ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件   作:ブルーコスモスへの鎮魂歌

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ラビ・トーチスは十六歳になりました。【二】

「遅い! なにしてるのよあの子は!」

 

 夜になっても帰って来ないラビ・トーチス少尉にアグネスは苛立ちを隠さずに居た。

 

「夕方には戻って来る予定だったのに、連絡もつかないってどういうことよ!」

 

 地球の大西洋連邦に所属基地に在籍しているミレニアム。

 この基地はラビが通っていた軍学校が近く、その縁で旧友から連絡が入ったらしい。

 半日だけ、という条件付きの休暇を見事に無視され、そのせいでスケジュール変更の煽りを喰らったのがアグネスだった。

 

「まぁ、久し振りに旧友に会うらしいし。楽しんでるんじゃない?」

 

「だからって連絡一つ入れないのはおかしいでしょ!」

 

 アグネスを宥めるルナマリアだけ、向こうの言い分が至極真っ当なのでラビに対してのフォローをやめた。

 というか、この時間まで一切連絡がつかない事に違和感を持ち始めてもいる。

 そろそろなにかしらの行動を取った方が良いかもしれない。

 そんな事を考えていると、一人考え事をしているシンの方に視線を移す。

 

「どうしたの? シン」

 

「あ、いや。今回の作戦さ。正直コンパス(俺達)要るのかなって」

 

 ブルーコスモスが拠点にしているらしい場所とこの基地の戦力を比べても、どう見てもこの基地の戦力の方が勝っている。

 もちろん戦闘になれば損害は出るだろうが、ここの戦力で排除出来るくらいの戦力差だ。

 シン・アスカは戦争を嫌っている。いっそ憎んでいると言ってもいい。

 だから、誰かが争いに巻き込まれると知れば、地球だろうと宇宙だろうと出撃する覚悟は常に持ち合わせている。

 しかし、だからと言って自分達で対処出来る事案まで持ってこられるのは疑念が出る。

 シンの疑問にルナマリアも同意する。

 

「それも、総裁まで呼んでね。名目上は不安が募ってる市民への慰安目的って話だけど」

 

 本来ならそれとなく断りを入れられる話だったが、今回は色々と間が悪かった。

 

「ま、断われないわよね。一度自分の立場から逃げた身としては」

 

「アグネス!」

 

 ラクスに対する誹謗中傷とも取れる発言をルナマリアが強い口調で咎める。

 ファウンデーションとの戦いの後、一ヶ月程行方を眩ませていたラクス・クライン。

 職務復帰した後に、ファウンデーションに監禁されていた精神的負担から療養していたと説明されたが、戦後処理を全て丸投げしていたのだ。

 行方不明の後に当然のように同じ席に座る彼女に良い感情を持つ者ばかりではない。

 だが、コンパスという組織自体が平和の為に立ち上がったラクス・クラインという人物への信頼という名の担保で成り立っている部分もある。

 それにヒビが入った現状では、今回の要請も無下には出来なかった。

 面白くなさそうに鼻を鳴らして自販機で飲み物を買うアグネス。そこで艦内放送が流れた。

 

『ヤマト准将以下、パイロットの方々は至急ブリッジへ。オーブのザラ一佐から極秘回線での暗号通信が送られてきました!』

 

「アスラン?」

 

 意外な名前が突然艦内放送から流れて、シンとルナマリアがお互いに顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、アスランからの暗号通信の解読は終わった?」

 

「はい。読み上げます。ラビ・トーチス少尉をブルーコスモスの拠点で捕らわれているのを発見。こちらで救出を試みるとのことです」

 

「えぇ!?」

 

「はぁっ!? なんで!」

 

 アビーの読み上げにアーサーとシンが同時に驚きの声を上げる。

 友人に会いに行くと出かけてなんでブルーコスモスの拠点で捕らわれているのか。

 理由が分からず混乱する。

 ハインラインがキラの方を向いて意見を述べる。

 

「准将。トーチス少尉がブルーコスモスのスパイだったという可能性は?」

 

「えぇ~っ!?」

 

 ハインラインの意見にアーサーが更に驚きを上げた。

 ラビ・トーチスという少女とスパイ、という職業がどうしても結び付かないからだ。

 

「それは無いと思いますけど……」

 

