ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件   作:ブルーコスモスへの鎮魂歌

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ラビに対する周囲の印象。
キラ=悪い子じゃないんだけど、ちょっとなに考えてるのか分からない。
ラクス=自分とは違う視点や考えを持った人。なんか餌付けというか、食べ物をあげたくなる。
シン=危なっかしくて放っておけない奴。
ルナマリア=もうちょっと落ち着きを持ってほしい。
アグネス=嫌ってはいないが理解不能な生き物。
ヒルダ=犬とか猫とかみたいで見てて飽きない娘。
マリュー=もうちょっと口調とか頑張りましょう。
ムウ=部下としては優秀だが、時折発揮する斜め上の行動力には呆れている。
アスラン=言動が子供っぽいな。
カガリ=良くも悪くも自分に正直な奴。その素直さが少し羨ましい。
メイリン=面白い子。見てて飽きない。



未だ変われぬ世界だけど

 ラビはキラからの電話を強制的に切った。

 

「誰からだ?」

 

「ヤマト隊長からっす。あ、すみません。電源切るんで」

 

 電源を切って懐に入れるラビ。

 何故キラがラビに連絡するのか疑問に思っていると、手を軽く振りながら答える。

 

「なんか、あたしがクライン総裁にプレゼントを贈ったのが気に入らないらしくて文句を。案外嫉妬深いんすねー」

 

「?」

 

 なんというか、アスランの中のキラのイメージと行動が一致しない事に首をかしげていると、メイリンだけは苦笑している。

 

「ま、前みたいに変にへたれられるより全然マシっすけどね」

 

 ラクスはキラではなくオルフェを選んだだの、自分では幸せに出来ないだのと喚かれるより余程健全である。

 いっそ微笑ましいくらいに。

 そこでちょうどカガリが待機していた部屋に入ってきた。

 

「すまない、待たせたな。取り調べの段取りが終わったぞ。ついてきてくれ」

 

「了解っす。さーってと、さっさと終わらせて、お昼にうどんでも食べに行くっす」

 

 アークエンジェルで食べたきつねうどん美味しかったなー、と思い出に浸っていると、カガリが乗ってくる。

 

「お、いいな。なら、美味いうどん屋を紹介してやるから一緒に行くか? 奢ってやるぞ」

 

「マジっすか! やりぃ!」

 

「おいカガリ……」

 

 声のトーンで注意するアスランにカガリは笑って流す。

 

「別にいいだろ、午後から私はオフだし、食事しに行くくらい。それに、仏頂面で不味くない、としか言わない奴より、うまいうまいって食べてくれる奴と食事した方が楽しいしな!」

 

 当てつけのように返すカガリにアスランは視線を逸らす。

 以前に未知の料理に意地になってた意趣返しになってしまった。

 カガリからしても、ファウンデーションの事件もようやく後処理に終わりが見え始めたのだ。多少肩の力が抜けるのも仕方ない。

 

 先ず案内されたのは、シュラの部屋を監視しているモニタールームだ。

 なにやら本を読みながらお茶を飲んでいる囚人が映されている。

 

「なんという高待遇……羨ましい……」

 

「おい」

 

 ラビの呟きにアスランがツッコむ。

 だがそれも仕方ない。

 ラビはファウンデーションがやってくれた騒動の後始末に地球やら宇宙やらでスクランブルし続けたのだ。

 その元凶の一人がVIP待遇で茶を飲んでるのを見て、不満を溢すなというのは無理がある。

 

「一言文句言ってやる」

 

 目が据わった状態で小さく呟くラビ。

 それを聞いていたカガリが苦笑した。

 

「しょうがないんだ。心が読まれるから下手に誰かと接触させる訳にはいかないし、乱暴に扱って抵抗されてもな」

 

「それは、わかるっすけどぉ……」

 

 不満を隠せないラビにアスランが指示を出す。

 

「それじゃあ、部屋に入って取り調べを始めてくれ」

 

 今更新しい情報が出てくるとも思えないが、やっておいて損はない。

 耳に付けるタイプの通信機器を渡されて部屋に入るラビ。

 すると部屋の中で驚いた表情をしたシュラが座っている。

 とにかく、言ってやりたい事は決まっている。

 

「なんであたしより優雅な生活送ってんすか! ありえないっしょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、君がここに来るとは思わなかった」

