大っぴらに核で動く機体を使うのは世間からの心象が良くない、という理由でデスティニーは再びオーブに戻された。

 それならばとかつての愛機であるインパルスを乗る事にしたのだ。

 

『ルナマリア・ホーク。ゲルググ、出るわよ!』

 

 ファウンデーション事件でヒルダに貸していたゲルググは再びルナマリアの手に戻り、今も変わらず使い続けている。

 

『アグネス・ギーベンラート。ギャン、出ます!』

 

 アグネスも変わらずギャンに搭乗している。

 そして────。

 ラビの機体はその大きさからカタパルトに乗らず、ミレニアムにアーム接続されており、専用の搭乗口が設けられていた。

 

「ラビ・トーチス。デストロイ、発進するっす!」

 

 ウィンダムが破壊され、新しい機体を連合に申請した際に届けられたのが組み立て途中で埃を被って放置されていたデストロイだった。

 それをミレニアムの開発部の手によって組み立てと改修が行われ、コクピットを全天周囲モニターに取り替えられ、関節や駆動系を弄り、変形時間が0.5秒短縮し、反応速度が15%向上した。エネルギー効率とバッテリーを最新の物に交換し、戦闘継続力が30%上昇した。

 ブルーコスモスが使うデストロイと区別する為に、肩だけ碧色に塗装されている。

 ミレニアムからパージされたデストロイは、戦艦の横に付いた。

 既に敵側はこちらに気付いている。

 ムウが警告を発する。

 

『こちら、世界平和監視機構コンパス。民間コロニーを占領している部隊に告ぐ! 武装解除し、投降しろ!』

 

 ムウの警告に対して返ってきたのは長距離ビーム砲による攻撃だった。

 高威力のビームを軽やかに回避し、舌打ちする。

 

『ってまぁ、そんな簡単に投降すんなら、こんな真似しないだろうけどよ!』

 

 飛行形態の直進し、ザクと交差する瞬間にモビルスーツ形態に移行すると背後からビームライフルを撃って撃墜する。

 

『こんなことをいつまでもぉ……っ!』

 

 シンがビームライフルで次々とザクやゲイツの頭部や武装を破壊していく。

 ドム、ゲルググ、ギャンも次々とジャガンナート派の残党を撃墜する。

 

 最新鋭機でなくとも、彼らの機体や実力が第一線で戦うに充分な力を有している証明だった。

 ラビもデストロイを駆ってミレニアムの防衛をする。

 

「コレ絶対にあたし向きの機体じゃないよ!」

 

 何度目か分からないボヤキを口にしながら両腕部を飛ばし、接近してくる三機のザクを指のビームで撃ち落とす。

 ハインライン大尉から通信が入る。

 

『モビルアーマーに移行し、陽電子リフレクターを展開しつつミレニアムの前に出て、敵戦艦とモビルスーツの砲撃を防げ!』

 

「了解っす!」

 

 指示を聞き、モビルアーマーに変形しながらミレニアムの前方に移動し、陽電子リフレクターで敵戦艦の主砲とミサイル。ザクの砲撃を全て受け止める。

 

『二時の方向に五秒後、アウフプラール・ドライツェーンでコロニー突入の為に必要な穴を敵陣形に空けろ!』

 

「イエスマム!」

 

『サーだ馬鹿者!』

 

『サ、サーッ!』

 

 などと指示を聞きつつモビルアーマー形態のまま、ビーム砲を敵戦艦に向けて引き金を引く。

 護衛だったゲイツを巻き込んで敵戦艦を沈める。

 

『道が出来たね! コロニーに突入するよ! シン、ついて来な!』

 

『了解!』

 

 ドムとインパルスがコロニー内部に向かうとムウもルナマリアとアグネスに指示を出す。

 

『もう少しモビルスーツを減らしたら、俺達も行くぞ!』

 

『了解!』

 

 ラビにはハインラインから指示が飛ぶ。

 

『九時の方向にミサイルをばら撒き、弾幕を張れ!』

 

『了解っすー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジャガンナート派の残党は戦力の七割を失ったところで白旗を上げた。

 後からやって来たイザーク・ジュール中佐に彼らを引き渡し、ミレニアムはプラントに停泊。

 主だったクルーが集められ、今後の事をコノエ艦長が説明する。

 ファウンデーション後もほぼ休み無しに酷使したミレニアムはモビルスーツも含めて本格的なオーバーホールに入る事。

 その間の二週間、ミレニアムのクルーには休暇が言い渡された。

 アークエンジェルが撃沈され、コンパスはミレニアムだけでの活動を余儀なくされたが、戦艦一隻で宇宙や地球全ての戦闘に介入し、助けられる訳もなく、人も機械も休息は必要だった。

