なんとしてでも元の世界に帰りたい兄妹VSファンタジー   作:酉柄レイム

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第7話 第一歩

 仲良しゲージは-500まで回復を見せ、エイリーンの攻略は順調。マイナスな時点で順調じゃねぇだろなんていう正論を聞く気なんてあるはずもなく、俺はいつもの場所で麻衣と顔を突き合わせて作戦会議を開いていた。

 

「仲良しゲージは?」

「-500」

「私は20」

「俺が敢えて変な行動をとることによって麻衣に対して同情させる作戦はうまくいったみたいだな」

「別にいつも通りだったと思うけど……」

 

 俺と同じく……っていうにはマイナスの中でも差があったけど、俺と同じくマイナスになっていた麻衣の仲良しゲージは20まで回復していた。麻衣もちょっとブラコンだから、エイリーンが俺を悪く言うと突っかかるけど、それ以外は気になるところがないどころか、「エイリーンさんかわいいよ!」と家で俺に言ってくるくらいだから、結構いい関係を築けているんだろう。

 

「この分だとエイリーンの人間嫌いの理由は聞かなくてもよさそうだな」

「私はよさそうだけど、兄貴はだめじゃない?」

「大丈夫だろ。だってよく考えてみろよ。俺-777から-500だぜ? +277じゃん」

「絶対食べたくない嫌いな食べ物を、調理方法によっては食べられるようになったけどどっちにしろ嫌いで食べたくない、みたいな状態じゃない?」

 

 流石俺の妹、わかりやすい。じゃあダメだな俺。やっぱりエイリーンがなんで人間嫌いなのかを探る必要があるか……。

 

 それに関しては、あんまり心配していない。このままうまくいけば、麻衣はエイリーンと仲良しになれるし、そうすれば麻衣がエイリーンから聞き出してくれるって信じてる。

 

 つまり俺は、麻衣のおこぼれを預かろうってわけだ。

 

「つーわけで、頑張れよ。俺はこれ以上変なことして仲良しゲージ下げないようにしねぇといけないから」

「自覚してるのはいいしそうしてほしいけど、はっきり自分は頑張らないって言われるとムカつく」

 

 不服そうな麻衣からパンチをもらったところで、作戦会議は終了した。こんな風につんけんした態度とっていても、結局やってくれるんだってわかってる。流石俺の妹だぜ。これで俺は楽して仲良しゲージが稼げるってわけだ。ハッハッハッハッハ!!!

 

 

 

 

 

 想像はできてたけど、やっぱり兄貴は役立たずだった。

 

 兄貴はかなりポジティブでノリで生きている。それは悪いことじゃないし、むしろいいことだと思う。だからこそ、兄貴自身を嫌ってる相手とは頗る相性が悪い。ちゃんと嫌いって態度に出してるのに、ポジティブに変換されるのはかなりのストレスだ。それでいてちょっとクズだから、ちゃんと嫌われる要素があるのもタチが悪い。ルークスさんみたいに嫌われる要素がないなら兄貴の味方になってくれる人は大勢いるだろうけど、嫌われる要素があったら「まぁ、嫌われるのも仕方ない」って思われちゃうから。

 

「エイリーンさん!」

「麻衣さん」

 

 放課後。「エイリーンと仲良くして俺を楽にさせてくれ」と言って兄貴はルークスさんと只野さんと肩を組んで先に帰った。一人残された私はエイリーンさんを探して、学校を出てしばらく歩いたところに一人でいたエイリーンさんをやっと見つけて小走りで駆け寄ると、エイリーンさんはよく見たらわかる程度に微笑んで迎えてくれた。かわいい。

 

「一緒に帰ってもいいですか?」

「私を探しにきてくれたあなたに、いいえとは言えません」

 

 仲良くしようとした兄貴に罵詈雑言浴びせてたけど……。でも多分あれは兄貴も悪いから強くは言えない。

 

