ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件   作:ブルーコスモスへの鎮魂歌

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書きたい事を書いてたら文字数が……。
次回……次回には完結する筈……!



オーブの夜に SideG【後編】

 アスハの別荘で開始された食事会。

 そこでナイフとフォークを手にしたラビが発言する。

 

「兎って、繁殖能力高いから雄と雌を同じ場所に置いて一年放置するだけで、百匹余裕で増えるんすよね」

 

「なんでドヤ顔でそんな知識披露しだしたの?」

 

 なんとなく〜、と返したラビはコロッケを食べる。

 

(それにしても揚げ物多い……)

 

 コロッケに鶏の唐揚げ。とんかつにエビフライと野菜のかきあげに天ぷらのエトセトラ。

 おかずの半分以上が揚げ物で締められた食卓。

 キッチンには業務用の油缶が置いてあるのが見える。

 業務用の油缶まで用意するなんて*1、今日の為に張り切ったんだな〜と思った。

 他には魚料理や卵焼きやサラダや野菜スープにロールキャベツ。そしてちょっと異色を放つお好み焼き。

 

「あ。コレ美味しい……」

 

 初めて食べるお好み焼きにそう漏らすと、カガリが意外そうに目を大きく開ける。

 

「本当か!」

 

「はい。あたしは好きな味っす」

 

 その反応から、お好み焼きはカガリが作ったのかとホーク姉妹が察する。

 

「そうか。気に入ってくれて良かった! よしドンドン食べろ!」

 

「わーい!」

 

 ラビの皿にホットケーキのように重ねられるお好み焼き。

 当の本人も嫌がる様子はなく、むしろ喜んで食べている。

 その様子にカガリが嬉しそうだ。

 

「前にアスランの奴に食べさせた時は仏頂面で悪くないとしか言わないからちょっと自信失くしてたんだ」

 

 その言葉にラビを除いた面々が、あ〜、と声を出す。

 

「アスランさんですからね」

 

「アスランですから」

 

「アスランですものね」

 

「?」

 

 と、三人が続けて言う

 その反応に、ラビだけが首をかしげた。

 彼女の印象では、アスランは如何にも仕事の出来るエリート軍人というイメージだったのだが。

 とんかつを食べながらラビが発言する。

 

「でも、ザラ一佐がコンパスに来てくれたらすごく助かりそうっすね」

 

「は? やめて」

 

「およ?」

 

 間髪入れずに反対するルナマリア。

 確かにアスランはモビルスーツパイロットとしても指揮官としても優秀な人物だが、コンパス来られても面倒が起きる気しかしない。

 シンはまた対抗意識を燃やして突っかかって行きそうだ。

 百歩譲ってそれはいいとして、問題はアグネス。

 キラに対する興味を失ったかと思ったら、今度はアスランに興味を示している様子だ。

 絶対に揉め事になるに決まってる。

 ルナマリアとしては、ファウンデーションの時のような大きな事件の時に手を貸してくれるくらいの距離感が良い。

 アグネスには早々に諦めて別の好い人を見つけてくれれば万々歳だ。

 即否定したルナマリアに視線が集まり、居心地が少し悪くなったのでフォローを入れる。

 

「あ〜。ミネルバを撃墜したのはアスランじゃないですか。ミレニアムにはミネルバから移動した人も多いですし、良く思ってない人もそれなりに居ると思うので」

 

 以前、ミネルバのタンホイザーを撃ち抜いたキラがモビルスーツの隊長をやっている時点で今更のような気がするが、顔も知らなかった敵パイロットより、仲間から離反して撃ってきたアスランの方が反発は強いだろう。

 ルナマリアの言葉に納得してか、苦笑いを浮かべるカガリ。

 

「まぁオーブとしても、あいつは必要だからな。コンパスに所属させるのは難しいな」

 

「残念っす」

 

 などと言いながらお好み焼きを食べ終わり、野菜スープとエビフライに手を付けている。

 

「太るわよ」

 

 どんどん料理を消費するラビにルナマリアが呆れた様子で嗜める。

 