 その間、世界中のどこかでテロが起きても、その土地の駐屯軍に頑張ってもらうしかない。

 いや本当に。

 

「皆、これまでよく頑張ってくれた。二週間という短い休暇だが、存分に英気を養ってほしい」

 

 そう締め括られると解散になる。

 ラビは小躍りしそうなくらい浮かれていた。

 この一ヶ月、地球ではブルーコスモスの活動が活発化したり、宇宙ではジャガンナート派の残党を追いかけ回す日々。

 

「もう訓練よりスクランブルの方が多い日常とはおさらばっすよ!」

 

 実戦こそ最高のレベリングと言わんばかりの日々からようやく解放されたのだ。

 とはいえ、休暇をどう過ごすか。

 プラントになど仕事でもないと来れないし、地球に降りるよりは二週間使ってプラントの観光も悪くない。

 あまりお金は使わないように心がけているラビだが、今回は自分へのご褒美に贅沢してもバチは当たらないだろう。

 そんな風にスキップでもしそうなくらい舞い上がってドアに向かうラビに、ムウが思い出した様子で背後から話しかける。

 

「ラビ。悪いがお前、明日から俺とオーブへ出張な」

 

「は?」

 

 その命令に時が止まったかのようにラビの動きが停止した。

 ギチギチと錆びたゼンマイみたいな音を立てて首が180°回り、ドロッと血の涙を流して背後にいるムウを見上げる。

 それを近くで見ていたアグネスが、ヒッ!? と声を出して尻餅をついた。

 

「そん、な……どう……じ、で……?」

 

「今から説明するから首戻せっ! 怖ぇよっ!!」

 

「ぐげっ!?」

 

 ムウがラビの頭を掴んで、首を元の位置まで回した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラビ・トーチスのオーブへの出張理由は、シュラ・サーペンタインへの調書の手伝いだった。

 ファウンデーションの生き残りは現在オーブの監視下に置かれている。

 レクイエムを修復したプラントに置けば、再び反乱を起こされる可能性が有り、ユーラシアやファウンデーションに帰せば確実に殺される。

 大西洋連邦も同様だ。

 事件の全容を明るみにする為にも、オーブに置いておくのがベターだと判断された。

 そして、騎士団長であるシュラを捕縛したラビには是非調書に立ち会ってほしいと首長であるカガリ・ユラ・アスハから要請があったらしい。

 

「ま、建前だけどな」

 

 オーブ行きのシャトルの座席でムウが本当の目的を明かす。

 

「クライン総裁からお食事のお誘い……びっくりしたぁ。とうとうコンパスがあたしにサービス残業やらせるくらいブラックに堕ちたのかと思ったっす」

 

「流石にそこまで自転車操業じゃねぇよ。悪いな。俺も昨日の朝に連絡が来てよ」

 

 呼ばれたのは、ムウとシンとルナマリア。そしてラビの四人。

 ムウはオーブにマリューが居るし、シンは家族の墓参りにオーブへ行くつもりだった。ルナマリアはその付き添い。

 ラビだけはオーブに用事が無かったので、あのような言い方になってしまった。

 もう既に予定を組んでいたのなら食事会はまた後日だったが、幸い予定を組むのはこれからだったので問題なし。

 それに────。

 

「形だけの出張でお給料が出る上に、オーブに滞在する間の宿泊費は全てアスハ代表持ちって話! これは断われないっす!」

 

 そう。ラビが釣られたのは、宿泊費は全てオーブの代表首長であるカガリのポケットマネーから出してくれるとの事。

 プラントを観光するつもりだったが、せっかくだしオーブで食い倒れの旅を満喫しようと決めた。

 もちろん食費はまた別だろうが、浮いた宿泊代を食事代に回せば良い。

 

「あたしの使命は食から導かれるっす!」

 

「アホなこと言ってないで大人しく座りなさい」

 

「は〜い」

 

 シンから借りた文庫本を読んでいたルナマリアに注意された。

 そこでラビがルナマリアに話しかける。

 

「そういえば、ギーベンラート中尉は呼ばれなくて残念だったっすね」

 

「え? なんで? アグネスなんか一緒に来たら、面倒が増えるじゃない」

 

 心の底からアグネスが来なくて良かったと思っている様子のルナマリアにラビが首をかしげた。

 

「……友達なんじゃないんすか? 同期なんでしょ?」

 

「違うわよ。同期ではあるけど」

 

「あれ〜?」

 

 友達、の部分を否定するルナマリア。

 アカデミー時代はそれなりに一緒に居る事も多かったが、色々あって、ルナマリア自身の考えが変わったりと今ではコンパスの仲間だとは思っているが、友達というカテゴリーには入っていない。

