なんとしてでも元の世界に帰りたい兄妹VSファンタジー   作:酉柄レイム

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第11話 中間試験とは

「中間試験? 俺が知らない話しないでくれよ」

「あなたみたいな常識のないド底辺のサルには難しい話でしたね」

「言い過ぎ言い過ぎ。ちょっとボケだだけだろうがふざけんな」

 

 4月も残り一週間と少しで終わりを迎えるという頃。あの一件からかなり仲良くなったフィオナと俺たちは、昼休みを一緒に過ごすことが当たり前になっていた。今日みたいに、麻衣は時々自分のクラスの子たちと昼食を食べることもあるが、俺とアーサー、フィオナは毎日一緒にいる。

 そのせいで、クラスメイトから「なんで伊世が……?」「どんな弱みを……?」「アーサーが一緒にいるから大丈夫だろ」「あいつのジョブって魔王だっけ」と好き勝手言われているのは誠に遺憾だ。多分スカート捲りの悪いイメージがずっとあるせいだと思うから、今度神様にみんなの記憶を消してもらおうと思う。

 

《私のことを便利な道具だと勘違いしていないか?》

《違う! そんなわけないだろ! 信じてくれ!》

《わかった、信じる》

 

 こいつ、悪い男に騙されそうだな……。

 

「甲斐って成績悪かったっけ?」

「可がない」

「可もなく不可もなくは聞いたことがありますが……」

 

 だってさぁ、興味ねぇんだもんよ。魔法のことは気になったから色々勉強してみたけど、結局数学とか物理とかの延長だし。魔法はイメージだっつっても、厳密に言えば魔法を発生させるまでのプロセスはプログラムみてぇなもんだってどんな冗談だよ。むしろスカート捲りできた俺って天才なんじゃねぇの?

 魔法は、『感覚』を『プログラム』で補強することで初めてしっかりした形で使用できるらしい。『プログラム』ってのはどういう方向で、どういう出力で、どういう配分でとかを数式として独自に組んだりする。一般的な魔法、例えば各属性を発生させるだけの初級魔法は教科書にそのプログラムが載っているが、それ以上は自分でやれってのが通常だ。

 

 とはいっても、『感覚』だけでやっていける天才ってやつも世の中にはいるらしい。そういうやつの魔法をプログラムに表そうとするとめちゃくちゃ理不尽な数式になってるとか、そういう話は面白いんだけどなぁ。

 

「そういや甲斐ってあんまり魔法使わねぇよな」

「人に迷惑をかけるのが怖い」

「反省しているようで何よりです」

 

 スカートを抑えて俺を睨むフィオナ。ごめんて。

 

 でも、あれもプログラム部分を理解していれば、絶対破壊ゴーレムくんだけを狙い撃ちできるようになっていた、ということでもある。人に迷惑をかけないためにはめちゃくちゃな感覚派になるか、勉強するかのどちらかしかない。感覚派にはなろうと思ってなれるわけでもないし、そもそも試験のためにはどのみち勉強しないといけない。クソだな、学生ってのは。

 

「中間試験は実技と筆記。どっちかが極端にできたらもう片方には目を瞑るってのもねぇからなぁ。勉強するしかないぜ」

「やだやだやだやだ! 勉強やだ!」

「……」

「思うところがあるならせめて何か言ってくれよ。寂しいだろうが」

「ハエ」

「ハエみたいとかじゃなくてそのものなのかよ」

 

 うるさくて汚くて不快ってことか? 仲良しゲージは……60だ。よかった。60に対する扱いじゃねぇけど、関係ってのは千差万別だからな。

 しかし、元々勉強に対して忌避感がすげぇのに、義務教育レベルの知識を植え付けられているとはいえなじみのない魔法もあるとなったらマジで自信がない。こんなことなら「はじめてのことがいっぱいだから勉強しておいた方がいいよ」と言っていた麻衣の言葉をちゃんと受け止めるべきだった。偉すぎだろ俺の妹。

 

「つーか、アーサーとフィオナは大丈夫なのかよ。俺ばっか責めやがって」

「私はもちろん。しっかり教えていただいていますから」

「俺は無理! 甲斐と一緒だぜ!」

「ヒュー! 一緒じゃん! 安心したぜ!」

「アーサーさんは実技で満点をとれるのでまだマシですが、ダボカスはどちらも不安ですからまったく安心できませんよね」

「まって、俺のことダボカスって言った?」

 

 フィオナが首を傾げる。そうだよな。そんなひどい呼び方しないよな。

 

 いやぁよかった。補習一人だけって寂しいから嫌だったんだよな。アーサーが一緒なら楽しいから安心だぜ。実技の補習は一人だろうけど。

 ……いや、待てよ。俺とアーサーが勉強できなくて、フィオナが勉強できる? 仲良くなるならこれを利用しない手はないんじゃないか? ほら、アレだ。学生で試験前といえばよくあるイベント。

 

「そうだ、勉強会しねぇか?」

「勉強会……?」

「なにか辛いことでもありましたか?」

「しいて言うなら俺が信じられねぇアホだと思われてるこの扱いかな」

 

 でも確かに不自然だったか。さっきまでフィオナから「ハエ」って言われるくらい嫌がってたのにいきなり勉強会なんて。ここは、勉強したいっていうわけじゃない別の理由を用意する必要がある。仲良くなるためには勉強会は必須だ。万が一にもやらないなんてことにならないよう、うまく立ち回る必要がある。

