ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件   作:ブルーコスモスへの鎮魂歌

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カガリ・ユラ・アスハ代表首長誘拐事件【後編】

 シュラ・サーペンタインは突然、事情説明は一切されずに手錠付きで牢から出された。

 目隠しされた状態で連れ出されたのは、オーブ軍のモビルスーツ格納庫。

 何人かの軍人が側にいる状況でSPを連れたショートカットの女性が近付いてくる。

 

「初めましてMr.ミヤビ・キオウと申します。以後お見知り置きを」

 

 品の良い女性がシュラに軽い挨拶をする。

 キオウ、という名には覚えがあり、確かオーブの氏族のひとつだった筈。

 

「時間がありませんので手っ取り早く説明させてもらいます。現在、先の戦争で地上に残されたファウンデーション軍の残党を名乗る兵士がアスハ代表を誘拐しました。目的はアスハ代表の安全と引き換えに、貴方を含む元ファウンデーションの兵士の解放かと」

 

「ほう……」

 

 あの連中にそんな胆力にあったのかと他人事のように感心する。

 

「当然オーブ軍でもアスハ代表を奪還する為のチームを編成し、行動に移してますが、貴方には別に動いて欲しいと思ってます。運の悪いことに、こうした任務に向いている人材は今オーブを離れてまして」

 

 ミヤビは困ったように肩を竦める。

 そっちが見捨てた同胞だろ? お前が責任取ってこい、と言ったところか。

 

「あぁそれと、今日カガリ様と一緒に居たラビ・トーチス少尉も同じように誘拐されましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あんなのどっから引っ張ってきたかなぁ……)

 

 もう思考を全て放り投げられたらどれだけ楽だったろう。

 向いているのはモビルスーツの銃口。流石にこれをどうこう出来る自信は無い。

 本当にどうしようかと車から出て手を上げていると、カガリか耳打ちしてくる。

 

「とにかく時間を稼ぐぞ。モビルスーツ(あんな物)まで出してきたんだ。オーブ軍だってすぐにここに駆け付ける筈」

 

「了解っす」

 

 助かるとしたら、それに賭けるしかない。

 ビームライフルの前では無意味だが、一応カガリを守るように彼女の前に立つ。

 そこでふと思いついた事を実行する。

 

「アスハ代表。車の中に入ってください」

 

「ラビ?」

 

「早く」

 

 小声で話すと、カガリが分かったと急いで車の中に入った。

 それにモビルスーツのパイロットが苛立たしげな声を出す。

 

『無駄なことは────』

 

「どっせーい」

 

 気の抜ける声と共にモビルスーツのコクピット位置まで物を投げた。

 ラビも急いで車の中に避難すると、投げた閃光弾が強い光を発し、一瞬の目眩ましのうちにフリーダムの足下をアクセル全開で駆ける。

 

「しっかり掴まってて!」

 

 モビルスーツでは狙いづらい建造物の隙間を車を擦らせながら乱暴に走る。

 しかし、そんな小賢しい行動が通用する訳もなく。

 

『貴様っ!』

 

「どわっ!?」

 

 フリーダムのレールガンが発射されて、車の周辺に着弾する。

 抉られた地面とその衝撃に敢え無く車が横転した。

 

「こんな小手先が通用する訳もないか。大丈夫か、ラビ」

 

「イタタ……タンコブ出来たっす」

 

「大丈夫そうだな」

 

 横転した車の中でやり過ごす事など出来る筈もなく、仕方なく車から出た。

 

『あまり、こちらの手を煩わせないでいただきたい。これ以上抵抗すれば、我々も手段を選んではいられない』

 

 苛立たしげな声が外部スピーカーから流れる。

 フリーダムが腰を落として手を差し出す。

 

『アスハ代表、こちらへ。付き人はそこから動くな』

 

 動けば二人共命は無いと暗に告げる。

 その証拠にジャスティスのビームライフルはラビに向けられていた。

 だが、そこで異変が起こった。

 

『隊長! モビルスーツが急接近してきます!』

 

