ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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十一話

「ボールに入ったの、玲くん?」

「うっ、うん。ダメだった?」

「いや、駄目ではないよ」

 

 父が難しそうな顔をしている、何か問題があったのだろうか。タブレットから飛び出すなんて、普通じゃ考えられない。特殊な自分のポケモンに玲は不安になる。

 一人でポケモンを捕まえた事を、怒られたばかりなのだ。その上マスカーニャと一緒にいられなくなるなんて、悲しさで死んでしまう。

 

 しかし問題があるわけではないらしい。どうやらマスカーニャが育ちすぎていて、本当に野生だったのか疑問を感じたらしい。

 なるほど、心の中でうなずく。マスカーニャは最大レベルまで育っている、通信対戦を想定して育成したのだ。こんな野生がいてたまるか。

 

 だが父は納得してくれた、主人はいないだろうと。主人がいるポケモンは、他の人のボールに入ることはない。ボールに入っているという事は、ポケモンが嫌がっていない証拠だ。

 主人から逃げていたとしても問題はない。この世界のボールは、ポケモンが出ようと思えば出られる構造になっているらしい。逃げられるという事はポケモンに嫌われているという事、それはその人に原因があると。

 

 ポケモンにも人権、いやモン権がしっかりあるのだ。嫌で逃げるのも自由。

 その子を別の人が捕まえて、主人になっても罪にならない。さすがにマスカーニャ程ではないが、育ててもらったポケモンが逃げることはあまりないらしいが。

 

 マスカーニャは新種らしい。だが、今でも未発見のポケモンは見つかっているので大丈夫とのことだ。

 どこかの主が迷い込んだ可能性もあるので、警察には連絡すると。もしかしたら少し話を聞かれるかもしれないと言われた。警備の強化はしばらく必要だろう。ごめんなさい警察官さん。

 

「かわいい子ね。レーくん、大事にするのよ」

「うんっ、ぼくマスカーニャ大好き。だいじにするっ」

「カニャーン」

「バワゥ…」

 

 このボクだよママ、大事にしないわけがない。この子は相棒、大好きな子なのだ。ごめんねバウちゃん大丈夫だよ、君の事も大好きだから。手伝ってくれてありがとうね。

 マスカーニャに強く抱き着かれながら、玲は想像する。これから増えていく大事な子達と、家族のみんなが笑いあっている姿を。

 

「マスカーニャちゃんって言うのね、これからよろしくね」

「カニャー」

「見て見てあきらさん、とっても賢い子よ。握手してくれたわ」

 

 母が相棒と握手をして喜んでいる、父は笑顔でスマホで写真を撮っている。そんな光景を微笑んで見ている玲は気付いていなかった、ポケモン達のかわいい争いが発生していることを。

 

 片方は得意げに、もう片方は不満そうに。

 両者は目を合わせていた―――

 

 

 

 

 

 玲は現在ソファーの上で、マスカーニャの膝に座っていた。母の膝を卒業しようとしていたのに、今度はマスカーニャに入学だ。

 もちろん嫌なわけではない、ほっぺをスリスリする相棒は可愛い。恥ずかしいが我慢しよう、今まで寂しい思いをさせていたのだ。自分に出来る事ならなるべくしてあげたい。

 そう思い玲はタブレットの画面に視線を戻す、隅々まで確認するためだ。今までは大事な子達に集中していて、気が回らなかった。しかし、そのままではいけない。ポケモンの例もあるのだ、何か重大な見落としがあるかもしれない。玲はタブレットの文字を読み進めていく。

 

「おおいなぁ…」

「カニャン?」

 

 つい声を出してしまった、マスカーニャが不思議そうにしている。何でもないと言いながら、玲はその内容を見る。

 タマゴが十数個入っている。ポケモンはいい、全ての子を出してあげるつもりだ。しかし、タマゴは少し考えてしまう。もちろん大事な子のタマゴだ、育ててあげたい。自分のゲームでの最後の行動を考えると、中の子の予想はつく。

 しかし、軽く考えるわけにはいかないのだ。命を預かるのだから、しっかりと未来を考えて育ててあげたい。

 だが、十数匹分というのは多すぎる。玲は考え込んでしまう。

 

 他にも考えることはある。こちらはまだいい、ゲーム時代の道具類が入っているだけだ。入っている場所も問題ない、道具欄のタブを切り替えた場所に入っていた。しかし、こちらも数が多かった。回復、育成、技マシン等。様々な道具が何十個と入っていた。

