ファウンデーションの近衛師団長に剣で勝ったら目を付けられた件 作:ブルーコスモスへの鎮魂歌
機体の色は全体色が黒で金のライン。
妹のリデラードの橙色と近い色なのと、オルフェのカルラと同じ金のラインを入れる事で、貴方を傍で支えたい、という意思表示。
当然オルフェは気付いていない。
コクピットの中に迫ってきた大量の針だか杭だかの攻撃。
あの時は本当に死んだかと思った。
だけどあの一瞬。あの瞬間だけはいつもより感覚が鋭敏だった気がする。
動体視力には自信がある。
反射神経や運動神経もそこらの大人やコーディネイターにだって負けない自信もある。
だけどコクピットの装甲を破り、あたしを突き刺そうと迫る針。
アレを回避した時は明らかに異常だった。
高速で迫る針を捉えられる。
どう動けばそれが避けられるのか予測出来る。
ギリギリだったけど、五体満足でこうして生きている。
あの一瞬は、これまで固く閉じていた箱が開いたような気がしたのだ。
対艦刀を盾で受け止め、いなしつつシヴァはやり返すように右のヒートソードで反撃する。
それを阻むようにアスランが駆るフリーダムからパージされたドラグーンがシヴァを狙う。
「ちっ!」
舌打ちをしつつ、ドラグーンから撃たれるビームの雨を回避する。
「なぜ君が生きているっ!」
距離を測りつつ襲いかかってきたルドラに通信を繋げて問う。
生きている筈がないのだ。
なのに、目の前に現れてモビルスーツで向かってくるのが信じられないでいた。
『死ぬかと思ったけどね! 全部避けてやったよ、アレ! 心読めるんなら分かるっしょ!』
避けた? アレだけの攻撃をあの至近距離で?
嘘を言っている訳ではないのを理解してしまったからこそ動揺を隠せなかった。
『チェストォオオオオッ!!』
大振りに振るわれた対艦刀を避けると、アルテミスから侵入していた赤いモビルスーツが出てきた。
同時にアスランから通信が飛ぶ。
『撤退するぞ!』
『了解っす!』
「待て!」
引き留めようとするが、アルテミス内部を確認する必要があり、敵を追うよりそちらの方が今は優先だった。
『レクイエムを破壊するついでに、今度は叩き潰してやるから、首洗って待ってろっす!』
そんな捨て台詞を吐いて振り返る事なく去っていく敵モビルスーツ。
肺が詰まり、息をするのを忘れる。
殺したと思っていた少女が生きていた。
ようやく息を吐くと、自分の手が震えているのに気付く。
モビルスーツ奪われた事への怒り?
違う。
敵の戦力が増強した事への憤り?
違う。
これは、歓喜だった。
殺した筈の好敵手が自分の前に再び現れ、首を洗って待っていろと言う。
それが、自分でも理解出来ないくらいに昂っている。
その感情は────。
時間は少し戻り、宇宙に上がったミレニアムからズゴックが飛び立ち、敵艦隊と交戦するまでの間、アグネスにルナマリアから
「どうしたの?」
『……あんたがクライン総裁が居ない間に隊長にアプローチをかけないのを不思議に思ってね』
アグネスが前々からキラにアプローチをかけていた。
ラクスが居ない今こそが絶好のチャンスな筈。
なのにアグネスはキラに言い寄るどころか、むしろ距離を取ってるように感じた。
ルナマリアの疑問に、アグネスは少しだけ眉を動かして返す。
「いいのよ、もうあんな人」
アグネスの返答に瞬きするルナマリア。
ミケール大佐を逮捕する作戦の前日に自分の好意を無下にされた事。
オーブでラクスを幸せに出来ないと泣き叫ぶ情けない姿。
それらを見て、アグネスの中でキラへの興味がスーッと冷めていくのを感じた。
決定打になったのが、ついさっきのシンにミレニアムを頼んだ件だ。
自分にも、せめて隊の全員に声をかけるところを彼が頼ったのはシンだけだった。
どこまでも自分を軽んじるキラに完全に興味を失ったのだ。
「つまり、あたしがフラレたんじゃなくて、あたしの方が見限ったのよ」
『……まぁ、あんたがそれで納得したならそれで良いけどさ』