 

「あたしもまさかこんな役目を任されるなんて思わなかったっすよ」

 

 やや不貞腐れた感じに返すラビ。

 手にはカガリから渡されたカンペ、という名の質問して欲しい事が書かれている。

 

「こっちはこの一ヶ月、スクランブルと出撃とか発進とかテロ鎮圧とかで死ぬほど忙しかったのに、そっちは暇そうでいいっすー」

 

 嫌味っぽく言ってくるラビにシュラは肩をすくめて流す。

 

「俺としては暇を持て余し過ぎて、そちらの方が楽しそうだがな」

 

「ぶっ飛ばしてやろうかコノヤロ」

 

 誰のせいでこんなブラック労働を強いられてると思ってるのか。

 世界が悪い? そうだねー。

 怒りを鎮める為に一度話題を逸らす。

 

「それにしても、外も中も全然刑務所らしくないっすよね、ここ」

 

「元々、セイランという家が保有していた建物を急遽改装して使っているらしいからな」

 

 この建物はオーブに元からある刑務所ではなく、前にザフトが攻撃してきた時に亡くなったセイラン家が所持していた屋敷の一つだ。

 当主と跡取りが亡くなり、残された遺族が持て余した建物をカガリが買い取る形で引き取り、ファウンデーションの人間を収容していた。

 流石に引き取ったファウンデーションの人員全てをオーブの刑務所に入れるなんて不可能だし、そんな事をしたらオーブ国内の犯罪者を収容出来なくなる。

 ちなみにシュラが知っているのは心を読んだ訳ではなく、監視を任されている者に聞いたらしい。

 

「さて、始めますか」

 

 カンペに書いてある質問をする。

 そのどれもが、ここに来て何度もされた質問であり、シュラの方も同じように答えたようだ。

 この問答に飽きたようにシュラが話す。

 

「しかし、毎回毎回同じ質問をするな」

 

「まぁ、その場限りの嘘だったり、なにか思い出したりしたかもしれないっすからね」

 

 即興の嘘なら繰り返し質問をする事でボロが出るし、後々になってなにか思い出す可能性もある。

 戦時中ではないのだ。真実をゆっくり解き明かす必要があるのだ。

 全ての質問を終えるとラビの方から話しかける。

 

「気になってたことがあったんで個人的に質問していいっすか?」

 

「君個人の質問か。これまでの取り調べよりは退屈しなさそうだ」

 

 本当ならあの戦場で聞きたかったが、死に物狂い過ぎてそれどころではなかった。

 

「うん。あなたにとって、デスティニープランってなんすか?」

 

「……」

 

「月で戦った時、サーペンタインさんからデスティニープランを成し遂げようって感じじゃなかったっすから。まぁ、こっちは助かったっすけど」

 

 あのままキラの乗るフリーダムを狙われ続けたら、詰んでいた可能性が高い。

 少なくともラビと決闘を演じるメリットはないだろう。

 それも味方からのミサイルを破壊してまで。

 

「……」

 

 二人を挟んでいる机を数回指で叩いた後に口を開いた。

 

「そうだな。確かに俺はあの時、自分達の勝利よりも君との闘いに固執した。邪魔されたくなかったからな」

 

 団長という立場にありながらそれら全てをかなぐり捨てるような行動。裏切り行為といってもいい。

 どうしてそんな行動を取ったのか。

 

「母上の望みとギルバート・デュランダルのデスティニープランを実行する為に俺達は生まれ、育てられた。子供の頃は、母上が望んだプランを叶えたかった」

 

 母であるアウラへの親孝行の気持ちから始まった。

 

「俺達は人類の中で最高の能力を与えられ、だからこそ世界に利益を与えなければならない。母上は常々そう言っていた。デスティニープランはその為の最も最適な計画だと次第に俺達も思うようになっていった」

 

 だから、最も優れた人類である自分達が世界を導くのだと信じてきた。

 

「俺は戦士としての最高の素質を与えられ、それに沿った教育や訓練をしてきた。負けることは許されず、ありえない、と。俺もそれを当然だと思って生きてきたしな。たとえキラ・ヤマトが相手でも負けることはないと」

 

 勝つ為に存在した自分。

 そんな自分に土をつける存在が現れた。

 

