ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

21 / 69
お気に入り、評価、感想など、いつも応援ありがとうございます

これからもよろしくお願いします


十九話

 ―――四月某日。

 この日の玲は、ポケモンのみんなとソファーで寛いでいた。午前中は庭で遊んでいたのだが、疲れてしまったのだ。

 ポニータが我が家に慣れてきて元気に走り回るようになり、他のポケモンも一緒に走り回る。玲も頑張って走ったのだが、ポケモンにはとても対抗できない。ついには疲れ果て、庭に大の字で寝てしまったのだ。

 ポケモンのみんなと一緒に、昼ご飯に呼ばれるまで眠っていたようで。渡邊さんに起こされたときは、マスカーニャに抱き着かれていた。他のみんなも近くで丸まっていて、その姿を見てとても癒された。

 しかしその至福の時間とご飯だけでは、体力を回復させることは出来なかった。それで現在、リビングで休んでいるという訳なのだ

 

「バースゥ」

「ワラァ」

 

 玲は今、エースバーンに胸に抱かれソファーに寝転がっている。午前中はマスカーニャと一緒に寝たので、午後からは彼女という事らしい。とても幸せそうに眠っていて、寝息を聞いていると心が温かくなる。

 午前中も寝ていたのに、また眠っている。夜は大丈夫かと少し心配になった。

 隣ではユキメノコが、マスカーニャの膝の上で同じく眠っていて。頭を撫でられて、幸せそうに寝息を立てていた。オーガポンとバウちゃんは元気なようで、カーペットの上に置いたポニータのボールを撫でている。

 

 そんな風にまったりとした時間を過ごしていると、渡邊さんがリビングにやって来た。手には大きな平たい箱を持っていて、どうやらそれを玲に見せに来たようだ。

 母が手にカメラを持ち、後ろから歩いて来ている、その顔は輝いていてとても楽しそうだ。その楽しい空気に気付いたのか、エースバーンとユキメノコが目を覚ます。

 

「レーくん、がっこうの制服よ」

「こちらです、お坊ちゃん」

 

 どうやら小学校の制服が出来たようだ、玲に着せて写真を撮りたいのだろう。問題ない、玲は頷く。息子の制服姿だ、写真に残したい母の気持ちは理解できる。玲に娘がいたとしたら、絶対に見たいし写真も撮りたくなる。

 それにポケモンのみんなと一緒に撮ってもくれるだろう、絶対にデータに残してタブレットに入れておきたい。

 

「きてくるね」

「てつだうわ、レーくん」

「だいじょうぶ、ひとりでできるよ」

 

 それは困る。初めての制服で、子供が戸惑うと思っているのかもしれないが。成人男性だったのだから、こんな事ぐらい問題あるわけない。いつまでも母に着替えを手伝ってもらうのは恥ずかしい。

 何故か残念そうにしている渡邊さんから制服を受け取る。

 

 寂しそうな母の視線に罪悪感を覚えながら、玲は寝室に向かい歩いていく。

 マスカーニャが玲を追う、それにつられたエースバーンも後に続く。オーガポンが楽しそうに、ユキメノコを抱えて付いて来る。

 ちょっと待ってほしい、いくら何でも来すぎでしょう。そんなに気になる?

 

 楽しそうに付いて来るみんなに、玲は心の中で頭を抱える。来たがる理由が分からない、あとで見ることが出来るのに。

 みんなに来ないように言おうとして、しかしやめる。気にしない事にした。

 みんなに悪気がある訳ではない、着替えを覗くという考えはないだろう。それなら怒るほどのことでもない。別に彼女達に見られても、嫌な気持ちになるわけではないし。

 ポケモンが着替えを手伝ってくれるなんて、よく考えればとても微笑ましい。この機会に楽しもう。

 

 寝室に入り箱を床に置き、みんなが見守る前で蓋を開ける。中を取り出して見てみると、込み上げてくるものがある。写真で見てはいたが、実際に見るとやはり違うようだ。

 

 水色のシャツに紺色の上下、五分丈のズボンが少し恥ずかしい。オーガポンが嬉しそうにシャツを掲げている。

他のみんなも手には何かしらを持っている。玲は戦慄した、この状況で着替えるのかと。

 