ルナマリアからすれば、アグネスがキラにちょっかいをかけて微妙な空気にならなくて済むならなんでも良かった。
簡単な激励を交わして通信を切る。
コクピットの中でアグネスは別の男を思い浮かべていた。
アスラン・ザラ。
元ザフトの軍人で現在はオーブ軍に移籍しながら一佐という階級に居る男。
アカデミーに在籍してた頃から彼に興味はあったが、会う事はないだろうと思っていた。
この短期間でファウンデーションの事を調べる優秀さ。
アコードを相手にしてキラを救い出すほどのモビルスーツパイロットとしての技術。
あの意志の強そうな瞳。
彼こそが自分の隣に相応しい。
新しい獲物を見つけた猛禽のような眼でアグネスは下唇を舐める。
元々、アグネスが今回の作戦に参加するのは、コンパスの一員としての使命感でも、アコード達がやった虐殺への義憤でもない。
当然デスティニープランへの反対意思でもない。
ただ、自分を罠に嵌めて騙し、汚名を着せたファウンデーションに対して、眼にもの見せてやらなければ気が済まない、という個人的な理由である。
そこにアスラン・ザラという男が追加されただけ。
この戦いが終わったらメイリンを通じてアスラン・ザラと連絡を取れないか訊いて見ようと思った。
ミレニアムがファウンデーションの艦隊に近づき、戦闘可能距離まであと少しという状況。
ハインライン大尉が、耐熱耐衝撃結晶装甲という新兵器を展開する。
敵艦隊から陽電子砲を始め、多数のミサイルやビームが向かってくるも、ミレニアムは最も弾幕の薄い正面を減速する事なく駆け抜ける。
艦隊を突破すると同時に予め散布して置いたミサイルが時間差で敵艦隊に襲いかかった。
ミレニアムは転進しながら向かってくるミサイルを迎撃システムで撃ち落とす。
残った敵戦艦を捉えると同時に双方からモビルスーツが発進する。
「なめるなぁああっ!」
真っ先に前に出たシンのデスティニーが左背面にあるビーム砲を立ち上げ、敵モビルスーツを横薙ぎに破壊する。
「あたしだって!」
続くようにブラストシルエットに換装したルナマリアのインパルスも左右のビーム砲で敵モビルスーツやミサイルを薙ぎ払っていく。
デスティニーはその勢いのままに敵戦艦に零距離射撃でビーム砲を撃ち、撃墜した。
敵の火力がデスティニーに集中する隙を突く形でアグネスのギャンも別の戦艦に接近していた。
「墜ちなさいよ!」
長柄のビームアックスをブリッジに振り下ろして潰すと、念押しにエンジンに胸部のビームマシンガンを撃ち込んで撃沈する。
三機のモビルスーツを突破し、ミレニアムに取り付こうとする敵機をヒルダのゲルググが次々と撃破する。
「ミレニアムには近づけさせないよ!」
この場にいるコンパスのパイロットは皆、ザフトの赤服であり、幾多の戦場を戦い抜いてきたエース達である。
それを単純な行動しか取れない無人機や、生半可なパイロットでは大した足留めにもなりはしない。
次々とファウンデーションやザフトのクーデター軍のモビルスーツや戦艦を墜としていく四人。
先発隊と思われる敵をあらかた沈めると、本命が高速でこちらへ向かってきた。
「ブラックナイツが来るよ!」
ヒルダが通信で警告すると、シンが対艦刀を引き抜く。
「あいつらにビームは通じない! ルナとアグネスは援護をっ!」
だからこそ対艦刀を温存していた。
実体剣である以上、衝突すれば磨耗は避けられず、ブラックナイツとの戦闘前に、損耗する訳にはいかなかったから。
「対艦刀なら、こっちにもあるわよ!」
ブラストシルエットをパージし、先にミレニアムから発進していたソードシルエットに換装する。
「前にも言ったでしょ! あたしの機体は近接専用だって!」
アグネスも大人しく援護に徹する気はないらしい。
そうこうしている内にブラックナイツが射程内に入った。
「ホント馬鹿だな。お前ら俺達には勝てねーんだよ」
「キャハハハ! また墜としてあげる!」
敵の声にシンは操縦桿を握る手に力を入れ、ペダルを強く踏んだ。
(なめるなって言っただろ!)
