ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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十六話

 玲はやっと六歳になった、来月からは小学生だ。玲のポケモン達と一緒の初めての誕生日は、今年もやっぱり豪勢だった。

 美味しい料理に、綺麗な飾り付け。初回ほどではないが、それでも多くの人に祝われた。

 プレゼントも沢山もらって、皆と騒ぎながら開ける。玲の事を考えたそれに、今年もとても喜んだ。

 ポケモンや両親、妹や渡邊さん。みんな笑顔で玲の誕生日を祝ってくれて、玲は幸せな気持ちのまま眠りについた―――

 

 

 

 ―――そして何日かが過ぎ、三月某日。

 玲はこの日、小学校の校舎を見上げていた。

 とても広い敷地に建った、大きな大きなその建物。私立翔星小学校、ポケモンと一緒に通う学校の校舎を。

 

 だが、まだ入学したわけではない。今日は学校生活用のポケモンを選びに来たのだ。

 両隣には両親がいて、玲の手を握っている。子供と一緒にポケモンを選ぼうと、二人とも来てくれたのだ。

 玲には三匹の手持ちがいる、そのうちの一匹を学校用に登録することも出来たようだ。しかし折角のポケモンをもらう機会、逃してなるものか。玲は必死に両親に頼み込み、何とか受け入れてもらった。

 タブレットの中には、出してあげられていない子がまだまだいる。その子たちの事を考えると罪悪感が湧く。しかし先のことを考えて新しい子を育てることにしたのだ。

 

 玲のポケモンは全員最大レベルだ。その子たちだけでこの先進んでも、それは皆の力であって玲の力ではない。

 玲は新しい子を育てて、自信をつけたかったのだ。新しい子を現実で初めから育てて、トレーナーとしての力をつける。

 そこでやっと皆の主人と、胸を張って言えるようになる。そう考えて新しい子を貰いに来たのだ。

 

 玲は両親と一緒に受付を済ます。周りを見れば可愛らしい子達ばかり。みんなお行儀よく、騒がずに両親と一緒に列に並んでいる。

 玲は両親に感謝する、可愛く生んでくれてありがとうと。周りから浮いていない事に安堵した。

 入学試験は楽勝だった。見た目と家と両親に、玲の中身の人生経験。それらが合わさり、問題なんてなかったのだ。

 

 案内に従って、両親と手を繋ぎ歩いていく。向かう先は体育館の様だ。ポケモンが入学生の人数分いるのだ、普通の教室では大きさが足りない。

 そして玲はそこにたどり着く、体育館の前に。扉は空けられていて、中の音が響いてくる。決して大きくはない、しかし興奮を隠せていない騒めきが響いてくる

 

 玲は飛び出したかったが、そんな自分を押し止める。両親に恥をかかせてしまうからだ。

 それに確証はないが、もう審査は始まっているのだろう。お約束だ。

 ここでの行動の結果で、入学後のクラスが変わったりするのだ。お約束だ。

 

 そして、とうとう始まった。体育館の前方の壇上、教員らしき人がマイクの前に立っていた。

 教員は話す。大事なことを、ここにいる全ての者に伝わるように。

 これから選ぶポケモンには、様々な性格の子がいる。

 慎重に選んで、その生命に責任を持ちなさい。

 思いやりを持って大事なポケモンと学校生活を過ごすこと。

 

 ステージ横の扉から、籠を持った教員が数人出てきた。おそらくあの中には、モンスターボールが入っているのだろう。ここにいる新入生の全員が、あの中から己の相棒を選ぶのだ。

 

 普段の玲なら、ポケモン達に囲まれた己を想像して興奮していただろう。感動のあまり意識を飛ばしてもいたかもしれない。しかし、今の玲は落ち着いていた。先ほどの教員の言葉。当たり前の事を言っていただけだが、思うことはあったのだ。

 玲は改めて決意する、これから選ぶ子を大事にすると。いや、自分のポケモン達全員を大事にすると。

 

 教員が体育館のステージ下に集まり、ボールからポケモンを出していく。

 光に包まれ出てきた姿に玲は―――

 

(きゃわわああああああああっ)

 

 ―――やっぱり玲だった。

 目の前には様々な種類のポケモン達、みんな元気に手を振っている。自分の主人になるかもしれない子供達に、頑張ってアピールをしている。その姿形は十匹十色、みんな違ってみんな可愛い。

 その光景を見ていて思った、このままここで眺めていたい。分かっている、自分も選びに行かなくてはいけない事は。だが今この瞬間のキラメキを、この目に焼き付けておきたいのだ。

 

「選ばなくていいの?」 

 

 そんな風にポケモン達を眺めていると、一人の女性が近づいてきた。どうやら女性はここの教員のようで、胸に名札を付けていた

 玲は身を硬くする、注意されると思ったのだ。だが女性は責めているのではなく、玲が選ばないのを不思議に思っただけの様だった。

 

