ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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十話

「気持ちいい、エースバーン?」

「バァースゥー」

 

 カーペットに座りエースバーンを正面から抱きしめ、肩周りをブラッシング。とっても可愛い大事な家族、身体のお手入れは欠かせません。

 おっと毛玉発見、肩の毛は長いので出来やすいのだ。痛くないように優しくほぐしていく、気持ちよさそうな鳴き声を出しているので上手く出来ているようだ。

 エースバーンとはもう四年以上いっしょにいる、彼女が気持ちよく感じるブラッシング方法は知り尽くしているのだ。

 

「エースバーン、しっぽ触っていい?」

「エバァス」

 

 エースバーンが頷いたので、細心の注意を払い尻尾にブラシを通していく。

 彼女の尻尾はとても敏感。いや変な意味ではない、うさぎの尻尾は神経がしっかり通ってる、とても大事な場所なのだ。彼女もうさぎのような外見のポケモンなので注意しているのだが、どうやらそれで問題ないようだ。今もとても気持ちよさそうに、甘い鳴き声を出している。

 

「バスゥ…」

「眠くなった?いいよ、寝ようか。おやすみ、エースバーン」

 

 どうやら気持ちよすぎて眠くなったようで、うとうとしている。彼女に声をかけ、カーペットの上に寝かせてあげる。

 だがそのままでは少し寒いだろう、暖房がついているとはいえ今は十二月なのだから。ブランケットをかけてあげると、彼女は穏やかな顔で寝息を立て始めた。

 

「バースゥ…バースゥ…」

 

 気持ちよさそうな彼女の寝顔を見ていると、達成感を感じる。今まで鍛え続けたブラッシングテクニックに大満足だ。いやまだだ、ここで終わりではない。こんなもので満足していたら、彼女の主人として胸を張れない。さらなる高みを目指すのだ。

 だがどうやら次のおねだりが来たようだ。残念だがエースバーンのブラテクの研鑽は次の機会にして、今は彼女に尽力しよう。

 

「ユキィ、ユーキィー」

「大丈夫だよ、ユキメノコ。いっぱい気持ちよくしてあげるからね」

 

 今日は大晦日、ポケモン達みんなの身体のお手入れをするつもりなのだ。

 普段は学校がある、毎日全員を見てあげるには時間が足りない。今は休みで授業はないが、それでも全員は厳しいのだ。

 だが今日は一年の最後の日。折角なのでいつもは週に一回、多い時で二回ずつ順番に見てあげるところを、今日は全員の身体を綺麗にしてあげるのだ。

 さすがに風呂までは無理だが、それも昨日までに入れてあげている。寒空の下でポニータを洗ってあげるのは辛かったが。

 

「ユキメノコ、ここに座ってね」

「ユキィ」

 

 カーペットに座り右手に布を持ち、ユキメノコにも前に座ってもらう。まずは頭に付いている氷のような角の、生え際のお手入れだ。

 彼女の反応を見ながら、右手を細かく動かしていく。どうやら彼女へのテクも日々高まってきているようだ、ユキメノコは気持ちよさそうに目を細めていて、甘い鳴き声を小さく上げている。

 

「ユキィ…ユキィ…」

「よしよし、気持ちいいんだね、ユキメノコ」

 

 だがそこでユキメノコが抱き着いてきた、嬉しくなってつい動いてしまったのだろう。どうやら角のお手入れは今は無理なようだ、先に後ろ頭を揉みほぐしてあげよう。

 

 

 

 

 マスカーニャ、オーガポン、バウちゃんと続き、今はテブリムの身体を拭いてあげている。ポニータがまだだが、彼女は一番時間がかかるし、外に出なくてはいけないので午後からだ。

 テブリムを午前中の最後にしたのは、他のみんなが寝ていて静かだからで、これなら彼女も辛くない。

 それに、ミーニャちゃんが姫光にブラッシングされていたのもある。彼女もサイコパワーの制御が出来るようになってきてはいるのだが、間違いがあってはならない。ブラシが気持ちよくて力が暴発なんて事もあるかもしれない。

 なのでテブリムにはミーニャちゃんのブラッシングが終わるまで、見ていてもらったのだ。

 そんな彼女は気持ちよさそうに目を瞑って、大人しく体を拭かれている。

 

「テリリィ、テリィ」

 

 大きな帽子のような頭を、湿った布巾で綺麗にふきふき。どうやら彼女も拭きテクの虜になってきたようで、甘い鳴き声を上げている。

 彼女が我が家に来て九か月、ようやく彼女にも満足してもらえるようになった、感無量だ。おっと感情を抑えろ、せっかく気持ちよくなっている彼女に悪い。

 

「はい、終わったよ、テブリム。とっても可愛いよ」

「テリリィン」

 

