ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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十八話

 四月某日。

 もうすぐ入学式というある春の暖かな土曜日、玲はリビングでため息をついていた。先日の学校でのやり取りを思い出していたのだ。

 やはりあれは既定路線だったようだ、あの後教師から話があったのだ。

 

 ポケモンにも性格があるのだから、その子の事を考えろ。嫌われたら逃げられる、自分の相棒と心を通わせて、学校生活を楽しみなさい。その様な事を全員に向け話していた。

 

 玲は思う、厳しすぎやしないかと。生命を扱うのだから、半端な真似はできないのは分かる。だからって相手は六歳児、もう少し手心を加えてもいいのではと。ポケモンも何かあってもいいように、多めに連れてきていたようだし。

 

 ポニータも悲しい思いをした、その事が切なくてどうしても頭から離れなかった。

 あのまま高貴と一緒にいても、上手くいかなかっただろうとは思う。残念だがそれは仕方がない、人にもポケモンにも相性があるのだ。次はいい人と巡り会ってほしい。

 そんな時、玲を見た父が声をかけてくる。

 

「玲くん、ちょっといいかな」

「なにー?、パパー」

「庭でポケモンと遊ばない?」

「あそぶー」

 

 どうやら玲の落ち込みようを見て心配してくれたようだ。せっかくの休みだろうに、家族サービスを頑張る父の姿に玲は嬉しくなった。

 久しぶりにギンガくんと遊ぼうか、そう玲は思い勢いよくソファーから立ち上がった。

 

 マスカーニャ達のボールを腰に、父について玄関扉を潜る。空は澄み渡っていて、絶好のポケ活日和。今日はいい日になりそうだと、玲は顔に笑みを浮かべた。

 そうして笑っていた玲の元に、父が歩み寄ってくる。手にはボールを一つ持っていて、何かを企んでいそうな顔をしていた。

 

「どうしたの、パパ?」

「玲くん、ポケモンは好き?」

「うんっ、大好きっ」

「大事にする?」

 

 何を言ってるのパパ、このボクだよ?そんなの分かり切っているでしょう。玲は父に向け元気よく返事した。

 笑みを深くした父に玲は訝しむ、父が何を企んでいるのかが分からない。ギンガくんの事は大好きだ、そんなこと父なら分かっているはずだ。

 そんな風に玲が不思議に思っていると、やっと父はボールを放る。放物線を描き落ちていく、ボールの軌跡を目で追う。ギンガくんが出てくると予想した、玲の目に飛び込んできたのは―――

 

「ポニィー」

「―――」

 

 ―――ポニータだった。

 玲は混乱した、なぜここにポニータがいるのか分からなかったからだ。彼女は学校用のポケモン、次の生徒のために残ったはずなのだ。

 父を見る、その顔は悪戯が成功した子供の様で。玲を見て笑顔を浮かべていた。

 

 玲は思い出す、あの日父がしていた行動を。高貴達が去ってから、父は教師の一人と話をしていた。おそらくポニータが玲に懐いている様子と、息子の表情を見て動いてくれたのだろう。そんな父の思いやりに、玲の瞳に涙があふれる。

 

「いいの?パパ…」

「うん、一緒に育てていこうね」

 

 しかし玲は不安になる、本当にいいのだろうか。ちゃんと育ててあげられるか分からなのだ。この子は学校に行くのは難しいだろう、高貴のことを怖がってしまう。ずっと一緒にいてあげられない。

 だが父は言ってくれた、一緒に育てていこうと。彼女の事を家族みんなで大事にしていこうと。

 

「パパー…」

「玲くん、この子が寂しがっているよ」

「うん、っ。ありがとうパパ!」

 

 涙を拭き父の手の先を見る、そこにはポニータが嬉しそうに立っていた。

 玲はポニータの体を撫でる、彼女はくすぐったそうにしているが嫌そうではない。そのたてがみはとても綺麗で、燃えているのに熱くない。そのことに玲は嬉しくなる。

 どうやら彼女は玲を認めてくれているようだ、玲は彼女の首に抱き着く。

 

「ポニータ、今日から君はポニータだよ」

「ポニィーッ」

 

 首に抱き着き体を撫でながら、玲は彼女に名前を付ける。

 彼女は戦いが嫌いだ、進化は厳しいだろう。現実になってどうなったか分からないが、原作のポニータの進化条件はレベルだ。おそらくこの子も同じだろう、進化するのは難しい。

 だがそれはいい、問題なんてない。強くなんてなくても、幸せになれるのだ。我が家でのびのび暮らして、幸せに生きて欲しい。そう想いを込め名前を付ける。

 

 どうやら気に入ってくれたようだ、機嫌よさそうに鳴いている。

 そこで玲は気付いた、自分のボールに入ってくれるだろうか。彼女は今まで学校用のボールに入っていた、それは今でも同じだろう。

 おそらく、父は学校からボール事譲り受けてきたのだ。あのボールはポニータにとって、住み慣れた家のようなものだ。

 彼女が嫌がるなら、無理強いするつもりはない。しかし出来れば彼女には玲のボールに入って欲しい、一応聞いてみることにした。

 