 キラも苦笑して否定する。

 コンパスを裏切る機会はいくらでもあったろうし、接触の仕方が不自然過ぎる。

 あの少女は良くも悪くも腹芸に向かないのだ。

 それに、それなら送られてきた暗号文に、捕らえられているとは書かないだろう。

 そこでラクスが発言。

 

「とりあえず、ラビの救出はアスランに任せましょう。どの道今はわたくし達も勝手に動くことは出来ません」

 

 ブルーコスモスの拠点に勝手に向かってラビの救出に動く訳にはいかない。

 そこでヒゲの描かれたハロがキラの足下を転がる。

 

「ゼッコーチョー!」

 

 このヒゲの描かれたハロ。ラクスが職務復帰した後に一度返却されたのだが、その後もラビについて回り、部屋にまで居座っている。

 それで結局ラクスからラビに託される事となった。

 キラの足下を転がるハロの行動がラビを助けに行くように催促しているように見えた。

 

「この基地の方々に相談してから行動を決めましょう。それまではアスランからの連絡待ちになりますが」

 

 そう言ってラクスはキラの足下を転がるハロを拾いあげてそのボディを撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メアリーはラビとの会話を終えた後に逃げるように部屋を出ていた。

 もしもラクス・クラインが暴走したら、その時は自分が殺す。

 ラビはそう言った。

 

(本気、かな?)

 

 本気なのだろう。軍学校時代に知り合い、親友と呼んで良いくらいに仲が良かったから理解(わか)る。

 その言葉の奥にある意味も。

 ラビはもしもメアリー達が市民に手を出したら、その時はメアリー達も殺すと宣言したのだ。

 昔から武装組織が無抵抗な市民を攻撃する事に強い嫌悪感を持っていた。

 

「……」

 

 小さく息を吐く。

 正直に言えば、メアリーはラビを引き込めると思っていた。

 ニュートロンジャマーを最初に使われた町の生存者。

 その投下を決めたシーゲル・クラインの娘であるラクス・クラインの暗殺。

 エネルギーが使えない町でどんな地獄を見たのか、メアリーは知らない。聞いた事もない。

 だからこそ、ラクス・クラインの暗殺に乗ってくると思ったのだ。

 

「馬鹿ね。そんな筈ないのに……」

 

 市民を守る軍人になる。

 その想いだけで変わらず今も軍人を続けている。

 私怨に駆られる事なく。

 そこまで考えていると、一人の青年が現れて話しかけてきた。

 

「姉ちゃん!」

 

「ヴィンセッド……」

 

 煉瓦のような赤茶色の髪を持った、見た目二十歳くらいの青年。

 彼はその容姿とは裏腹に純心な瞳でメアリーを見る。

 

「姉ちゃん、どうしたの? どっか痛いのか?」

 

「ううん。大丈夫。ちょっと喧嘩しちゃって」

 

 ヴィンセッドと呼んだ青年は、連合が進めていた薬物投与による強化人間。エクステンデッド。

 正確には、その失敗作。

 前身であるブースデッドマンより安定性はあるが、パイロット能力も安定性もエクステンデッドに劣る。

 中途半端な仕上がりで放置されていたところをここのリーダーであるイワンに連れられてここに居る。

 年下のメアリーを姉と慕うのは、彼の記憶の断片から姉の面影をメアリーに見ているからという事らしい。

 それにより、ヴィンセッドの精神は以前より大分安定したとの事。

 彼の世話は、メアリーの仕事の一つだ。

 

「喧嘩? 姉ちゃんが連れてきた奴になにかされたの!?」

 

 この反応はマズイとメアリーは慌てて訂正する。

 

「なんにもされてないわ。ちょっとした意見のすれ違いでね」

 

 そう言ってメアリーはヴィンセッドの肩に手を置く。

 

「作戦も近いし、補給も届いたから! 私がなにか美味しい物でも作ってあげる! ほら行くわよ!」

 

「うん……」

 

 こうして姉のように振る舞うのもメアリーの役目。

 メアリーに手を引かれる間、ヴィンセッドはラビが閉じ込められている部屋を睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、マジでどうするよ? この状況……」

 

 閉じ込められている部屋を左右に転がりながらどうするか考える。

 