 可愛いお顔をふにふにとマッサージ、血行促進で完了だ。抱き着いてきたテブリムと、そのまま一緒に後ろに倒れる。

 カーペットに寝転がりながらテブリムを抱きしめていると、どうやら丁度いい時間になっていたようで、昼ご飯が出来たと母が呼びに来た。

 このまま彼女に癒されていたいが、そういう訳にもいかない、みんなを起こしてあげないと。

 

「テブリム、ごはんだって」

「テリリ、テリリ」

 

 悲しそうな顔でイヤイヤしないで。また近いうちに、いっぱいマッサージしてあげるからね。

 なんとかテブリムに体の上からどいてもらい、昼ご飯を食べるために、玲は寝ているみんなを起こしていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ポニータにも気持ちよくなってもらい、これでお手入れは全員完了だ。みんな気持ちよさそうに甘い鳴き声を出していたし、満足してくれただろう。

 ミーニャちゃんも満足しているようだし、ギンガくんも父が見ているはず、我が家のポケモンはこれで大丈夫だろう。

 

 家の掃除も終わったし、やり残したことはもうないはず。夕飯もみんなで食べた、あとは除夜の鐘を聞いて今年は終わりだ。

 残念ながら姫光は眠ってしまっている。起きていると言ってはいたが、さすがに五歳には厳しいだろう。睡眠不足はお肌の天敵、彼女は将来母のような美人さんになる逸材なのだ。いや、今でもとっても可愛い自慢の妹なのだが。

 相棒のミーニャちゃんも、姫光がいないので今はおやすみだ。

 

「ぽにっぽに」

「カニャ」

 

 もう少しで二十四時、今はポケモンのみんなとリビングのソファーに座っている。彼女達は昼間のマッサージがとても嬉しかったようで、今もくっ付いているのだ。

 ポニータとテブリムも今は出れないが、テーブルの上で鐘が鳴るのをみんなと一緒に待っている。

 

「みんな、今年ももう終わりだね」

「バース…」

 

 エースバーンは今年がとても楽しかったのだろう、終わってしまう事が悲しくて、俯いて鳴き声を上げている。

 たしかに今年はいい年だった。紗更達と同じクラスになれたし、テブリムやミーニャちゃんも我が家にやって来た。彼女達のお友達もどんどん進化してきている、とても幸多い一年だ。

 

「大丈夫だよ、エースバーン。来年も絶対に楽しいから」

「エバース?」

 

 だが悲しむことはない、来年にも楽しい事が待っているのだから。

 来年の三月には認定試験が受けられる、それに合格すればポケモンを外で出せるようになる。三つ受かれば試合にも出られるのだ。

 その先も合格していけば、もしかしたら家族を増やす許可をもらえるかもしれない。先に進めばそれだけ厳しくなる、多くのポケモンが必要になるのだから。それはさすがに厳しいか?なんとか説得してみよう。

 どうやらみんな分かってきたようだ、来年にも楽しいイベントが待っていることを、瞳が輝きだしてきた。

 

「ね、楽しみでしょ?」

「エスバースッ」

「ぽにおーんっ」

 

 みんなが気合の鳴き声をあげ、それに交じって除夜の鐘が聞こえだす。どうやら今年の終わりが近いようだ。

 彼女達もそれに気づいたようで、鳴くのをやめ静かにしだす。どうやら鐘の音を楽しみたいようで、みんな目を瞑っている。

 そういう事なら彼女達に倣うかと目を瞑っていると、マスカーニャが右腕を抱きしめてきた。嫌ではないのだが、これでは煩悩を祓いきれるか分からない。清らかな心で新年を迎えたかったのだが、この分だと無理かもしれない。

 

「カニャーン」

 

 だが何も問題なかったかもしれない。彼女の嬉しそうな微笑みを見ていれば、それだけで心が清らかになれそうだ。周りを見れば、他のみんなも穏やかに微笑んで目を瞑っている。彼女達の信頼を裏切れない、邪な心なんて抱けそうもない。

 

 マスカーニャの体温を感じながらみんなの顔を眺めていたら、どうやら時間が来たようだ。時計の短針が十二の数字を指そうとしている。

 

「みんな、もうすぐ十二時だ」

「ぽにおっ」

 

 目を開けたオーガポンがマスカーニャを見て、真似して反対側の腕を抱きしめてくる。そんな彼女が可愛くて思わず笑ってしまう。

 他のポケモンのみんなも笑い出し、両親がそれを温かい目で見ている。

 

 そしてとうとう最後の鐘の音が止み、新年の始まりを知らせる。みんなを見回し今年初めての挨拶を告げる。

 明けましておめでとう、今年もよろしくね!

 

 

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