ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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これは本日二話目の投稿です

前の話がまだの方は、よろしければそちらもお願いします


二十一話

 ポケモントレーナーには体力が必要だ。ポケモン達が自分の近くで技を応酬するのだから、それに耐えられなければならない。なにも技に直接あたるわけではない、そんな事になったら怪我だけでは済まない。

 天候や地面の揺れ、熱気や冷気などに耐えるためだ。

 時にはポケモンを捕まえるために、自然の中に身を投じる事もあるだろう。それらには体力はなくてはならない。

 故にこれは必要な事、軽く扱っていい問題ではない。それは分かっている。自分で頼んだのだ、最後までやり抜くつもりだ。だけどさ―――

 

「エバー、エバース」

「ポニィ、ポニィー」

「バォ、ボワォ」

「ッハ、ッフ…ゴホッ、ちょっまっ」

 

 ―――そろそろ休憩にしない?

 玲は今、家の庭で走っていた。エースバーンと手を繋ぎ、前を走るポニータを追って。周りを走るバウちゃんに応援され、息を切らしながら走っていた。

 

 みんな笑顔だった、とても楽しそうだった。そんなみんなを見ていたら、もう走りたくないなんて玲には言えなかった。

 もちろん何回か休憩は挟んだ、だが短時間では回復しきれない。休んでいる間、こちらをチラチラ見てくるのだ。まだかな?もういいかな?そう目で語っているのだ。そんな目で見られて長い時間休んではいられない。休憩を切り上げて走り出す、そんなことを何回も続けているのだ。

 だがもうこれ以上は無理だ、休憩しながらだが三十分以上は走っているのだ。分かっている短い事は、こんなに体力がないとは思わなかった。だが六歳児の体力では厳しいのだ、もう終わりにしたい。

 

「みっみんなー、そろそろ終わりにしない…かな?」

 

 みんなの目が曇りだす、目で訴えている。もう終わっちゃうの、もっと遊ぼうよ。こんな目をされたら、このまま家に戻るなんて出来なくなってしまう。

 分かっている、自業自得だ。玲から言い出したことだ、小さいうちから体力を付けておきたかったからだ。それにもうすぐ運動会がある。家族が見に来る、良いところを見せたい。しかし体力が―――

 

「みんな、つぎはボールあそびだ!」

「バースゥ!」

「わんお!」

「ポニィ!」

 

 ―――別の遊びにすればいいではないか。何で気付かなかった、視野が狭まっていた。走るのはもういい、つぎは別の場所を鍛えるのだ。

 家にバウちゃん御用達のボールを取りに行く、今のうちに息を整えねば。ゆっくり歩いていたら、エースバーンがニコニコ笑顔で手を引いてきた。

 そんなに急がなくてもいいんだよ、まだ時間はあるんだから。手を引っ張んないで、お願いだから。

 

 全然息を整えられなかった、駆け足で戻ってきたのだ。楽しそうなエースバーンを見たら、のんびり歩くなんて出来なかったのだ。その彼女は余程ボール遊びが楽しいのか、笑顔でリフティングしている。

 少し心配したのだが、ボールに火は付いていない。そんな事はしないか、彼女もあのボールがバウちゃんのお気に入りだと知っているのだから。

 バウちゃんも楽しそうに周りを走っている。時おりエースバーンからパスをされて、頭で返している。

 ポニータは残念ながら、そこまで器用なことは出来ない。だがそんな彼女は優しく転がしてもらったボールを鼻で押して遊んでいた。家族愛とはやはりいいものだ、玲は深くうなづいた。

 

 そんな風に頷いている玲の元にボールが転がってくる。どうやら仲間に入って欲しいようだ、みんながキラキラした目で見ている。これは期待に応えねばなるまい、少しは息が整ってきたところだ。

 

 ボールを手に取り狙いを定める、相手は誰がいいであろうか。よし決めた、バウちゃんだ。彼女に向かってボールを放る。

 ナイスヘディング、さすが持ち主。彼女のボールはこちらへ戻る、もう一度それを手にして、今度はあの子に両手で投げる。

 エースバーンはすかさずキック、またまたこちらに戻ってきた。ふむ、今度はどの子がいいか。よし決めた、狙いは君だ。

 ポニータ目掛けてアンダースロー、彼女の前へ優しくコロコロ。鼻を使いナイスプッシュ、狙いはそれたがこちらへ戻る。おやおや何かおかしいぞ、全部こちらに戻ってくる。こっちの事は気にしないで、みんなで楽しんでていいんだよ―――

 