「体重増やしたいっす。ここ最近減り気味なんで」

 

 出撃の多さにカロリーの消費がヤバい。

 モビルスーツのパイロットは脳も含めた全身運動である。

 肉体には常にGの負荷がかかりつつレバーやボタンを動かし、たくさんの計器を確認しながら敵味方の動向に気を配る。

 敵の攻撃を常に警戒するストレスに晒され、地上空中宇宙でそれぞれ独自のバランス感覚も要求される。

 馬鹿には務まらないし、シートに座ってボタンをポチポチ押すだけの職業ではないのだ。

 つまり────。

 

「モビルスーツのパイロットやってて痩せない人はもうどんなダイエットやっても無駄だと思うっす」

 

 断言するラビにルナマリアが話題を変えた。

 

「そういえばアスハ代表。ファウンデーションとの戦闘の後に、コンパスを庇ってくれてありがとうございます」

 

 活動凍結に追いやられながらも無断出撃したコンパス。

 本来ならそれに加担した者は今頃牢屋行きになり、コンパス自体が解散になってもおかしくなかった。

 それをカガリがコンパスの出撃はオーブが状況を鑑みて自分が独断で出撃を依頼した、という形で各国に頭を下げた。

 コンパス加盟国も、このままコンパス凍結を長引かせたり、解散させるよりは、これまで通り扱き使った方が安上がりだと思い、減給など最低限の処罰で事なきを得た。

 ルナマリアのお礼にカガリが首を振る。

 

「お礼を言うのはこっちの方だろ。コンパスの活躍でオーブは撃たれずに済んだんだからな。まったく……なんでうちみたいなしがない中立国をどいつもこいつも撃ってくるんだか」

 

 冗談交じりに肩をすくめる。

 ここ数年、戦争が続いたせいで各国の国力が大幅に低下し、相対的にオーブの発言権が強まっていた。

 コンパスの件が軽く済んだのもそれが大きい。

 

「それにしても、ルナマリアもラビもすごいな。キラやシンを倒した敵をやっつけたんだって。特にラビの方は、報告書を読んでも信じられなかったぞ」

 

 オーブの代表になって多少の腹芸は身に付けたカガリだが、こういう裏表のない言動は変わっていない。

 カガリからすれば、アスラン、キラ、シンは当代最高のパイロット達だ。

 彼らが絶対負けない無敵のヒーローとまでは盲信していないが、ファウンデーションに撃墜されたと報告を受けた時は信じられなかった。

 それ以上に、新兵でナチュラルのラビがアコードを単独撃破。パイロットの確保までやってのけるとは誰が予測しただろう。

 いや、そもそも敵モビルスーツを奪ってくるという発想からしておかしいのだが。

 そこでメイリンが思い出した様子で発言する。

 

「そういえば、アスランさんがブラックナイツに対抗する為の作戦をカガリさんに相談してましたよね?」

 

「あぁ。結局無駄になったけどな」

 

 読心能力のあるアコードに対抗する為、ジャスティスをカガリがリモート操作する作戦をアスランが進言してきた。

 アスランの心を読もうが、カガリが操縦していれば関係ない。

 だが結局、アスランがアコードと直接対決する事なくレクイエムの破壊を実行した。

 カガリがやった事と言えば、ラクス救出の際にアルテミス内でズゴックをリモート操作してメイリンや救出班の援護。

 そして最後にキャバリアーでジャスティスを援護したくらいだ。

 

(昔だったら、飛び出していたかもな)

 

 カガリが昔のままなら、ファウンデーションの虐殺行為に憤り、況してやオーブが狙われていると知れば、周囲が止めるのも聞かずにミレニアムへ乗り込んでいたかもしれない。

 オーブを守る為に直接戦いたかった気持ちが無い訳ではないが、自分の立場を理解している今では出来ない無謀な行動。

 そんな事を考えてしまうのは、カガリが成長したからなのか。それとも────。

 

「カガリさん?」

 

 皿に視線を落とすカガリをラクスが不思議そうに名前を呼ぶ。

 

