ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件 作:ブルーコスモスへの鎮魂歌
皆さんこんにちは。ラビ・トーチスっす。
ファウンデーションのテロから早半年。あたくしも晴れて先週十六歳になったっす。
ちょうど地上勤務だったので、ちょっとしたお祝いをしてもらったっす。
でもちょっと待って欲しい。
なんで揃いも揃ってプレゼントがお菓子ばっかり?
積み上がるお菓子の箱。それ以外のプレゼントがアグネス中尉から貰った香水だけってどういう事?
皆あたしには食べ物あげとけば喜ぶだろと思われてる?
その通りっすけどね!
まぁそんな訳で、ひとつ大人の女になったあたくしは現在。
ブルーコスモスに誘拐されてトラックでドライブ中っす!
数時間前。
「ミレニアムがたまたま地球に降りてて助かったー」
かつて世話になった軍学校近くの喫茶店でラビは炭酸飲料を飲みながら人を待っていた。
十五分くらい時間を潰していると、約束の人物が店に入ってきた。
「メアリー! こっちこっち!」
「ラビ!」
自分を探している軍学校時代の同期を手招きした。
「久し振り〜。卒業以来!」
「本当にね! ラビったら全然連絡くれないんだもん」
「いやー。忙しくってさぁ」
メアリーはラビが軍学校に在籍していた頃の同期で、寮でルームメイトだった少女だ。
軍人になる為のカリキュラムでお互いに助け合って乗り越えてきた。
向かいの席に座り、メアリーが話し始める。
「ラビ。ヨハンが亡くなったの知ってる?」
「へ? あいつ殉職したの!? 何処で!」
ヨハンは実技も筆記も優秀であり、トップ成績で軍学校を卒業したラビよりも二つ年上の訓練兵だ。
人当たりと面倒見が良く、当時学力不足で筆記が苦手だったラビもよく勉強を見てもらっていた。
驚くラビにメアリーは言いづらそうに言葉を濁す。
「あ〜いや……殉職じゃなくて、ね?」
その反応に大体察する。
「もしかして、痴情のもつれとか?」
ヨハンは人当たりが良く、面倒見も良い奴だったのは本当だが、下半身もかなり緩い男だった。
七股をかけてた上に、その一人が女性教官だったという噂もあった。本当かどうかは知らないが。
ラビも夜の運動に誘われた事がある。関節を極めて断ったが。
「うん。なんか、勤務先で相変わらず色んな女性に手を出してさ。上官の奥さんにも手を出して、その上官と揉めてって感じ」
「うわ〜。現場がありありと想像出来るわ〜」
「これ。同期の間では有名だよ。本当に知らなかったの?」
「知らない。そもそもつい最近まで休暇が取れる状況じゃなかったし。訓練兵を卒業した後、同期と連絡なんて取ってないもん」
卒業間近にちょうどコンパスのメンバー募集を見て、そちらの配属を希望して通った為、同期とも自然と疎遠になった。
今回、連絡が来たのも意外だったくらいだ。
「それにしてもよくあたしがミレニアムに乗ってるって判ったね」
「今コンパス所属の戦艦ってミレニアムだけでしょ。ラビはパイロットだし、もしかしたらと思って。わたしも最近ここらの配属になったから」
なるほど、と納得していると、メアリーが心配そうな目でラビを見ている。
「それより、ラビは大丈夫? コンパスでどう?」
「どうって?」
質問の意図が理解出来ず首を傾げるラビ。
「だって、ミレニアムのクルーってコーディネイターばかりなんでしょう?」
メアリーの質問にラビは頭の中で疑問符が浮かぶ。
ラビの知る限り、メアリーはこうしたコーディネイターを危険視する発言をする娘ではなかった筈だ。
