ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件   作:ブルーコスモスへの鎮魂歌

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未だに明言されてないので、ライジングフリーダムとイモータルジャスティスはこの作品でバッテリー機という事にしてます。


戦う理由【前編】

「うわぁ……」

 

 軍学校で休みが取れて久々に拾ってくれた孤児院に顔を出したラビ。

 しかし帰ってきたその建物の窓硝子は壊され、塀の壁には心無い暴言が書かれている。

 

「なにがあった〜? みんな無事だよね?」

 

 困った様子で頭を掻いていると中から院長が出てきた。

 五十代のその女性はラビを見るなり安堵した表情を見せる。

 

「ラビちゃん……」

 

「先生。元気〜って訊ける状況じゃなさそうっすね。なんでこんな事に?」

 

 壁の誹謗中傷を指差しながら眉間にシワを寄せる。

 建物の中へと案内された後に院長も困った顔で説明し始める。

 

「先日のデュランダル議長の発表は見た?」

 

「まぁ、一応……」

 

 少し前にメディアで流されたギルバート・デュランダル議長の演説。

 それには連合の部隊が街を焼く姿や、それを止めるザフトの存在がピックアップされていた。

 街の惨状にラビ自身も身震いしたし、あの映像を見て、軍学校を辞めた仲間も居る。

 なによりも衝撃的だったのはロゴス、という存在の公表だった。

 彼らこそが今日までの戦争の原因であると、その人員(メンバー)と関連企業を世界中に公表された。

 

「でも、この孤児院は関係ないっすよね?」

 

「そうでもないのよ。この院は、ロゴスの……正確にはその人達が経営してる会社や財団から寄付金を貰っていたから」

 

 私も先日知ったんだけどね、と本当に困った様子で話す。

 

「だから、この孤児院が襲われたの?」

 

「本当に一部の人達だけなのよ? 警察も動いてくれて犯人達も捕まったし。幸い子供達にも怪我はなかったの」

 

「八つ当たりじゃないっすか!!」

 

 思わず声を荒らげるラビ。

 確かにロゴスに関係のあるところからお金を貰っていたかもしれないが、別に違法な訳じゃない。

 そのお金を悪い事に使った訳でもない。

 ただ慎ましく生活していただけでどうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。

 自分が過ごした院という事もあり、憤慨するラビ。

 

「みんな、不安なのよ」

 

 連合の攻撃で街が焼かれるのを見た。

 次は自分の暮らす街かもしれないと。

 そう考えた彼らはロゴスに関係する全てを排除しようと動いた。

 そして、力の弱い立場の者なら尚更に攻撃しやすい。

 考える事を止めて、ただ目の前の不安から目を逸らしたい人からすれば、この孤児院は格好の的だったというだけ。

 ラビがガリガリと頭を掻いて椅子に座る。

 頭を抱えていると、おそらく奥に居たのであろう、この孤児院の子供達がやってきた。

 

「ラビ姉……」

 

「みんな……どうしたの?」

 

 努めて柔らかな声でラビは膝を折り、年下の子達の視線に合わせて話しかける。

 中々切り出せない子供にラビは首をかしげた。

 それでも小さなその子は勇気を振り絞ってラビに問う。

 

「ラビ姉も、街の人を攻撃するの?」

 

 その質問にラビは息を止めた。

 考えないようにしていた問題だったからだ。

 

「命令されたら、ボクたちを撃つの?」

 

「それは……」

 

 どうだろう、と曖昧に返して誤魔化してしまいたかったが、ラビの事を心から心配している子供に嘘を吐きたくなかった。

 

「……やらないよ、あんなこと。そんな命令されたら軍人辞める」

 

 

 辞められるか、という問題はあるが、ナチュラルだろうがコーディネイターだろうが、無抵抗な一般市民を撃つなど御免被る。

 その場合、多額の奨学金をどうするのか考えると目の前が真っ黒になるが、生きていればなんとかなるだろう。

 

「ラビお姉ちゃん……」

 

 それでも不安そうな子供達にラビは満面の笑みを見せた。

 

「大丈夫だよ。あたしは、みんなを守る軍人になるからさ!」

 

 強がってそう答えるラビ。

 出来る事ならこの子達に誇れる軍人になれたらと願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 核ミサイルから脱出したブラックナイツの面々は最後に合流したシュラ機を見て驚きの表情をした。

 彼の機体の左腕が肩から斬り落とされていたからだ。

 宇宙へ上がる為の協力者と会う前に合流した彼らは、やって来たシュラに問う。

 

「どうしましたか? シュラ」

 

