誤字報告もありがとうございます、全然気づいていませんでした…
これからもよろしくお願いします
四月某日。
もうすぐ入学式というある春の暖かな土曜日、玲はリビングでため息をついていた。先日の学校でのやり取りを思い出していたのだ。
やはりあれは既定路線だったようだ、あの後教師から話があったのだ。
ポケモンにも性格があるのだから、その子の事を考えろ。嫌われたら逃げられる、自分の相棒と心を通わせて、学校生活を楽しみなさい。その様な事を全員に向け話していた。
玲は思う、厳しすぎやしないかと。生命を扱うのだから、半端な真似はできないのは分かる。だからって相手は六歳児、もう少し手心を加えてもいいのではと。ポケモンも何かあってもいいように、多めに連れてきていたようだし。
ポニータも悲しい思いをした、その事が切なくてどうしても頭から離れなかった。
あのまま高貴と一緒にいても、上手くいかなかっただろうとは思う。残念だがそれは仕方がない、人にもポケモンにも相性があるのだ。次はいい人と巡り会ってほしい。
そんな時、玲を見た父が声をかけてくる。
「玲くん、ちょっといいかな」
「なにー?、パパー」
「庭でポケモンと遊ばない?」
「あそぶー」
どうやら玲の落ち込みようを見て心配してくれたようだ。せっかくの休みだろうに、家族サービスを頑張る父の姿に玲は嬉しくなった。
久しぶりにギンガくんと遊ぼうか、そう玲は思い勢いよくソファーから立ち上がった。
マスカーニャ達のボールを腰に、父について玄関扉を潜る。空は澄み渡っていて、絶好のポケ活日和。今日はいい日になりそうだと、玲は顔に笑みを浮かべた。
そうして笑っていた玲の元に、父が歩み寄ってくる。手にはボールを一つ持っていて、何かを企んでいそうな顔をしていた。
「どうしたの、パパ?」
「玲くん、ポケモンは好き?」
「うんっ、大好きっ」
「大事にする?」
何を言ってるのパパ、このボクだよ?そんなの分かり切っているでしょう。玲は父に向け元気よく返事した。
笑みを深くした父に玲は訝しむ、父が何を企んでいるのかが分からない。ギンガくんの事は大好きだ、そんなこと父なら分かっているはずだ。
そんな風に玲が不思議に思っていると、やっと父はボールを放る。放物線を描き落ちていく、ボールの軌跡を目で追う。ギンガくんが出てくると予想した、玲の目に飛び込んできたのは―――
「ポニィー」
「―――」
―――ポニータだった。
玲は混乱した、なぜここにポニータがいるのか分からなかったからだ。彼女は学校用のポケモン、次の生徒のために残ったはずなのだ。
父を見る、その顔は悪戯が成功した子供の様で。玲を見て笑顔を浮かべていた。
玲は思い出す、あの日父がしていた行動を。高貴達が去ってから、父は教師の一人と話をしていた。おそらくポニータが玲に懐いている様子と、息子の表情を見て動いてくれたのだろう。そんな父の思いやりに、玲の瞳に涙があふれる。
「いいの?パパ…」
「うん、一緒に育てていこうね」
しかし玲は不安になる、本当にいいのだろうか。ちゃんと育ててあげられるか分からなのだ。この子は学校に行くのは難しいだろう、高貴のことを怖がってしまう。ずっと一緒にいてあげられない。
だが父は言ってくれた、一緒に育てていこうと。彼女の事を家族みんなで大事にしていこうと。
「パパー…」
「玲くん、この子が寂しがっているよ」
「うん、っ。ありがとうパパ!」
涙を拭き父の手の先を見る、そこにはポニータが嬉しそうに立っていた。
玲はポニータの体を撫でる、彼女はくすぐったそうにしているが嫌そうではない。そのたてがみはとても綺麗で、燃えているのに熱くない。そのことに玲は嬉しくなる。
どうやら彼女は玲を認めてくれているようだ、玲は彼女の首に抱き着く。
「ポニータ、今日から君はポニータだよ」
「ポニィーッ」
首に抱き着き体を撫でながら、玲は彼女に名前を付ける。
彼女は戦いが嫌いだ、進化は厳しいだろう。現実になってどうなったか分からないが、原作のポニータの進化条件はレベルだ。おそらくこの子も同じだろう、進化するのは難しい。
だがそれはいい、問題なんてない。強くなんてなくても、幸せになれるのだ。我が家でのびのび暮らして、幸せに生きて欲しい。そう想いを込め名前を付ける。
どうやら気に入ってくれたようだ、機嫌よさそうに鳴いている。
そこで玲は気付いた、自分のボールに入ってくれるだろうか。彼女は今まで学校用のボールに入っていた、それは今でも同じだろう。
おそらく、父は学校からボール事譲り受けてきたのだ。あのボールはポニータにとって、住み慣れた家のようなものだ。