「なんでもない。しょうもない考えが過ぎっただけだ」

 

 一度会話を切ると、ラクスがラビに話しかける。

 

「ラビ。ブラックナイツのサーペンタイン団長を確保してくれてありがとうございます。そのお陰で、キラがユーラシア領内に踏み込んだ件の風当たりが大分緩和されました。あ。卵焼き食べます? 自信作なんですよ」

 

「食べますー! ────あまーい!」

 

 と、ラクスが盛ってくれた卵焼きを美味しそうに食べるラビ。

 

「って言っても、ホントに偶然っすよ。機体が大破したけどコクピットブロックは無事だっただけで。流石に見捨てたら寝覚めが悪いっすし。何より、自分達が仕出かしたことに責任取らせたかっただけなんで」

 

 流石に戦闘中にシュラを生かそうと考える余裕は無かった。

 だけど生きているなら、自国やモスクワの人達に謝らせてやる! とは息巻いたが。

 そもそもラビは自分がどう勝てたのかよく解っていない。

 あの時はファウンデーションの行為に対する憤りのままに突っ走ったが、もう一度戦って勝てと言われても、勝てる気がしない。

 

「十回に一回くらいなら? どうしても負けられない戦闘とかならワンチャン?」

 

 というのが本音だ。

 

「いや。本当に助かったぞ。サーペンタイン団長がミケール捕縛作戦の時に自分達の工作でフリーダムを誤認させたことを認めてな。キラをコンパス復帰させるのもなんとかなりそうだ」

 

 ファウンデーションの暴走とヤマト隊長の暴走。

 これらは別に考えられていて、プラントやオーブがユーラシアに介入する為にヤマト隊長をけしかけたと言われていた。

 それをサーペンタイン団長が自分達がヤマト隊長を暴走させるように工作したと認めた事で、その追及は大分収まった。

 もちろん各国全ての疑念が払拭された訳ではないが。

 気になる言葉にルナマリアが質問する。

 

「隊長、戻って来るんですか!?」

 

「はい。ミレニアムの休暇の終了に合わせて。わたくしも総裁に復帰しようと思います」

 

「あんな突然居なくなるからてっきりもう二人とも隠居するのか、とぁっ!?」

 

 鮭のホイル焼きを食べていたラビの失礼な発言にルナマリアがラクスとカガリの見えない位置から抓る。

 当然二人共気付いて居るのだが。

 申し訳なさそうに笑うラクス。

 

「それも含めて、じっくり考えたかったのです。これからどうするのか。どうしたいのかを。一度全てから離れて。心配をおかけしましたわ」

 

 ラクスはキラの心が壊れてしまう前に、戦場から離したかった。

 キラは望まぬ地位に居るラクスを自由にしてあげたかった。

 それを言葉にして伝え合った時、同じ事を考えていたのだと嬉しさから吹き出してしまった。

 

「わたくし達はもう大丈夫です。以前ラビが教えてくれたように、少しずつ頑張って行こうと思います」

 

 ファウンデーションで会話した夜。

 いきなり全てを解決しようとするのではなく、争う者同士が不快にならない距離感を見つける。

 その途中で起こる悲劇を減らす為に活動する。

 この世界に生きる者として。

 

「ありがとうございます。あの夜のお話しは、たくさんのことに気付かせてくださいました」

 

 Nジャマーの被害者であるラビがコーディネイターを恨んでないと言ってくれた事で、少しだけ救われたような気がしたのだ。

 

「え〜と、どういたしまして?」

 

 本人はよく解っていないが。

 それから休暇明けにキラと交代する形でムウをオーブに戻す事を話す。

 

「あぁ、そうだ。今回の件で活躍した報酬(プレゼント)、という訳じゃないが、各国に色々と許可を取り付けた。ミレニアムに戻ったら楽しみにしていろ」

 

 ちょっとイタズラっぽく笑うカガリ。

 そこでラビが鶏の唐揚げを食べつつ思い出して質問する。

 