「フリーダムにやられた……」

 

 少しだけ煩わしそうにシュラが答えた。

 ラビのウィンダムを撃墜した後、フリーダムの猛攻を受けた。

 良くも悪くも流麗なそれまでの戦い方とは違う、荒々しい猛獣のような攻撃とラビを不本意な形で撃墜してしまった心の乱れから左腕を犠牲にしてしまった。

 しかし、フリーダムの猛攻はそこまで。

 元々機体が限界だった事もあり、こちらの反撃でフェイズシフト装甲が落ちた。

 そこでリデラードが確認する。

 

「なら、あの出来損ないは核で吹っ飛んじゃったんでしょ?」

 

「それは……」

 

 そうだ、と言おうとしたが、シュラは首を横に振った。

 

「アスラン・ザラが増援に来た。核の爆発前に奴がキラ・ヤマトを回収し、離脱した可能性が高い」

 

 フリーダムにトドメを刺そうとしたギリギリのタイミングで現れた見知らぬモビルスーツ。

 しかしその動きとフリーダムと繋がっていた通信で、呟いたアスラン? という呟き。

 自分が離脱出来たのだ。奴らも離脱した可能性は高いだろう。

 その説明にグリフィンがマジかよと呟く。

 

「ですが、ミレニアムが残っているとはいえ、我々はコンパスの戦力の大半は潰しました。僅かな生き残りが居たとしても、計画にとっては誤差の範囲でしょう」

 

 もうコンパスには何も出来ないと嘲笑する。

 仮に別のモビルスーツを用意してこちらを止めようと動いたところでどれほどの事が出来るのか。

 

「そうだな。では我々も宇宙に上がるぞ。母上達が待っている」

 

 シュラの指示に全員が頷いた。

 

 移動しながら自分が撃った少女の事に思考を割く。

 シヴァを拘束し、自分のウィンダムもろとも討とうとした少女。

 正直、あの場にラビが現れた時はモビルスーツを破壊して連れて行こうと考えていた。

 計画が達成されれば今回のような戦いは二度と訪れないかもしれない。

 なにより、あの少女にはモビルスーツではなく、剣で勝ちたかったのだ。

 モビルスーツでは性能差が有り過ぎて勝負は見えている。

 それではつまらない。

 だがラビはシヴァの切り札である近接短針投射を使わせた。

 アレは本来、フェイズシフト装甲に無数の針を叩き込む事で強制的にダウンさせ、コクピットを貫通する一回限りの奥の手。

 間違ってもウィンダムに使うような武器ではない。

 それをあの至近距離で喰らったのだ。生きてはいないだろう。

 敵を討った達成感も優越感もない。

 どうせ殺すなら、今度こそ剣で斬り伏せたかった、という不本意さによる苛立ちだった。

 そして気になるのは、シュラがファウンデーションの国民を捨てた時に感じたラビの感情。

 

 "それが……それが軍人の言うことかぁっ!! "

 

 憤怒と失望。

 シュラが最後に感じたラビの感情である。

 それが余計にシュラを苛立たせた。

 

(もう過ぎた事だな)

 

 今になって惜しんでも遅い。

 シュラは意識を切り替えて宇宙へ上がる為の合流地点に急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますとキラはどこかのベッドだった。

 

「隊長! 目が覚めたんですね!」

 

 目を開けたキラに部下であるシンが安堵の笑みを見せた。

 

「シン……ここは?」

 

「オーブですよ。アスランが俺達を運んでくれたんです」

 

 起き上がるとキラは、これまでの事を思い出す。

 周囲を見回すと、隣のベッドではラビが寝息を立てていた。

 彼女はかけられていたのだろうシーツがベッドから落ち、捲れたシャツから出たお腹をボリボリ掻いている。

 

「食え〜……もっと食え〜……くへへへへ……」

 

 と、謎の寝言を発しながら。

 

「何度かかけ直してやったんですけど、すぐ落とすんすよ」

 

 呆れた顔でシンがシーツをかけ直そうとする。

 撃墜されたラビだが、ウィンダムに刺さっていた無数の針は全て避けていた。

 ブラックナイトを掴んでいた時のウィンダムの体勢がやや前のめりだった事。

 自分の機体ごとブラックナイトを討とうとした際に脱出するつもりだったのだろう。シートベルトを外していた事。

 あの短針もコクピットを貫くのは精々三か四本。後は別の箇所に刺さるか、刺さっている針が勝手に弾いてくれる。

 意識を失ったのは機体が倒れた際の衝撃に依る物。

 シュラが去った後にキラがフリーダムでウィンダムのコクピットをこじ開けて引っ張りだした。

 その時にコクピットの中で体をSの字に曲げて針を全て躱していたのが見えた時は思考が止まったが。

 しかし、フリーダムも完全にエネルギーが切れた事でアスランの機体に乗り込んで核ミサイルから逃げたのだ。

 アスラン曰く、後一分遅れていたら間に合わなかったかもしれないと。

 シンが落ちたシーツをかけようと────。

 