 困った、ただ興奮して脳汁が出ていただけなのだが。しかしそのまま伝えたら、可哀そうな子を見る目をされてしまう。それはこの先の学校生活を思うと避けたい、どうしたものかと悩んでしまう。

 両親を見ると、玲を見守るつもりのようだ。自主性は大事だが、少し助けて欲しいと思ってしまう。

 

「えっと、人がいっぱいいると怖がるから」

 

 だが玲はなんとか言い訳をひねり出す。自分一人では変わらないだろう、言い訳としては正直厳しい。だがどうやら上手くいったようで、先生は優しく微笑んでいる。初っ端から変な印象を与えないで済んだことに玲は安堵した

 

 しかし、敬語を使わなかったのは不味かったかもしれない。私立の小学校なのだ、きっと厳しいのだろう。なるべく子供らしく話していたのだが、それではいけなかったのかもしれない。

 これでは両親に恥をかかせてしまう、それはとても悲しい。不安に想い両親を見上げれば、優しく微笑んでいた。

 先生も特に気にしていないようで、この学校は思ったより敬語には厳しくないようだ。だが改めていかねば、少しずつ直していこう。

 

「もう大丈夫よ」

「は、はい」

 

 玲が決心していると、先生が体育館の中央を指さす。どうやら子供達は選び終えたようで、ポケモン達の周りには人があまりいなかった。まだ選んでいない子もいるが少数だ。

 なるほど、これなら先ほどの言い訳でも問題ないだろう。玲はポケモンを選ぶために歩き出した。

 体育館中央にいるポケモン達を見ながら考える、うちの子達と相性がいいのはどの子かと。言い方は悪いが、玲はどの子でもいいと思っていた。どの子でも全身全霊で強くしていくつもりだ。何を出来て何が出来ないのか、どの子の事も玲の頭には入っている。もちろん強さの違いはある、だがそんなの関係ないのだ。

 

 条件はただ一つ、玲の家族と仲良くできるか。それさえ問題なければ他は特に気にしないのだ、全力で可愛がる。タイプ相性も問題ない、まだ出してあげられないが、合わせられる子達がいるのだ。

 

 そこには『ゴースト』や『あく』に『むし』、小学一年生は怖がるだろう。玲は可愛いと思うのだが、タイプのイメージが悪いのかもしれない。

 他にも弱く思われそうな見た目だったりで、選ばれないのも理解は出来る。納得は出来ないが。

 

 玲は一目見て決めた、その子以外に考えられなくなった。その子は自分に自信がないのか、うつむいていて寂しそうにしている。

 嫌だった、そんな姿を見ているのが。だから手を伸ばして、一緒にいるよと言ってあげたくなったのだ。

 

「ともだちになって」

「ワラララ…」

 

 ユキワラシ。その子は編み笠のような服を着て、体を丸めながらこちらを見ていた。

 玲の声に驚いて、選ばれた事を喜びそうになって。しかし騙されているのではと警戒して。でも疑いきれないのか、こちらをチラチラ伺って。

 玲は辛抱強く、手を差し出し続ける。友達になって欲しいと、微笑んだまま。やがてその想いが伝わったのか、その子が手を伸ばしてくる。そしてとうとう、玲の手の上に乗せられた。

 

 玲は抱きしめた、もう大丈夫だよと想いを込めて。その子は泣いた、今までの寂しさを表すように。

 他の子が選ばれていく中、自分の近くには誰も来ない。時間だけが過ぎていく。玲はそんな光景を想像し悲しくなった。

 泣いているその子の頭を優しく撫でていると、先生が近づいてくる。

 

「その子にきめたのね」

「は、はい。あの…この子、おんなのこですか?」

 

 聞いておかなければならない、性別で育成方針が変わるのだから。自分の敬語に不安を覚えながらも、玲は先生に質問する。

 

「―――ええ、そうみたいね」

「ありがとう、ございます」

 

 ファイルを開いていた先生が頷く、どうやら女の子のようだ。玲は考える、この先どう育てていくかを。どう育てれば、この子が幸せになってくれるのかを。

 だがその前に―――

 

「きみのなまえは、ユキメノコ」

 

 ―――名前を決めなくては。玲はこの子の未来を想いながら名付ける。

 少し悩んだ、この名前でいいのかと。新しく自分で考えた方がいいのかと。だが玲は自分のセンスを信用していない、原作時代ひどかったのだ。

 そんなひどい名前で、これから大事にしていくこの子を呼びたくなかったのだ。数々の名前を思い出し、玲は落ち込んでいく。黒歴史だ。

 

「ワラララッ」

「いい名前、よかったわね」

 

 名前はこれでいいのだ、玲は心の中でうなずく。先生もいい名前だと褒めてくれた。ユキメノコも喜んでいて、玲の胸に頭をこすりつけていた。

 

 




あの時はかっこいいと思っていたんだ…
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