「月での闘いで俺にあったのは、君に勝ちたいという意思と、この闘いをずっと続けたいという昂揚感だけだ。それに比べれば、デスティニープランも母上の望みを叶えてやりたいという目的も、あの時はどうでも良く思えた。本心を言えば、俺にもまだはっきりとまとめ切れてないな」

 

 デスティニープランがこの世界に未だ必要なのか。

 それとも、このまま消えてなくなるべき計画なのか。

 聞き終わったラビは息を吐く。

 

「なんだってあたしとの決闘(タイマン)なんかに固執したんだが」

 

「そうだな。俺も不思議に思う」

 

「聞きたいことは聞けたし、ここまでっすね」

 

 ラビは耳に付けた通信機に触れて外と連絡を取る。

 ここを逃せば、次に会えるのかも分からない。

 それが少しだけ惜しくて。

 

「ファウンデーションの城の地下には、俺達アコードと母上だけが入れる特別な部屋がある」

 

「は?」

 

 突然明かしてきた情報にラビが大きく口を開ける。

 

「核でも吹き飛んではいない筈だ。あそこには、母上がメンデルを去る時に持ち出せた研究資料の一部と日記などが残されている。それには姫────アコードであるラクス・クラインが何故我らの下を去ったのかも記されている筈だ。母上側の視点からだがな」

 

「いやいやいや!? なんでいきなりそんな情報話すんすか!?」

 

「元々は、ここでの生活でオーブがあまりにも不当な扱いをするのならと交渉材料に取っておいた情報だ。思った以上に待遇が良くてな。そろそろ話そうとは思っていた。で、だ。俺の個人的な要求を一つ聞いてくれるなら、中に入るパスワードを開示しよう。時間をかければ解除出来るだろうが、そちらも余計な時間はかけたくあるまい」

 

 下手な方法で扉を破壊すると、中の情報も吹き飛ぶ可能性がある。

 ラビは面倒そうに立ち上がって、カガリに連絡を取る。

 

「アスハ代表」

 

『聞いていた。取り敢えず、向こうの要求を聞いてくれ。そうじゃなきゃ決められない』

 

「そうっすね」

 

 厄介な事になったなー、とラビはシュラの方に向き直る。

 

「で? なにがお望みっすか?」

 

「決まっている。俺は────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっきとは別の、運動するのにちょうど良い広さの部屋に移動させられていた。

 ラビとシュラの手には、刃引きされた剣が握られている。

 シュラが要求した内容は、もう一度ラビと剣で闘いたいというモノだった。

 

「なんだってこんな提案を? もったいなくないっすか?」

 

 頼み事ならもっと良いのがあったろうに。

 疑問に思っていると、シュラがワクワクと笑みを浮かべる。

 

「やはり、君とは(コレ)で語り合うのが一番いい。それにこの一ヶ月、あの夜を思い起こさなかった日はなかったからな」

 

 シュラの返しに暇人めと毒づく。

 まるで大人が青春を取り返すみたいだなと思った。

 部屋のスピーカーからカガリの声が響く。

 

『どちらかが一撃を当てたら終わりだ。それと、致命傷になる部分は避けろ。医者は用意してるが、刃引きしてるとはいえ当たりどころが悪かったら最悪もあり得るからな!』

 

「はいっす」

 

「了解した」

 

 二人が同時に答える。

 始める前にシュラが質問してきた。

 

「一つ聞いておきたいことがある」

 

「なんすか?」

 

「この試合、俺が勝っても構わないか?」

 

 それはシュラと闘う時にラビが口にしていた質問。

 驚きから瞬きした後に、ハッ、と笑いが漏れる。

 

「とーぜんっすよ! もし手加減なんてしたら、終身刑にしてやるっす!」

 

「ならば、全力でやらせてもらおうか!」

 

 動いたのはシュラの方からだった。

 振るわれた剣を防ぐ。

 

「随分、殊勝なこと言うようになったじゃないっすか! どういう心境の変化!」

 

 シュラを弾き、追撃をかけると、ラビの振るう刃を避ける。

 

「なにせ、剣でもモビルスーツでも、俺を負かしてプライドをへし折ってきた女が居たのでな!」

 

「そりゃまた、ひどい奴も居たもん、だっ!」

 

