ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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リザードン、カビゴン、ギャラドス、カイリュー…家が壊れる


十二話

 相棒が家にやって来てから何日か経った。家族との仲は良好で、相棒は簡単な家の手伝いもしている。渡邊さんに気に入られたみたいで、よく撫でられていた。何故かバウちゃんといがみ合っているが、喧嘩とまではいっていない。

 

 そこで玲は考えたのだ、そろそろ次の子を出してもいいのではと。どの子を選ぶかは決めている。出来れば二匹の仲を取り持ってくれたらいいのだが、そこは出してみるまで分からない。少し不安に思うこともあるが、いつか全員だすと決めているのだ。早いか遅いかの違いだし、気にしないことにする。

 しかし、家族に黙って捕まえるわけにはいかない。家に一緒に住むことになるのだし、相談しなくてはいけない。そこで父に話しかけたのだが。

 

「パパだめぇー?」

「マスカーニャが来たばかりだよ、玲くん」

 

 許してもらえなかった。それはそうだ、マスカーニャが来てからひと月も経っていないのだから。しかし、そこで諦めたら男が廃る。五歳児でも男なのだ。可愛い娘を出してやるため、頑張ると決めたのだ。

 父に抱き着き甘い声を出す。お願いお願い友達が欲しいの、家のお手伝い何でもするから。

 これで駄目なら泣き落としだ。あの子の来ない未来を想い、顔をうつむけ泣きまねをする。やばい本気で泣きそうだ、涙が出てきた。

 

「うっ、うーん。―――しょうがない、ちゃんと面倒見るんだよ」

「ありがとうパパァ、ちゃんとめんどうみるよっ」

 

 新しい家族ができる喜びに、心の中で踊りだす。全員揃うのはまだまだ先だが、これでまずは一歩進んだ。

 家族内でのタイプは偏るが、それでも二番目はこの子と決めていたのだ。

 

 父を見れば、渡邊さんと話している。どうやら次の休みに家族で出かける事になったようだ。

 家周辺で子供が捕まえたがるポケモンは少ない。住民に危害が加わらないよう、危険と思われたり育ちすぎたポケモンは、行政で遠くに逃がしているらしい。

 つまり、安全だと思われるポケモンしかいない。種類が少ないのだ。そして子供というのは自分だけの特別が大好きなので、皆が持ってるポケモンは嫌がるのだ。

 

 父は子供に甘いので、家族サービスで軽い旅行を計画しているようだ。玲の特別なポケモンが見つけられるように。そんな父の優しがさとても嬉しかった。

 

 しかし、困った。嬉しいのだが、捕まえるポケモンは決めているのだ。玲は考えた、考えたが気にしないことにした。先ほどまであんなに駄々をこねたのに、やっぱり止めますでは父に悪い。それに、新しいポケモンはどうするのかという話になる。

 庭でポケモンを出すにしても、同じ作戦を二度続けると怪しまれる。期間を空けたい。

 

 いいではないか、ただの旅行というのも。家族旅行を楽しみながら、どこかのタイミングでポケモンを出す。それで行こうと玲は決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の午前中、玲は母と買い物に出かけていた。次の休みに家族旅行が入ったので、渡邊さんが代休になったのだ。そのため、買い物に出かける事になったのである。

 すみません渡邊さん、ボクがわがまま言ったから。急な休みに、渡邊さんに申し訳なく思う。

 玲が一緒に出掛けているのは、一人で留守番は不安だと思われたのだ。当たり前だ、五歳児なのだから。

 

 スーパーまでの道を母と手をつなぎ歩く。玲は今笑顔だった、マスカーニャが一緒にいるからだ。

 パパが会社帰りに買って来てくれた、ポケセン印のボールホルダー。もらってから長かった、とうとう付けることが出来た。

 ここで出すことは出来ない、認定試験に合格しなくてはいけないのだ。試験会場などの決められた場所では出すことは出来るが。それ以外の場所は、合格数で決められている。

 道路で出すには試験六回合格が必要なのだ。監督者がいてもそれは変わらない。

 もちろん生命が危ない時等には出すことは出来る。しかし今は何もない、出すことは出来なかった。

 それでも玲は嬉しかった、マスカーニャと出かける事が出来て。

 

 スーパーまであと少しという所で玲は気付く、前方に渡邊さんがいる。一人ではない、他に人がいる。恋人かっと思ったが違うようだ、女性で玲の知っている人だった。

 

「ちょっと、早くしなさいよ。もうすぐ開くわよ」

「うん…ちょっと待って」

 