向かってくるブラックナイツの機体をそれぞれ僅かな隙間を通って、衝突を避け、反転して対艦刀を向ける。
デスティニーの高速機動を活かし、三機のブラックナイツを相手にヒットアンドアウェイを繰り返して瞬間的な一対一に持ち込んでいるのだ。
敵の動揺を感じ取ってシンは叫ぶ。
「この間はジャスティスだったから負けたんだ! デスティニーなら、お前らなんかにぃ!!」
光の翼を撒き散らし、残像を発生させながら対艦刀を勢い良く振るう。
その重さに一機のブラックナイトを弾き飛ばし、背後から迫るもう一機に対して逆に背後を取り、掌に搭載されているビーム砲の零距離発射で右腕の関節を破壊した。
シンのデスティニーが三機のブラックナイツを相手にする中、リデラードの乗るブラックナイトをルナマリアとアグネスが二人がかりで相手をする。
「この! なんで……!?」
アコードであるリデラードにとって、目の前の敵は簡単に墜とせる筈の雑魚だった。
アコードとして優れた資質、なによりもモビルスーツ戦において敵の心を読むという強力なアドバンテージ。
これが一対一や多対一なら彼女の思惑通りだったかもしれない。
しかし、どちらも近接戦で確実に仕留めにきている。
心を読んで対応していては間に合わない程に。
それ程に二人の息が────正確には突撃するアグネスとそれをフォローするルナマリアの連携が上手かった。
「なによ! アコードなんて偉ぶっちゃって! 全然大したことないじゃない!」
アグネスの嘲笑にリデラードは奥歯を鳴らす。
地上での戦闘では、ファウンデーションの突然の裏切り。無人機による援護。
圧倒的不利な状況からの戦闘と違い、ファウンデーションは明確な敵であり、手数を補う為の無人機の大半は失ってしまった。
アコードのミスは、一度の勝利でシン達を格下と思い込み、自分達が何故勝てたのか。その考察を辞めた事にある。
しかし、アコードの能力もまた高いのも事実だった。
撃墜はされないが、こちらも撃墜出来ない。
そしてコンパスの勝利とはオーブを撃たれる前にレクイエムを破壊する事にある。
(撃たせやしない! オーブを! 絶対に!)
シンは内心で自分を鼓舞すると同時に、レクイエムの光が放たれた。
捕えられていたラクスとその秘書であるリオを救出した面々は、戦闘宙域から離れたところで、キラとアスランが機体を交換していた。
フリーダムに乗り換えたキラはズゴックと通信する。
「ラクスを頼む。僕はレクイエムへ」
『気をつけろよ。奴らは強い』
「うん。でも今度は負けない。僕は独りじゃないから」
こうして、大切な人を取り戻す為に力を貸してくれる仲間がいる。
全てを自分独りで背負う必要はないし、出来る訳もないのだと、キラはようやく理解したのだ。
そこでラビが通信を繋いできた。
『ヤマト隊長ー。レールガン二丁あるなら片方こっちにくれっす』
奪ってきたモビルスーツであるルドラにはビームライフルしか遠距離武器がない。
ザフトのクーデター軍はともかく、ブラックナイツ相手には、手数を増やしたかった。
「ラビ。君はアスランと一緒にラクスをミレニアムに送り届けて」
ようやく助け出した恋人を少しでも安全にミレニアムまで送り届けたいのと、これから激戦になる月の戦闘にラビを連れて行きたくないという判断からだった。
キラの命令にラビは首をかしげてアスランに訊く。
『ザラ一佐、正直あたし要る?』
『いや。ラクスは俺が責任を持ってミレニアムに送る。君はキラと一緒にレクイエムの破壊に向かってくれ』
「アスラン……!」
責めるようにアスランに視線を送るキラ。
しかし、アスランからすればこのやり取りすら無駄なのだ。
『敵はいつ次のレクイエムを発射するか分からない。戦力はそっちに集中させるべきだ。違うか?』
と、正論で返される。
キラも
ここまで来た以上、優先させるべきはレクイエムの破壊だ。
アスランが居る以上、ラクスの護衛に戦力を割くべきではない。
「分かった。でも無茶はしないでね」
そう言ってレールガンを一丁ラビのブラックナイトに渡す。
『了解っす』
返事をしてフリーダムから渡されたレールガンを後腰にマウントする。
そこでメイリンから報告が上がった。
『ファウンデーションがレクイエムを発射しました!』
その報告に全員の血の気が引く。
だが続いた報告に全員が胸を撫で下ろした。
『フラガ大佐のアカツキがレクイエムから発射されたビームを防ぐのに成功! 離脱も確認したそうです!』