 時間は凡そ三時間しかない。

 それまでに拘束を解いて逃げ、コンパスと連絡を取りたい。

 

「ん?」

 

 部屋を転がっていると、お尻の辺りに硬い物が当たる。

 後ろに回されている手で拾い、形状確かめると、ラビは口元をつり上げる。

 

「なんとかなるかな?」

 

 とにかく出来る事は全部やるのだ。

 三十分程、逃げる為の作業をしていると、部屋のドアノブが回る音がした。

 メアリーが戻ってきたのかな? と考えて、後ろを見られないように体をドア方向に転がす。

 入って来たのは煉瓦のような赤茶色の髪をした男性だった。

 

「だ……づっ!?」

 

 誰? と訊こうとしたら突然蹴られた。

 

(今日はよく蹴られるなぁ……)

 

 そんな事を考えると、男性がラビの胸ぐらを掴んで起き上がらせる。

 

「お前ぇ……姉ちゃんになにをしたぁ!」

 

「は?」

 

 質問の内容が理解出来ずに呆けていると、腹を殴られた。

 

「姉ちゃんにあんな顔させやがって! お前のせいだ! お前のせいだぁあああっ!!」

 

 男性の憤怒の声を上げつつ、縛られているラビの体に暴力を振るってくる。

 何度も壁に叩きつけ、顔を殴り、膝で腹を蹴る。

 

「謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ謝れ謝れぇえええぇええっ!!」

 

 暴行を加えながら謝罪を要求する男。

 その暴力が一旦止むと、ラビが呟く。

 

「十六回っす……」

 

「あん?」

 

「それより、その手を放して離れた方がいいっすよ。危ねーから」

 

「お前なに言っづえっ!?」

 

 突然男の顔に襲う痛みと衝撃。

 押さえつけられていた壁の反対側のドア近くまで殴り飛ばした。

 

「あたしがぶん殴るからに決まってんだろ、ばーか」

 

 両手が自由になったラビは縛られている足首の縄も力づくで解く。

 よろよろと立ち上がろうとするが、顎に良いのが入ったらしく、すぐに尻餅をつく。

 

「おま……なん、で……?」

 

 男の質問にラビは握っていたコンクリートの破片を見せた。

 それでずっと縄を擦っていたのだ。

 切れ目さえ出来れば、後は力づくで引き千切ればいい。

 

「転がってたっすよ。掃除はもっときっちりしようぜ?」

 

 馬鹿にするように鼻で笑ってやる。

 殴られた顔を痛そうに擦る。

 

「ったく。十六回も殴りやがって。こっちはあんたの姉ちゃんとか知らねーっての!」

 

 そこで立ち上がった男を見て、余裕の笑みを浮かべてやった。

 

「まぁ、あたしはこう見えて優しいっすから? 後十五発で許してやるっす!」

 

「お前ぇっ!!」

 

 激昂した男が襲いかかる。

 突き出してきた拳に対して左腕でガードする。

 

「ボデーがお留守っす!」

 

 腰を捻って右フックを男の肋に打ち込む。

 

「ぐえっ」

 

 小さく呻いている間に体を沈ませて、相手の顎に向かって跳び、体全体の左アッパーを喰らわせる。

 相手が完全に倒れる前にラビは追いつくように降下し、その顔面に上から拳を叩きつけた。

 

「くたばれ!」

 

 大きな音を立ててバウンドする男性にラビは煽るようにシャドーボクシングの動きをする。

 

「十年遅いんすよ」

 

 そう言って指で殴った回数を数える。

 

「よし。残り十二発────って伸びちゃってら……」

 

 これでは殴っても仕方ない。態々起こして殴るのも面倒だ。

 

「サーペンタイン団長に比べたら遅いったら。縛られてる女の子しか殴れないとかなっさけね」

 

 そんな風に愚痴っていると、外からこの部屋に向かってくる足音が二人分聴こえる。

 

「騒ぎ過ぎたかな……」

 

 ラビは今後の行動を即決める。

 

(入って来た瞬間に一人を殴り飛ばして。驚いてる間にもう一人を片付ける! その後はモビルスーツとか奪って逃走! よし! 完璧な作戦!)