 瀬川さん、うちで働いてくれている運転手。黒髪ボブのハーフアップで三十台女性。どうやらプライベートでも同じ髪型のようだ。

 そして渡邊さん、本人なのだろうか。いつもと違う雰囲気に話し方、別人みたいで新鮮だ。気だるげな顔にドキッとする。

 プライベートだし話しかけない方がいいかな、そう思ったが瀬川さんが気付いたようだ。話しかけてくる。

 

「奥様と玲様、おはようございます」

「えっ、あ。おっはようご、ざいます」

 

 二人に近づき挨拶を返す。どうやら本人のようだ。凄い慌てようで、悪いことをしている気分になる。

 

「玲様どうしました?ああ、これですか。この子、普段はこうなんですよ」

「ちょっ、やめて下さいまし」

「下さいましってあんた…」

 

 どうやら渡邊さんは、友人には先ほどの様に接しているようだ。

 よく知らない人には、何を言っていいか分からなくて上手く話せなくなる。

 働いている時の渡邊さんはクビにならないよう『かっこいい自分』に成り切っているそうだ。

 母を見ても、特に驚いてはいない。この事は知っていたのだろうか。

 

「ママ知ってたの?」

「渡邊さんとは長いもの、知ってたわ」

「さっきのわたなべさんでいいのにー」

「この子は、玲様に嫌われたくないんですよ」

「きらわない、わたなべさんの事だいすきだよ?」

「よかったね。かっこいい渡邊さんじゃなくても大好きだって」

 

 渡邊さんの顔が赤くなる。玲は嬉しくなった、自分に嫌われたくなくて格好いい姿を見せてくれていた事が。大丈夫だよ、どんな渡邊さんでも大好きだよ。

 

「わたなべさん、さっきみたいに話して」

「申し訳ありませんお坊ちゃん。ご勘弁を」

「お、かっこいい渡邊さんになったね」

 

 皆の顔が笑顔になる、渡邊さんも恥ずかしそうだが笑ってる。渡邊さんのことが知れてよかった。

 玲はさらに渡邊さんの事が好きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 玲は今、寝室のベットに座っている。横には相棒のマスカーニャだけ。電気は消しているので、誰にも気づかれていないはずだ。別にいやらしい意味ではない。休みの話をマスカーニャとしたかったのだ。

 今のこの子は、他の子達と仲良く出来ないかもしれない。バウちゃんともいがみ合っているようだし、その不安を解消したいのだ。

 

「マスカーニャ、こんどあたらしい子がくるんだ」

「カニャ…」

 

 不安そうな相棒に説明する、明日来るのはマスカーニャの妹みたいな子なんだと。その子の面倒を見てもらいたいのだと。

 玲の原作のプレイ順は初代、SV、剣盾の順番だ。なので最初に選んだマスカーニャは長女みたいなものなのだ。

 

 タブレットを見た時に気付いた、捕まえた全てのポケモンが来ているわけではないのだと。想像なのだが、おそらく意識して努力値を振ったポケモンが来ている。

 初代ではシステムをよく理解できていなかった、なので努力値をしっかり振れていない。初代の子達がタブレットにいなかったのだ。

 来ていない子達を思うと悲しくなる。どの子も思い入れがあったのだ。

 

 タマゴが入っていたのが謎だ、育てた子のタマゴだからなのだろうか。よくわからない。

 道具類はかぶっているのが多すぎて、どれがどの作品から来たのか判断できない。

 

「だいじょうぶだよ、ずっと一緒にいるから」

「カニャーン」

 

 相棒は不安なようだ、自分が捨てられるのではないかと、新しい子の方を好きになって、自分から離れるのではないかと。そんなわけない、全員幸せにすると決めたのだ。マスカーニャの事も幸せにするのだ。簡単なことではない、しかし決めたのだ。

 

 優しく撫でながら想いを込めて伝える、自分は君が大好きなのだと。もう二度と離さない、寂しい思いはさせないと。しばらくそうしていると、やがて口元に喜びが現れる。

 

 相棒が嬉しそうに抱き着いてきた、信じてくれたようだ。よかった、玲は安堵した。

 不安な心はまだ残っているだろう、それだけ寂しい思いをさせたのだ。なのに信じてくれるその姿に、心が温かくなる。

 

 ありがとうマスカーニャ、これからもよろしくね。あとバウちゃんとも仲良くしてくれると嬉しいな、ボクのポケモンではないけど末っ子みたいな娘なんだ。え、だめ?むりなのか…

 

 先行きはまだまだ不安だった―――

 

 




諸事情で初代の手持ちは出せません

期待してくれていた方々には申し訳ないです
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