ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件   作:ブルーコスモスへの鎮魂歌

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種自由ならこれくらいやっても許されると思った。
お気に入りが爆上がりしてビックリ。


戦う理由【後編】

 ファウンデーションがデスティニープランを承認と実行を命じ、プラントでもクーデターが起きていると報告を受けたミレニアムクルー達。

 今後の行動を決めかねていたミレニアムのブリッジに、全身を衣服で隠し、手に銃を持った数名が進入してくる。

 

「動かないで!」

 

「は、はいぃっ!?」

 

 声からして女の襲撃者に副長のアーサーが真っ先に両手を上げた。

 しかし、襲撃者に反応したのはアーサー副長だけで、他のブリッジクルーは自分の仕事を黙々とこなしていた。

 

「僕の計算より二分遅かったですね、ヤマト准将」

 

 冗談なのか本気なのか、ハインラインがそう告げる。

 艦長のコノエがくるりと椅子を回して微笑んだ。

 

「出港の準備は既に終えていますよ、ラミアス艦長。その物騒な物は必要ありませんな」

 

「コノエ艦長……」

 

 冗談めかして名を呼ぶコノエ艦長に襲撃者────マリューはマスクを外して顔を晒した。

 後ろにいたキラとラビもマスクを外す。

 

「あたしらが生きてこうするって分かってたんすか?」

 

 ラビの疑問にコノエは肩をすくめて苦笑する。

 

「生きているのなら、必ずここに来るとは思っていたよ。貴方がたなら、ファウンデーションの存在を野放しにはしない。そうでしょう?」

 

 過去、三隻同盟としてプラントと連合の絶滅戦争に無謀な介入を止め、先の戦争でデュランダル議長のデスティニープランを推し進める為のレクイエムによる虐殺を阻止した。

 そんな彼らが指を咥えてこの事態を静観している訳がない。

 そして、ファウンデーションとプラントのクーデターを止める為に必ずミレニアムにやって来ると予想していたのだ。

 だからこそ、いつでも出港出来るように準備していた。

 

「では、作戦内容を話してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブリッジが作戦会議に入り、アスランと入れ替わる形でシン達と合流する。

 そこにはなにやらシンがルナマリアを宥めている光景だった。

 

「なんかあったんすか?」

 

 首をかしげるラビにアグネスが呆れた感じに説明する。

 

「このバカがルナマリアに背後から銃を突きつけたのよ。まぁ、返り討ちにあったんだけど……」

 

「はぁ?」

 

 なんでそんな事を? と視線をシンに投げかけるラビ。

 シンは気不味そうに言い訳をする。

 

「ちゃんとセーフティはかけてたし、ルナから銃を取り上げたら、正体を明かすつもりだったんだよ。でもその前に投げ飛ばされて……」

 

 イッテェ、と打ち付けた部分を擦るシン。

 ラビを含めた女性陣からは冷たい視線が降り注ぐ。

 

「いや〜。普通セーフティかけてても恋人に銃は向けんでしょ」

 

「ホンっとガキだよね〜」

 

 ラビの言葉に先にこちらにいたメイリンがうんうんと頷く。

 元々モビルスーツの戦力数が足りなかった為、他のクルーはアークエンジェルのクルーと入れ替える予定だったが、パイロットであるルナマリアには最初から同伴してもらう予定だったのだ。

 その説明と説得役を買って出たのが恋人のシンだったのだが。どうやら悪ふざけが過ぎたらしい。

 女性陣からのバッシングから逃れる為に、という訳ではないが、話題を変える。

 

「それはそうと、お前本当にあのことを実行する気なのかよ」

 

「あのこと?」

 

 シンの問いかけにまだ知らないルナマリアが説明を求める。

 アグネスが説明する。

 

「この子、アルテミス要塞に潜入してクライン総裁を奪還してる間に、自分は敵のモビルスーツを奪ってくるんだって」

 

「えぇ……?」

 

 若干引いた様子でラビを見る。

 そこでヒルダがラビに勝算を訊く。

 

「自信はあるのかい?」

 

「少なくとも、ヤマト隊長がクライン総裁を助けるよりは確率高いと思ってるっす。あの人、本当に白兵戦素人だったんすね」

 