 それに、兄貴がエイリーンさんにかなり嫌われてるから、私がエイリーンさんに同情してもらって話せているっていうのは否定できない。アレでも役に立ってはいるんだ。

 

「お兄ちゃ……失礼。アレはいないんですか?」

「ルークスさんと只野さんとどっか行きました」

 

 エイリーンさんは、私のことをブラコンだと思っている節がある。あと一学年しか離れていないのに、必要以上に年下扱いしてくる。だからさっき『お兄ちゃん』って言いかけたんだろうし。家族のこと悪く言われたから反論しただけなのに、なんでそうなるんだろう。

 

「いつも一緒にいる印象があったので、少し意外です」

「そんなことないですよー?」

「そうですか? 私とどうやって仲良くなろうかと、毎日お話しているじゃないですか」

 

 ギクゥ!! としすぎて「ギクゥ!!」って言いかけた。え、バレてたの? 最悪じゃん。でも仲良しゲージは特に下がっていない。エイリーンさんムズイ。何が原因で仲良しゲージが上下すんの? 普通自分とどうやって仲良くしようかって会議されてるって気分悪くない?

 

 ……もしかして、自分と仲良くしてくれようとしてるのが嬉しいとか? それだったら可愛すぎて、男になる魔法を探し出して自分に使って、エイリーンさんに求婚する自信がある。

 

「えと……すみません。失礼ですよね……」

「いえ。あなたたちは……というよりアレは非常に不快な存在ですが、根っこから完全な悪だとは思っていません。むしろ、善性が強いと思っています。大方、私の人間嫌いを克服してくださろうとしているんでしょう?」

 

 それがわかってるのにあんな暴言吐くんだ……。理性と感情は別物だってわかってるけど、それにしてもアレはないと思う。アレっていうのは兄貴のことじゃなくて、兄貴に対する暴言のこと。

 

「はい。でも、余計なお世話だって思いません?」

「思います」

「う……」

「が、このままでは問題だと私も理解しています。ですから、その、お願いがあるんです」

 

 ……!! これは、仲良しイベント発生の予感!?

 

「私の人間嫌いの克服に、付き合っていただけませんか?」

 

 

 

 

 

 いつも麻衣と作戦会議に使っているベンチ。そこにエイリーン、麻衣、ルークス、俺の順で座っていた。

 

「人間嫌いの克服かぁ」

「はい。どうやら、あなた方は雑に扱ってもよさそうなので」

 

 麻衣を通してエイリーンから頼まれたのは、人間嫌いの克服。人間が嫌いな理由は教えてくれないけど、エイリーンも人間嫌いのまま一生を終えるつもりはないらしい。

 

 協力を頼まれたのは、俺と麻衣とルークス。嫌いは嫌いでも激しく嫌いってわけじゃない麻衣とルークスで慣れながら、激しく嫌いな俺を最後の関門として設定したい、というのがエイリーンの要望。いつもなら失礼だと憤慨して超パワーに目覚めるところだったけど、仲良しゲージを80にしたい俺にとっては渡りに船。

 

「麻衣とルークスとは普通に話せるから、嫌悪感を隠せねぇわけじゃねぇんだろ?」

「黙れ」

 

 どうやら隠せないらしい。

 

「兄貴と普通に話せるようになったらゴール?」

「そうですね。あとは麻衣さんと一緒に寝る、ルークスさんと一緒にご飯を食べる、これらができればある程度は克服できていると思います」

 

 俺と話すことと麻衣と一緒に寝ることが同じくらいきついってことか? どんだけ俺のこと嫌いなんだよ。俺何か悪いことしたか? 心当たりしかねぇぞ。

 

「なーなー。なんでそんな甲斐のこと嫌ってんだ?」

「エルフは、醜悪な気配を感じ取ることができます」

「へー。醜悪なのか? 甲斐」

「本人に聞くことじゃねぇだろ」

 

 エイリーンからみたら俺は醜悪なのか。エイリーンに悪いことした心当たりはあっても、俺が醜悪である心当たりはない。考えられるとすれば、最近神様と馴染んでるっていうことくらいだ。

 

 それじゃね?

