ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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十三話

 玲は困っていた、自分の目の前で起こっている今の状況に。

 マスカーニャが自分を守っている、勝てるか分からない相手から。全力を出しても主人を守り切れるか分からない相手から。

 

 玲はこの日タブレットから新しい子を出した。そう、とうとう二匹目のポケモンを呼び出したのだ。

 不安に思いはした、怒っているのではないかと。自分をずっと放っておいた相手の事を怒っているのではないかと。

 怖い、相手はポケモンだ。最大まで育っているポケモンなのだ。もし生身で攻撃を受けたら、怪我をするなんてものでは済まない。ひき肉になってしまう。

 

 しかし玲は信じることにしたのだ、自分が育てたあの子を。マスカーニャもついて来てくれた、あの子もきっと来てくれると。

 それにもし何か間違いがあっても相棒がいる、きっと守ってくれる。タイプ相性の不利はあるが、きっと頑張って守ってくれる。そう思い、呼び出すことにしたのだ。

 

「マスカーニャ、だいじょうぶだよ」

「カニャッ」

 

 その子は怒らなかった。むしろ喜んだ、玲に会えたことを。嬉しそうに笑みを浮かべ、玲に向かって走り出したのだ。やっと会えた主人に、抱き着こうとしたのだ。

 それに慌てた相棒が前に立ち塞がったというのが、今の状況だ。

 

「エースバーン、またせてごめんね」

「バァースッ」

 

 エースバーン。原作で最初に選ぶ、二匹目の相棒。

 マスカーニャの横を通り彼女に近づいていく。目の前の相手を睨んでいた時とは一転。その顔はニコニコ笑顔で、とても嬉しそうだった。

 強く優しく抱き着いてくる、玲も負けじと強く抱き返す。その体の温かさに、玲の心は安堵と喜びに包まれていた。

 

 このままエースバーンの暖かさに包まれていたいが、そういう訳にもいかないようだ。マスカーニャが不満そうにしている。このままでいては、玲のことが危険だと思い守ってくれた彼女に悪い。しっかり説明しないと、玲は断腸の思いでその温もりを振り切った。

 

「えっと、顔が変わってるのわかる?」

「バァース?」

 

 エースバーンに聞いてみる。不思議そうだったが、彼女はうなずいた。原作と今の自分、どれも違うのに二匹ともすぐに玲に気づいたのが不思議だ。

 

 別のゲームで遊ぶのを転生とは言わないが、似たような物だと思い説明する。今と同じような事が前にもあったこと。エースバーンはマスカーニャの妹だという事。どちらのことも大好きで、ずっと一緒にいたいと。思いが伝わるように、心を込めて話していく。

 

「カニャ」

「バァース」

 

 二匹に抱き着き優しく撫でる。気持ちよさそうな鳴き声を聴き、玲は安堵した。

 何とか納得してくれたようだ。よかった、二匹には仲良くしてもらいたい。家族になるのだから。一緒の家に住むのだから。

  そこで玲は思ったより時間が経っていることに気付く。玲がいないことに、家族が心配するだろう。

 エースバーンにボールに入ってもらい急いで戻ることにした。家族に紹介する光景を想像しながら玲は歩き出す。

 

「ねぇねぇパパァ、みてみてぇ」

 

 玲は父にボールを見せる、新しい子が家族になったよと。父には一番最初に見せると決めていたのだ。せっかくの休みなのに、家族旅行を計画してくれたのだから、

 

「玲くん、次からは危ない事をしてはいけないよ」

「ごめんなさい…」

 

 しかし褒めてくれたが、叱られもした。当たり前だった、五歳児が一人でポケモンを捕まえるなんて、何があるか分からない。前にも同じことがあったのだから猶更だ。

 ここは管理されている公園なのでまだいいが、本来ならとても危険な事なのだ。反省しなくてはいけない。

 

 父がこれだけで済ませてくれるのは、マスカーニャがいるからだろう。この子が玲に懐いていることは、普段の言動を見ていれば分かる。

 それに強いことも一目見ればわかる、強者の風格をまとっているのだ。この子がそばにいてくれれば、何が出てきても守ってくれる。そう思っているのだろう。マスカーニャに感謝だ。

 

「それにしても、強そうな子だね」

「エースバーンっていうんだよっ!かわいいでしょ」

「ええ、とってもかわいいわ。レーくんをよろしくね」

「エスバース」

 