まぁ、軍学校時代ではコーディネイターと接する機会がなかったし、そのせいかもしれないが。
「うん。問題ないよ。皆良い人ばかりだし。先週もあたしの誕生日にプレゼントたくさん貰った」
だから少しでも好印象を持って貰おうとして話すラビ。
それにメアリーは釈然としない表情をする。
しかしそれも一瞬。すぐに柔らかな笑顔を作った。
「それじゃあそろそろ行こうか。車出すね。今日は同期も何人か呼んでるから。ちょっと遅れたけど、誕生日おめでとうラビ」
「うん。ありがとうメアリー」
「で。まさか車の中でくれた飲み物に睡眠薬が混ぜられてるなんてねー。っていうか、メアリーがブルーコスモスとか初めて知ったよ、クソが」
眠らされてる間にトラックに移され、さっき目覚めてメアリーから簡単な状況説明を受けたところだ。
手足を縛られたラビは、他にも色々と荷物が置かれている荷台の中で、ゴロゴロと転がりながらどうしようか考える。
腕を後ろに回されて縛られてるのが面倒過ぎる。
「首を真後ろに回して噛み切るにしても流石に首まで手首を上げるの難しいしなー。いっそのこと手首の関節を外して縄抜けする? うーんでもなー……って言うか、なんであたしなんかを拉致っつえぇ!?」
思案しているトラックが急停止して壁に顔をぶつけた。
それから一分くらいすると、運転していた二人が荷台に入ってきた。
「ドライブは終わり?」
メアリーにそう話しかけるが、向こうは気まずそうにラビから視線を逸らすだけ。
もう一人のガタイの良い男がラビを抱える。
「コンパスの情報を吐いて貰うぞ、ラビ・トーチス少尉。君が賢明な人間であることを願う」
外に出されると、様々な銃で武装した男女がトラックから降りて運ばれるラビを見つつ、すれ違いざまにイワンへ敬礼をしてくる。
そして所々にしゃがんだモビルスーツに布が被せられているのが見えた。
少しでも情報を得ようと視線を動かしているとラビが、ん? と目を細める。
少し離れた位置に、人混みに紛れるようにクッソ似合わないサングラスをかけた青みのある黒髪の男性が見えたからだ。
今見た人を一旦意識から外してメアリーに視線を合わせるが、向こうはチラチラとこちらを見るだけでうつむいてしまった。
どこにでも在るバーの外観をした建物へと入ると、カウンター席で酒を飲んだりカードゲームに興じてる数名が居る。
そしてラビは建物の地下部屋まで下ろされて、部屋の隅に乱暴に下ろされた。
「せめて椅子に座らせろよ」
ぼやくと、それが聞こえたのかラビを運んだ男が鼻を鳴らす。
「予想はついてると思うが、ここは俺達が拠点に使っている町だ。今回は物資の調達を兼ねてお前さんを連れてきた。俺はここの責任者を任されてるイワンだ」
「知ってるみたいっすけど、世界平和監視機構コンパス所属のラビ・トーチス少尉っす。んで? まどろっこしいのは苦手なんで訊いちゃいますけど、あたしを拐った目的は?」
誘拐するならもっと偉い人を狙えよ、という意味も込めて質問する。
情報が欲しいらしいが、それならなおのこと下っ端のラビを狙う理由が理解出来ない。
「俺達の目的は、ラクス・クラインの暗殺だ」
「……それはそれは」
「現在、ラクス・クラインがミレニアムで地球に降りて来ているの知っている。君には、あの女のスケジュールを吐いて貰う」
ラクスは今回、大西洋連邦との会談に応じて地球に来ていた。
当然護衛はヒルダやルナマリアを中心としてガチガチに固めてある。
(ってことは、今回大西洋連邦側は少なくともこの人達と繋がってない?)