 シュラ連撃を防ぎ、躱すラビ。

 

「まったくだ! だが、挑戦者という立場も悪くない! 今度こそ勝たせて貰うぞ! ラビ・トーチス!」

 

「やってみろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラビとシュラの剣での試合を始めて一分経った。

 モニター越しにそれを観ているが、両者共にまだ一撃を喰らう様子はない。

 それに魅せられているカガリの肩をアスランが掴む。

 

「おいカガリ」

 

「あ? あぁ……悪い、ボーッとしてた」

 

 あくまでもシュラが提示した条件はラビとの試合であり、試合の勝敗ではない。

 だから、話を受けた時点で情報の入手は決まっている。確認もした。

 これからまた忙しくなるな、とカガリは息を吐いた。

 

「楽しそうだな、あいつら」

 

 シュラはもとより、ラビも剣を振るいながら小さく笑っているのが見える。

 まるで幼い子供が怪我を考えずに好き勝手遊んでいるような、そんな笑みを二人は浮かべている。

 

「おいラビのやつ、逆立ちして腕の力だけで1メートルくらい跳んだぞ。どういう腕力してる」

 

 逆立ちから跳んだラビが体勢を立て直しつつぐるりと回転して剣を振るう。

 互いにまだ一撃が当たる様子はない。

 この闘いがいつまでも続きそうなくらいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(剣の扱いが更に上手くなった!)

 

 ファウンデーションで剣を交えた頃より明らかに剣の扱いに慣れた動きをしている。

 一見目茶苦茶に見えても、しっかりと慣らされた動き。

 思考を読んでいては間に合わない速度。

 やはり彼女と剣を交えるのは楽しいと実感する。

 

(だが!)

 

 小さく、そして鋭く剣を振るって徐々にラビを追い詰める。

 この一ヶ月、ラビの動きをずっとイメージトレーニングして対策してきた。

 それが功を奏し、前回より確実に動きが読めた。

 少しずつ下がっていくラビに、シュラは勝ちを予感させる。

 勝ちたいという気持ちと、まだ上を見せて欲しいという矛盾を抱えながら剣を振るう。

 するとラビが突然背を向けて壁に向かって走り出した。

 そのまま壁を三メートルほど上に走り、膝のバネで横に跳ぶ。

 

「は……!?」

 

 奇怪な行動に呆けたのは一瞬。何をするのか理解して構える。

 シュラの頭上を取ったラビがそのまま落下。

 自身の体重と筋力を合わせて剣を振り下ろす。

 

「ラァッ!」

 

 剣の衝突音。

 ラビが後ろに跳んで着地すると、シュラの剣が砕けた。

 それを見て、ラビが大きく息を吐く。

 

「今回は流石に負けるかもって思ったっす……」

 

 自分の肩を揉んで首を回していると、シュラが残念そうに息を吐いた。

 

「今回も俺の負け、か……」

 

「うっす。情報の方はお願いするっす」

 

「分かっている。今回は自信があったのだがな」

 

「時間が出来たらまた来るんで、そん時はまた闘りましょ。あたしも楽しかったし」

 

 ラビの言葉に折れた剣を見つめていたシュラが顔を上げた。

 彼女は屈託のない笑顔で手を振っていて。

 

「またっす」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから今度こそラビはオーブで休暇を十日間満喫した。

 その間、オーブの首都オロファトを中心に飲食店でやっていたチャレンジメニューを、金髪に前髪の一部を緑に染めた十代半ばくらいの女の子が軒並み制覇していき、一種の都市伝説になったとかならなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休暇を終えて、ミレニアムのオーバーホールも完了し、長らく不在だった総裁ラクス・クラインとキラ・ヤマト准将の復帰。

 ラクスは通信越しから長らく職務を空けていた事への謝罪。

 キラも主なクルーを集めて復帰の謝罪と挨拶を済ませる。

 これにシンや開発陣のメンバーは諸手を上げて歓迎した。

 なんやかんやでハインライン大尉との緩衝材として怒鳴られる回数が減るからである。

 そしてミレニアムにモビルスーツが配備される。

 

「デスティニー!」

 