 ムウからキラは正式な訓練は受けてないと聞いた事はあったが、何かの冗談かと思っていた。だってあの若さで准将だし。

 

「でも、アルテミス要塞にモビルスーツが置いてある可能性は……」

 

「そこは賭けっすけど、クライン総裁を確保してる場所にモビルスーツが複数置いてないなんてことはないと思うし。囮役でフリーダムが一機で現れたら、必ず向こうも一機で対応してくる筈!」

 

 グッと拳を握る。

 プライドの高い彼らの事だ。こちらが単機で現れれば、一人で充分だと複数で袋叩きなどとは考えないだろう。

 この前の戦闘で自分達が勝利した、という経験がより一層こちらをなめてかかる自信になる。

 オーブも、もしもファウンデーションから標的にされた場合、国の防衛や国民を一人でも多く避難させる為にモビルスーツは一機でも多く必要だ。

 

「前回は見なかったけど、タオ宰相とか、自分の専用機とか用意してるんじゃないっすかね? 敵の戦力は減らせてこっちは戦力アップ! ついでにクライン総裁を助ける陽動にもなるし、一石三鳥ってやつっすよ!」

 

「……取らぬ狸の皮算用って言葉知ってる?」

 

 成功した場合しか考えてないラビに、ルナマリアが釘を刺す。

 それにメイリンがまぁまぁ、と姉を宥める。

 

「わたしもサポートするし。成功する可能性はそう低くないよ? アスランさんも一応賛成したし」

 

 アスランが賛成したのは、ラクス奪還に人手が必要なのと、無理だと思ったらすぐに引き返すよう約束させての事だ。

 

「よろしくお願いしまっす!」

 

「うん! 任せて!」

 

 と、ハイタッチするラビとメイリン。

 

「仲良いわね、あんた達!」

 

 いつの間に仲良くなったのかと思う程、息の合う二人。

 

「だって面白いんだよ、この子。キラさんの事を本人にかわいい人って言ったり」

 

 なんでそんな発言をしたのか経緯を知らないルナマリアにはさっぱりだった。

 それにしてもしばらく会わない内に妹のメイリンが随分と逞しくというか、図太くなったような気がする。活き活きとしてるのは良いのだが。

 どういう事か後でアスランに聞こうと思うが、どうせなんで俺に聞くんだ? みたいな返しになるんだろうな、と思った。

 ルナマリアがそう考えていると、ラビから質問する。

 

「それより、アスカ大尉とホーク中尉はいいんすか? ファウンデーションを止めて」

 

「は?」

 

 なんで今更そんな質問をするんだと目を丸くしていると、ラビが質問を重ねる。

 

「だって、二人は前の戦争でデュランダル前議長に賛成して戦ったんすよね?」

 

 デスティニープランを承諾させる為にレクイエムで世界中を脅す。

 やっている事はファウンデーションもデュランダル前議長も同じなのだ。

 なのに、デュランダルの時は良くて、何故ファウンデーションは駄目なのか。

 それともただ、周りに同調して作戦に参加するのか。

 込み入った話かもしれないが、聞いておきたかった。

 ラビの問いかけに、シンは一度考えを纏める為に大きく深呼吸する。

 

「確かに、前の戦争ではデュランダル議長が正しいと思って戦ったさ。でもデスティニープランが正しいかは正直判らない」

 

 戦争のない世界の為にロゴスを討つ、と宣言したデュランダル。

 それを聞いて感動したし、この人なら戦争のない世界を作ってくれると信じた。

 その為なら故郷であるオーブとも戦うと決意もした。

 しかし、いきなり世界中にデスティニープランを推し進め、レクイエムでオーブを撃とうとした議長。

 何もかもが目まぐるし過ぎて、シンにそれ以外を考える暇を与えなかった。

 あの時も、デスティニープランを強要するデュランダルを信じた、というよりも、彼を信じた親友であるレイ・ザ・バレルを信じた、という方が正しい。

 

「だけど、どんどん何が正しいのか判んなくなって、ただ、オーブが撃たれなかったことにはホッとしたんだ。だから俺の欲しかった平和は、核ミサイルとか、レクイエムとかそういうので成し遂げちゃいけないモンだったんだって戦争が終わって気づいたんだ」