 

 いやでもそれだったとしたらほぼ詰んでるのか? 人間嫌い+醜悪って仲良くできる未来見えねぇんだけど。俺が神様と馴染むのをやめたらいいだけの話かもしんねぇけど、気づいたら馴染んでたから意識的に馴染まないようにするのは難しい。

 

 それに、あんなんでもあそこにいるのはどこかの世界の神様だ。反抗的な態度をとって殺されるとかも全然あり得る話で、それなら気に入られた方がいい。

 

「ちなみに、人間の中でもマシって思うのは?」

「同性で醜悪ではない方。麻衣さんがそうですね。あとはルークスさんのように清廉潔白な方でしょうか」

「俺も勇者になればいいのか?」

「お、いいじゃん! 甲斐も向いてると思うぜ! 勇者」

「すぐに裏切って、かつての仲間を皆殺しにした上で、骨を器にしたフルコースを作りそうですね」

「俺にフルコースを作る腕はねぇよ」

「兄貴、そっちじゃない」

 

 麻衣に指摘されてはっと気づく。もしかして、こんな反応するから醜悪なんじゃないか? 今のはエイリーンの冗談だと思ってたけど、エイリーンは俺のこと醜悪って言ってたし、本気で俺のことを『かつての仲間を皆殺しにした上で、骨を器にしたフルコースを作りそうなやつ』だと思っているかもしれない。それに対してさっきの俺の反応は、仲良しゲージ的にマズいんじゃないか?

 

 つまり、エイリーンに何を言われようと醜悪じゃない反応をすればいい。見つけたぜ、攻略の糸口!

 

「それじゃあ、人間嫌い克服第一弾はどうします?」

「そうですね……目を見て話すことからお願いします」

「そういやエイリーンって俺たちと目ぇ合ったことねぇじゃん!」

「すみません。人間の男は、エルフと目を合わせると発情し、理性を失うと思っていますので」

「確かにエイリーンめちゃくちゃ綺麗だもんな」

 

 仲良しゲージが-525になった。なぜだ……?

 

「ダメじゃん兄貴。エイリーンさんを褒めたりしちゃ」

「褒めたことを咎められたの初めてなんだけど」

「言いにくいですが、気持ち悪いです」

「随分言いやすそうに聞こえたけど気のせいか?」

 

 そうか、エイリーンは俺のことが死ぬほど嫌いだから、褒められたらむしろ気分が悪くなる。だとしたらどう言えばよかったんだ? 「エイリーンって自意識過剰なんだな。クソウケるぜ」って言えばよかったのか? そんなこと言ったら余計仲良しゲージがマイナスされる気がするんだけど。

 

「それじゃあ時々一緒に帰りませんか? 少しずつ慣れていきましょ」

「えぇ、よろしくお願いします」

「俺らは一緒に帰んない方がいいよな?」

「いえ、一緒に帰りましょう。あなたたちの人となりを知ることが、人間嫌い克服の一歩となるかと思いますので。そっちのカスは一人で帰れ」

「もしかして俺のこと?」

 

 聞けば、力強く頷かれた。

 

 流石に、それは嫌だ。なぜかって、麻衣とエイリーンとルークスだけが仲良くなって、「別にあいつよくね?」ってなったら仲良しゲージを80にできない。かといって、エイリーンが嫌がっているのに無理やり一緒に帰ったら、仲良しゲージはマイナスされてしまう。

 

「まーまー。一緒の空間にいるってだけでも克服になるんじゃね? 甲斐からエイリーンに話しかけないってのはどうだ?」

「……それなら、まぁ」

 

 めちゃくちゃ眉間に皺を寄せながら、心底嫌そうに承諾したエイリーンに内心でガッツポーズ。

 

 今に見てろ、すぐに仲良しゲージ80にして、仲良しになってやるぜ!

 

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