『なにっ!?』

 

 彼らがその機体を認識した瞬間、ラビを狙っていたジャスティスのビームライフルが撃ち落とされた。

 同時に破壊されたビームライフルの破片から守る為に誰かがカガリとラビを伏せさせる。

 

「ラミアス艦長っ!?」

 

「二人共、無事ね」

 

 良かったと胸を撫で下ろすマリュー。

 同時に、空からモビルスーツが落ちてくる。

 正確には、空を飛んでいたモビルスーツをこのタイミングで落としたのだ。

 落ちたモビルスーツが仰向けに倒れる。

 空を飛んでいるムラサメから外部スピーカーで声が届いていた。

 

『こちら、シュラ・サーペンタインだ』

 

「はぁっ!? いったい誰がっ!!」

 

 ムラサメのパイロットの名前を聞いてカガリが声を上げる。

 ラビも同じ気持ちだった。

 ここで彼を使うとか正気じゃない。

 裏切ったらどうするつもりなのか。

 驚くのも束の間、軍用車が急停止した。

 

「マリュー! アスハ代表! 乗れ!」

 

「フラガ大佐!」

 

 そこで、ラビは落ちてきたもう一機のムラサメがまったく動いて無いこと気づく。

 人型形態で倒れているそれに、ラビは走った。

 

「おいっ!!」

 

 止めようとするムウに振り返らずに。

 幸い、フリーダムとジャスティスは完全にシュラの乗っているムラサメの方に意識を向いていた。

 全力疾走でムラサメまで駆け抜ける。

 ラビがムラサメに辿り着く少し前にこちらに気付いたジャスティスが動く。

 

「だぁっ!」

 

 捕まる前にムラサメが機関砲で牽制してきた。

 

「アイツ、ふっざけんな! 跳弾や薬莢が当たったらどうすんだよ、死ぬわっ!」

 

 文句を言いながら倒れているムラサメのコクピットによじ登って乗り込む。

 とにかく、急いでムラサメのOSを立ち上げる。

 

「モビルスーツがあれば!」

 

 背面のスラスターを吹かせて無理やり立ち上がる。

 

「遅いんすよ、ヘタクソ!」

 

 ビームサーベルを抜くジャスティスにグレネードを射出して一旦距離を取って飛行した。

 

「なめんな! こっちはシミュレーターだけど、ウィンダムでフリーダムを撃墜したこともあるんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事乗り込んだか」

 

 ラビ・トーチスがムラサメに乗り込んだのを見て、シュラは他人事のように呟く。

 協力する条件でシュラがミヤビ・キオウに出した要求でモビルスーツを一機用意する事。

 現場に持っていけば後はなんとかするだろうという確信があった。

 そしてすぐにこの事件の首謀者であるブライアンとの会話を再開する。

 

『サーペンタイン隊長! 我々と一緒に来てください! そしてもう一度ファウンデーション王国の再建を!』

 

「不可能だ」

 

 彼の祖国再建に対する想いを一言で切る。

 現在のファウンデーション王国に対する各国の印象は最低最悪と言っていい。

 たとえ、生き残ったのがシュラではなく、政治に長けたオルフェとイングリットの二人だったとしても再建は不可能だろう。

 寧ろ、あの事件の象徴であるアコードが表舞台に立つのは世界各国からファウンデーションを攻撃する大義名分を与えかねない。

 

「頭を冷やせ。これ以上悪足掻きを続けたところで────」

 

『なら! 我々はどうすれば良いのですか!』

 

 我慢の限界を越えてブライアンが叫ぶ。

 

『残された我々はユーラシアの管理下に置かれ、いつ切り捨てられるのかと怯えて暮らしているのです!』

 

 モスクワにレクイエムを撃たれたユーラシア側が表向きはともかく、何の悪感情も抱かずに支援出来る訳もない。

 国民も相当酷い扱いを受けているのだろう。

 感情が高ぶり、口調が荒くなっていく。

 

『何故、我々を捨ててあんな真似をした! あのままあの国を治めてくれさえすれば、それだけで我々は救われたのに……!』

 