「あたし明日、サーペンタイン団長の調書に行くんすけど、ファウンデーションの人達の様子はどんな感じっすか?」

 

「あぁそうだったな。思ったより大人しくしてるぞ。調査にも協力的だ。そこら辺は直接聴き取りをしたメイリンの方が詳しいんじゃないか?」

 

 話を振られてメイリンが頷く。

 

「アスランさんと一緒に、ですね。うん。でも本当に大人しいよ。命令されるのを待ってる感じもするし」

 

 シュラのように戦闘の生存者や、アルテミス要塞に残されたファウンデーションの者達。

 本来ならファウンデーションに戻すべきな彼らだが、肝心の国がまだ機能していない事や、今戻したら確実に怨恨から殺されるので、オーブが預かる形で引き取っている。

 今はまだ調査中の事柄が多いので、現状は裁判待ちである。

 

「協力的なのも本当だよ。暴れたりする心配はないんじゃないかな?」

 

「彼らはデスティニープランで見出された優秀な人材なのでしょうが、自分で判断することは苦手なのかもしれませんね」

 

 命令されて動けば有能でも、自己の判断が要求される場面ではどうすれば良いのか分からなくなる。

 それだけオルフェ・ラム・タオの指示が優れていたのだろう。

 

(そういやあの人、デスティニープランに関してはどうでも良さそうなんだよなぁ)

 

 アコードである以上、シュラもデスティニープラン肯定派の筈だが、あの戦闘の後に会話したが、そういう印象は受けなかった。

 

「なんにせよ、明日が楽しみっすね」

 

 うまうまとロールキャベツを食べるラビにルナマリアがからかうように質問する。

 

「なに? あんたあの人のことが気になるの?」

 

「あ! そういえば、あの人、ラビちゃんのこと何度か訊いてきてたよ。向こうはラビちゃんのことが気になるんじゃないかな?」

 

 便乗するメイリン。

 それにカガリは目を丸くし、ラクスあらあらと楽しそうに頬に手を当てる。

 ラビの反応は────。

 

「いやー、ないっすわー。さすがにあたしもテロリスト相手に恋愛するほどギャンブラーじゃないっすよ〜!」

 

 ないないと手をひらひらさせてアハハハハ、と笑う。

 もしも明日そんな話の流れにでもなったら、先ずは自国の人達に謝罪して筋通してこいとビンタするつもりである。

 

(この子、意外と酷いわね……)

 

 ケラケラと笑って否定するラビにルナマリアはその言い方にちょっと驚いた。

 メイリンが質問を重ねる。

 

「じゃあ、好みのタイプとかはいないの?」

 

「ん〜? そうですね〜。あ、トライン副長とか良いと思うっす!」

 

「副長ぉっ!?」

 

 これまた意外な人物の名前にルナマリアが声を上げた。

 

「あの、如何にも悪いことが出来なさそうなところが! それに、ナチュラルのあたしが嫌な思いをしてないか、たまに訊いてきたりしてくれますし!」

 

 特別優秀でなくても良い。

 この御時世、あの人柄は大変貴重な個性だと思う。

 そこでラビがカガリに質問する。

 

「あたしもカガリさんに訊いてみたかったんすけど。前に、バギーを足にロケラン担いでバクゥに立ち向かって行ったことがあるってホントっすか? さすがに作り話っすよね?」

 

「ちょっと待てそれ誰から聞いた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「料理、食べ切ったな……」

 

「無くなりましたわね」

 

 軽く十人前以上は作ってあった料理はデザートを含めて完食された。

 その半分近くはラビのお腹の中に。

 

「……本当はシン達もこっちに来る予定だったんですか?」

 

「いや。準備してるうちに限度を忘れただけだ。正直、作り終えた後は途方に暮れた」

 

 現実逃避して、キラ達に店をキャンセルさせようかと思ったが、もう一時間前なので断念した。

 食べ尽くした当の本人は皿洗いをしながら実に満足そうだ。

 

「はぁ〜。お腹いっぱいで幸せっす〜」

 

 飢餓を体験したラビからすれば、満腹になる環境とか楽園である。

 

