ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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今日はいつもより長いです


十七話

 玲は今、応援していた。膝の間にユキメノコを入れ抱きしめながら、心の中で必死に応援していた。

 視線の先には数人の子供、どの子も不安そうに周りを見渡している。彼らはまだ相棒を選べていない、どの子を選べばいいか聞ける相手を探しているのだろう。

 玲は思う、大丈夫だよと。どの子もみんな可愛いと、強く育ってくれるよと。玲は知っているのだ、目の前にいるポケモン達の力を。どの子もみんなうまく育てれば、戦い方の違いはあるが強くなる子達なのだ。

 

 そのポケモン達も、子供につられて不安そうにしている。

 見ていられない、だがどうにも出来ない。ここで動いたとしても、ろくなことにならない。その子が自分の想いで選ばなければ、絶対後で後悔する。ポケモンも主人になる子に選ばれたいはずだ。

 どうにも出来ない状況に、ため息をつきそうになる。そんな時に玲は、一人の少女に話しかけられた。

 

「だいじょーぶー?」

「え?なにー?」

「いたいのー?」

 

 人形のように可愛らしい少女がこちらを見ていた。プラチナブロンドのふわふわロング、染めていなさそうな髪のその少女に、玲の思考が一瞬止まる。

 アニメか何かにいそうな、妄想の産物のようなその姿。現実にこのような少女がいるとは思わなかった。玲は六歳の少女に少し見惚れてしまった。

 しかし少女の言葉を思い出し、玲の思考が戻ってくる。どうやら少女は玲の苦しそうな顔を見て、心配して声をかけてくれたようだ。見ればユキメノコも心配そうに、膝の間からこちらを見上げていた。先程まで新しいボールに喜んでいたのに今は曇り顔だ。

 どうやらあの子達への心配が、顔に出てしまっていたらしい。

 

「ありがとー、だいじょうぶだよ。ユキメノコもありがとうね」

「ワラララ」

「そっかー、よかったー」

 

 難しい顔をしていては、彼女達に心配をかけてしまう。相棒を見つけたであろう子供達にも悪い、楽しい空気がぶち壊しだ。笑顔で大丈夫だと伝えたら、彼女達は安心して微笑んでくれた。

 

「ボク白雪玲って言うの、きみは?」

「わたし音瀬紗更、よろしくねー」

「よろしくね、ササラちゃんって呼んでいい?」

「いいよー、わたしもレイくんってよぶねー」

 

 おとせささら、どうやら彼女は祖母がフランス人のようだ。髪が綺麗だと言ったら教えてくれた。

 しかし幼馴染イベントとはいえ、ガツガツ行き過ぎたか。やりすぎては嫌われてしまうかもしれない、玲は少し反省した。

 

「かわいいこだねー、わたしも見せてあげる」

「プクプク」

 

 彼女が出したのはピンプクだった、膝の上に乗り甘えている。聞けば女の子らしい。かわいい少女達のツーショット、玲の動悸が激しくなる。

 玲の心の中は気持ち悪いことになっているが、顔がいいのでとても絵になる。周りも大人も少年少女たちの、微笑ましい姿に微笑んでいた。両親に感謝だ。

 

「えー、よわそー」

「え…」

「プク…」

 

 しかし、そこで無粋な高い声が響く。見れば、そこには少年とそのポケモンが立っている。どうやら少年は自分の相棒を自慢したいのか、胸を張って誇らし気にしていた。

 

 相手は小学生だ、目くじらを立てることもない。見ればそのポケモンはとても綺麗で、少年が自慢したい気持ちもわかる。

 だが玲には少女たちが傷ついている姿を見て、何も言わないなんて出来なかった。

 

「そんなことないよ。この子すごいんだよ」

「何だお前!なにがすごいんだ!」

 

 それは少年…あのピンクの悪魔と言われたお姿になるお方だぞ?

 これは言うことが出来ない。だが黙ったままという訳にもいかない、玲は口を開く。

 

「まもったり、ちいさくなったり、あと可愛い」

「それがなんだ!」

「こえがかわいい、あまえるのかわいい、あと可愛い」

「かわいいばっかり言うな!」

 

 何だ少年、可愛いは重要だぞ。

 見ればピンプクは可愛いと言われたことで照れている。紗更も相棒が褒められて嬉しそうだ。

 

「そんなにすごいなら、ボクとたたかえ!」

「え、あっ…やだー…」

「ピンプクー…」

「だめだよ、かわいそうだよ」

「なんだよおまえ!」

 

 怖がる彼女達の姿に玲は少年を止める、しかしそれが気に入らないようで火に油を注いでしまった。

 玲は困ってしまった、怒らせるつもりはなかったのだ。学校でのポケモンバトル相手だ、出来れば仲良くしていきたい。

 

「いいよおまえで、こい!」

「えー…」

 

 ユキメノコを見れば、歯をむき出しにして少年を見ている。向こうのポケモンのポニータは、怖がっていて逃げたそうだ。これではあべこべだ。

 