「ねえポニータ、あたらしい家にこない?」

「ポニィ?」

「これだよ、大好きな子に入ってもらうボールなの」

「ポニッ、ポニィィ」

 

 ポケモンを捕まえる予定がなかったので、空きのボールは家に置いて来ている。腰にあるエースバーンのボールを手に取り、ポニータに見せて説明する。

 彼女は凄く興奮しているが、どうやら嫌がっていないようだ。

 

 ありがとうポニータ、すぐ取ってくる。急ぐからちょっと待っててね、大好きだよ。

 玲は彼女にそう伝え、急いで家に走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――今日は最高の日だ。

 

 玲は今、家の庭でオーガポンの胸枕を味わっていた。まるで卵を温めているかのように、玲の頭を抱え横になっている。

 両側にはマスカーニャとエースバーン、二匹は玲の腕を抱きしめていた。足の間ではユキメノコが右足に抱きついて。ポニータはその近くで、バウちゃんと一緒に横になっていた。

 みんな心地よさそうに眠っている。その寝息を聞いていると、心が温かくなる。穏やかな気分だ、最高の時間だ。今日を記念日としよう。

 

 ポニータにボールに入ってもらってからすぐ、玲は皆を紹介した。彼女は最初、大勢のポケモンに怖がっていた。だがすぐに皆の優しさに触れ、警戒を解いていた。

 マスカーニャが優しく体を撫で、エースバーンはニコニコ顔で微笑んで。他のみんなも周りで楽しそうに走り回って、ポニータを歓迎していた。

 みんなの優しさに玲はうれしくなる。

 

 その後はみんなで仲良く遊んだ。ポニータの背にバウちゃんを乗せたり、みんな一緒に駆けっこしたり。

 楽しかった、だが楽しいだけに申し訳なかった。父達を放って置いていることに、罪悪感が湧く。

 

 父は庭にある椅子に座って、微笑みながらこちらを見ていた。せっかくの休みなのに、玲のために庭にいさせてしまっている。

 ギンガくんもポニータが怖がるかもしれないからと、ボールに入ったまま。あの子はいい子だ、沢山遊んでそれは分かっている。怒ったりしないだろう。

 だがそれでも、父と過ごせたかもしれないのだ。ボールの中から外の様子が分かるのだとしても、外に出て父といたかっただろう。思うことはあるはずだ。

 

 だが何時までもこんな気分でいたのでは、自分のポケモン達にも父達にも悪い。

 せっかくの楽しい時間だ楽しもう。そう思って遊び倒し、現在は疲れて皆でお昼寝の時間だ。

 

 皆の寝息を聞きながら、目だけを動かして父を見る。どうやら父は父で楽しんでいるようだ、少し安心した。

 椅子に座りながらタブレットで何かを見て、時おりテーブルの上のボールを撫でている。

 ギンガくんも喜んでいるのか、たまにボールが震えている。

 

 安心したら何だか眠くなってきた、この心地よさを味わい尽くすために起きていたのだ。

 このまま皆の寝息を、子守歌代わりに寝ようか。そう決めて玲は、まぶたを閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 寒くなったからと父に起こされ、玲は現在リビングにいた。

 ポケモン達はポニータ以外みんな出ている。

 ポニータは家の中では出すことが出来ない、走ると危ないからだ。今は大人しくしているからまだいいが、家に慣れてきて走り回ったりしたら問題だ。今からこの生活に慣れさせるために、家の中ではボールに入れている。

 

 そのポニータには今、ポケモン達の寝場所を教えていた。テレビに向かって左側、玲の身長くらいの高さの棚。その上が寝場所だ。

 マスカーニャなどは玲と一緒に寝ていたのだが、このままポケモンが増えていったら喧嘩になるかもしれない。

 全員で毎日一緒に寝るわけにはいかない。そこで交代で一匹だけ一緒に寝て、残りの全員この場所で寝ることにしたのだ。

 家族のポケモンは皆ここで寝ているのだ、寂しくはないだろう。

 

 ポニータの定位置はしばらくここになると思われる、怖がって学校にいけないからだ。

 未来は分からない、怯えずに学校に行けるようになるかもしれない。だが少なくとも、しばらくは家でお留守番だ。その間はここにいることになる。

 この場所はテレビも見れるし、皆の顔が見える。それに家族が面倒を見てくれる、ポニータの寂しさも少しは抑えられるはずだ。

 

 今ボールスタンドの上にいるポニータは、ニコニコ顔のエースバーンに撫でられていた。マスカーニャがそれを微笑んで見ていて、他の皆も笑顔で見上げている。

 

 少なくとも今は寂しくないはずだ、ポニータの心を思って玲は微笑んだ。

 

 




ポニータはバウちゃんみたいな感じになります

いつか学校には行くかもしれませんが
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