彼女が嫌がるなら、無理強いするつもりはない。しかし出来れば彼女には玲のボールに入って欲しい、一応聞いてみることにした。
「ねえポニータ、あたらしい家にこない?」
「ポニィ?」
「これだよ、大好きな子に入ってもらうボールなの」
「ポニッ、ポニィィ」
ポケモンを捕まえる予定がなかったので、空きのボールは家に置いて来ている。腰にあるエースバーンのボールを手に取り、ポニータに見せて説明する。
彼女は凄く興奮しているが、どうやら嫌がっていないようだ。
ありがとうポニータ、すぐ取ってくる。急ぐからちょっと待っててね、大好きだよ。
玲は彼女にそう伝え、急いで家に走っていった。
―――今日は最高の日だ。
玲は今、家の庭でオーガポンの胸枕を味わっていた。まるで卵を温めているかのように、玲の頭を抱え横になっている。
両側にはマスカーニャとエースバーン、二匹は玲の腕を抱きしめていた。足の間ではユキメノコが右足に抱きついて。ポニータはその近くで、バウちゃんと一緒に横になっていた。
みんな心地よさそうに眠っている。その寝息を聞いていると、心が温かくなる。穏やかな気分だ、最高の時間だ。今日を記念日としよう。
ポニータにボールに入ってもらってからすぐ、玲は皆を紹介した。彼女は最初、大勢のポケモンに怖がっていた。だがすぐに皆の優しさに触れ、警戒を解いていた。
マスカーニャが優しく体を撫で、エースバーンはニコニコ顔で微笑んで。他のみんなも周りで楽しそうに走り回って、ポニータを歓迎していた。
みんなの優しさに玲はうれしくなる。
その後はみんなで仲良く遊んだ。ポニータの背にバウちゃんを乗せたり、みんな一緒に駆けっこしたり。
楽しかった、だが楽しいだけに申し訳なかった。父達を放って置いていることに、罪悪感が湧く。
父は庭にある椅子に座って、微笑みながらこちらを見ていた。せっかくの休みなのに、玲のために庭にいさせてしまっている。
ギンガくんもポニータが怖がるかもしれないからと、ボールに入ったまま。あの子はいい子だ、沢山遊んでそれは分かっている。怒ったりしないだろう。
だがそれでも、父と過ごせたかもしれないのだ。ボールの中から外の様子が分かるのだとしても、外に出て父といたかっただろう。思うことはあるはずだ。
だが何時までもこんな気分でいたのでは、自分のポケモン達にも父達にも悪い。
せっかくの楽しい時間だ楽しもう。そう思って遊び倒し、現在は疲れて皆でお昼寝の時間だ。
皆の寝息を聞きながら、目だけを動かして父を見る。どうやら父は父で楽しんでいるようだ、少し安心した。
椅子に座りながらタブレットで何かを見て、時おりテーブルの上のボールを撫でている。
ギンガくんも喜んでいるのか、たまにボールが震えている。
安心したら何だか眠くなってきた、この心地よさを味わい尽くすために起きていたのだ。
このまま皆の寝息を、子守歌代わりに寝ようか。そう決めて玲は、まぶたを閉じた。
寒くなったからと父に起こされ、玲は現在リビングにいた。
ポケモン達はポニータ以外みんな出ている。
ポニータは家の中では出すことが出来ない、走ると危ないからだ。今は大人しくしているからまだいいが、家に慣れてきて走り回ったりしたら問題だ。今からこの生活に慣れさせるために、家の中ではボールに入れている。
そのポニータには今、ポケモン達の寝場所を教えていた。テレビに向かって左側、玲の身長くらいの高さの棚。その上が寝場所だ。
マスカーニャなどは玲と一緒に寝ていたのだが、このままポケモンが増えていったら喧嘩になるかもしれない。
全員で毎日一緒に寝るわけにはいかない。そこで交代で一匹だけ一緒に寝て、残りの全員この場所で寝ることにしたのだ。
家族のポケモンは皆ここで寝ているのだ、寂しくはないだろう。
ポニータの定位置はしばらくここになると思われる、怖がって学校にいけないからだ。
未来は分からない、怯えずに学校に行けるようになるかもしれない。だが少なくとも、しばらくは家でお留守番だ。その間はここにいることになる。
この場所はテレビも見れるし、皆の顔が見える。それに家族が面倒を見てくれる、ポニータの寂しさも少しは抑えられるはずだ。
今ボールスタンドの上にいるポニータは、ニコニコ顔のエースバーンに撫でられていた。マスカーニャがそれを微笑んで見ていて、他の皆も笑顔で見上げている。
少なくとも今は寂しくないはずだ、ポニータの心を思って玲は微笑んだ。
ポニータはバウちゃんみたいな感じになります
いつか学校には行くかもしれませんが