ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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五話

「ヒカリちゃん、どんな子がいいかなー?」

「ねこさん」

 

 今は八月、あと一か月で姫光の五歳の誕生日。いよいよ妹はポケモンを捕まえられるようになるのだ。そこで妹はどんな子が欲しいのか気になったので、玲は聞いてみる事にしたのだが。

 

「おにーちゃといっしょ」

「かわいいねー、ヒカリちゃん!」

「カニャーン」

 

 なんとこの子は兄と一緒がいいと申す。彼女は兄の最初のポケモンがマスカーニャだと知っている、それで自分も最初の子は猫のような見た目のポケモンが欲しいと言っているのだ。

 その可愛らしい妹の言葉についつい抱きしめてしまう。マスカーニャもそんな妹の言葉が聞こえたのか、嬉しそうに近くに寄って来た。

 

「カニャー」

「かわいいね、かーにゃ」

「うんうん、マスカーニャは美人さんだからね」

「カニャニャーン」

 

 目の前でマスカーニャが腰に手を当てポージング、そんな彼女を妹と二人で褒める。彼女はその言葉を聞き、嬉しそうにこちらに抱き着いてきた。

 妹と合わせて団子のように重なり合う、そこには微笑ましい光景が。母もこの光景を見てニコニコしている。

 

「カニャ、カニャーン」

「かーにゃ、うれしい?」

「うんうん、マスカーニャもお兄ちゃんも嬉しいよ」

「ひかりもー」

 

 嬉しそうなマスカーニャの鳴き声と、笑顔の姫光にとても癒される。彼女達の温かさに心が優しさで満たされる、お団子天国サイコーだ。

 だが優しさが溢れたことで思いついてしまった、妹のために自分に出来る事を。

 

 

「そうだ、ちょっと待っててね。マスカーニャ、ヒカリちゃんを見ててあげて」

「おにーちゃ?」

「カニャン」

 

 このまま重なり合って癒されていたいのは確かなのだが、せっかく妹がポケモンを持てるのだし、協力するために少しだけ離れる事にする。本当に少しだよ、戻ってきたらまた重なり合おうね。

 不思議そうにしている妹と頷いているマスカーニャ、そんな彼女達の視線を背に、玲は二階の自分の部屋に急いで歩いて行った。

 

 

 

 

 お爺ちゃんからのプレゼント、ポケモン図鑑。玲のたいせつなものだ。妹に猫のようなポケモンにはどのような子がいるか教えるために持ってきたのだ。

 すべての種族が載っているわけではない、ニャオハも載っていないし。それでも参考にはなると、これを取りに部屋に行って来たのだ。

 

「みんなかわいいねー、ヒカリちゃん」

「うん、かわいい」

「カニャ…」

 

 自分を中心にくっついてソファーに座る。膝の上のポケモン図鑑の猫型ポケモンのページを見せていくと、姫光は目を輝かせてそれを見てくれている。

 どうやら喜んでくれているようだ、お団子天国から離れた甲斐があったというものだ。

 だがマスカーニャは他の猫に嫉妬しているのか、不機嫌そうな顔をしてしまっている。これはいけない、頭なでなでしてあげなくては。

 

「大丈夫だよー、マスカーニャ」

「カニャン…」

「かわいいよー、大好きだよー、マスカーニャ」

「カニャーン」

 

 甘い声で鳴くマスカーニャを見て安堵する、どうやら機嫌が直ったようだ。心配しなくていいのに、マスカーニャは大事な相棒なのだから。

 

「どうかな、ヒカリちゃん?いい子みつかった?」

「んーとね、このこかわいい」

「ほんとだねー、かわいいねー」

 

 何とお目が高い、この子は自分も育てたいと思っていた子だ。少し性格に不安はあるが、それは育ててみるまで分からない。変わっていくだろうし、他の子だってそれは同じなのだから、考えても仕方がない。

 それに姫光が気に入っている、これより重要な事はない。一緒にいたいと思う事が何よりも大事なのだから。

 

「この子がいいの?」

「うん…」

「パパにおねがいしようか、いっしょに言ってあげる」

「うんっ、ありがとおにーちゃ」

 

 嬉しそうに抱きついてくる姫光、そんな妹を抱きしめながら玲は目を鋭くさせる。これより不退転の覚悟を持って臨む、父が何か言ってきたとしても引くことは出来ないのだ。いや優しい父は断らないとは思うが。

 

「上手くいったらマスカーニャも可愛がってあげてね」

「カニャン」

「かーにゃ、ありがと」

 

 マスカーニャも先ほど可愛がってあげたからか、満足そうに頷いている。お礼を言う姫光の頭を撫でてあげていて、とても微笑ましい。他のみんなも大好きな姫光のポケモンだ、きっと可愛がってくれるはず。

 

 

 

 

 

 