 周りを見れば、大人の皆さんは静観するようだ。

 玲は不思議に思う、普通子供が争っていたら親は止めに入るだろうと。他の家庭の事は分からないが、うちの両親なら間違いなく止める。なのに両親は止めようとせず心配そうに見守っている。

 

 教員の表情を見て、玲は思った。こういう事態も想定していたのだなと、親にも事前に通達していたのだなと。

 子供にポケモンを与えるのだ、気が大きくなってしまうのも不思議ではない。こういう事も何回もあったのだと思う。見ればポケモンをいつでも出せるようにボールを手にしている、安全対策に問題はないのだろう。

 

 おそらくこの後に起こる事を、子供への教訓にするつもりなのだ。生命を扱うのだ、いい加減には出来ない。それを大人が見守っている安全な状態で、子供に学ばせるつもりなのだろう。

 

 玲は悩む、育成状況が分からないのが怖い。ステータスの差もあるし、タイプ相性もある。最初に与えられるポケモンなのだ、そんなに育っていないだろう。だがもし火なんか出されたらそこで終わる。

 初めてのバトルなのだ、手心を加えた内容であって欲しい。おい少年、なに得意げな顔をしている。ホップを見習え、恥を知れ。

 

「ユキメノコ」

「ワラッワララ」

 

 こんなにやる気を出して。主人を馬鹿にされたと思い、怒ってくれているのだろう。優しい子なのだ、出来れば痛い思いはして欲しくない。

 トレーナーになるなら必要なのは分かる。だがどうしても思ってしまうのだ、怪我をして欲しくないと。

 

 しかしいつまでも言ってても仕方がない、自分にできる全力でこの子を支えよう。負けたとしても、いっぱい抱きしめよう。

 いつかやらなくてはいけないのなら、大人が見ていて安全なうちに経験しておこう。そう思うことにした。

 

「わかったよ、やろうか」

「やっとか!おそいぞ!」

「ごめんねー、レイくん…」

「プク…」

「だいじょうぶだよ」

 

 玲は笑顔を浮かべる、彼女達に安心してもらえるようにように。大丈夫だよ、こんなの問題ないよと。彼女達に悪い所なんてなかったのだから、笑っていて欲しい。

 どうやら玲の顔を見て、安心したようだ。その顔に笑顔が戻って来ている。ピンプクも嬉しいのか、玲の足に笑顔で両手を当てていた。

 

「こっちに来てね」

「あの、まってください」

 

 やっと教師が来たかと思ったら、どうやら試合場に連れていかれるみたいだ。やはり既定路線、案内によどみがない。

 だが待ってほしい、やらなくてはいけない事がある。

 

「なんだよ、おまえ!」

 

 少年の前に立つ、玲はポニータの事が気になっていたのだ。ポニータは少年の後ろで、震えながら不安そうにこちらを見ている。その姿を見て玲は確信した、この子は戦いたくないのだと。

 ここは現実でゲームとは違う、性格はステータスや味の好みに影響するだけではない。戦いたくない子だっていて当たり前なのだ。

 

「この子かっこいいねっ」

「え?あ、そうだろ!かっこいいだろ!」

「うんっ、それにきれいだし、すごいね。さわっていい?」

「すこしだけな!」

 

 だが気になるからと言って、勝手に何かをするわけにはいかない。少年だって自分の相棒に許可なく何かされたら怒るだろう、自分だったら怒る。

 なので玲は少年に許可をもらうことにした。どうやら上手くいったようで、少年は得意げな顔をして横にずれてくれた。

 

「だいじょうぶ怖くないよ」

「ポニィ…」

「ボク玲っていうの、この子はユキメノコ」

「ワララッ」

 

 震えているポニータ、あまり近寄っては怖がらせてしまう。少し離れながら、玲は出来るだけ優しく声をかけた。大丈夫だよ、怖い事は何もしないよと。友達になりたいだけなんだよと。

 一緒に来てくれたユキメノコも紹介する。どうやら玲の考えている事が分かったのか、ポニータが怖がらないように彼女も合わせてくれている。

 ポニータはそんな玲の笑顔を見て、危険がないと分かったのか、近づいてきてくれた。

 

 身振り手振り合わせ話し続ける玲、そんな玲に合わせ鳴くユキメノコ。そうやっているとポニータはとうとう玲に心を許してくれて、頭をこすりつけてくれた。

 

「ねえ、この子戦いたくないみたいだよ?」

「そんなことない!」

「でも怖がってたし、やめようよ」

 

 不安そうなポニータ、その姿を見て少年も理解したようだ。自分の相棒が戦いたくないと思っている事が。だが認めたくないようだ、声を荒げてしまう。

 

 玲にはその気持ちは分かる。少年は自分にすごい相棒が出来たことが嬉しくて、自慢したかったのだ。戦って相棒の凄さを見せたかったのだ。なのに相棒はそれを嫌がっている、その事実に興奮してしまっているのだ。

