これからもよろしくお願いします
とある日の夜のリビング、玲はポケモン達とソファーの上で寛いでいた。
玲はエースバーンと抱き合って、おでこを合わせながらマスカーニャの膝枕。ソファの反対側ではバウちゃんが丸まって寝ている。
暖かな体とバウちゃんの寝息が、玲の眠気を誘う。だがしかし、玲はそれを堪えていた。
寝るわけにはいかなかった、意識を落とすわけにはいかなかった。今この瞬間を、脳裏に焼き付けておきたかったのだ。
そんな風に耐え続けている玲の耳が、両親の会話とらえる。どうやら玲の小学校入学について話しているようで、どこに入れるか相談しているようだ。眠気が一気に吹き飛んだ。
「レーくんはポケモンが大すきだから、こっちがいいんじゃないかしら?」
「ポケモンの知識は家で教えればいいよ。玲くんにはこの学校がいいんじゃない?」
ちょっと待ってほしい。ポケモンの事を学べる学校があるのだろうか、それなら行ってみたい。
原作知識はあるが、それは万能ではないのだ。現実になったことで、様々な変化が起こっている。それらの変化を学べる学校なら行くべきだ。
それにポケモンの学校というくらいだ、おそらくポケモンを自由に出し入れ出来る。授業中もポケモンと一緒の可能性もある。何で思いつかなかったのか、ポケモンのいる世界なのだからあっても不思議はないのに。
そんな夢のような施設に行く機会、絶対に逃してなるものか。
「パパ!ボク、ポケモンのおべんきょうしたいっ」
「いっぱいお勉強しないといけないんだよ?大変だよ?」
「みんなでいっしょにでしょ?がんばるからっ」
玲だって分かっている、大変なことくらい。ポケモンの授業とは別に、普通の学校のカリキュラムもあるのだ。簡単なわけがない。
それでも玲は自分の妄想のため、この学校以外の選択肢を取ることはない。ポケモンと一緒に学校生活を過ごせるのだ、ここしかないのだ。
「レーくんが好きな所がいいわ。そうでしょ、あきらさん」
「そうだね、ここにしようか。玲くん、お勉強頑張るんだよ」
「うんっ!ありがとう、パパ、ママ」
母が援護射撃をしてくれ、それにより父も受け入れてくれる。
ポケモンの学校に通わせてもらえる事になり玲は歓喜した。
マスカーニャとエースバーン、まだ出していないあの子達。彼女達との学校生活を想像する。きっと楽しい、絶対に楽しい。今夜は眠れそうにない。
玲の嬉しそうな姿に、みんなも喜ぶ。みんな、玲の笑顔が大好きなようだ。
残念ながらバウちゃんは連れていけない、彼女は母の手持ちなのだ。バウちゃんと学校生活も楽しそうだが仕方がないのだ。玲は悲しそうにするバウちゃんを撫でる。
「パパ、これちょうだいっ」
「うん?いいよ、持っていきなさい」
父から学校案内のパンフレットをもらう。不思議そうだが、すぐに納得した。写真を見て楽しむのだと思ったのだろう。
まだ五歳児、漢字を読めるわけがない。しかし玲の中身は成人男性、パンフレットを読むなんて訳はない。
パンフレットを開き、読んでいく玲。ポケモン達も一緒に見ている。
彼女たちも楽しそうだ。何が書かれているかは分からなくても、玲の楽しそうな様子が嬉しいのだ。一緒に行けないバウちゃんもそれは変わらない。
そこで玲の視線がとある文字で止まる。
『お子さんと一緒にパートナーを選んであげましょう』
ちょっと待ってくれ。玲はその内容を読み込んでいく。想像が正しければ、このままでは不味いことになると気づいたのだ。
どうやら入学前に学校生活用にポケモンを一匹貰えるようだ。それ自体はいい、ポケモンをもらえる事は嬉しい。しかしその順番に問題があるのだ。
玲は今、手持ちが二匹いる。
この世界でも原作と同じように、手持ちは最大六匹だ。しかし、大抵の人は三匹で抑えている、
この世界では認定試験というものがある。原作でいうとジム戦だ。試験に合格することで最大八個の合格印をもらえるのだが、大抵の者は三個で諦める。多くても六個だ。八個持っている人はそうとうなエリートなのだ。
一個で公園などの決められた場所でのみ、ポケモンを出すことが出来る。
三個で初級大会に出場出来るようになる。だがそこで自分の実力を知り、先に行くことを諦める人が出てくるらしい。
初級大会は三匹編成だ。そしてここまでの認定試験も、最大三匹のポケモンで乗り越えるらしい。
一般家庭では、多くのポケモンを育てることが出来ない。それらの理由が合わさって、大抵の人は三匹までしか手持ちを育てないのだ。
ちなみに自分の生命が危険な時は、印を持っていなくてもポケモンを出すことが出来る。
手持ちが三匹になる、その事に玲は焦ってしまう。