「だいじょうぶだよ、ヒカリちゃん」

「ほんと…おにーちゃ?」

「おにいちゃんに任せて」

「うん」

 

 リビングのソファーに座り、姫光と一緒に父の帰りを待つ。妹は父がお願いを聞いてくれるか不安なのだろう、こちらに抱きついて離れない。

 大丈夫だよヒカリちゃん、お兄ちゃんに任せてね。心配いらないよ、これくらい何てことないから。いざとなったらパパ大嫌いでイチコロよ、妹のためならそれくらい言ってやる。

 

「だいじょうぶよ、ヒーちゃん。パパやさしいから」

「うん…」

「たよりになるお兄ちゃんもいるから安心よ」

「カニャン!」

「うん」

 

 母の援護射撃に感謝だ、マスカーニャも胸を叩いてカニャンと鳴いている。他のポケモンのみんなも笑顔で鳴いて応援してくれている。これで断ったりしたら父は針の筵だろう、それはとても恐ろしい。

 どうやらそれで姫光も安心したのだろう、表情が明るくなってきた。うんうん、やっぱり妹は笑っている方が可愛い。いや、もちろん姫光はどんな表情でも可愛いのだが。

 とそんな時、玄関の方から父の声が聞こえてくる、どうやら会社から帰って来たみたいだ。いいタイミングだ、ポケモンのみんなに目で合図を送る。みんなも頷いて返してくれる、これよりミッションを開始する!

 

「ただいま、…どうしたのみんな?」

「おにーちゃ…」

「ひ、姫光ちゃん?どうしたの?」

「お父さん、大事な話があるんだ」

「あきらさん」

 

 リビングに入って来た父に突き刺さるみんなの視線。父は何かしてしまったかと不安なようだ、目が泳いでしまっている。

 姫光は不安が戻って来たのか、兄に抱き付き涙目で父を見ている、こうかはばつぐんだ!

 息子と母の自分を呼ぶ声に、これから迎える己の未来を想像したのだろう、父は涙目になってきている。

 

 何やら変な方向に誤解しているようだ、これは不味い事になってしまった。

 ごめんなさいお父さん、想像しているような事は起こらないんだ。玲は父の誤解を解くために、急いで要件を伝える事にした。

 

「なんだ、そういうことか…」

「うん、大丈夫だよ。僕、お父さんのこと大好きだよ!ね、ヒカリちゃん?」

「?うん。ひかり、ぱぱだいすき」

「そ、そうか…うん、パパも大好きだよ」

「みんな大好きですよ、あきらさん」

 

 誤解は解けたようだ、父は安心しきった顔でソファーに座っている。今なら父は油断しているのでスムーズに話は進むだろう、変な誤解を与えてしまい申し訳なかったが、チャンスは逃してはならないのだ。

 

「それでどうかな、ヒカリちゃんのポケモンは」

「え?うん、いいよ。玲くんの時もそうだったからね、姫光ちゃんも捕まえていいよ」

「ありがとー、ぱぱっ」

 

 よかった、父は認めてくれた。兄がこれだけポケモンを連れていて、妹には許さないなんてあるはずがない。断りはしないだろうとは思っていたが、やはり言葉を聞くと安心する。

 だがこれで終わりではない。父は姫光のありがとうにデレデレしているが、他の不安も解消しておきたいのだ。タブレットにそれを表示させて父に見せる。

 

「見てお父さん、この子なんだけど」

「えっと、この子は…小田原か、え…意外と近いね」

「どうかな、お父さん?」

「混みそうだけど…うん、いいよ。ボールが出来たら行こうか」

 

 場所も問題なかった。よくは分からないが、往復を考えると大分時間がかかりそうで不安だったのだ。

 渡邊さんと瀬川さんに迷惑をかけてしまう事もないだろう。姫光のボールがくるのは誕生日でまだ大分時間がある、余裕を持って予定を立てられるだろう。

 

 ちなみに姫光のモンスターボールは玲と色違いだ。孫大好きお爺ちゃんが妹にもボールチケットをあげたのだが、彼女にボールエディットは難しい。一人で画面操作していた玲が異常なのだ、祖父も驚いていたし。

 なので色違いのボールの許可を妹に出した、本人の許可がないと同じようなデザインでは作れないからだ。

 薄いピンクのモンスターボール、笑顔で『おにーちゃといっしょ』、とても可愛かった。

 

「よかったねヒカリちゃん、いっしょに捕まえようね」

「うんっ、ありがとーおにーちゃ!だいすき!」

「カニャーン」

 

 元気いっぱいの大好きにとても嬉しくなり、思わず姫光を抱きしめてしまう。

 嬉しそうに笑っている妹にほっこりしていると、マスカーニャも背中に抱きついてきた。オーガポンがそれにつられ、ユキメノコを伴いやってくる。

 お団子天国大復活だ。

 

 

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