もしも今回、会談をする高官がブルーコスモス繋がっているのなら、わざわざラビを誘拐する手間をかける必要がない。
狙うなら軍事訓練を受けてないヤマト准将とかヤマト隊長とかアスハ代表の弟さんとかだろうに。
「正面から挑んで成功すると思う程、俺達も馬鹿じゃない。だから君には、ラクス・クラインの情報を吐いて欲しい」
「は? 嫌ですが? 一昨日きやが、れっ!?」
「イワンさん!?」
速攻で拒否してやると顔を蹴られた。
そのまま顔を踏んできて、苛立ちの交じった声で話してくる。
「俺達にはもう時間が無いんだ。ムルタ・アズラエル。ロード・ジブリールに続き、ミケール大佐までも失い、現在ブルーコスモスに
そして、仮に動いたとしても、コンパスや各軍が迅速に動いて無力化される。
烏合の衆と化したブルーコスモスは確実に規模が縮小されていっている。
「だからこそ、我らはラクス・クラインを暗殺し、コンパスの無力化を図るのだ。そうすれば各地の同士に希望を与えることが出来る! なにより、世界平和維持する組織のトップにコーディネイターが就くなど!」
熱くなってきたのかイワンは声を荒らげて自身の主張する。
一度クールダウンする為に大きく息を吐いた。
「三時間時間をやる。それまでに、メアリーに情報を渡しておけ。そうすれば、君の命は保証しよう。賢明な判断に期待する。君もナチュラルで在るならば。蒼き清浄なる世界の為に」
そう言い捨てて部屋を去っていくイワン。
メアリーと二人きりになるが、向こうはジーっと見てくるラビに対してやはり気まずそうにして視線を合わせない。
これでは埒が明かないし、気まずいのでラビの方から話しかける事にした。
「メアリーがブルーコスモスのシンパだったなんて知らなかったね。昔からなの?」
ラビの質問にメアリーはうつむいたまま答える。
「……半年前のファウンデーションの事件の時に、それを鎮圧しようと出撃した部隊の
ファウンデーションを止めようと動いた連合の艦隊はレクイエムで一蹴されたのは知っている。
その艦隊にメアリーの父も居たのだろう。
しかし。
「クライン総裁がファウンデーションの見解に賛同してないのは知ってるでしょう? ならメアリーがこの件に手を貸す理由────」
「そんなの、分からないじゃない!」
憤りを吐き出すようにメアリーが声を荒らげる。
「ファウンデーションの宰相がラクス・クラインは自分達の同胞だって言ってた! なら、今は大人しくしてても、いつアレと同じことをするか判らないでしょ! デュランダル議長だって、レクイエムを使ってデスティニープランを強制しようとした! ラクス・クラインが同じにならないってどうして言えるのよ!!」
どれだけ身を粉にしても。
言葉を尽くしても信じて貰えない事はある。
メアリーの主張が本人の意見なのか。それともブルーコスモスに誘ってきた者の受け売りなのかは判らない。
ただ、友人が一方的に誰かを拒絶する姿が哀しかった。
「もしも……」
だから、ラビは自分の想いを口にする。
「もしもクライン総裁……ラクス・クラインがタオ閣下やデュランダル前議長と同じになるなら。その時は、あたしが撃つよ」
「え?」
ラビの言葉が理解出来ないとばかりにメアリーは唖然とした表情になる。
「結果的に世界が平和になるとしてもさ。その過程で市民の人達が犠牲を払うような真似をするなら、あたしは絶対に許さない」
ラビは、市民を守る為の軍人を目指したのだ。
だけど現実は上の命令で民間人を焼く事を強要されるかもしれない。
先の大戦でデストロイに焼かれた町のように。
コンパスに志願したのは、市民を守る軍隊として一番の理想に近いと思ったからだ。
だけどそれを反故にするのなら。
「ラビ……?」
「覚悟はある。あたしは戦う」
市民を守るの為の軍人で在り続ける。
その芯だけは絶対に振らさない事。
それが、軍人としてのラビ・トーチスの戦い。
「もしもラクス・クラインが暴走して、市民の人達を犠牲にする命令を下すのなら。その時は、あたしがあの人を殺す……!」
ラビが目指す軍人は00のスミルノフ親子が近い感じ。