 楽しそうなみんなに見られながら、鏡の前で着替えていく。紺色のリボンの向きを確認、くるりと回り完成だ

 不思議な状況に変な気分になりながらも、鏡に自分の姿を映し心の中で深く頷く。

 ママ、かっこかわいくに生んでくれてありがとう。お姉さま方垂涎の姿に玲は大満足だ。

 

 鏡の中の自分の姿をクルクル回って見ていると、オーガポンも近寄って来て玲と一緒に回りだす。マスカーニャが手を叩き、エースバーンとユキメノコが躍っている。なんか楽しくなってきた―――

 

 

 

 ―――渡邊さんのドアをノックする音で、玲は正気を取り戻した。

 みんなと一緒に踊るのが楽しくて、時間が経っているのに気づかなかったようだ。部屋まで呼びに来てくれた渡邊さんに悪いので、急いでみんなに声をかける。

 楽しい時間が終わってしまった事に残念そうだ。だがそんな顔する必要なんてない、なぜなら。

 

「みんなっ、しゃしんのじかんだよ!」

 

 お楽しみはまだまだこれからだ。

 

 

 

 

 

 

 

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

 

 

 

 

 

 

 とうとうやって来た入学式、現在玲は両親と体育館にいた。

 とても広い空間の中、何十人もの子供が座っている。その足元にはポケモンがいて、主人同様不安そうに周りを見ていた。

 両親達はその周りで、子供の晴れ姿を見守っている。とても微笑ましそうな眼をしていた。

 

 玲は思った、広すぎだろうと。前回の体育館も広かったが、ここはそれ以上だ。子供と親、ポケモン達。教師もいるのにそれでも余裕があるほどの、とても広い建物だった。

 

 どうやらここは、ポケモンバトルもする場所らしい。テープがコート状に三面分張られていた。どうりで広いわけだ。対戦、観戦もするのだ、広さは必要だろう。

 玲は心配になった、この床は大丈夫なのかと。ポケモンの力で踏み抜かれたりしないかと。軽くけった感じでは、特別な素材で出来ている感じはしなかった。

 だが玲は気にしない事にした、今考えても仕方がない。学校生活を送っていれば、いつか分かるはずだと。そんな物よりも重要な者を目の先にとらえたのだ。少し離れてはいるがあの時の少女を見つけたのだ。

 

 紗更、妄想から出てきたような美少女。そんな美少女が可愛らしい制服を着ている、その姿を目に焼き付けなければいけない。

 彼女も玲に気付いたのかこちらに手を振っている。玲も彼女に手を振り返す、己に出来る最大限の微笑みで。

ユキメノコもピンプクのピーちゃんを見つけたのか、椅子の隙間から手を振っている。

 覚えてくれていてよかった。ないとは思ってたが、忘れられていたら泣いてしまう。幼馴染イベントはばっちりだったのだ。

 

 そうこうしていたら時間が来たようで、壇上に人が立っていた。入学式がいよいよ始まるようだ。子供達は不安なようで落ち着きがない。それはポケモン達も同じで、周りを見渡していた。

 大丈夫だよみんな落ち着いて、怖い事はなにもないから。何か集中できることを探すといいよ。

 こんな風にポケモンの可愛らしい姿を見ていれば、あ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――っという間に終わるから。

 とてもいい話でしたね、感動したなー。

 

 玲は今、教室で担任の話を聞いていた。ポケモンを選ぶ場で話しかけてきた女性、その人が玲の担任だったのだ。名前は春城(はるしろ)(はるか)、ハルカ先生。ハルハルセンセー、心の中で呼ぶならこちらだろうか。

 黒髪短髪のソバカスがチャーミングな、二十代後半の女性だ。この先生は玲の事を覚えてくれていたようで、挨拶したら嬉しそうに微笑んでくれた。変な印象を与えていなくてよかった。

 

 周りの子供はお行儀よく座っている、さすが私立の学校だ。泣いてしまう子もいると予想していたのだが、みんな真剣に話を聞いている。

 玲は幼稚園にも行っていない、もし前世がなかったら、初めての集団生活に泣いていたかもしれない。

 担任の話はそんなに長くなかった。しっかりしていても小学一年生、長話はつらいだろう。明日からのことを軽く話して、プリントを親に渡すように言って終わりだ。

 