 エースバーンが任せてくれと言うように、胸を叩いている。母はそんな彼女を見て頭を撫でていた。父もそんな様子を見て安心してくれたようだ。彼女も強いであろうことは見てわかるのだ。

 

「ねえパパ、まだいていいでしょ」

「もちろんだよ。でも捕まえるのは終わりだよ」

「うん…」

 

 来て早々チャンスが来たので、エースバーンを出したのだ。誰にも気づかれていないし上手くはいったのだが、いくら何でも早すぎた。このまま帰るはずがないとは思うが、一応聞いてみたのだ。思った通りもう少しここにいていいみたいで、そのことに玲は安堵する。

 瀬川さんも運転しっぱなしでは疲れるだろう、休んで欲しい。

 

 玲たち家族は瀬川さんの運転でここまで来た。渡邊さんを合わせて六人で、とても高そうな車で来たのだ。

 玲だったらこのような車を運転したくない、心臓に悪すぎる。ぶつける事を想像すると怖くなってしまう。それに母やチャイルドシートに座った妹も乗っている。玲は瀬川さんを尊敬した。

 

 それにしても残念だ。さすがに同じ日に二匹目は許してくれないだろうと思ってはいた。だが、少し期待してもいたのだ。

 次に選ぶ子のことを頭に浮かべる、相手は決めていた。その子の背景を考えると罪悪感が湧く。早く出してあげないととは思うが、時間はあけないといけない。

 

 それに順番を早めることも出来なかった、この子達を最初に選ぶと決めていたのだ。

 玲はこの世界でトレーナーを目指すとは決めたのだが、不安だったのだ。ゲームとは違う、上手くいくか分からない。

 不安を消し飛ばすために、この世界でもやっていけるように、選ぶのは原作で最初に選んだ子達と決めていたのだ。

 

 しかし残念がってばかりではいけない、今はこの子達との生活を大切にしよう。三匹娘を引き連れて玲は歩いていく。

 エースバーンの足元を見る、特に問題はなさそうだった。

 原作でのヒバニー時代の走る姿に、玲は不安だったのだ。家が燃えてしまっては大変だ。

 

 玲は場所を吟味しながら歩いていく。先ほど怒られたばかりだ、あまり遠くへは行けない。家族から見える場所で、なるべく林から遠いところで。エースバーンを呼び出すときは、家族に見られないよう林の奥に行ったのだ。あまり家族を不安にさせてはいけない。

 

 この辺でいいかなと玲はその場で寝転がる。

 さわやかな風が吹いていてとても気持ちいい。連れてきてくれてありがとうパパ、玲は心の中で父に感謝する。

 

 周りを見れば、エースバーンがバウちゃんと握手している。どうやら上手くやれているようだ。両手でのダイナミックな握手にバウちゃんは嬉しそうだ、舌を出して喜んでいる。

 やっぱりタイプが同じなのが効いているのだろうか、仲良くしている姿に心が温かくなる。

 

 そこで彼女は何かに気付く、不満そうにして少し離れた場所にいるマスカーニャを見つけたようだ。彼女はそっぽを向いているマスカーニャに向かっていく。

 

「おぉ…」

 

 玲は感動した。マスカーニャの手を引いて歩く姿に声をもらしてしまった。バウちゃんに向かって歩くエースバーン、そのニコニコ顔が眩しい。

 二匹の仲を取りもつ姿に玲は涙ぐんだ。あの子達には仲良くなって欲しい、あの子達は大事な家族なのだ。

 よかった。エースバーンが来てくれて本当によかった。玲は彼女が来てくれたことを心の底から喜んだ。

 

「みんないっしょ、たのしいねぇ」

「カニャッ」

「バワゥッ」

「バース」

 

 玲の笑顔を見たマスカーニャ、その右腕がバウちゃんの背にゆっくり伸びていく。己の背が撫でられていることに気付いたバウちゃんは、その腕に尻尾を優しく当てる。それを見ているニコニコ笑顔のエースバーン。

 

 玲は感動のあまり座っている相棒に飛びついた

 マスカーニャが玲を受け止める、それを見たエースバーンがまとめて押し倒す。バウちゃんは嬉しそうに、みんなの周りを走り回る。

 

 玲は笑う、今のこの状況に。皆でもつれ合って倒れているこの状況に。

 みんなは鳴く。仲良くなった家族のみんなとの、楽しいふれあいに。

 この場には笑顔が溢れていた―――

 

 




エースバーン!君に決めた!
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