 

「俺、勉強でみんなと会えないってなるのが寂しくて……」

「あなたのような邪悪が?」

「可愛らしいこと言った俺に対して邪悪って表現すんじゃねぇよ。いいだろ別に。普通に寂しいだろうが」

「言い方は甲斐っぽくなかったけど、本心だろうな! いいじゃん勉強会。俺も助かるし!」

 

 やっぱりアーサーはいいやつだ! かなりノリが合う。もう親友と言ってもいい。仲良しゲージがあれば100を軽く突破している。この前までフィオナの仲良しゲージがめちゃくちゃマイナスだったから、上限も際限なくあるだろうしな。

 勉強会っていうのは仲良くなるためにはかなり重要だと思う。フィオナに教えてもらうことで、フィオナも自然と俺の試験突破を応援してくれるようになって、試験を突破できれば一緒に喜べる。一体感を得ることができるんだ。関係において共感ってやつはかなり大事で、それを得られるとなればやらない手はない。

 

「でも、フィオナ一人だと負担すごくねぇか? 俺は底抜けにバカだぜ?」

「俺も」

「なぜ誇らしげに言って、それに同調できるのかが心底疑問ですが……。別に構いませんよ。勉強は毎日していますし、あなたたちに教えることで定着もするでしょうし」

「よっしゃ! 頼む! 放課後に自習室とかにするか? 誰かの家っつーのもおもしれぇけど」

「うちはダメだ」

 

 なぜならうちにはダイナマイトボディのサキュバスがいる。あんなのが義理とはいえ母親だと知られたら、「どうりで邪悪だと思いました」と嫌な納得をされるに違いない。しかも遺産狙いだから、アーサーが討伐する可能性すらある。流石にそれは可哀そうだ。

 それに、せっかく勉強するならちゃんと効率よくやりたいしな。誰かの家に集まるなら、その移動時間が結構なロスになる。全員の家が近いってわけでもねぇし、学校でやるのが一番だろう。

 

 しかし、俺がわざわざすぐに自分の家はダメだと否定したことが引っかかったのか、フィオナが俺をじーっと睨みつけている。かわいい。

 

「なんだ?」

「いえ……どうせいやらしいものでもあるんだろうな、と思っただけです」

「バカ言うな。バカ言うなよ」

「図星を突かれすぎて反論がチープになっていますが」

「そういうのってどうやって手に入れるんだ? 未成年なのに」

「いや、厳密に言うと持ってないんだよ。持ってないんだけど……」

 

 いやらしいのが家にいるなんて口が裂けてもいえねぇ。でもそれが説明できないままだと完全に「俺の部屋にいやらしいものがある」と誤解される。クソ、なんて言えばいいんだ!?

 ……まぁ別に誤解されてもいいか。フィオナはそもそも誤解してるし、アーサーはそんなことで引くようなやつじゃねぇし。今更俺がいやらしいものを持っているってなっても、そんな評価下がんねぇだろ。下がる評価がない可能性もある。

 

「まぁ、そういうのは個人の趣味趣向ですので別に構いませんが……そうですね。放課後に自習室でやりましょうか。麻衣さんはどうしますか?」

「範囲が違うけど、麻衣ならフィオナと勉強会するって言ったら飛んでくるだろうな」

「ふふ。麻衣さんは可愛らしいですよね」

「おい、俺を見ながら言って含みを持たせてんの気づいてんだからな? 鈍くねぇんだよ俺は」

「でも麻衣ちゃんマジで可愛いよな。クラスで人気出そうな感じするぜ」

 

 うーん……そうだろうなぁ。あいつ、ノリいいし。俺みたいに変な感じでノリがいいんじゃなくて、ちゃんとノリがいい。そんで可愛くていいやつだ。あれで人気が出ないなら、麻衣のクラスの男連中を集めて、なんで麻衣のことが好きじゃないんだと説教するしかない。『女の子 可愛い』で検索したら一件目でヒットしそうな女の子だからな。もちろん身内贔屓もあるとは思うけど。

 弱点は面食いってことくらいか。あいつ、顔だけいい悪い男に騙されないか心配なんだよなぁ。

 

《お前には騙されているしな》

《家族だからノーカンだろうが》

《騙している自覚はあるのか……》

《兄貴、何の話?》

《気にすんな。今日も可愛いよ》

《キッモ。二度と話しかけないで》

 

 家族との絆が薄くなってしまった。追及されないように話を逸らそうとしたがあまりに……。麻衣の場合、照れ隠しとかじゃなくて本気でキモいと思ってるし話しかけてほしくないと思っているのが悲しいところだ。刹那的なものでずっとそうっていうわけじゃないのが救いだな。

 そういえば話逸らすなら勉強会のこと言えばよかったじゃねぇか。バカか俺は。バカだった。バカだから勉強会するんだった。

 

「ところで、どの教科が苦手なんですか? 甲斐はすべてだとして」

「随分失礼な仮定してくれんじゃねぇか。文系科目は赤点回避くらいできるっての」

「俺は全部無理!」

「……気合いを入れる必要がありそうですね」

 

 実は見栄張って文系科目はいけるって言ったけど、そんなに自信ないって今から言って間に合うか?

 

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