両親もしばらくは、他の家庭と同じ三匹でいいと考えるだろう。多すぎるとポケモンへの愛情が分散することも考えられるし、それはどちらにも悪影響が出る。
育ててもらっているのだ、両親の教育方針には従う。いずれ全てのポケモンを出すと決めているので、何とか説得するつもりではいるが。
だが、三匹目の子は決めていたのだ。その子の背景を考えると、これ以上遅くなるわけにはいかない。何とかしないといけないと、玲は深く考え込むのだった。
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「おねがいね」
何日かたったある日、玲は作戦を開始した。
両親の想いを考えると罪悪感がわく、騙す形になるのだから。上手くいく保障もない、無理やりな作戦なので不安がある。
しかし玲は、これらを分かった上でやることに決めたのだ。
「ママー、きてぇー」
「どうしたの?レーくん」
「おにわにポケモンがいるのー」
作戦はこうだ。母と一緒に庭で日向ぼっこを開始、その後隙を見て決めていた子をボールから出す。
この子は事前に庭で出して、話し合って手持ちに加えている。渡邊さんに見つかりそうになったが、何とか上手くいった。
そして、この子に演技をしてもらう。
「れっレーくんっ!ちょっと離れてっ!」
「だいじょうぶだよママ、とってもいいこだよ」
「―――ほんとう、おとなしい子みたいね」
子供に攻撃なんてしませんよ、仲良くなりたいだけなんです。そんな考えが見えるかのように、母に向かって満開の笑顔。
ごめんね、初めて見る人で怖いよね。でも大丈夫だよとっても優しいから。玲はその子に、思いが伝わるように笑顔を向ける。
「かわいいよねっ、ママッ」
「ぽにっ」
オーガポン、この子は早く出してあげたかったのだ。
遅くなってしまった事に、罪悪感が湧く。この子の境遇を考えると涙が出そうになる。それでも順番は譲れなかったのだ。
再会したときは泣いた、オーガポンも泣いていた。強く抱きしめた、抱きしめ返してくれた。謝った、想いを込めて。
もう絶対離れたりしない、ずっと一緒にいて欲しい。そう伝えたら、オーガポンは受け入れてくれて。そこでまたしても泣いてしまった。
「ママァ…」
「うーん、マスカーニャちゃんたちもいるのよ?」
「みんなだいじにするっ、かわいがるからっ」
「いいわ、ちゃんと遊んであげるのよ?」
「うんっ、ありがとうママッ」
「ぽにおーっ」
母は許してくれた。少し悩んでいたようだが、受け入れてくれた。今も父になんて言うか考えているようだが、微笑んでくれていた。
オーガポンと喜び、抱きしめあう。
やったよオーガポン、これからずっと一緒だよ。
「ママ、オーガポンといっしょにあそんでていい?」
「もう名前をきめたのね。いいわよ、あそんでらっしゃい」
「ありがとうママッ!いこうオーガポンッ」
「ぽにおっ」
玲は母に遊んでいていいか聞く、やらなくてはいけない事があるのだ。許しを得たのでオーガポンと一緒に建物の裏に走っていく。
そう、オーガポンをボールに入れなくてはいけないのだ。事前に手持ちに加わってもらっていたので、そのまま戻したらボールの挙動の違いに気付かれてしまう。
ちなみに生身のままタブレットには入らなかった。不安だが試しておきたかった、前の二匹の時は慌てていて試せなかったのだ。もし上手くいけば、皆に一度出てもらい、話すことが出来たのだが。
「いっかい戻ってねオーガポン」
「ぽ、ぽに…」
「だいじょうぶ、すぐに出すから。いっぱい遊ぼうね」
庭の裏でオーガポンにお願いする。少し悲しそうだ、もう遊べないと思ったのだろう。
心配することないよ、少しの間だけだからね。これからもいっぱい遊べるよ。
ボールに入ってもらい母の元に戻る。
「あら?もういいのレーくん?」
「みんないっしょがいいの!つれてきていい?」
「いいわよ、ママといっしょにいきましょ」
「うんっ」
みんなを連れてくるために一回家に戻る、庭には他の子を連れてきていなかったのだ。
母と一緒にリビングに入り、オーガポンを家族に紹介する。マスカーニャは久しぶりの再会に、オーガポンの頭を撫でて喜んでいた。他のみんなも新しい家族に笑顔で挨拶をしている。
どうやらオーガポンは上手くやっていけそうだ、そのことに玲は胸を撫で下ろす。
みんなと一緒に庭に出る、その日は暗くなるまでポケモン達と遊んた。
原作の手持ちは、少しの間この三匹でいきます
もっと出して!という方は、玲君の年齢がもう少し上がるまで少々お待ちください
学校で貰える子は出てきますが