ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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三本立てです


幕間二

 今日もいい天気だ、渡邊一花はそう思った。暖かな光がふりそそぎ、穏やかな風が心地いい。

 花壇の花に水をやりながら周りを見渡せば、奥様がお嬢様をあやしている。近くにポニータとバウが寝そべっていて、とても微笑ましい光景だった。

 

「渡邊さん、キリ花ちゃん出してあげない?」

「…よろしいのでしょうか」

 

 そんな光景に癒されていると、奥様が話しかけてきた。ポケモンを出してあげないかと。

 出してもいいのだろうか、あの子を。自分の相棒を。なるべく出さないようにしていた、子供達が危ないからだ。

 危険な性格をしているわけではない、躾もしっかりしている。だが、それでも何があるか分からない、本能で噛みついてしまうかもしれないのだから。

 

「こんなにいい天気なのよ?いつもボールで寝てるだけじゃ可哀そうよ」

「危なくはないでしょうか」

「とってもいい子だもの、後ろに行かなきゃ大丈夫よ」

 

 確かにいい天気だ、出してあげたらあの子は喜ぶだろう。いつもボールに入れっぱなしだったのだ、たまにはのびのびと遊ばせてあげたい。

 

「ありがとうございます奥様、それでは少しだけ」

「あ、渡邊さん。ご飯もあげたらどうかしら」

 

 こう言って下さっているのだし、出してあげよう。そう思っていたら、奥様がさらに提案してきた。

 流石にそれはどうなんだ、そこまで甘えていいものだろうか。しかし奥様は問題ないと、いっぱい食べさせてあげてと言う。

 少し悪いとは思いつつも、一花はその言葉に甘える事にした

 

 屋敷に戻り準備をして戻ってきたら、奥様はとても楽しそうに微笑んでいた。お嬢様も、母の顔に何か楽しい事があるのかと期待で輝いている。ポニータとバウもお行儀よく座って待っていた。

 そんなに期待される事かと不思議に思いながら、一花はキリ花をボールから出す。

 

「キリ花、出てきなさい」

「リキリィ」

 

 黄色と暗褐色の体に、丸い二本の白い角。尻尾の先に生えた二つ目の頭部。ここではない世界でのその子の名前は、キリンリキ。

 

「奥様、お気を付けください。ポニータとバウも後ろに居てはいけませんよ」

「バワォ」

「ポニィ?」

 

 後ろにある頭部、それこそが子供の前で出せなかった理由。この子は危険だと思うと、本能で噛みつくのだ。

 奥様はそれを知っているので、後ろに回らないようにしている。ポニータはバウのしっかりした返事を聞いて、よく分からなくても言う事を聞いている。

 

 どうやらポケモン同士は仲良く出来そうだ、元気に鳴いて挨拶しあっている。お嬢様も母の腕の中で元気に腕を振って笑っていて、奥様も微笑んで見ている。

 

「さあ食事です、よく噛みなさい」

「リキィ!」

「バワォゥ!」

「ポニィ!」

 

 庭に置いた食べ物、それぞれに合わせたポケモンフード。彼女達は元気に駆け寄り、みんなで仲良くご飯を食べていた。

 食事の後はみんなで庭を駆け回る。彼女らの顔は楽しそうで、うまく友達になれたようだ。キリ花の尻尾が危ない事は分かっているだろう、それでも仲良くしている彼女達。それを見て笑っているお嬢様と、微笑む奥様。一花は胸を撫で下ろす。

 

 その話を後で聞いた玲は、羨ましくて涙を流した。

 

 

 

 

 

 

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『かわいいね。―――ポ、ポケモンッ』

「そうでしょっ、ユキメノコっていうんだ」

 

 玲は今、沙織とポケモンコネクトでビデオ通話をしている。

 彼女の画面には玲とユキメノコが映っている、彼女にこの子を紹介するために通話しているのだ。ついでに小学校に入学した話もしようと思い、学校の制服もきている。

 

 彼女はユキメノコを気に入ってくれたようで、可愛いと言ってくれた。ユキメノコは恥ずかそうに照れているが、とても嬉しそうだ。

 

「いっしょに写真とったんだ、みせてあげるね」

「えっあ、ありがとう」

 

 

 彼女に紹介した子は、オーガポンとユキメノコ。彼女たちが映っているものを選んでいく。

 輝く笑顔の玲とのツーショット、みんな楽しそうな顔だ。ほほを合わせてピースサインや、僕式かっこいいポーズを一緒にしている。その時の思い出がよみがえり、楽しい気分になる。

 

「―――」

「サオリおねえちゃんの写真もちょうだいっ」

「―――え?わっわたしの?」

「だめ…?」

「う、ううん…いいよ」

 