 ブレイク・ザ・ワールドから急速な復興と発展を遂げたファウンデーション王国。

 それが今は張りぼてだったとしても、いつかは中身を伴う独立国として世界に認められた筈。

 それを全て台無しにして逃げるのかとブライアンはフリーダムを上昇させて撃ってきた。

 二門のプラズマ収束砲を回避する。

 ムラサメではブラックナイトスコードのように受ける訳にはいかないし、シールドで防御しても腕ごと持っていかれる。

 

「しかし、相手がフリーダムとジャスティスとはな!」

 

 状況に関わらず、精神が高揚するのを感じた。

 何処から引っ張り出してきたかは知らないが、久々のモビルスーツ戦に心が躍っていた。

 すると、ラビの乗るムラサメが接近し、背中合わせになる。

 

『今回は味方ってことでいいんすよね!』

 

「なにぶんこっちも首輪を付けられてる状況でな! 手早く戻らないと命が無い!」

 

 シュラ首には首輪型の爆弾が填められており、制限時間内に戻って外さないと爆発する仕掛けになっている。

 これを外せるのは首輪を填めたミヤビ・キオウだけだ。

 

『じゃ、ちゃっちゃと片付けるっす! あ、機体は爆発させないで! もしもあの二機が核動力だったらマズい!』

 

「簡単に言ってくれる。だが面白い!」

 

 相手は旧型のフリーダムとジャスティスとはいえ、ムラサメより性能は上。

 それに、ラビ・トーチスとの共闘にも楽しんでいるのを自覚する。

 向かってくる敵機からの砲門からビーム砲が発射されるのを左右に散って回避する。

 機体性能は向こうが上。だがパイロットは。

 

『いくらフリーダムとジャスティス(そんな機体)を持ち出してきたって、パイロットはヤマト隊長でもアスカ大尉でもないんすからねっ!』

 

 恐くないんだよ、と回避しながらビームサーベルを引き抜き、フリーダムのプラズマ収束砲の片方を斬り捨てた。

 

「その通りだ! 機体が良くても、パイロットが性能を引き出せなければな!」

 

 ジャスティスが投げた肩のブーメランをシュラがグレネードで撃ち落とす。

 自身もビームサーベルを抜き、ジャスティスに斬りかかると、後退して避けられた。

 こっちは高威力の射撃武器は受けられない。おそらくはビームサーベルを受けてもシールドごと斬られる可能性が高い。

 

「行くっすよ!」

 

「了解だ!」

 

 しかし、危機感は無い。

 隣にはラビ・トーチスが居る。

 自分を倒した好敵手とのバディにシュラはこれまで感じた事の無い安心感と充実感があった。

 

(あぁ……これは負ける気がしないな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブライアンは向かってくる二機のムラサメに歯軋りしていた。

 性能はこっちが上の筈なのに、たかだかムラサメ二機に翻弄されている。

 何よりも、助け出そうとしたかつての英雄に攻撃されているという事実。

 それが、ブライアンにとって大きなストレスとなり、操作の粗が目立つようになってきている。

 それはジャスティスに乗る仲間も同様。

 レールガンで撃墜しようとすると、飛行形態に変形し、面積を小さくする事で躱しつつ急接近し、直前で人型に戻ると折り畳み忘れたレールガンの砲身を斬り落とす。

 

「クソがっ!」

 

 せめて一矢報いようと、ビームサーベルを引き抜いて横斬りに振るう。

 しかし眼の前のムラサメは急降下して回避するすると、ムラサメの後ろに居たもう一機のムラサメがビームサーベルを突き立ててきた。

 

『終わりだ』

 

 かつて信じた英雄の声。

 それがフリーダムの頭部と右腕を斬り落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「墜ちろっす!」

 

 ムラサメとジャスティスのシールドが激突する。

 パワー負けしたムラサメが仰け反ると、ジャスティスがトドメとばかりにビームサーベルを振るおうとする。

 

「甘いっすよ!」

 