「それでは皆さん、おつかれさまでした」

 ―――おつかれさまでした―――

 

 初めての挨拶だ、ばらばらで揃っていない。それでもみんな元気よく、笑顔で挨拶していた。そんな子供達の挨拶に、ご両親は皆微笑んでいる。

 

 多くの家族が帰ってしまい、人の少なくなった教室で、玲は紗更と話していた。紗更は笑顔で、玲との再会を喜んでくれてるようだ。残念ながら今はポケモンを出せないが、腰のボールは嬉しそうに震えていた。

 ポケモンの学校とはいえ、教師が見ていないと出すことは出来ないようだ。早く許可印が欲しい。

 

「ササラちゃん元気だった?」

「うん、げんきだよー。レイくんは?」

「ボクも元気っ、おなじ教室でよかったね」

「ねー、いっしょにお勉強できるねー」

 

 紗更と同じ教室になれたことに玲は喜ぶ、彼女もそれは同じようで笑顔だった。見れば向こうのご両親も嬉しそうにしている、しっかりした優しい玲君と印象付けられたようだ。

 

「あ、あの…ね、ねぇ!」

 

 と、そこで。玲達に話しかける子供が一人、どうやら話しかけるタイミングを伺っていたようだ。彼の後ろにはその父親が、うちの両親に挨拶をしていた。

 その子供は高貴、先日の体育館での少年だった。彼は話しかけたはいいものの、気まずいのか俯いていた。

 

「コウキくん!この教室なの?」

「うっうん…」

「一緒にべんきょうできるね、その子もね!」

「っうん!あのね、ゴウタっていうの!」

「ゴウタくんっ、よろしくね」

 

 子供がいつまでも落ち込み続けているのは忍びない、玲は笑顔で話しかけた。

 高貴は最初こそ俯いていたものの、その言葉が嬉しかったのか次第に笑顔になっていく。彼の腰にいるゴウタくん、どんなポケモンなのかは分からない。だが嬉しそうに震えているし、高貴も笑顔で紹介してくれた。きっといい関係を築けていけるのだろう、早く会ってみたかった。

 

 紗更は少し怖いのか、玲の後ろに隠れている。だがそれも仕方がない、いつか慣れるだろう。服を握ってくれているのが可愛らしいし、玲的には問題ない。もっと握ってていいんだよ。

 

 出来たら高貴とは仲良くしていきたい、楽しく戦える相手が欲しいのだ。同性の方が戦いを挑みやすいのもあるし、紗更はピーちゃんの事を考えると楽しめるかは怪しい。

 もちろん先日のような事は勘弁だが。あんなに泣いて謝っていたのだ、きっともうしないだろう。楽しく戦えたらいいと思う。

 

「コウキくん、またあしたね」

「うん!あしたね!」

「…またね」

 

 高貴は玲達に手を振って、その父親は軽く頭を下げて。二人仲良く帰っていった。

 紗更ちゃんは苦手な相手でも、しっかり手を振って挨拶をしている。その姿に彼女の両親は満足顔だった。

 どうやら親同士の会話も、悪い雰囲気ではなかったようだ。穏やかな表情をして、玲達に近づいてきた。

 

「レーくん、ごはん食べに行かない?」

「君も一緒にどうかな?」

 

 どうやら今日の昼は外食のようだ、向こうの家族も同席するのか後ろからついて来ていた。玲の返事はもちろん快諾だ。紗更とはこれから仲良くしていきたいのだから、こういうイベントは逃したくない。期待に紗更に目を向ける。

 紗更は一緒に行っていいのか不安なようだったが、自分の両親が頷いているのを見て笑顔で返事していた。

 

「ササラちゃん、一緒に行こうか」

「うん、レイくん」

 

 紗更に笑顔で左手をだす、紗更は嬉しそうに握ってくれた。躊躇いなく手を出してくれた彼女に、玲の心は温かくなる。玲は握られた手に優しく力を返し、二人仲良く歩きだした。

 両親達の顔は微笑まし気で、どうやら親公認のお友達になれたようだ。

 入学前の出来事で不安があったが、どうやら学校生活は上手くやっていけそうだった。

 

 




『あれ』も一つの戦術です

そう思うのです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。