ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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二十四話

 いよいよ始まるダンスの時間、ユキメノコと鍛えた舞を見せる時。応援席には家族達がいる、彼らにいいところを見せるのだ。周りには頼もしき仲間たちがいる、恐れることは何もない。

 そうだろう皆と隣を見ると、そこでは紗更が緊張に顔を強張らせていた。相棒のピーちゃんが心配して見ているが、彼女は気付いていないようだった。

 ユキメノコが体操服を握って、不安そうにこちらを見ている。大丈夫だよ任せてと彼女に頷き紗更に近づく。

 

「ササラちゃん、手みせて」

「えっ?てー?いいよー」

 

 玲はあれをやることにした、手のひらに云々のやつである。紗更に緊張を解いてもらうために、手を出してもらう。

 手を取り指をその上に置く、そのまま動かし始める玲。あれれ?なんかおかしいぞ、縦横無尽に動き回っているよ。女子小学生の手のひらの柔らかに、ついやってしまったのである。

 何たる失態、これは彼女に詫びを入れねば、どうやって謝るか考えながら、恐る恐る彼女を見れば。

 

「ふふっ、んふっ。レイくん、くすぐったいよー」

 

 ところが彼女は楽しそうに笑っていた、どうやら怒っていないようだ。玲は誤魔化すことにした。

 

「ササラちゃん、顔がギューってしてたよ?」

「えー?」

「しっぱいしたくないよね、こわいよね」

「むー…、うん…」

「だいじょうぶだよ、いっしょにいるから」

「うん…、いっしょねー、レイくん」

 

 紗更の手を両手で握り、フニフニしながら目を見て言う。変なことしてませんよ、心配していただけなんです。

 どうやら上手くいったようで、紗更は手をニギニギと握り返してくれた。何故か気に入ったようで、とても楽しそうにしている。右足を見れば、ピーちゃんが抱き着いていた。嬉しそうに鳴いていて、どうやらお礼を言っているようだ。

 よかった、嫌われずに済んだ。彼女達に嫌われていたら、消えて無くなりたくなっていた。

 そうやって手を握りながら笑いあっていると、ついに始まるようでアナウンスが流れてきた

 

 『可愛らしいポーズには注目です。ぜひご家族で見守ってください』

 

「ササラちゃん、ピーちゃん!一緒にがんばろうね!」

「うん!」

「プクプク!」

「あっ…まってー…」

 

 紗更の手を放し、踊るためにユキメノコと一緒に少し離れる。しかしそこで待ったがかかる、何か忘れ物があったのだろうか。不思議に思い振り返る。

 

「どうしたの、ササラちゃん?」

「あのね…もう一回いい?」

「て?いいよー」

 

 まだ少し不安だった様だ、手を握って欲しいらしい。少し恥ずかしいが問題ない、信頼してくれているようでとても嬉しい。

 もう一回手をニギニギしあって、今度こそ離れる。彼女は少し恥ずかしそうだったが、嬉しそうに笑っていた。

 待たせてごめんねユキメノコ、がんばろうね。可愛い姿を、みんなに見てもらおうね。

 

 

 

 

 

 

 

 『しっぽをフリフリ、ぴかぴかチャー!』

 『みんないっしょに歌おうよ。みんないっしょに踊ろうよ』

 

 『あたしね、みんなのことが大好きなの。いっしょにいて欲しいの。笑ってほしいの』

 『だからね、あたしのことツカマエテ』

 

 歌おうよ、ペカー!踊ろうよ、ペカー!輝く笑顔に手のひら添えて、おしりをクイッとはいポーズ。

 子供達の楽しそうな踊りをみて、親御さん達はニコニコだ。隣で躍る紗更の姿をみて、玲の心臓はドキドキだ。

 ポケモン達もとっても可愛い、今日はとってもいい日だな。

 

 『ドンドンたったん、ドンドンたったん、ドンドンたったん』

 

 とっても可愛いこのダンスも、とうとう終わりがやって来た。楽しく踊っていたのだが残念だ、親御さん達も心なしか残念がっている。

 

 『とってもかわいい踊りを、どうもありがとう。それでは次は―――』

 

「ササラちゃん、よかったよ!」

「レイくんもうまかったねー!」

「ユーキィ」

「ピンプックー」

「みんなも可愛かったよ、すごくね!」

「ねー、かわいかったねー」

 

 級友たちと一緒に、クラスの応援席に歩いていく。

 家族のみんなは喜んでくれたようだ。母は妹を抱きながら一緒に笑っていたし、父はカメラを熱心に撮っていた。渡邊さんは口をムニムニ動かしていたし、祖父は満足そうに腕を組んで頷いていた。

 

「おわっちゃったねー」

「プクー…」

「まだリレーがあるよ。ササラちゃん、ピーちゃん」

「でも、うちだれもでないよー…」

「おにいちゃんがでる…」

「そうなのスダくん?白組?」

「うん…」

「ミルル」

「おうえんしないと!な、な!?」

 

 高貴が応援しようと言う、玲はそれに頷いた。須田に兄がいるとは知らなかったが、彼とは友達なのだから応援はしたい。他の皆も笑顔で頷いている、これは決定だ。

 須田は兄と仲がいいのだろう、応援してもらえると知って嬉しそうだ。彼の相棒も嬉しそうに鳴いている。

 

「でてきたよー」

「どこ!スダーン、どこ!?」

「あそこ…おにいちゃん…」

 

