ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件   作:ブルーコスモスへの鎮魂歌

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キラ・ヤマト准将の暴走。

「今日からアークエンジェルに所属するラビ・トーチス少尉、です」

 

 緊張しているのか配属された新米パイロットの少尉は少し固い口調で敬礼した。

 大西洋連邦からただ一人配属された士官学校を卒業したての新米ときた。

 

(本人の強い希望ってことだが、さて……)

 

 ムウは如何にも軍学校を卒業したての少女を見る。

 オーブ、プラント。そして大西洋連邦が共同で発案されたコンパスだが、今のところ実働部隊はザフトとオーブが大半だ。

 こんな少女に表立って嫌がらせするような馬鹿な居ないと思ってるが、過去大西洋連邦がやって来た事を思えば針の筵になりそうなのは理解出来そうだが。

 何より訝しむべきなのは、彼女の出身地。

 それは世界で一番最初にニュートロンジャマーが投下された国だった。

 コンパスの活動ではコーディネイターと一緒に仕事をする事は多くあるだろう。

 まだ活動を開始したばかりで軌道に乗ってるとは言い難いコンパスの活動をあからさまな地雷のせいで難航するのは避けたかった。

 

「あ〜。なんだ。知っての通り、コンパスのトップはコーディネイターだが、君はそれについて……」

 

「は! お給料さえ払ってくれれば、ナチュラルでもコーディネイターでも連合でもプラントでも構わないっす!」

 

「……」

 

 本人は大真面目に答えているつもりなのだろうが、あんまりな回答に一瞬口が止まった。あと口調が砕けている。

 そこで艦長のマリューからも質問する。

 

「でも、貴女の成績なら引く手数多だったんじゃない?」

 

 ラビ・トーチス少尉の軍学校での成績はかなり良い。

 もちろん成績が必ずしも成功を約束される訳ではないが、それでも態々コンパスに入って来る理由が分からない。

 最悪、自軍の人間と戦う羽目になるかもしれないのだ。

 

「はい! 軍学校に居た頃に、自軍がベルリンなどの街を焼いているのを見て、こういう作戦には絶対参加したくないと思ったっす!」

 

「……」

 

 ラビの回答に腕を組んでいたムウが視線を床に向ける。

 なんせ、その作戦の指揮をしていたのが、本人なのだから、それはもう居た堪れないだろう。

 

「大西洋連邦、プラント、オーブから出来たこの組織なら、そうした非人道的な作戦はやらなくて済むと思った次第っす。軍人として市民を守って胸張ってお給料貰いたいっす! あと、いざとなったらオーブとかそこら辺に逃げ込めるかな、と」

 

 なんと言うか、いくらなんでも内面が開け過ぎではないだろうか? 

 もしも彼女がスパイか何かなら、女優になれたかもしれない。

 ラビ少尉の言葉にムウが吹き出した。

 

「よーし、分かった! とりあえず、模擬戦でパイロットとしての腕前を見せてもらおうか! うちはベテラン揃いだから、しっかりついてこいよ!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミケール大佐の捕縛作戦は、向こうからのミサイル攻撃で幕を開けた。

 アークエンジェルがイーゲルシュテルンで迎撃し、敵部隊を射程距離に入れたムラサメ隊がミサイルの空爆を行う。

 

「やぁっ!」

 

 "オオタカ"にある肩のビーム砲を撃つラビのウィンダム。

 迎撃に配置されたダガーがシールドで防ぐが、その威力に体勢を崩すと、その隙を突いてコクピットにビームサーベルを突き刺した。

 フリーダムとジャスティスを始め、コンパスのモビルスーツ部隊が次々とブルーコスモス側のモビルスーツや戦車を撃墜していく。

 

(早く降参すればいいのに……!)

 

 内心で無駄な抵抗を続けるブルーコスモス側に苛立ちつつ、戦車をビームライフルで撃つ。

 自分を狙っていたダガーの銃口が火を噴こうとすると、フリーダムが五門の砲とビーム刃を出したシールドが発射され、数機のモビルスーツが同時に無力化された。

 

「うわ流石!」

 

 先行するフリーダムがビームサーベルの抜刀と同時にすれ違った二機のモビルスーツを無力化する。

 その後に続いてコンパス部隊のモビルスーツはミケールの居る指揮所へと進行する。

 そこで極太のビームが襲ってきた。

 

「デストロイ!」

 

 ところどころ破損したままの巨大なモビルスーツがその過剰な火力を解放し、コンパスを迎え撃つ。

 

『下がれ!』

 

 通信からヤマト隊長の指示が飛び、咄嗟に飛んでいた機体を下降させる。

 その判断が正解で、デストロイのビームが一機のムラサメを撃墜する。

 

『まだあんなモンをっ!』

 

 アスカ大尉の怒りの声が通信越しから届く。

 デストロイから発射されたビームが街や自然を焼く。

 その光景にラビは舌打ちした。

 

環境保護団体(ブルーコスモス)なら、ちょっと環境に配慮しろ!」

 