 

 たとえ遠回りに見えても、一つずつ争いを無くしていければ良かったのだ。

 自分を殺そうとした相手に手を差し出し、一緒に戦おうと言ってくれた人がいた。

 植えられた花を守り、たとえ吹き飛ばされても、何度でも植える努力。それこそがシンが望んでいた力の使い方だったのだ。

 

「だから、自分の国を核で焼いたり、今もレクイエムで世界中を脅してる。そんなやり方を、認めちゃいけないんだ、絶対に!」

 

 ファウンデーションの目的が世界の平和でも、そんなやり方を肯定する訳にはいかない。

 そう言って決意を新たにするシンにルナマリアはホッとする。

 メサイア攻防戦の最後、完全に余裕を無くして錯乱し、ルナマリアまで討ちかけたシン。

 だけどもう大丈夫。あれからシンなりに成長しているのだと実感する。

 逆にルナマリアがラビに問う。

 

「ラビはどうなの?」

 

「あたしっすか? うん、ないっす。アレはない」

 

 そうファウンデーションを否定する。

 

「だって、遺伝子だけで軍人やれとかないわーって感じっす」

 

 軍人は国やそこに暮らす人々の為に命を懸ける。

 それは強要されてやらされるべきではないし、そんな軍人がどれくらい役に立つのか。

 

「あたしは自分で決めて軍学校の門を叩いたんすよ」

 

 お金欲しいとか色々な理由はあるが、自分で自分の道を決めて覚悟したのは本当だ。

 

「それを、ただ遺伝子の優劣だけで誰かを蹴落としたり蹴落とされたりして馬鹿にされるのは我慢ならねーっす。だだ誰かに言われたからそれをやってるだけの人が、自分で生き方を選んだ人間の邪魔すんなって思うっすから」

 

 もちろん成功失敗は別にしても、自分で決めるというのは、自身で責任を負うという事だ。

 それを遺伝子のせいになどしたくない。

 

「あたしの人生っす。自分で決めなきゃいけないことは自分で決めるし、誰かに決めてもらうとか生き苦しいのは絶対いやっすからね!」

 

 深く考える事は苦手なラビだが譲れない境界はある。

 デスティニープランは明らかにそれを侵害する政策になるだろう。

 自分の人生を誰かに脚本を書かせるなど真っ平だ。

 

「戦う理由なんて、その権利を守るだけでも充分っすよ。それに、ぶっ飛ばしたい奴もいるし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アルテミス要塞からオーブを見張っていたファウンデーションはミレニアム周辺の物資や人が動いているの察知した。

 抵抗する動きがあれば即座にレクイエムを発射すると宣言していた彼らはオーブへ通信を開く。

 代表であるカガリ・ユラ・アスハの答えは、ミレニアムはハイジャックされた、という酷くくだらない回答だった。

 元々適当な理由を付けて撃つつもりだった彼らはすぐにレクイエムの照準をオーブに向けた。

 ミレニアムのハイジャックが嘘だというのも、発進したミレニアムをオーブ艦隊がミサイルを撃ち込むが、全弾外れている。

 その茶番を嘲笑するオルフェ。

 レクイエムがオーブへと向けられる中で、国際救難チャンネルで通信が開く。

 

『こちらミレニアム、キラ・ヤマト』

 

 このタイミングで通信を送ってきた事にオルフェは僅かに驚いたが、シュラから生存している可能性は示唆されていたので予想の範疇だった。

 彼は皮肉たっぷりに告げる。

 

『残念だったね。僕はまだ生きている。自国の国民を犠牲にしてまで殺そうしたのにね。僕達は真実を知っている。証拠もある。それを世界中に訴える。アコードかなにか知らないが、君達は虐殺を(おこな)ったただのテロリストだ! 虐殺者の企みは、絶対に阻止する!』

 

 力強く宣言するキラの様子をオルフェは内心で嘲笑う。

 こちらを挑発し、自分達にレクイエムを向けようという魂胆なのだろうが、そんな手に誰が引っかか────。

 

「あの出来損ないを殺せ! 目標はミレニアムじゃ!」

 

 しかし、そこでアウラが、見た目通りの子供のように癇癪を起こし、目標の変更を指示する。

 