「ごまあぶぅらぁあああぁあべしっ!?」

 

 前触れもなく全力で起き上がったラビの額がシンの顎にヒットした。

 お互い痛そうにぶつかった部位を痛そうに押さえる。

 

「アレ? ここは……? 天国?」

 

「そんなわけあるか! っていうかなんだ胡麻油って!? どんな夢見てた!」

 

「胡麻油? なんすかそれ?」

 

 どうやら夢の内容は覚えてないらしい。

 このやろう、とシンが顔を引きつらせるがその前にラビが口を開く。

 

「作戦はどうなったんすか? ミケール大佐は?」

 

「それどころじゃない。俺達が戦ってた戦場は核で吹っ飛んじまったし。ミケールの指揮場もな」

 

 怒りを抑えつつ説明する。

 それにキラは視線を落とし、ラビはガシガシと頭を掻く。

 

「ヤマト隊長のせいっすよ! みんなで止めたのに、ユーラシア領内に突っ込んだりするから!」

 

「おいっ!」

 

 それで作戦が目茶苦茶になったと言うラビ。

 シンが諌めるがラビは首を左右に振る。

 

「いやいや。ここ、曖昧にしちゃダメな部分すよね? あたしに弁明する必要は無いっすけど、理由くらいは説明して欲しいっす」

 

 キラの暴走で一気に状況が悪くなったのだ。

 死ぬところだったラビからすれば、少しくらいは説明して欲しい。

 視線を落として話し始めるキラ。

 

「言い訳に聞こえるだろうけど、分からないんだ。あの時は確かにミケール大佐が見えて……みんなの声がどこか遠くに感じて。届いたのは、ラクスが僕を撃つ許可を……っ」

 

 最後の方の声は震えており、表情が苦しげな物になる。

 

「隊長……」

 

 シンはキラを心配そうに見ている。

 すると、ラビがキラの頭を抱き寄せた。

 

「なにやってんだお前は!? 離れろよ!」

 

 突然の奇行にシンがラビをキラから引き離す。

 キラには恋人のラクスが居る。

 それなのに軽はずみに抱きつくとか何を考えているのか。

 

「ありゃ? ダメっすかね? 軍学校で教官が、落ち込んでる男が居たら女が抱いてやれ。それで大抵の男は元気になるって教えられたんすけど。アスカ大尉もほら」

 

 おいで、と言わんばかりに両腕を広げるラビ。

 

「セクハラだろそれ……」

 

 特に抱いてやれ、の部分はラビが思っているのと違うだろう。

 

「そうっすかね? でもヤマト隊長が泣きそうに見えたっすから。放って置けないっすよ?」

 

 泣きそうなキラをラビなりに元気づけようとしてくれているのだろう。

 だが今のキラにはそれが余計に惨めに思えた。

 なによりもラビの行動や言葉がかつて自分が傷つけて死なせてしまった少女と重なってじくじくと胸が苦しくなる。

 

「ありがとうラビ。気持ちだけ受け取っておくよ」

 

「そうっすか?」

 

 空元気で笑うキラ。

 作戦の前日にアグネスに似たような事をされたが、あの時のような嫌悪が湧いてこないのは、ラビが完全な善意でやっているからか。

 

「とにかく、アスラン……みんなの所へ行こうか」

 

 ベッドから降りると、尉官以上の面々がいるレクリエーションルームに移動する。

 キラ達が来ると、マリューがモニターから流れているニュースを消す。

 

「もういいの? 三人とも」

 

「えぇ、まぁ……」

 

「ちょっと寝違えて身体痛いっすけどね」

 

 二人がそう返す中、キラはマリューが消したニュースを点ける。

 そこには核ミサイルによって破壊された街とその中で泣き叫ぶ子供の声が映されていた。

 凄惨なニュースに皆が悼ましそうに見ている。

 そんな一同の中でラビはなにかに気付いて部屋の中を見回す。

 それを鬱陶しそうにアグネスが目尻をつり上げた。

 

「ちょっと。なにキョロキョロしてるのよ」

 

「え、と……」

 