 同時に、エルドア地区の方でも動きがあり、デストロイの攻撃に晒された市民が助けを求めて行動を起こしていた。

 ファウンデーションの兵に通行を止められていると、集まった民衆の中心から次々と爆発が起こる。

 紛れ込んでいたブルーコスモスの者が自爆テロを行なった光景だった。

 

「そこまでやるか……!」

 

 ビームの網を回避していくフリーダムに火力を集中させている隙に、ラビは"オオタカ"を分離(パージ)させてデストロイに突っ込ませる。

 両翼と尖端にビーム刃を発生させた戦闘機がデストロイに襲いかかる。

 光学シールドを展開して防ごうとするが、"オオタカ"はデストロイの防御を容易く突破してコクピットを貫く。

 その巨体が真っ二つになり、上半身が地面に崩れ落ちた。

 後ろで守られていたモビルスーツ数体を巻き込んで旋回し、ラビのウィンダムに戻っていく。

 

『無茶すんな! 次が来るぞ!』

 

「了解っす!」

 

 フラガ隊長から指示にラビはライフルを構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『シュラ、君の役目を果たせ』

 

(了解)

 

 頭の中で通達された命令にシュラは心無しか冷たく返す。

 これから行われる作戦に不満がある訳ではない。

 むしろ、退屈な任務から解放される昂揚感がある。

 気懸かりなのはたった一つ。

 

(あの少女は助からんだろうな……)

 

 ファウンデーションの本来の目的が発動すれば、前線で戦うパイロット達は誰も生き残れまい。

 そうなれば、昨日のような勝負は二度と味わう事はないだろう。

 それを想うと、どうにかあの少女だけでも連れ出せないかと考えてしまう。

 

(馬鹿馬鹿しい……!) 

 

 これではまるで、玩具を買って貰う為に駄々をこねる子供ではないか。

 だがそれでも、あの時間がシュラにとって初めての勝ちたい、という願望だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっぶなっ!?」

 

 急停止したフリーダムの後ろを飛んでいたラビは衝突を回避する。

 

(マシントラブル?)

 

 真っ先に思いついたのはそれだった。

 そこから数秒動きを止めたフリーダムは、ミケールの居る指揮所を目指していた筈なのに、いきなり方向転換を始めた。

 

「はぁっ!?」

 

 突然ユーラシア領内に向かうフリーダムにラビはコクピット内で声を上げた。

 それと同時にブルーコスモス側の迎撃が開始される。

 

「あぁ、もう!」

 

 戦車を踏み潰し、敵モビルスーツを肩のビーム砲で撃ち落とす。

 そうしてる間にヤマト隊長から通信が飛ぶ。

 

『ミケールを発見! シン、援護を! 奴が逃げる!』

 

(何処に?)

 

 モニターを確認するが、ミケールは確認できない。

 カメラ精度の問題かとも思ったが、ヤマト隊長以外、ミケールを見つけたと言う者はいない。

 ユーラシア領内を突っ切ろうとするフリーダムにユーラシア軍が迎撃行動を開始する。

 

『まだ抵抗するのか!』

 

 フラガ隊長やラミアス艦長の静止を聞かずに全門でユーラシア軍を攻撃し始めた。

 

(酔っぱらってるのかあの人は……!)

 

 そうとしか思えない行動にラビは目の前のダガーを片付けると、フラガ隊長に進言する。

 

「ヤマト隊長を追うっす! 許可を!」

 

『お前……』

 

「威嚇射撃でもすれば止まるかもしれないでしょ!」

 

 何にせよ、これ以上ユーラシアを攻撃するのはマズい! 

 そこでアスカ大尉が割って入る。

 

『なら俺が!』

 

『お前は駄目だ! まだデストロイを隠し持ってる可能性がある! ジャスティスまで抜けられるのはキツい! クソ! ラビ、頼めるか?』

 

「了解っす!」

 

 ラビは戦線から離れてユーラシア領内へとフルスピードで移動する。

 そうしてる間に、司令部でも変化があった。

 クライン総裁から、ヤマト隊長への攻撃許可が降り、彼を止める為にファウンデーション側へ協力を求める形になってしまった。

 

(まぁ、そう言うしかないだろうけどさ……!)

 

 どう見ても暴走してるヤマト隊長を止めるなら、生半可な兵力では返り討ちに遭う可能性が高い。

 

 ラビがフリーダムに追いついた頃には、ファウンデーションとフリーダムの戦闘が既に始まっていた。

 同時に、ユーラシア領から発射されるミサイルが見えた。

 望遠機能を最大にしてそれを確認すると、ラビは口元を引きつらせる。

 

「核ミサイル!? なんでぇ!?」

 

 ユーラシア領内から発射された核ミサイルはこの作戦の司令部に向かって行った。

 

 

 

 

 

 




この作品でのアグネスのシュラに対する評価は、ナチュラルの女の子なんかに負けた情けない奴なので、キラに拒絶された後も態々慰めてもらおうと訪れてません。
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