「母上っ!?」

 

 確かに、核を撃ったのが自分達だと証拠を世界中にばら撒かれるのは不味い。そういう意味では現状オーブよりミレニアムの方が消す優先順位は高いと言える。

 しかし、動かない地球の国を撃つのと今も高速で移動している戦艦を一隻を撃つのとでは難易度が段違いなのだ。

 ミレニアムなど、宇宙へ上がってから迎え討てば良いだけの話。

 だが、怒りが収まらない様子でアウラが叫ぶ。

 

「なにをしておる! 妾の命じゃっ!!」

 

 そう喚くアウラにオルフェは仕方なくオペレーター達に目標変更を指示した。

 元々オーブを狙っていたしていたレクイエム。未だにオーブ周辺を移動しているミレニアムへの標準変更も数分で可能にする。

 レクイエムが発射される。

 しかし、やはりと言うべきか、レクイエムのビームはミレニアムに当たった報告はなく、逆に宇宙へ上がる為に発射したのだろう陽電子砲の影響で完全にミレニアムを見失ってしまった。

 

「くそっ!」

 

 ここでオーブを撃てていれば、少なくとも後顧の憂いは断つ事が出来たのに。

 計画通りに事態が進まず、オルフェは苛立ちを隠し切れずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ズゴックの追加武装であるキャバリアーにラクス奪還のメンバーを乗せてミレニアムから発進しようとする。

 

「それじゃあ、マリューさん。そちらはお願いします」

 

『えぇ。キラ君も、必ずラクスさんを』

 

「はい」

 

 簡単なやり取りを終えるとデスティニーの中で備えているシンに通信を繋ぐ。

 

「シン。ミレニアムを頼むよ」

 

『……っ!? はいっ!!』

 

 本当に嬉しそうに返事を返すシン。

 これまでも、キラなりにシンを頼ってきたつもりだったが、過去の経験(トラウマ)から後一歩踏み出す事が出来なかった。

 もしかしたら自分は、今初めて隊長らしい言葉をかけたのかもしれない。

 そこでラクス奪還のメンバーに加わっているラビがキャバリアーの操舵室に入る。

 

「こっちの準備確認、終わったっす」

 

 報告に来たラビにキラが不安そうに訊く。

 

「本当に、君もこっちで良かったの? アルテミスに潜入してモビルスーツを奪うなんて危険なこと……」

 

 ユーラシアでの戦闘で死ぬところだったラビを見たキラからすればはっきり言って地球に残ってほしかったのが本音だ。

 そんなキラの心配をラビを不思議そうに返す。

 

「それ、ヤマト隊長が言います? あたし、生身ならヤマト隊長に百回中百回勝てる自信あるっすよ? 役割的にはむしろ、あたしが総裁を助けに行った方が確実じゃないっすか?」

 

 生身の戦闘訓練を受けてないキラを潜入班に入れるのは不安要素なのだ。

 それに苦笑してからかうようにアスランがキラに問う。

 

「俺と役割を交換するか? キラ」

 

 答えは分かっているくせにそういう事を言うアスランにキラは拗ねた様子でそっぽを向く。

 

(この戦いが終わったら、本格的に身体を鍛えてみようかな)

 

 アスランに殴られっぱなしだったのは地味に悔しいし、歳下の女の子に心配されるのも格好悪い。

 今まではモビルスーツのパイロットと整備や開発が自分の出来る事と割り切ってきたが、これからはラクスを守る為にも生身も鍛えた方が良いかもしれないと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レクイエムに向かうミレニアムとそれをオルフェが指揮する艦隊との戦闘が始まった頃、アルテミスに近付く一機のモビルスーツ。

 ストライクフリーダム。

 先の戦争でラクス・クラインの剣として猛威を振るった機体。

 しかし今や、ブラックナイツの駆るモビルスーツに比べて旧式の機体と言えた。

 単機でやって来たフリーダムに、シュラは自分のブラックナイトスコード・シヴァだけで出撃する。

 一瞬だけ開いたアルテミスの傘。

 それが再び閉じる間に隠れた別の機体が侵入したとも気付かずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 内部に侵入し、ミラージュコロイドを解除したズゴックが、アルテミス内部で待機している艦を破壊していく。