「ムウさん……!」
間に合ってくれた、と安堵の息を吐く。
先に宇宙へ打ち上げたムウの乗るアカツキで一度だけ防ぐ。
アカツキのビームを弾く特殊装甲であるヤタノカガミなら理論上は可能だ。
それをマリューから聞かされた時はなんて無茶を、と思った。
理論上可能とはいえ、ヤタノカガミですら耐え切れない可能性もあった。
それでもその任務を任せたのは、それだけこちらに余裕がなかったから。
なにはともあれ、これで一度分の時間は稼げた。
次発射されたら今度こそオーブは終わりだ。
『キラ。どうかお気をつけて』
「うん。行ってくるね」
この戦いが終わったら、ラクスに話したい事がたくさんある。
聞きたい事もたくさん。
だから彼女をこれ以上悲しませない為に生きて帰るのだ。
ズゴックから離れたフリーダムが月への軌道を取ってスラスターを噴かした。
フリーダムとルドラが月周辺に到着した頃、ミレニアムに辿り着いたラクスが放送で全世界に呼びかける。
自分はファウンデーションに監禁されていた事や、彼らの行動や思想に一切賛成出来ない旨を語る。
レクイエムを守るザフトのクーデター軍にフリーダムとルドラの二機で相手をする。
フリーダムからパージされたドラグーンや両手のビームライフルで次々とザクの
「ほらほら! 死にたくなかったらこっち来ちゃダメっすよ!」
ラビもビームライフルでザクのコクピットを撃ち抜いた。
「あたし、ヤマト隊長みたいに出来ないんだから!」
月の表面に着くと、シヴァが再び現れる。
『これ以上は行かせん!』
シュラの駆るシヴァが、フリーダムに襲いかかろうとする。
しかし、ラビのルドラが割って入る。
『ラビ!』
「ヤマト隊長はレクイエムに! コイツは、あたしの獲物だぁああああっ!!」
突進を回避したシヴァに、対艦刀の回転斬りを避けさせ、一旦距離を取らせる。
「早く行ってっす! あたし、こいつに言いたいことがあって忙しいんで!」
シュラの足留めを買って出るラビ。
どうするべきか迷っていると、コクピットの中で警告音が鳴る。
フリーダムが動くと、ビームの線が通り過ぎた。
『新手!?』
モニターには一機のモビルスーツ。
全身が純白で金のラインが入っているが、そのデザインは他のブラックナイトと酷似していた。
ブラックナイトスコード・カルラ。
アコードのトップであるオルフェ・ラム・タオの駆る最後のブラックナイトだ。
その機体から解き放たれたドラグーンがフリーダムとルドラに襲いかかる。
キラはドラグーンのビームを回避しつつ自らもドラグーンを展開するが、カルラのドラグーンの方が性能が優れている上に、読心能力により、即座に二枚のドラグーンが撃ち落とされた。
ビームサーベルを引き抜き、カルラと近接戦闘を繰り広げる。
『憐れな奴!』
『なにが!』
『そんな旧式で我らに挑もうとはな!』
接触している両機に互いのドラグーンが火を吹くが、その前に距離を取る。
『モビルスーツの性能で、勝敗が決まるわけじゃない!』
ドラグーンでの勝負は分が悪いと判断し、レールガンでカルラのドラグーンを撃ち落とすキラ。
しかし、動きが止まった一瞬にカルラが接近する。
『そうとも! だから我らに劣る貴様が勝つことは────』
「邪魔っす!」
フリーダムを斬ろうと加速したカルラに、シヴァを振り切ったラビのルドラが対艦刀で間に入る。
ルドラにドラグーンのビームが襲いかかるが、コクピット部分だけをシールドで庇いつつ、他の装甲に当たるのも構わずに突っ込む。
「うわ! ホントにビーム効かねー!?」
フェムテク装甲の性能に感嘆しつつ、カルラとフリーダムに距離を取らせる。
その行動に苛立つオルフェ。
『貴様のような旧人類が、我らの機体に乗るなどっ!』
「あんたの許可なんてこっちは必要としてねーんすよっ! 大体、あたしみたいな女の子が簡単に奪えるザルな警備敷いてるのが悪いんすも、んんっ!」
責任転嫁を叫びながら、開かれたカルラの胸部から放たれたビーム砲に吹き飛ばされる。
『ラビッ!?』
仕留めようと動くカルラにフリーダムが両腰のレールガンで応戦する。
カルラはレールガンの弾を回避するが、ラビは敵の注意を引こうと舌戦を仕掛ける。
「大体、クライン総裁に相手にされないからってヤマト隊長に八つ当たりとか女々しいんすよ!」
『貴様……っ!!』
思った以上に効いたのか、ドラグーンの砲火がルドラに向く。
(ビームはこっちで引き付けないと……!)