 少しの期待を込めておねだりしてみる、どうやら貰えるようだ。玲は心の中で踊り狂った。少女時代の写真を持っているなんて、幼馴染ポイントが高い。

 タブレットのメッセージ画面に、彼女とムミちゃんのツーショットが映し出されていく。どれもみんな楽しそうにしていて、見ていると心が温かくなる。これは永久保存だ、たいせつなものに入れる。

 

 そうしていると、少し時間を空けてもう一枚画面に表示される。それは沙織が一人のもので、恥ずかしそうに微笑んでいる。

 間違えたのかと思い彼女を見ると。

 

「え、っと。―――」

「―――ありがとう!ボクもとってくる、すこしまってて」

 

 これは気合を入れて撮らなければ、玲は決意した。一回ビデオ通話を終了する。

 

「ごめんねユキメノコ、すこしまってて」

「ワララ」

 

 ユキメノコも一緒に撮りたそうにしていたが、少しだけ待っててもらう。今回は一人で撮らなければいけないのだ。不思議そうな顔の彼女をベッドに座らせ、玲はカメラアプリを起動する。どんな笑顔がいいだろうか、玲は少し悩んだ。クール系男子を目指しているのだ、落ち着いた感じか。いや弾ける笑顔か、慈愛の表情もいいか。

 

 結局玲は弾ける笑顔でいくことにした。将来は落ち着いた男になる予定だが、小学生低学年のキラメキを彼女に覚えていて欲しい。そう思い決めたのだ。

 カメラを自撮りモードに切り替え、タブレットを目の前に持ち上げる。沙織に想いが届くように、玲に出来る最高の笑顔を浮かべる。

 

 サオリおねえちゃん、これからもよろしくね。

 

 

 

 

 

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 ―――ドンドンたったん、ドンドンたったん、ドンドンたったん。

 あたしのなまえはピカッチちゃん!きいろいカラダに、まっかなほっぺ。

 しっぽをフリフリ、ぴかぴかチャー!

 

「あぁー、うぁー」

「チャーッ!」

「ぽにおー!」

 

 玲は今、妹の面倒を見ていた。ソファーの上で妹を腕に抱き、オーガポンと一緒に動画を見ている。みんなの可愛いオトモダチ、ピカッチちゃんの動画を。

 腕の中の妹と、左隣に座るオーガポン。彼女達はピカッチちゃんが大好きなようで、彼女に合わせて腕を振って鳴いていた。玲は今、彼女達にメロメロだ。ピカッチちゃんと合わさり最強だ。

 しかしそんな最強な時間にも、終わりの時はやってくる。

 

『ピカッチちゃんも、おともだちにバイバイしよう』

『ピカ、ピッカー』

「ぴっかー…」

「ぽにお…」

「あー」

 

 終わってしまった、玲もオーガポンも妹も、とても悲しい。次の動画を再生するか、いや駄目だ。我が家の方針は、子供に動画は一日一本まで。目が悪くなってしまう、それも仕方ない。父も受け入れていたのだ、玲も受け入れるべきだ。

 しかし右手は止まっていない、無意識で画面をスワイプしていた。そして玲は目の端でそれを捉える、そこには恐ろしいものが映っていた。

 

 『ピカッチせんせーの、なぜなに!?おべんきょうコーナー』

 新しいコーナーが始まっていた。

 

 今見ていたものは過去の動画だ、ピカッチちゃんは最近では動画に出ていない。

 『ポケモンのおともだちと、おべんきょうしよー』の最古の投稿日。七年前、ピカッチちゃんもお年を召されているのだ。お幾つなのかは分からないが、後進に譲ったのだろう、そう思っていたのだ。

 

 しかし彼女は帰ってきた。サムネイルを見るに、どうやらピカッチちゃんを先生に見立てて、生徒役の人が話していくコーナーみたいだ。まだまだ現役のようで、とても楽しそうにしている。

 

 これは見るしかあるまい、オーガポンも姫光も期待した目でこちらを見ている。画面に映っている動画名を押そうとして、しかしそこで思い止まる。白雪家の教育方針は忘れていないのだ。母が子を想って制定した我が家の法を。尊敬する父も順守している、自分も守らなければならない。

 

 オーガポンと妹が不思議そうにこちらを見ている。どうしたの?早く見ようよ。そう言っているかのような目で見つめてくる。

 玲も見たいと思っている、あのピカッチちゃんの復帰作なのだ。彼女を師と仰ぐ玲としては、何をおいても見なければならない動画なのだ。だがしかし、母は子供のことを心配して。ああああああああ―――

 

 

 

 

 

 

 

 ―――よい子のみんな、げんきー?

 ピカッチせんせーの、なぜなに!?おべんきょうコーナー

 

 ごめんなさい、ママ。

 

 




本日は二話投稿します

もう一つはいつもの時間で

よろしければ見てください
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