 もし自分が外見相応の中身だったとしたら、周りの事を気にせずマスカーニャを自慢していただろう。そうは思いたくないが、相棒の気持ちを考えず戦いを挑んだりしたかもしれない。

 あの少年はまだ六歳、感情のコントロールが出来なくて当たり前なのだ。

 

「もういいよ!」

 

 少年は声を荒げ、ポニータにボールを向ける。何を言っても戦うことが出来ないと分かったのだろう、相棒をボールに戻すようだ。

 しかしポニータは玲の背に隠れてしまった。体を見えなくするかのように、縮こまって震えている。

 

「なんだよ!なんでだよ!」

「そこまでにしようね」

 

 少年の泣きそうな顔を見て心が痛む、もう少し上手いやり方があったのではないか。そう考え、玲は落ち込んでしまった。

 そんな玲達の元に、教師が二人歩いてきた。どうやらここで終わりの様だ、もう少し早く来てくれればと恨めしく思う。

 教師の一人は、少年の肩に手を置いて怒りを落ち着かせている。もう一人は、少年から受け取ったボールをポニータに向けていた。

 自分に向けるポニータの寂しそうな瞳に心が落ち込む。

 

「レイくんだいじょうぶ?ごめんねー」

「ピンプックー」

 

 落ち込んでいる玲の元に紗更達がやってきた、どうやら玲の姿を見て心配してくれたようだ。ピンプクも玲の足に抱き着き、励ましてくれていた。

 

「へいきだよ。ササラちゃんたちも怖かったよね、だいじょうぶ?」

「だいじょうぶ、レイくんのおかげだよ。ね、ピーちゃん」

「プクプクッ」

「ワラララ」

 

 彼女は玲に感謝してくれているようで、嬉しそうな顔をしている。ピンプクのピーチ、愛称はピーちゃん。彼女も喜んでいてユキメノコと笑いあっている。

 その光景に心が癒されるが、今の玲はそれだけでは足りない。この沈んだ心を浮き上がらせるには、もう一つ何かが欲しい。

 

「ねえササラちゃん、ボクと友達になって」

「えっあ、うん!いいよー、レイくん友達ねー」

「がっこう始まったらいっしょにご飯たべたりしようね」

「うん、たのしみねだねー」

 

 玲の心は見事に浮かび上がった。学校生活への期待に笑顔が輝きだす。彼女達も楽しみにしてくれているのか、その顔に笑みがあふれる。

 一緒にお弁を食べたり、放課後お話ししたり。ポケモンバトルをしたり、少し先の未来を話していく。

 そんな笑顔であふれた空間に、近づいて来る者たちがいた。

 

「レーくんごめんね、こわかったわよね」

「へいきだよママッ」 

 

 玲と紗更の両親に、先ほどの少年とその父親だった。

 母は玲の事がよほど心配だったのか、息子を抱きしめて頭を撫でる。父は息子が頑張る姿が嬉しかったのか、微笑んでいる。少し恥ずかしいが、心配させてしまったのだ受け入れよう。

 紗更も両親と笑顔で話している。どちらの家族も仲は良好なのようだ。

 

「息子が済まなかったね。ほら高貴」

「ごめんなさい…」

 

 少年の目は涙で濡れていて、父親に相当怒られたのだと察せられる。

 見れば、両親は静観するつもりのようだ。紗更の親もそれは同じで、もしかしたら親同士で話し合いは終わっているのかもしれない。

 

「だ、だいじょうぶです。あの…あの子は」

「息子を怖がっていてね、学校に返したのだよ。安心していい、しっかり面倒を見てもらえる」

「あの…はい」

 

 このままでは少年が可哀そうだ、何とかならないかと声をかけようとして気付く。少年が大事そうにボールを持っていることに。どうやら他の子を貰えたようだ。

 学校用のポケモンが多いとは思ってたのだが、何かあった時のために多めに連れてきていたようだ。

 やはり既定路線だったのだろう、このような事がよくあるのだと思われる。性格の合わない組み合わせなんて、あって当たり前なのだ。

 向こうの親子はもう一度頭を下げて去っていった。しかしこのままでは凝りが残る、玲は口を開けた。

 

「ねえっ、ボク玲!きみは?」

「…こうき」

「コウキくん!こんどは戦おう、その子とつよくなって」

「っ、うん!」

「ボクもがんばってつよくなるからっ」

「うんっ、あの…ごめんねっ、ごべんね!」

 

 もういいんだよ泣かなくて、その子の事は大切にしてあげてね。玲と紗更に泣きながら謝る姿を見て、玲は心の中で少年を応援した。

 これから高貴は新しい相棒を大事にしていく、無理に戦わせる事なんてもうしないはずだ。もし戦うことがあったら、その時は相棒と心を通わせているはずだ。玲はその時のことを楽しみに思う。

 

 高貴は歩いて行った。泣きながら、父親に頭を撫でられながら。その胸に大事そうにボールを抱えて。

 

 




ユキメノコという名のユキワラシです

紛らわしいですが、しばらくの間このまま行きます
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