 ビームサーベルが振るわれる腕を蹴り上げると、背後に回り、ファトゥムを斜めに斬る。

 飛行ユニットが破壊された事で落下していくジャスティス。

 最後の悪足掻きでビーム砲を発射しようとしたが、ビームは発射されず、鮮やかだった真紅の機体が鉄色に変わった。

 

「バッテリー機?」

 

 それも、この程度の戦闘でエネルギーが切れるなら、少し前のバッテリーなのかもしれない。

 そこでラビのムラサメにカガリから通信が入る。

 

『ラビ。無事か?』

 

「はいっす。こっちはなんとか」

 

『オーブ軍のモビルスーツ部隊もすぐに此方に到着する。そっちのレーダーに反応はないか?』

 

『えぇ、はい。複数のムラサメとМ1の反応が』

 

「そうか。モビルスーツパイロット以外の犯人達は既に全員救出班が取り押さえたとのことだ。お前もこっちに来い。機体はそこで乗り捨てていい」

 

「了解っす」

 

 指示を聞いてラビはムラサメを中腰の姿勢にする。

 機体から降りようとすると、シュラとブライアンの通信が聴こえる。

 

『サーペンタイン団長……どうして……』

 

 何に対してのどうして、だったのか。本人も分かってないのかもしれない。

 

『いつか、その機会が訪れた時、私はファウンデーションに戻り、全てを話すつもりだ。その時、私をどう裁くかは、残されたお前達が決めればいい』

 

 その時にはもう、ファウンデーション王国は残っていないのかもしれない。

 ただ、自分達が犯した罪の沙汰は見捨てられた者達に委ねるつもりだった。

 

「一応、祖国を捨てた負い目は有ったんだ……」

 

 そう思っていると、シュラのムラサメが飛び去っていく。

 おそらくはタイムリミットが近いのだろう。

 繋がってない通信でラビが呟く。

 

「その時が来たら、少しくらいはフォローしてあげようかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カガリ・ユラ・アスハ代表首長誘拐事件はこうして幕を下ろす。

 犯人達はユーラシアに厳重抗議をした上でファウンデーション王国に送り返した。

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「おいアスラン。じーっとこっちを睨むのをやめろ。気が散って仕事に集中出来ない」

 

 書類を作成していたカガリは執務室の椅子に座り、カガリを見ていた。

 

「……そっちの仕事が一段落するのを待っていただけだ」

 

 カガリの誘拐事件。

 アスランは仕事で宇宙に居り、事件の事を知ったのは全てが終わった後だった。

 ついでに仕事も追加されて、戻って来たのは数時間前だったりする。

 ちなみに今回の件を知ったキラとのプライベート通信のやり取りで『アスランはカガリが危ない時にいつも傍に居ないね』と皮肉られてしまった。

 

「それで、フリーダムとジャスティスの出処は判明したのか?」

 

「あぁ。やはりあの機体はザフトから売り払われた機体だった」

 

 第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦で多大な戦果を挙げた二機。

 その戦果に戦後、フリーダムとジャスティスの再製造が行われた。

 ただ、ユニウス条約が可決された事でバッテリー問題が解決せず、操縦性が極めて複雑であり、乗りこなせるテストパイロットも居なかった。

 そんなこんなでニューミレニアムシリーズやセカンドステージに開発側が移行した為、製造された二機は倉庫でお蔵入りされてたらしい。

 

「それを今回の犯人達に格安で売りつけたらしい。情報省のイザーク達に捜査を進めて貰っている」

 

 その事を知ったイザーク・ジュール中佐は血管が切れるのではないかと心配になる程の怒りを露わにしていた。

 今頃は販売に関わった者達を検挙する証拠を集めているだろう。

 そこで同じく待機していたミヤビ・キオウが立ち上がる。

 

「続きをよろしいですか? 此方の調査も大分進んだので、経過報告を」

 

「あぁ、頼む」

 

「運び込まれたフリーダムとジャスティスを含む犯人達は、セイラン家を始めとするかつてのロード・ジブリールを匿った件でザフトの侵攻を許した際に、地位を失った氏族の遺族に拠るものでした」