 不思議そうな顔をしつつ話題を変える。

 

「クライン総裁、無事だったんすね。ヤマト隊長と一緒に行方不明になってたから……」

 

 一ヶ月程行方を眩ませていたラクスとキラ。

 コノエ艦長などの上役は連絡を取っていたらしいとは今しがた聞いたが。

 

「あたし、もう一度総裁に会いたかったんすよね。ちょうど良かったぁ」

 

「あんた、ラクス様と話したことあるの? あ、救出した後に?」

 

「いいえ。ミケール大佐の捕縛作戦の前日に少しだけ。わざわざプレゼントも用意してきたっす! いやーたっのしみだなー!」

 

 こちらが不安になるようなとても良い笑顔をラビは浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙からオーブに到着すると、既に夕日が落ちようという時間帯であり、空港には迎えがやって来ていた。

 

「お姉ちゃん、迎えにきたよ」

 

「メイリン。久し振りね」

 

 姉妹の再会に嬉しそうにする二人。

 所属が変わり、以前のように気軽に会える関係ではなくなってしまったが、仲の良さは変わっていない。

 むしろ中々会えないからこそ以前より仲が深まったかもしれない。

 

「ラビちゃんも久し振り〜。元気だった?」

 

「いやーそれが、スクランブルばっかりでそろそろ身体壊しそうだったっすよ、メイリンさん」

 

「あー分かる。忙しいとどうしてもね」

 

 などと話していると、ムウが話す。

 

「じゃあ、俺らはここからタクシーに乗って行くわ」

 

「俺達も一緒に行くんじゃないんですか?」

 

「それはまた今度にな。女の子は女の子同士で野郎は野郎同士で飲むのも悪くねーだろ。店も予約してあるし。お前さんが一人あっちに行きたいってんなら止めねーが」

 

「いや、行きますよ! じゃあルナ、後で連絡入れるから!」

 

「例の調書は明日迎えに行くからな」

 

 慌ててムウについていくシン。

 

「じゃあこっちも行こうか。ついて来て」

 

 車まで案内されるルナマリアとラビ。

 メイリンの車を見てルナマリアが質問する。

 

「高そうな車ね。買ったの?」

 

「まさか。レンタルだよ。買っても乗り回す暇ないもん」

 

 任務で世界中を飛び回る関係上、自動車なんて買っても維持費を取られるだけである。

 

「ホーク中尉」

 

「ルナマリア、よ。今は任務じゃないし、メイリンだけ名前呼びなのは面白くないしね」

 

 毎日顔を合わせているのに、未だにホーク中尉呼びで妹が名前呼びは違和感があるので、名前で呼ばせる。

 もちろん公私は区別してもらうが。

 

「はいっす。ルナマリアさん」

 

「それじゃあいくよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラクスとキラが暮らしているのはアスハ家の管理下にある屋敷だった。

 セキュリティ万端な施設で特定の人間以外は入れないように設定されている。

 メイリンの後にパスコードを打ち込んで扉が開く。

 

「皆さん、ようこそお越しくださいました」

 

「私は今日、完全にオフだからな。まぁ、気楽に頼む」

 

 そこにはペットロボットであるブルーを模した着ぐるみを着たラクスと、可愛らしくデフォルメされた獅子の着ぐるみを着たカガリが居た。

 それにメイリンは苦笑し、ルナマリアはまたそれ着るんだ、という表情をする。

 

「言いたい事は色々あるだろうが、先ずは着替えてこい。そこの部屋でな」

 

 と、三人はそれぞれ着ぐるみを渡させた。

 ホーク姉妹は慣れた様子で隣の部屋に移動する。

 

「あ。今回私は馬だぁ」

 

「あたしは熊……ラビは?」

 

「兎っすね。ラビだからRabbit()? まぁなんでもいいや」

 

 着替えを終えて元の部屋に戻るとラクスが頭を下げてお礼を言う。

 

「今回は急なお誘いに応えてくださり、ありがとうございます。特にラビは」

 

「いやーまぁ。急にオーブへ出張とか言われた時は驚き過ぎて首が真後ろむいちゃったっす」

 

「あらあらそれは」

 

 冗談だと思っているのか、ラクスは口に手を当ててにこにこ微笑っている。

 

「……」

 

「どうしたのお姉ちゃん。顔色悪いよ」

 

「ナンデモナイワヨ……」

 

 実際それを思い出したルナマリアは顔を青くした。

 

「そうだ。あたし、クライン総裁にプレゼントを用意したんすよ」

 

「あら」

 

 プレゼント、に嬉しそうな顔をするラクス。

 ラビが持ってきたお手乗りサイズの箱を渡した。

 