せっかくのフェムテク装甲。
ルドラでビームの盾になれば、キラが必ず敵を討ってくれる。
もちろん、そんな無茶がいつまでも通じる訳はないだろうが。
そんな期待は、メサイアの背後から向かってきた超高速ミサイルによって打ち消される。
何発向かって来てるのか分からない数のミサイル。
キラが全砲門で撃ち落としにかかるが、あまりの数に追いつかない。
ラビの方にも向かってくるミサイル。
ルドラを月の地表に急加速させ、ギリギリのところで直角に機動を変える事で地表に激突させる。
それでも全てのミサイルがぶつかった訳ではなく、まだこっちへ来るミサイルをビームライフルで撃つ。しかし────。
(全部はムリ……!)
ラビの射撃能力では全てのミサイルを撃ち抜く事は出来ず、シールドが耐えられるのを祈った。
だが、ルドラに接近していた筈のミサイルは、シヴァのビームサーベルによって斬り落とされる。
「はい?」
敵が敵の攻撃を無力化するという珍事に、ラビは瞬きをした。
それはオルフェも同じだったようだ。
『なにをしているシュラ! どういうつもりだ!』
『彼女との戦い……手出しは無用だ』
『シュラ!!』
オルフェの怒声が響くが、フリーダムがカルラに仕掛ける。
どんどんと距離が離れていく。
「これは、もう援護どころじゃないかー……」
『で? どういうつもりっすか?』
ラビ・トーチスの問いに、シュラは自分でも馬鹿な事をしていると思った。
まさか、敵を助ける真似をするとはどうかしている。
「なに。俺は君の獲物なのだろう? つまらない横槍無しで戦いたい」
オルフェがやって来た時、増援が来た安堵や喜びより、苛立ちの方が勝ってしまったのだ。
それを自覚したら、もう駄目だった。
この場の確実な勝利より、彼女との戦いを優先してしまった。
キラ・ヤマト。
シン・アスカ。
そしてアスラン・ザラ。
モビルスーツのパイロットとして、ラビ・トーチスよりも優れている者はこの戦場に多く居る。
なのに、ラビと戦える事にどうしようもなく心が躍っていた。
シヴァがヒートソードをかまえると、ルドラも対艦刀を構える。
『一応聞いておきたいんすけど、この勝負、あたしが勝っていいんすよね? もっとも、今回は泣いて負けてくださいって頼んでも、全力で叩き潰すつもりっすけど』
初めて剣を交えた時と似た問いかけをするラビ。
だが、言葉の後半の言う通り、内心も勝つつもり────いや、絶対勝つと意気込んでいる。
その意気にそうでなくてはと、シュラは笑みを浮かべた。
「もちろんだとも。全力で来るといい」
挑戦者はどちらか、分からせてやる。
「近衛師団長、シュラ・サーペンタイン」
『世界平和監視機構改め、宇宙海賊コンパスのラビ・トーチス少尉っす』
二人だけの