 

 ジブリールを匿うのに手を貸した権力者達。

 彼らは今、大幅に権力を削られ、オーブの人材不足から窓際族とまではいかないが、かなり冷遇されている。

 

「一度は国を捨てて逃げたくせに、再び代表の地位に返り咲いたアスハ代表が許せなかったと供述しています」

 

「耳が痛いな……」

 

 聞けば、彼らはフリーダムとジャスティスを分割して資材に紛れ込ませて数ヶ月前から少しずつ運ばせ、オーブでの組み立てまで手伝ったという話だ。

 ある程度の報告が集まったところでアスランが話を切り替える。

 

「それにしても、今回は流石に迂闊過ぎるぞ。護衛の一切を連れずに頻繁に外を出歩くなんて。今回は助かったから良かったものの……」

 

「あー! あー! 分かってる! 分かってるよ! 流石に今回は私も反省してる! 次からはちゃんと護衛も付ける! だから勘弁してくれ!」

 

 誘拐からここ数日、キサカやエリカ。マリューにムウ。サイやミリアリア。その他大勢から似たようなお叱りを聞かされ続けたのだ。いい加減、耳にたこである。

 しかし、アスランはなにか言いたそうに睨み、横で控えているトーヤもうんうんとアスランを支持している。

 大きく息を吐いた後に、アスランは休暇を終えて宇宙に戻ったラビの話をする

 

「今回はトーチス少尉が居て助かったな」

 

「そうだな。お礼にファーストクラスで宇宙に上げた。今頃は快適にプラントに向かってるんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この状況でよく寝てられんな、小娘」

 

 カガリが手配してくれたプラント行きのシャトルはハイジャックされていた。

 顔を隠す為にカボチャや骸骨の面とか、ピエロのメイクをしているハイジャック犯達。

 逆らおうものなら問答無用で射殺され『陰茎(しんけい)が苛立つ』とか言いそうな集団である。

 乗客達も怯えて視線を合わせないように身を小さく縮めていた。

 そんな中で小さく寝息を立て、涎を垂らして寝ている少女。

 何故こんな少女がファーストクラスに乗っているのか不思議だが、カボチャ頭のハイジャックが金髪の少女を揺らして起こす。

 

「おい起きろ!」

 

 三回揺らすと、少女の目蓋が開いた。

 

「起きたか……乗客の顧客データを確認する。名前を述べろ」

 

 ハイジャック犯にそう訊かれた少女だが、寝ぼけ眼を擦った後に、カボチャ頭のハイジャック犯を見る。

 

「おー。流石ファーストクラス。こういうイベントまでやるモンなんすねー。でもハロウィンには早くないっすか?」

 

 と、ツンツンとカボチャの被り物をつつく。

 それを見ていた乗客は誰かあの少女(バカ)止めろと他の客に視線を目配せるが、当然応える者は居ない。

 少女の行動にカボチャ頭の男が銃を向ける。

 

「残念だよ。最初の見せしめが、君のような女の子とは」

 

 ハイジャック犯が銃の引き金を引き、銃声が響いた。

 

「ぎゃあああああぁああっ!?」

 

 倒れたのはハイジャック犯の方だった。

 引き金を引く直前に手首を掴み、自分の被り物を撃たせ、倒れる瞬間に拳銃も奪い取る。

 被り物の中では、男の鼻の穴が横に増えたとだけ言っておく。

 それを反射的にやった少女はキョトンとした顔で奪った銃を見た。

 

「これ、本物?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 この後、ざっと数十分でハイジャック犯達は一人の被害者も出さずに無力化される事となる。

 敢えて言えば被害は、その場に居合わせたラビ・トーチス少尉が着ていた(カガリからプレゼントされた)三十万のスーツだけだとここに記しておく。

 

 

 

 




ちょい補足。
ラビがウィンダムでシミュレーターでフリーダムを撃墜したのは相討ち。
それも種運命でセイバーがバラバラにされた戦闘の再現ステージでの話です。
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