 

 考えを纏めている内にドアノブが回る音がして、ラビはドアの前で右腕を後ろに引く。

 そして、ドアが開く瞬間を狙って拳を突き出した。

 

「動く、ばぁっ!?」

 

「ありゃ?」

 

 ラビが全力で放った右ストレートは、アスラン・ザラの顔面に炸裂した! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんとーにすんませんしたっす……!」

 

 さっきとは別の部屋で、不機嫌そうに殴られた頬を擦るアスランに、ラビは両手を合わせて謝罪していた。

 話が進まないからと、メイリンから苦笑しつつ助太刀が入る。

 

「アスランさん。時間も無いですし」

 

「分かっている。まったく、君の方も俺に気付いていただろうに……」

 

「あ〜はい。一人だけ顔面偏差値が全然違ったんで。それにほら! カッコいいサングラスもかけてるし?」

 

 とにかく褒めちぎって少しでもご機嫌を取る作戦に切り換えるラビ。

 潜入の為なのか、周囲と同じようなヨレヨレのシャツに薄汚れたボロボロのズボンやジャンパーを羽織っている。

 ただ、生来の顔立ちというより、肌や髪の艶とか、立ち振る舞い。普段の生活で身に付いた品の良さ、とでも言えば良いのか。そういうのが周囲に全然違うのだ。

 河原にある数多くの石の中で宝石が混じってるくらいには目立つ。

 

「そ、それよりお二人はなんでここに?」

 

「……最近、この近くで急激に物資が集められてるとターミナル経由で報告が上がってな。調べていたんだ」

 

 そう言ってアスランはテーブルにここら周辺の地図を広げる。

 

「元々ここは、ロゴス狩りのゴタゴタでブルーコスモスに占拠された町だ」

 

「はい。あたしそん時、ここに近い軍学校に通ってたんで、大体事情は知ってるっす」

 

 ここら辺は元々、ブレイク・ザ・ワールドの被害は小さく、当時再戦となった地球連合とザフトの戦争も小競り合い程度で済んでいた。

 これは当時のデュランダル議長が積極的自衛権を謳って領土拡大を狙わなかった事も理由にある。

 だが、デストロイによる複数の都市の壊滅。その後にデュランダル議長により公表されたロゴスの存在。

 そこから始まったロゴスという名の魔女狩り。

 

「あの公表のせいで地球連合軍=ロゴスの下っ端っていう印象まで付いて、あたしらも肩身狭かったっす」

 

 当時の事を思い出して溜息を吐く。

 故に自分達はロゴスではないという証明の為に反ロゴスとしてデュランダル議長の下に就いた連合兵も少なくなかった。

 

「そうだ。だが当時この町の……というより、この町に繋がる基地の責任者はブルーコスモス。それもロゴスと繋がりを持っていた」

 

「つまり、占拠されたというより、元々ブルーコスモスの責任者が自分と同じ思想の人達を集めて連合を抜けた、て事っすか?」

 

「うん。調べた感じね。でもやっぱりコーディネイターよりロゴスの方が許せないって、反ロゴスに就いてヘブンズベース攻略に合流した人も多かったみたい」

 

 それだけ、戦争を煽るロゴスという存在を世間は許さなかった。

 

「とはいえ、つい最近まで物資を奪うなどの山賊行為で物流の問題は起こしていたが、そう大きな問題じゃなかった。周囲の軍施設も、復興を優先してここの奪還を後回しにしていた、と思っていた。しかし、理由は不明だが、占拠されている基地には周囲の別基地が手を出し難い兵器が眠っていた」

 

「兵器?」

 

 アスランは眉間のしわを深くして答える。

 

「サイクロプスだ」

 

「サイク……っ!?」

 

 名前が出てラビは顔を引きつらせる。

 サイクロプス。月のエンデュミオン基地やアラスカで使われた自爆兵器。

 

「アラスカで使われた物より規模が小さいが、この町を含めて基地周辺の町や村が巻き込まれるのは確実だ。だからミレニアムが停泊している基地の司令官も短絡的にここの奪還を実行する訳にはいかなかった。この町に居る人間全員がブルーコスモスという訳でもないし、逆上して自爆されたら敵わないからな」

 

「で、話を戻すけど、ここ最近。半月くらい前から不自然な程に物資を集めててね。なにか大きな事件を起こす気なんじゃないかって。ラビちゃん、なにか聞いてない?」

 

 メイリンの質問にラビが眉間にしわを寄せる。

 

「なんか、今ミレニアムに居るクライン総裁を暗殺するつもりみたいっすけど……」

 

「え? 本当に!?」

 

「はいっす。そんで、あたしにクライン総裁のスケジュールとか吐かせようとしてたっす。あ、もちろん言ってないっすよ」

 

 呆れる様子で溜息を吐くと同時に考えを張り巡らせる。

 

(コンパスが地球に降りると決まったのが五……もう六日前だっけ?)

