ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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一話

 夢を見ていた気がする。

 何か大きな者の前で一生懸命思いを伝える、そんな夢。

 

 何を言ったかは分からない。何を聞いたかも覚えていない。

 それでも身振り手振り合わせ精一杯、思いを伝えたことだけは覚えている。

 

 不思議な夢だが何故かとてもいい気分だ。

 何かの愛に包まれているような心地よい感覚に身をゆだね、このまま何も考えず眠っていたい。

 しかし仕事があるのでそういうわけにもいかない、そんな義務感が湧いてくる。

 

(シゴトってナンダ?)

 

 だめだ寝ぼけている、そう思い男は顔でも洗うかと重い目を開けた。

 だがそこで異常が目に入る、入ってきた情報に脳が混乱する。

 

 何だ一体どうなっている。知らない天井覚えのない家具、自分はいったい何処にいる。動きの悪い自分の体に隣で眠る大きな女性、何が起きてこうなった。

 何も分からない状況に声をあげるが。

 

「ゥアァ――」

 

 高いうめき声が自分の口から出ることにさらに混乱する。

 自分の声、体の感覚の違い、横から聞こえる寝息。

 恐怖が心を覆い思考がまとまらない、感情が迫り上がり口からあふれ出す。

 

「アァァッ――ッア―――」

「わんお!わんお!」

「れっ――レーくん!レーくん!」

 

 犬の鳴き声迫りくる女の巨人、変わっていく周りの状況。

 制御できないその心によって男はついに。

 

「ッア――ァアアアアアアアアアアアア――――――――

 

 感情が爆発した。

 

 

 

 

 

 

 時間が経ち女性にあやされることで、男の心はようやく落ち着きを取り戻していた。

 胸に抱かれ周りを見回すことができるようになり、状況がわかるようになってくる。

 

(転生ってやつかぁ…)

 

 穴だらけの記憶だ。だがそういうものが流行っていて、自分がそれを好きだったことは覚えている。

 まさか自分が経験するとは思っていなくて、笑ってしまいそうになるが。

 

「わんお!ハッハッハッわんお!」

(ガーディかわいいなぁッ!かっこいいなぁッ!抱き着きたいなぁッ!)

 

 自分を抱いた母の周りをガーディが走り回っている。喜びを体全体で表している姿を見て楽しくなり心が躍る。

 原作ありの転生。自分の好きな世界での新しい人生だ。楽しまなくてどうする、受け入れようと男は決めた。

 

 先に対し不安を覚えもする。今の自分は赤ん坊だ、お世話されないと生きていけない。

 泣き喚きあやされ下の世話もされるだろう、そんなすぐ先の未来を想像してしまう。

 何もできない自分の姿に心が死にそうになるが――

 

(おっぱいふわふわ)

 

 自分を抱く今生の母の胸を触る、それだけで全てがどうでもよくなる。

 赤ん坊とはそういうものだ、泣きわめこうが垂れ流そうが許される。胸を触っても問題にならない。

 男は今無敵だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ごめんなさい…)

 

 男は情報を集めることにした。

 母に抱かれていて見える範囲が狭いため、大したことは知れないだろう。だが今生を楽しむために知識をためることが大事だと。

 そこで知りえたことに後悔した、浮かれていた。男は自分を恥じた。

 

(一年…怖かったろうなぁ、大事な息子が起きないなんて)

 

 瘦せ細った体、肌の荒れに目元の隈。そんなになってまで自分の面倒を見てくれていた母の姿に心が痛む。

 幸せになってもらいたい。母に笑顔でいてもらいたいと強く思う。

 男は決意した、今度の人生では親孝行していこうと。もちろん自分の人生も楽しむ。母に見せたくない、楽しんで生きてない、そんな息子の姿なんて。

 

 決意を新たにしたところで考える、 男は一年眠っていたため体の成長が遅れている。

 母に元気な姿を見てもらいたい。眠っていたことなんて問題ないのだと、自分は母のおかげでちゃんと育っているのだと。

 

 だからといって赤ん坊の体力、急に運動などできるはずもないが。

 赤ん坊のからだで出来ることは本当に少ない、そのことに歯がゆく思う。

 

「奥様、旦那様に連絡がつきました。すぐに帰るとのことです」

「ありがとう渡邊さん。でもお仕事だいじょうぶかしら、まだ早い時間なのに」

「お坊ちゃまが起きたのです、何をおいても飛んで帰ってくるかと。すごい喜びようでした」

「ふふっ、そう…」

(あっ綺麗、だいすき)

 

 母の微笑む顔を見て好きがあふれてくる。母の笑顔、嬉しそうな家政婦の渡邊さん、しっぽを振り喜ぶガーディ。

 幸せがあふれた空間に体から力が抜ける。何も考えられなくなりそうになるが、男はこらえる。

 

 この後父親が返ってくるらしい、そうなったら慌ただしくなるだろう。

 病院に行かなくてはいけないだろうし、他にもすることがあるかもしれない。

 母に抱かれている今は、たいして出来ることはない。だがせめて挨拶ぐらい済ませたい。

 

(家政婦さんがいるんだぁ) 

 

 母が呼んだ名前によると、家政婦は渡邊さん。年はおそらく20台後半、黒髪美人で胸はない。

 切れ長の目で少し怖い印象があったが、うれしそうな笑顔を見ていい人そうだと男は思った。

 

 家政婦という事は面倒を見てもらうだろう人だし、第一印象は大事だと男はとびっきりの笑顔を渡邊さんに披露することにした。

 

「うぁあ――きゃっきゃ」

「あら、レーくん渡邊さんがすきみたい」

「かわいらしいですね。初めましてお坊ちゃま、渡邊一花です」

「あぁーあぁー」

「レーくんよろこんでるわ、ねぇ渡邊さん少し抱いてみない」

「えっ、よろしいのですか?」

「えぇ、これからもお願いするでしょうし」

「では、失礼します」

 

 赤ん坊に固い口調で挨拶するかわいらしい姿に男の心はほっこりするが――

 

 

 母から子供を受け渡され、体を硬くする渡邊さんは胸も硬かった。

 

      

 

 

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