 よくこれだけ入っていたな、容量は大丈夫か。そういえば初回起動時のバーの進みが遅かったな、これが原因か。そこまで考えたところで、玲は気付く。バウちゃんが玲の手元を見たがっていた。

 

「みちゃダメだよ」

「バフゥ…」

 

 ごめんねバウちゃん、でもこれは見せられないんだ。

 バウちゃんが悲しそうにしていることに、心が痛む。

 母が残念そうにしている、見たかったのかもしれない。渡邊さんは深く頷いている、どうやら分かってくれるようだ。

 

 ―――。駄目だ、我慢できない。玲はタブレットをソファーに置き、マスカーニャの膝から降りる。このままではいけないのだと、バウちゃんに向かって歩き出す。一緒に遊ぼうバウちゃんっ、ボクが悪かったよ。

 

 ワシャワシャワシャ、ワシャワシャワシャ―――

 

 バウちゃんの首に抱き着く。首元の毛に腕を入れ喉をかいてあげる、こうすると喜ぶのだ。舌を出し、気持ちよさそうな顔をしているバウちゃん。その姿に玲は安堵する。

 悲しそうな姿を見ていられなかった。反省した、強く言い過ぎた。バウちゃんも大好きな家族の一員なのだ。タブレットを見せてあげることは出来なくても、もう少し優しい言い方があったはずだ。そう思ったのだ。

 

 確認は大事だ、何が起こるか分からない。自分の育てた可愛い子達の問題なのだ、放ってはおけない。しかし、バウちゃんも大事な家族だ。蔑ろにしていいはずがない。

 

「ごめんねぇ、バウちゃん。だいすきだよ」

「ボワオゥ、ハッハッハッ」

「カニャーン」

 

 マスカーニャが近づいてきた、どうやら撫でてほしいらしい。バウちゃんをかく手はそのままに、玲は相棒の髪を撫でる。

 玲は思った、自分は幸せだと。両親と妹に渡邊さん、マスカーニャにバウちゃん。大好きな家族に囲まれて、笑顔にあふれたこの場所にいれて幸せだと。

 二匹の視線には相変わらず気付かないまま―――

 

 

 

 

 

 

 

 ―――夜二十三時。

 暗い大きな部屋の中、玲は自分のベッドに入っていた。まだ眠ってはいない、興奮で目がさえてしまっているのだ。

 相棒だ、相棒がやってきた。一目ぼれしたあの子が、現実で自分の元にやってきたのだ。相棒とのこれからの生活を想像してしまうのだ。興奮しないはずがない。

 

 しかし、このまま眠れないの困る。特にやることはない、幼稚園などにも行っていない。だが、玲はいつも早く起きるようにしているのだ。将来トレーナーになることを夢見て、健康な体になれるように。

 自分の近くでポケモン同士が技を応酬するのだ、耐えられるように体は健康であればあるだけいい。そんなことを思い、早寝早起きしているのだ。

 

 困っていたところで気付く、ドアの隙間が空いていることに。何事だっ怪異か?ゴーストタイプがいる世界だ、何かいてもおかしくない。恐怖に震えながら寝たふりして薄目で見ていると、それはどうやらマスカーニャのようだった。

 モンスターボールから出てきてしまったみたいだ。皆のボールはリビングに置いてあって、バウちゃんやギンガくんはいつもそこで寝ているのだ。今日からマスカーニャもそこで寝るはずだったのだが、どうやらここに来てしまったようだ。

 

 マスカーニャがベットに潜り込む、玲はとても穏やかな気持ちになった。人型のポケモンで、少しだけ緊張はする。だが母の体で慣れている、ドキドキしたりしない。しないったらしない。

 

「ねむれないの?ボクもなんだ」

「カニャ」

「いっしょにねようか」

 

 皆を起こさないくらい小さい玲の質問に、マスカーニャが頷く。一緒に眠ってくれるくらい信頼してくれているのが、すごく嬉しい。もう離れない、この信頼を二度と裏切らない。玲はそう、心に誓った。

 

 そして玲は思った、自分の部屋が欲しいと。両親のダブルベットと、妹のベビーベット。自分のを含めて、全部収まっている広い部屋。それなのにまだ余裕があって凄い。

 

 今までは不満はなかった、大好きな家族と一緒で幸せだったのだ。だがこれからは問題がある、見せられない事も増えていくだろう。プライベートな時間が必要なので、自分用の部屋が欲しいのだ。

 五歳児に一人部屋は早いのかもしれないが、出来るだけ早く部屋がもらえるよう両親に頼んでみよう。そう思い眠りにつく。

 玲はマスカーニャの腕に包まれながら眠っていた―――

 

 

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