 同時に、ラクス奪還に動くメンバーも白兵戦を展開していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蒼き清浄なる世界の為にー」

 

 ラビがそう言って肩に担いだロケットランチャーの引鉄を引く。

 突然ブルーコスモスがよく言う言葉をやる気なく口にするラビにキラが引きつった表情で訊く。

 

「いきなりどうしたの?」

 

 これまで、ラビがブルーコスモスの思想に染まっている様子は見られなかったのだが。

 

「いや、軍学校で教官によく言わされてたから、こういう時に言えば必殺技っぽくてテンション上がるかなーって。でもダメっすね。知り合いのコーディネイターの顔がチラついて居た堪れなくなるっす」

 

 ロケットランチャーの弾を装填してもう一度引鉄を引く。

 壁が破壊されて露わになった配線にハッキング用の機材を取り付ける。

 

「ノルマ達成、と。それじゃあヤマト隊長。あたし、予定通り自分の機体を()りに行くっす」

 

「……気をつけてね」

 

「うっす。そっちもクライン総裁をよろしくっす」

 

 そう言ってラビはキラ達と別行動を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 潜入班はアルテミスへのハッキングを成功させ、隔壁が次々と閉鎖されていき、通気口にばら撒いたハロから催眠ガスを噴射した事で、生身だったファウンデーション側の人材が次々と眠らされていく。

 しかし、それでもアルテミス全域にまではガスも届かない。

 モビルスーツの格納庫近くに警備していた彼らは、銃を手に、侵入者を警戒していた。

 緊張しつつも四人一組で格納庫の扉を守る彼ら。

 

「おい。今声が聞こえなかったか?」

 

 一人の言葉に隣に居たもう一人が否定しようとしたが、それはすぐに否定される。

 

『ゼッコーチョー!』

 

 機械音声にも、男性の声にも聞こえる声に、肩が跳ねる。

 そこで彼らは二人一組に分かれて様子を見に行く事になった。

 警戒をしつつも、声の方向に通路を曲がる二人の警備兵。

 少し離れた位置にそれは居た。

 

『ゼッコーチョー!』

 

 そこにはヒゲが描かれたハロが跳ねたり転がったりしていた。

 

「なんだこれ?」

 

 玩具の姿に警戒緩んだ一瞬。

 天井の通気口から二人の背後に音も無くゆらりと人影が逆さで上半身だけ降りる。

 そのまま後ろの警備兵の口を手で塞いで喉にナイフを刺した。

 飛び散った血飛沫に前の兵が振り向くと、喉をナイフで刺された仲間が映った。

 

「ひぃっ!?」

 

 困惑と同様で後退る兵に、刺したナイフを捨てて、拳銃を抜くとそのまま撃ち殺す。

 通気口から降りると、ラビは殺した兵からサブマシンガンを奪う。

 

「教わらなかったっすか? 敵を前に動き止めるなって」

 

「なんだ今の銃声はっ!?」

 

 残った警備兵が向かってくる足音が近付いてくる。

 ラビは全力で走って向こうの兵士が曲がる前にサブマシンガンの弾をばら撒く。

 適当に撃った弾は前にいた兵士を殺せたが、後ろに居た兵は前の兵士が盾になったおかげで仕留め損ねる。

 

「ちっ!」

 

 弾切れになったサブマシンガンを捨てて、突撃する。

 

「うわぁっ!?」

 

 半狂乱で撃ってくるサブマシンガンの弾を体を低くし、ジグザグに走って回避するラビ。

 一秒未満で敵兵に接近し、手首を掴んでサブマシンガンの狙いから外させる。

 首に拳銃を突きつける。

 

「武器を捨てて、格納庫のロックを外してくれっす。そこは独立してるから、外側からじゃ開けられないらしいんで」

 

 努めて軽い口調でお願いするが、敵兵は怯えた様子で首を振る。

 

「た、たすけ────っ!?」

 

 命乞いをする敵兵にラビは冷たい視線を向けた。

 

「モスクワを虐殺しておいて、自分は命乞いっすか。ホントに殺してやろうか、おい」

 

 直接ボタンを押してない彼からすれば、モスクワにレクイエムを撃った事など上がやった他人事なのかもしれないが、それが仲間以外に通用すると思ってるなら大間違いだ。

 