 

 そこら辺がなにか引っかかる。

 

「本当にラクスの暗殺が目的なら、この町や基地は囮に使われるかもしれない。メイリン! ミレニアムに情報を送ってくれ! くれぐれもラクスを一人にしないようにと!」

 

「はい!」

 

 メイリンが自分の端末を開いて情報をミレニアムに送信する。

 そんなやり取りを見ながらある考えが頭を過ぎった。

 

「もしかしてっすけど……連合が一枚噛んでる可能性ってありません?」

 

「どういう事だ?」

 

「上手く説明出来ないんすけど、ミレニアムが地球に降りるタイミングより早く物資を集めてるのが気になって。連合だってここのブルーコスモスが目障りなのは変わらないんすよね? でも、最近まで被害が軽微だったから見逃されてて。だからぁ……」

 

 そこまで説明されてアスランはラビの言いたい事を察する。

 

「連合基地の司令が、ラクスがここに来る情報を予め流していたと言いたいのか?」

 

「うっす。たぶん、連合側からしたらクライン総裁の暗殺の成功失敗はどうでも良くて。そういう動きがあるだけでコンパスが大々的に手を貸せる大義名分? が揃えばいい、みたいな」

 

 サイクロプスの事を黙っているのは、ラクスがこの案件から手を引いて帰ってしまう可能性を考慮したのかもしれない。

 もしくは、説得などをやられて相手を逆上させるのを怖れたか。

 あり得そうな予想にアスランはガリガリと頭を掻く。

 

「とにかく、俺達はサイクロプスの方を押さえる。サイクロプスを起動出来る地下司令室を目指し、ウイルスを流して無力化する。後始末は連合の方がしてくれる筈だ」

 

 流石に一時的にでもサイクロプスを無力化し、ブルーコスモスも排除すれば、連合の方で危険な兵器は撤去するだろう。

 

「トーチス少尉。君もこのまま手伝ってくれると助かるが……」

 

「行くしかないっしょ? 流石にブルーコスモスにサイクロプスの起動ボタンを持たせて置くのは危険過ぎるし。今からあたしをミレニアムまで送ってくれる余裕はないっすよね?」

 

 仕方ないと軽く柔軟運動をするラビ。

 そこでメイリンの方からも報告する。

 

「アスランさん。ミレニアムへこちらの情報を送りました」

 

「分かった。それじゃあここからサイクロプスを起動させる司令室までのルートを確認しよう」

 

 地図と掴んでいる情報からアスランは安全なルートを算出を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのクソアマァ……!」

 

 意識を取り戻したヴィンセッドは殴られた顔を押さえながら不機嫌そうに拠点の地下通路を早歩きで移動していた。

 姉に苦しそうな顔をさせた女に少し痛い目見せてやろうとしたら、思いも寄らない反撃を喰らった。

 強化され、人間(ナチュラル)以上の能力を持つと自負しているヴィンセッドにとって、そこらに居るただの女に一方的に打ちのめされるなど、屈辱以上に腸が煮えくり返っていた。

 

「ぶっ殺してやる……! あの女ぁ……っ!」

 

 エレベーターで下へ降り、そこには彼の愛機が収められていた。

 しかし彼を見た整備兵がヴィンセッドを止める。

 

「おい! どこへ行く気だ! 出撃命令なんて聞いてねぇぞ!」

 

「うるせぇ!!」

 

 止めに入った整備兵をヴィンセッドは殴り倒す。

 

「許さねぇ……! 殺す殺す殺す!!」

 

「誰か止めろ! あのバケモノが……!」

 

 スタッフの一人が叫ぶがもう遅い。

 ヴィンセッドは自分の機体────デストロイへと乗り込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

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