 彷徨っていた視線をマリューに向けるラビ。

 

「ラミアス艦長……その、フラガ隊長、は?」

 

 医務室には居なかった。

 なのに大佐であるムウがこの場に居ないのはおかしい。

 ならもしかして────。

 最悪の予想が浮かぶラビ。

 それに気付いたマリューが慌てて否定した。

 

「ムウは無事よ。今はカガリさん……アスハ代表に呼ばれて席を外してるの」

 

「そう、ですか……」

 

 世話になっている上官の無事を知って良かったと胸を撫で下ろす。

 そこでニュースではコンパスの活動凍結について報じられていた。

 同じタイミングでドアが開き、アスランが入室する。

 シンはアスランに問い質す。

 

「本当なんですか!? コンパス凍結って!」

 

「あぁ、カガリも頑張ったようだが、今は世界中の非難が集中してるからな」

 

 アスランの言葉にシンが、クソッと壁に拳をぶつける。

 あの戦闘での悲劇全てをコンパスが原因とされているらしい。

 視線を下に向けたままキラがアスランに質問する。

 

「ラクス、は……?」

 

「彼女はファウンデーションのシャトルで脱出したらしい」

 

 気遣う様子で答えるアスラン。

 

「彼女は、僕らを裏切った……?」

 

 うなだれた様子で呟くキラ。

 アスランがレクリエーションルームのテーブルに一枚の写真を載せる。

 そこにはアウラ女帝そっくりな三十前後の女性が写っていた。

 

「これは……アウラ女帝?」

 

「十九年前、メンデルの遺伝子研究所に居た頃の彼女です」

 

「十九年前……?」

 

 写真を眺めながら首をかしげる。

 

「アウラ女帝のお母さんとかじゃなくて?」

 

「詳しい事情は分らないが、何らかの研究の結果、今の姿になってしまったらしい」

 

 メンデルの過去データの殆どが失われており、詳しい経緯は調べ切れなかったと言う。

 もしも本当にアウラ女帝が若返ったのなら、女の子の夢だなぁ、と半信半疑に思う。

 

「彼女の研究テーマはコーディネイターを超える種を創り出すこと」

 

 コーディネイターを超える種。

 彼らの戦闘能力と対峙した面々が何処か納得したように表情を険しくする。

 

「おそらく全てがアウラの……彼らの計画だったんだ」

 

「核攻撃もね」

 

 アスランの言葉にマリューが続いて話す。

 アークエンジェルでブラックナイツの機体が核ミサイルの発射地点から離れていくのを見た事。

 ラビが眉間のしわを深くして発言する。

 

「サーペンタイン団長が言ってたっす。もうあの国は必要ないって。初めからあの戦闘は自国に核を撃つ為の物だったってこと……?」

 

「おそらくはな」

 

 アスランの回答を聞いてラビは息を呑んだ。

 狂ってる。そう思って。

 自国に核を撃つなど正気の沙汰じゃない。

 そこでシンが驚きのまま質問する。

 

「おかしいですよ! そんなことして何の得があるんですか!」

 

 ファウンデーションを撃った以上、彼らもすぐには自国に帰る事は難しい。

 国や民を捨てるような真似をしてどうするつもりなのか。

 

「少なくとも核を撃たせたことで口実は出来る。彼らがユーラシアを撃つ為の口実が────」

 

 そこでアナウンスが流れた。

 

『ザラ一佐! すぐに管制室まで来て!』

 

 切羽詰まった声に一同はレクリエーションルームから管制室に移動する。

 大きなモニターには何処かの土地が大きく切り取られたような傷痕が映されていた。

 

「モスクワよ」

 

「これがファウンデーションの報復? もう?」

 

 一切の警告や事前予告も無しに壊滅させられたモスクワを見てマリューが唖然とした声を出す。

 

「核、攻撃……?」

 

「違う、これは……」

 

 モスクワの傷痕を見てアスランが否定する。

 

「レクイエムだ……!」

 

 先の戦争でロゴスのジブリールが複数のプラントを墜とし、それを奪取したデュランダル前議長が月の連合艦隊を撃ち、オーブを撃とうとした兵器。

 戦争後はプラントが解体を進めていた筈。

 それが今また世界の脅威としてその存在を知らしめている。

 焼かれたモスクワの街。

 それを見ていたラビは唇を噛む。

 そこから一筋の血が流れた。

 

 




次回はキラのあのシーンですね。
種自由を書く上でちょっと心理描写に力を入れたい部分なので前後編にします。
小説版で流されちゃったのが本当に惜しい!
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