「レーくん、だいじょうぶ?そろそろお休みにしない?」

「うんっ、やすむ!みんな、戻ろうか!だいじょうぶまた遊ぶから!」

 

 ―――これはいつまで続くのだろうか、腕が上がらなくなってきた。まだ投げるのかと軽く絶望していると、助けがやって来た。母に後光がさして見える。

 ポケモンのみんなが悲しそうな顔をしているが、この機会を逃したら次は何時になるか分からない。抱きしめてご機嫌を取る、もうこれ以上投げるのは嫌なのだ。みんな大丈夫だよ、またいつでも遊べるから。ね?おねがい、いいこだから。

 

 どうやら機嫌が直ったようだ、みんなに笑顔が戻っている。モンスターボールに戻らなければいけないポニータは、まだ少し悲しそうだが。首に抱き着きほっぺたスリスリで、ようやく機嫌を取り戻した。

 

「みんな足ふこうね」

「エバー」

「ボワォ」

「ポニィ」

 

 家に上がるため、みんなの足を拭いていく。可愛いあんよを出している姿に、トキメイテしまった。すごく疲れたが、こんな役得があるならまあいいかと思えてくる。

 ポニータは足を拭かなくていいんだよ、ボールに入るからね。分かった拭くよ、そんなに悲しい顔しないで。仲間外れは嫌だもんね。

 足を拭き、ポニータをボールに戻す。みんなで一緒にリビングに戻り、玲はそのままソファーに倒れこんだ―――

 

 

 

 ―――マスカーニャは暖かいな。

 どうやら眠ってしまったようで、気付いたらマスカーニャの腕に抱かれていた。周りを見れば今はリビングにいるようで、ソファーの上で仰向けになった彼女に抱きついている形だ。疲れ果てて眠ってしまった自分を心配してくれたのだろう、少し恥ずかしいが彼女の優しさがすごく嬉しい。

 

 それに、どうやら長い間寝ていたわけではないようだ。夕飯まで一時間はある。少し安心した、夜眠れなくなったら困る、明日も学校はあるのだ。

 

「ありがとうマスカーニャ、おきるね」

「カニャ」

 

 しかしマスカーニャが離してくれないくれない、頭を押さえてくる。優しい手つきで、痛くはないので問題はないのだが。いやむしろ嬉しい、暖かくて気持ちいい。なんだ、このままでいいじゃないか。

 どうせ夕飯の時間になったら離れる事になるのだ、だったらこのままマスカーニャの温もりを味わおう。

 

 マスカーニャの胸に頭を乗せながら、玲は目だけで周りを見る。どうやら妹も構ってもらっているようだ。横になったエースバーンのお腹の上で、手足をバタバタさせていた。

 そんな彼女達の横にはユキメノコが座っていて、小さい手を一生懸命振って遊んであげている。

 その光景を見る母や渡邊さんは微笑んでいて、この空間にはとても優しい時間がながれていた。

 

 その光景を見て玲はふと思った、ユキメノコは小さい体をどう思っているのだろうと。進化して大きくなりたがっているのではと。

 玲は彼女の進化先が好きだ、だが今の姿も好きなのだ。今の彼女との生活を大事にしたいと思っていたのだ。だがそれは彼女も同じなのか。

 ユキメノコはうちのポケモン達の中で一番小さい。歩幅も小さく、すばやさもまだ低いので、いつもみんなに遅れて付いて来る。階段を上り下りするときも誰かに抱えてもらっているのだ。

 バウちゃんも彼女と同じくらいの大きさなのだが、バウちゃんは四本足で素早く動ける。階段の移動も出来るし、みんなについて来るのも早い。

 彼女は早く進化したいのでは、皆みたいに動けるようになりたいのでは、そう思ってしまったのだ。

 

 

「マスカーニャは進化してうれしかった?」

「カニャーン」

「まっ、マスカーニャ!?」

 

 マスカーニャはどう思っているか聞いたら、玲を抱きしめる力に足が加わった。これはあれだ、だいしゅきホールド。まるで進化しなければ出来なかったと言わんばかりの嬉しそうな顔。少ししんみりしていたのに、そんな空気が吹っ飛んだ。

 

「わかった、わかったから!うれしいんだね!」

「カニャニャーン」

 

 進化したことを喜んでいるマスカーニャの姿に玲は決意する、近いうちにユキメノコと話し合って進化させようと。今の姿を可愛がるのも大事だ。だが進化しても彼女は彼女だ、どの姿でも全力で可愛がる。

 もちろんユキメノコ次第なのだが、嫌がりはしないだろう。全身で抱きつき、頭に鼻を擦りつけてくるマスカーニャを見てそう思った。

 

 

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