「今お開けしても」

 

「全然大丈夫っす」

 

 中に入っていたのは、目覚まし時計だった。

 ちょっとデブってる猫のお腹に今時珍しい、指針の時計。

 

(いや、要らないでしょ)

 

 プレゼントというから何を用意したのかと思えば総裁相手に目覚まし時計。

 どう考えてもお蔵入りである。

 

「背中のボタン押してみてください。こういうの好きかなーってあらかじめ音声入れといたんで」

 

「? はい」

 

 言われた通りボタンを押す。

 すると、録音されている音声が再生された。

 それはキラとオルフェの会話だった。

 

『だけど、僕にも武器がある!』

 

『なんだそれは?』

 

『それは────────ラクスの愛だっ!!』

 

『ふざ────』

 

 そこで音声が切られる。

 

「………………」

 

 その音声にメイリンは口を押さえてプルプルし、ルナマリアは唖然。

 カガリは呆れた様子で息を吐く。

 ラクスはちょっと顔を赤くして嬉しそうに時計を見る。

 

「ブラックナイトスコードの通信記録から落としてそっちに入れたっす。タイマーが起動したら止めるまでリピートし続けるんでご注意を」

 

 キラがこの場に居たら即座に取り上げられただろうが、居ないのが幸いした。

 

「これは……とても良い物ですわね。ありがとうございます」

 

 時計を部屋に置いてきますね、と一旦自室に向かうラクス。

 カガリがラビに問いかける。

 

「お前、キラに恨みでもあるのか?」

 

「いえ。特には。むしろ尊敬してるっすよ。ただ……」

 

 思い出す素振りをしてから続ける。

 

「ファウンデーションでの戦闘が終わってマシントラブルで動けなくなっちゃって。ヤマト隊長に助けてもらおうと救難信号を送ったら、無視してどっか行ったんすよ、あの人。だからこれくらいの報復(おちゃめ)は許されるかなって」

 

 壊れたモビルスーツの中で宇宙を漂っていると、酸素の残りとかとても恐いのだ。

 目の前でびゅーんと飛んで行かれるのがどれだけショックか。

 これくらいなら洒落の範囲だろう。

 

 それこそ、ヤマト隊長は世界を平和にしなかったらクライン総裁が自分を捨てるパワハラDV彼女だと思ってたんすよ〜、とか言わないだけ温情だと思ってほしい。

 

「まぁ。あまりからかってやるな。キラの奴、落ち込むと面倒だからな」

 

「はいっす! こういうのは、一回ちょっと仕返しして水に流すくらいがちょうどいいっすから!」

 

 ラビとてわざわざ准将に喧嘩を売る程馬鹿ではない。

 今回は詰め寄られても総裁が守ってくれるだろうという打算込みの報復なのだ。

 

「お待たせしましたわ。さ、お食事を始めしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーブにあるそこそこお高い居酒屋。

 そこではキラとアスラン。そしてムウとシンが集まっていた。

 

「なんだ……?」

 

「どうしたんですか? キラさん」

 

「なんだろう……急に悪寒が……」

 

 こう、アコードに精神干渉された時のような。

 もしくは、過去の大戦でラウ・ル・クルーゼがアークエンジェルを狙っているのを感じた時のような。

 それくらい嫌な予感がキラの中で駆け巡る。

 

「おいおい風邪か?」

 

「そんなんじゃないと思うんですけど……」

 

「それより、ビールの泡でヒゲが出来てるぞ、キラ。ちゃんと拭け」

 

 アスランから渡された手拭いでキラは自分の口を拭いた。

 

 

 

 

 

 

 

 




デストロイガンダムSpec2。
連合の月基地に組み立て途中で埃を被っていたのをラビ・トーチス少尉の申請から厄介払いで送られた機体。
組み立て途中のまま送られた事で、ミレニアムの開発部に手を加えられた。
コクピットを全天周囲モニターに換装され、エクステンデッドではない一般的なナチュラルでも操縦出来るように調整されている。
オーブのモルゲンレーテ製の最新式バッテリーや、駆動系や関節を見直され、腕部のガンバレルにはレシェンドのドラグーンシステムのデータにより従来の物より扱いやすくされている。
連合、ザフト、オーブの技術が盛り込まれた贅沢機だが、機体サイズから補給や整備にはある程度機体をバラバラにして格納庫に入れる必要があり、整備班からのウケはすこぶる悪い。
この機体の為に専用の搭乗口と接続アームが急造された。
ラビからは自分向きの機体じゃないとボヤかれている。
デストロイが送られた当初、フラガ大佐とアスカ大尉がすごく複雑そうな苦い表情で眺めていたという。
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