 須田はクラスメイトの何人かにスダーンと呼ばれている。彼はその愛称を気に入っているみたいだ、最初呼ばれたとき嬉しそうにしていた。

 ちなみに彼の相棒はクルミルのハミルくん、ハミルスダーンくんだ。

 そのスダーンがある一人の人物を指で差す、彼は小学生にしては大きくて筋肉もありそうだった。

 

「でっけー!」

「すごい強そうだね」

「ねー、すごいねー」

「あしもはやいんだよ…」

「ミルッ」

 

 須田が誇らし気に言う、いつもの雰囲気とは違いその表情は明るかった。

 話していたら時間が来たようだ、第一走者達が並び始めた。どうやら須田兄はアンカーの様で、それらしき場所に座っている。

 

 地面に手を付ける者、立っているだけの者。それぞれ違うが、みんな真剣な顔をしている。緊張感に空気が引き締まり、その時が近いのを知らせる。玲達は勝負が始まるのを今か今かと待ち侘びた。

 その空気に耐えられなくなり、誰かが声を漏らしかけたところで、とうとう教師がピストル掲げ。今勝負が、始まった―――

 

 上級生が走り出す、みんな真剣な表情だ。実力差はあまりないらしく、まだ横並びだ。だが、すぐにそれも開いていく。白いハチマキが先頭に飛び出る、どうやら我が白組が優勢なようだ。

 

「がんばれー、がんばれー」

「プクプクー」

「いけー、そこだー、がんばれー」

「ユーキィー」

 

そしてそのまま走り抜け、つぎの走者にバトンが渡る。差はそのままで進んでいく、白ハチマキが先頭のまま。

 しかし第三で後ろが近づく、差がどんどん縮まっていく。いよいよそれが僅かになった時、とうとう我らが須田兄だ。

 

「スダーンの兄ちゃんがんばれー!スダーンにーちゃん!」

「おにいちゃーんっ」

「ミルミル!」

「スダーニーチャ!スダーニーチャ!」

「タタッタ!」

 

 須田の兄がバトンをつかんで、全力疾走、猛然と走る。後ろが近づく、近寄らせるな。ラストスパート、走り抜けろ。

 そしていよいよ、その時が来る。ゴールゲートを駆け抜けた。完全燃焼、地面に転がる。勝負の行方はどうなった!?

 

「か、かったよな!な!」

「ぜったいかったよ…」

「ミルゥ…」

「んー、むーんっ」

「勝ってるよみんな。だいじょうぶだよ」

 

 『ただいまの結果は、一着―――六年一組、須田くん』

 

「やったっ!やったーっ!」

「かったよーレイくん、かったよー」

「うん、勝ったね!やったねスダくん」

「うんっ、うん!ありがとーみんなっ」

 

 勝負の結果をみんなで喜ぶ、人もポケモンも全員笑顔だ。須田とハミルくんは抱き合って、兄の勝利を祝っていた。

 どうやら彼らは待っていられなかったようだ、ハミル君を胸に抱き兄の元に走っていった。あんなに喜んでくれる弟がいるなんて、須田兄は幸せだなと玲は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『本日は大変お忙しい中、運動会にお集まりいただきありがとうございました』

 

「レイくん、つかれたねー」

「そうだねササラちゃん、でも楽しかったよ」

 

 楽しかった運動会もついに終わってしまった。クラスでの挨拶も終わり、あとは家に帰るだけ。片付けなどは上級生がやってくれる、一年生の特権だ。ユキメノコ達はボールに戻している、学校が終わったので出しておけないのだ。

 少しの寂しさを感じながら、紗更と一緒に家族の元まで歩いていく。

 

「レイくん、きょうはありがとねー」

「んー?なにがー?」

「て、ギュってしてくれたよー」

 

 その時の事を思い出し、玲は顔をこわばらせる。喜んでくれていたが、それは誤魔化しが上手くいっただけ。おてての柔らかさを思い出し、罪悪感がわく。

 

「うまくおどれて、ママよろこんでたのー」

「そっそう、よかったねササラちゃん」

「うん、だからありがとー、レイくん」

 

 しかし紗更は本当に嬉しそうに笑ってくれていて、玲はその気持ちを素直に受け取ることにした。

 結果論だが紗更は緊張をほぐせて、上手く踊ることが出来たのだ。それで母に褒められたと嬉しそうにしている、ならそれでいいではないか。

 そう結論付けている玲の手を、紗更が急につかんできた。

 

「え!?どうしたの、ササラちゃん!?」

「ねー、レイくん!もういっかいギュってしてー」

 

 笑顔を浮かべながらのその提案に玲は慄いた。して欲しいなら喜んでする、だが本当にいいのだろうか。冗談の可能性もあり、玲は紗更の顔をうかがう。

 しかし紗更は本気らしい、今も手をニギニギ握りその返事を待っている。

 

「え、えっと…それじゃちょっとだけ」

「んふー、これすきー!」

 

 やめて下さい、心臓が持ちません。紗更の好きという言葉に、そういう意味ではないと分かってはいても、ドキドキしてしまう。

 紗更はおててニギニギが相当好きなようで、握るのをやめる度に笑顔で催促してくる。

 玲は考えるのをやめた、全てを受け入れた。紗更は笑顔なのだから、何も問題なんてないのだ。

 

「あ、ママがきたよー、レイくんいこー」

「うん、そうだねー、いこうかー」

 

 家族のみんなは手を振っていた、紗更の母も横にいる。みんな微笑んでいて、玲は心が温かくなる。

 紗更はどうだろうと見て見れば、彼女もこちらを見ていたようだ。そのことに二人で笑いあい、家族の元に手を繋ぎ歩いて行った。

 

 

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