「開けるんすか? それとも……」

 

 指にかけている引鉄を擦る動作で脅す。

 

「わ、分かった……! だから撃たないでくれ」

 

 サブマシンガンを捨て、両手を上げると格納庫の扉の前まで移動する。

 背中に銃を突きつけられながら暗証番号を入力すると、格納庫の扉が開いた。

 するとラビは笑みを浮かべる。

 

「ありがとっす。これはご褒美っ!」

 

「ぐぎゃっ!?」

 

 後頭部を掴んで顔を壁に思いっきり叩きつけた。

 前歯が折れる音と痛みに顔を押さえて悶え苦しむ敵兵。

 ラビはついてきていたヒゲの描かれたハロを抱える。

 格納庫は無重力らしく、一気に中へと突っ切る。

 

「アレだっ!」

 

 視線を動かして見つけたモビルスーツ。

 中の整備兵が動揺してる間にラビは床や壁を蹴ってそのモビルスーツの所まで移動する。

 

「退いてっ!!」

 

「おわっ!?」

 

 その機体を準備してたのだろう整備兵を蹴り飛ばして、開いているコクピットの中へ乱暴に乗り込み、ハッチを閉じる。

 

「そんで!」

 

 ハロの中のコネクトを引き抜き、モビルスーツに接続する。

 すると、モビルスーツのOSが書き換えられていく。

 このハロの中にはナチュラル────というより、ウィンダムを調整する際に神経伝達速度などをラビ用にキラが合わせた設定のOSデータ。

 それをモビルスーツに接続すると強制的に書き換えられるようにデータが入っている。

 たっぷり五分、おそらくはコーディネイター用だったOSがラビ用の設定に書き換えられた。

 

「ゼッコーチョー!」

 

「よーしよし! えらいえらい!!」

 

 書き換え終了を報せるハロの頭をラビが撫で、コクピットの後ろに置く。

 システムや武装の確認。

 スピーカーをオンにして外に警告する。

 

「出撃するっす! 死にたくなかったらハッチを開けて退避して!」

 

 操縦桿を握り、ペダルに足をかける。

 緊張を誤魔化す為に深呼吸した。

 

「大丈夫動かせる! モビルスーツなのは同じなんだから……!」

 

 無理やり機体を固定しているハンガーを破壊して自由になる。

 開いたハッチ。

 ラビは律義に言った。

 

「ラビ・トーチス、ブラックナイトスコード・ルドラ。発進するっす」

 

 スラスターを噴かせてアルテミスの外へと飛び出す。

 

「うわぁ……」

 

 全天周囲モニターから映される世界。

 それは、これまでモビルスーツから見た景色とは違い、宇宙にそのまま放り出されたような感覚だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アスラン・ザラの乗るフリーダムに足止めを受けていたシュラ。

 内部に敵が侵入したと知ってもこちらを放置する訳にもいかず、戦闘は続いていた。

 そんな中で、一機のブラックナイトがアルテミスから飛び出してきた。

 

「イングリットか!」

 

 中の敵モビルスーツは排除したのかと、アコードの読心で確認しようとする。

 しかし、読み取った相手の思考にシュラは一瞬、自らの思考が止まった。

 

『だぁあああぁあっ!!』

 

 対艦刀を引き抜き、シヴァへと襲いかかってくるルドラ。

 ほぼ脊髄反射で対艦刀の一振りを回避した。

 

「お前は……っ!?」

 

『ウィンダムとは大分勝手が違うけど、武装さえ分かれば後はなんとかなるっすよ!!』

 

「ラビ・トーチスかっ!?」

 

 追撃の対艦刀をシュラは困惑する思考の中で回避した。

 

 

 

 

 

 

 




ブラックナイトスコード・ルドラ(イングリット機)
アルテミス内で暴れるズゴックに対処する為にイングリットが乗り込もうとした機体。
メイリンのハッキングにより格納庫までの通路が封鎖されたので、イングリットがラクスの奪還阻止を優先している間にラビによって強奪される。
基本性能は他のルドラと同様だが、若干センサーは強化されている。
ラクスと自機を奪われたイングリットはこの後にオルフェとアウラからしこたま怒られる。
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