 ミレニアムの格納庫にはデスティニーやドラグーンの仕様に戻されたストライクフリーダムなどが並んでいる。

 ファウンデーションとの戦いが終わった後に、カガリが各国に掛け合って、コンパスでの核動力機の機体使用の許可を認めさせた。

 プラウドディフェンダーもフリーダムと一緒に戻ってきたが、技術の流出を恐れて、装備には総裁であるラクスの許可が必要と制限を設けた。

 そして、搬入されたモビルスーツの中には────。

 

「コレ、ホントにあたしが乗っていいんすか? っていうか、コンパスで使っても大丈夫?」

 

 ブラックナイトスコード・ルドラ。

 あの戦いでラビが奪ってきた機体が並べられている。

 この休暇中に破壊されていたルドラの解析もようやく完了して修理を終え、パーツの生産ラインを整えた。

 それにしても、奪った機体をそのまま使用するとか大丈夫なのだろうか? と疑問が浮かぶ。

 コクピットに乗ってシステムの確認しているラビに、キラが答えた。

 

「そこら辺はカガリ────アスハ代表が頑張ってくれてね。書き換えたラビ用のOSと機体との間にあったバグは、こっちで修正しておいたから、もうマシントラブルなんてことは起きない筈だよ」

 

 食事会の時に言っていた報酬(プレゼント)とはこのモビルスーツの事だったらしい。

 

「機体の使用に関してはまぁ……こういう事はあんまり言っちゃいけないんだけど、奪ったモビルスーツを運用するとかは、はっきり言って何処もやってるしさ」

 

 キラ自身もラクスの手引きがあったとはいえ、かつてプラントからフリーダムを盗んで長い事搭乗していたのだ。

 ヘリオポリスでザフトが初期GATシリーズを強奪したり、連合もザフトからセカンドシリーズの機体を強奪した。

 ファウンデーション王国が現在壊滅状態な事もあり、いちいち文句を言ってくるところは少ない。

 

「それはそれとして……ラビ」

 

「はい?」

 

「あの目覚まし時計はどういうつもりかな?」

 

「あ」

 

 ラクスにあの目覚まし時計を渡した段階でもう目的は達した物としてすっかり忘れていた。

 

「クライン総裁、気に入ってくれたでしょ?」

 

「そうだけど……通信記録を外に持ち出すのはダメだよね?」

 

「あんな会話のどこに軍事的重要な要素があるんすか。それに、元々ヤマト隊長があたしからの救難信号(SOS)を無視したのが悪いんじゃないっすか」

 

 その件に関してはムウから散々ラビに愚痴られたと聞いた。

 流石にそれには負い目があるのでキラの勢いが削がれる。

 

「それは謝るけど。まだなにかやろうとしてないよね?」

 

「まさか。これでもあたし、ヤマト隊長のことは尊敬してるんすよ」

 

 尊敬してる人への対応じゃないよね! と返そうとしたら、艦内に緊急警報が鳴る。

 

『コンディションレッド発令! コンディションレッド発令! パイロットは速やかに機体に搭乗してください!』

 

「うわ早速!?」

 

 今度は何処の馬鹿が暴れてんのかなー、とパイロットスーツを着る為にコクピットから出る。

 

「これに関しては後で問い詰めるからね」

 

「了解っす……」

 

 キラもパイロットスーツを着る為に、ルドラから離れる。

 手早くロッカールームでパイロットスーツに着替えて再び機体に乗り込んだ。

 今回の敵はブルーコスモスで、現在ザフトが建造途中の宇宙ステーションに攻撃を仕掛けているとの事。

 ミレニアムで急行し、速やかに無力化する必要がある。

 移動する中でキラがパイロット達に指示を出す。

 今まではキラが一番危険な戦場を請け負い、部下は後詰めのような指示だったが、今回はシンと二人一組とする。

 今回、ラビの役目はヒルダと一緒にミレニアムの護衛である。

 戦闘区域に近づき、ハッチが開く。

 ファウンデーションの問題を片付けても、世界が目に見えて平和になった訳ではない。

 世界は今も混沌とし、平和は遠い。

 だけどそれは、人々がまだ出来る事。やるべき事が残っているという事だ。

 やがていつかはと夢を見て。

 だから今は────。

 

「ラビ・トーチス、ブラックナイトスコード・ルドラ。発進するっす」

 

 

 

 




これにて本作を完結とさせていただきます。
御愛読、ありがとうございました!
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