「食べっぷりが見てて気持ち良かったから次々と盛ってた私やラクスが言えたことじゃないが、大丈夫か?」

 

「はい! これくらいニ、三回出撃すれば、むしろ痩せるっすよ!」

 

「痩せるか!」

 

 デタラメを言うラビにルナマリアがツッコんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュラ・サーペンタインはオーブに拘束されてからというもの、退屈である事を除けば悪くない待遇で過ごしていた。

 読心能力がある為、下手にオーブの情報を持っている人物を接触させる訳にもいかず、人道的な観点から乱暴に扱われる事もない。

 また、他のファウンデーションの者と徒党を組まれても面倒なので、基本的に仲間との接触も殆ど無い。

 彼らの今後は裁判で、責任は誰に有るのか時間をかけて議論される事だろう。

 それまで彼は定期的な取り調べと自由時間を交互に過ごしていた。

 そんな彼の部屋に、音が鳴る。

 

(そろそろ取り調べの時間だったか)

 

 毎回同じような質問を言い回しを変えて行われる取り調べにうんざりしてきたが、敗者である自分は大人しく従うのみだった。

 扉が開くとそこには意外な人物が入ってきた。

 それは、自分を打ち負かした少女。

 

「ラビ・トーチス……」

 

 彼女は眉間にしわを寄せた不機嫌な表情でシュラを見ている。

 そしてこう吐き捨てた。

 

「なんであたしより優雅な生活送ってんすか! ありえないっしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ。

 

 

 朝、キラはベッドの上で目が覚めた。

 同じベッドでラクスも横で寝息を立てている。

 しかし、昨晩酒を飲んだ影響で頭が上手く回らない。

 昨日は楽しかった。

 シンやムウから事件後のコンパスの事について聞き、逃げるように去ってしまった事を謝罪すると、二人は快く許してくれた。

 途中でカレッジからの付き合いであるサイ・アーガイルもやって来て、久々に話せて嬉しかった。

 互いの近況を話したり、メールでいつも素っ気ない返信ばかりなのを愚痴られたり。

 ラクスと二人っきりの時とは別の幸福感。

 だからかついつい飲み過ぎてしまった。

 カガリやエリカから回された仕事があるが、今日終わらせなければならない急ぎの物でもないし、今日はアルコールが抜けるまでゆっくり起きてもいいだろう。

 だから目蓋を落としてもう一度眠りに落ちようとする。

 

『だ……ど……器……あ……』

 

「ん……?」

 

 なんだろう? なにか聴き覚えのある声がする。

 

『ラクスの愛だっ!!』

 

 頭にモヤをかけていたアルコールが一気に吹き飛んだ。

 起き上がると、ラクスが抱えている今時珍しい針型の時計から流れている。

 もう一度リピートされると横で寝ていたラクスが目を開けて起き上がる。

 

「おはようございます、キラ」

 

 と、いつもと変わらない笑顔で挨拶するラクス。

 時計を操作すると、ようやく自分の声のリピートが終わる。

 

「ラクス……それ……」

 

「はい。昨日ラビからいただきましたの。とても良い物ですわ」

 

 とても良い笑顔で返された。

 キラは自分の携帯を手にしてラビに繋ぐ。オーブに居るなら繋がる筈だ。

 

『もしもーし。ヤマト隊長? もう昼前っすよ。起きるの遅いっすね』

 

「ラビ。君どういうつもり?」

 

 その質問だけで意図が伝わったのか、少し間を置いてから真面目な声を出す。

 

『あんな台詞、女の子なら言われてみたいじゃないっすか。だからつまり。うん。心に震えたあの感動を総裁にも聴いて欲しくて────あ、そろそろ取り調べが始まる時間なんで。失礼するっすー』

 

「ちょっ! ラビ!」

 

 そのまま切られてしまった。

 

「キラ?」

 

 ラクスが抱える太った猫の時計を見る。

 職権濫用と言われようが、この件は本人に必ず追及しようとキラは心に決めた。

 

 

 

*1
常備品です

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