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「ピーちゃん…おめでとう、本当におめでとう…」
「ピハッピハー!」
とうとう紗更の相棒、ピーちゃんが進化した。可愛さはそのままに、大きく姿を変えたのだ。
ピンクと白の大きくて丸い体、カールしたピンクの髪に腕と腰には白い羽。原作での彼女の種族名はハピナス、なんと二回の進化を経て、彼女は目の前に立っているのだ。
紗更は冬休みの間に、両親と出かけてピーちゃんを鍛えていたらしい。授業では他の子に勝つのは難しくなってきたので、野生のポケモンを相手に経験を積むことにしたようなのだ。
そうした紗更の試みは見事に成功した、遂にピーちゃんは進化して見せたのだ。喜んだだろう、それだけ彼女は悩んでいたのだから。
しかし彼女はそこで止まらなかった、ピーちゃんの腕試しのために戦い続けたのだ。確かにそれは大事なこと、何ができるかの把握は必要だ。
そうしてピーちゃんは戦い続け、再び光に包まれて二度目の進化を迎えたのだ。進化条件を知らない彼女達はとても驚いたことだろう。
「レイくん、どう?かわいいでしょー!」
「うん、かわいい!前の姿も好きだったけど、この姿も大好き!」
「ピハ、ピハッピー!」
思わずピーちゃんに抱きついてしまったが許してほしい、今までの彼女の頑張りを知っているだけに、喜びを抑えられなかったのだ。
だがピーちゃんは笑顔で許してくれていて、紗更も嬉しそうに笑っているので、どうやら問題なかったらしい。よかった、まだまだ離れたくなかったのだ。
「みんなにも早く見せたいなー」
「ピハー」
みんなにも見せたいのは同意するが、せっかく他のクラスメイトがいなくて安心して抱きつけるのだ、もう少しだけピーちゃんの温もりを堪能させてほしい。あまり話した事のない者の前で抱きつくのは、さすがに少し恥ずかしい。
今日は一月七日、新年の最初の登校日。新学期の朝早くから来る小学生は少ないのか、教室にはまだ自分達しかいない。
どうやら紗更は一番に自分に見せたかったらしく、いつも早く来ているのを知っていたので、彼女もこの時間に登校したようだ。とてもありがたい、おかげで遠慮なく抱きつける。
「ピハー、ピハピハー…」
「うん、嬉しいんだね、ピーちゃん。僕も嬉しいよ」
ピーちゃんが一生懸命に腕を伸ばして優しくポンポン叩いてくれる。とっても暖かい、このまま彼女の温もりに包まれていたい。
だがどうやらそういう訳にもいかないようだ、廊下から登校してきた生徒の声が聞こえてくる、今回はここまでのようだ。
いや待てよ、次はあるのか?彼女も成長した、もう立派なレディーなのだ。いつまでも抱き着き続けるのも失礼ではないだろうか。
「またギュってしていい?」
「うん!いいよー、ピーちゃんも嬉しいよねー」
「ピハッピー!」
よかった、彼女達のお許しが出た。今回で終わりなんて、とても耐えられそうにない。
他のクラスメイトの前では出来ないが、いつもの友人達なら見られてもいい、その条件ならいくらでもチャンスはある。その時は遠慮なく抱きつかせてもらうとしよう。
「レイくん、よろしくねー!」
「こちらこそよろしくね、ササラちゃん。ママちゃん、ありがとう」
「いいわよ、ゆっきー。これくらい」
「いちばん前かー…」
「何よあんた、嫌なの?変えてもらう?」
「いえ!ここがいいです!みんなと一緒、うれしいな!」
新学期の初日と言ったら勿論あれ、席替えのお時間、お約束だ。
ママちゃんがクラスメイトに掛け合って、友達同士で近くに座れるよう席を交換してくれた。紗更とは隣同士で、高貴は前の席。後ろには須田がいて、その隣で紗更のうしろの席が町田というわけだ。
前の方の席という事で交換しやすかったらしく、町田が何てことないというような顔をしているが、友達の近くに座れてとても嬉しいのだ、お礼くらいは言わせてほしい。
「ロカちゃんもよろしくねー」
「え…あ、うん。よろしくね、さらさら…ちゃん…」
紗更の通路を挟んで反対側の隣は、諸岡というぽっちゃり女子だ。
彼女は三年生の時にその名字をクラスの男子にからかわれていた。それを町田が眼光で救い、それからいつもの友人達で彼女の事を『ロカちゃん』と呼ぶようにしているのだ。
彼女は恥ずかしがっていたが、嫌そうではなかったので問題ないだろう。須田は呼ぶのを恥ずかしがっていたが。自分もかなり恥ずかしいが、まあ問題ないだろう。
「ごっちーむ」
「ピハー」
諸岡の相棒、ゴチムのチルチーちゃん。彼女は今、小さくなったピーちゃんと挨拶している。
パッチリおめめと大きなリボンが可愛らしい。彼女もナデナデしたいのだが、残念ながらチルチーちゃんにはそんなに懐かれていない、諸岡には授業でアドバイスをしていないのだ。遠慮しないで諸岡も来てくれればいいのに。
それにしてもよかった、ピーちゃんが戦闘以外でも小さくなれて。あの大きさなら今までと同じように抱きしめる事が出来る。大きい体に抱き着くのもいいが、小さなピーちゃんも抱きしめ続けたいのだ。
「ぽにおー」
「大丈夫だよ、オーガポン。どこにも行かないからねー」
ピーちゃんとチルチーちゃんに目を奪われていると、オーガポンが抱き着く力を強くしてくる。どうやらこの子は主人を取られると持ったようだ。心配しなくていいのに、オーガポンを置いていく何てことはないのだから。
今はホームルーム中なので本来はユキメノコを出している所だが、朝のピーちゃん抱き付きを羨ましがったこの子が、ユキメノコの代わりに出てきているのだ。
なので今、椅子に浅く座り、オーガポンを正面から抱きしめているという訳である。ユキメノコが羨ましがっているだろう、あとで何か埋め合わせをしてあげなくては。町田も羨ましがっているが、そちらは気にしなくていいだろう。
「白雪くん、この子は?」
「あ、ハルカ先生…すみません、この子、寂しがって…」
「ううん、違うの。初めて見る子だから気になって」
本来この時間は、生徒とポケモンの安全確認とコミュニケーションを目的としているのだろう、学校に登録していないポケモンを出すのは不味かったかもしれない。
しかし先生が声をかけてきたのは別の目的だったようで、彼女は怒ってはいなかった。どうやら先生の知らないポケモンだったので気になっただけのようだ。
たしかに考えて見れば、いつもの授業でも登録していないポケモンは出していた、この場でだけ怒られるには根拠が薄い。
「かわいい子ね…それにすごく強そう…」
「はい、とっても可愛いオーガポンです!学校に入る前から一緒に育ってきた子なので」
「そう、そんなに長く一緒に…それでも凄いわ、白雪くんは育てるのが上手いのね」
「えっと、ありがとうございます」
さすがポケモン学校の教師、一目でオーガポンの強さを見抜いたようだ。オーガポンは愛らしい見た目をしているが、先生の目は誤魔化せなかったようだ。テブリムは防御方面に伸ばしているからか気付かれなかったようだが、オーガポンは無理だったか。
だが何とかなった、多少訝し気な顔をされたが、それだけで済んだようだ。これでも四年連続学年一位だ、入学前から育てていたことも合わさって、育成上手ってことで何とか誤魔化せた。
「よかったねー、オーガポン。可愛いって」
「ぽに?」
「うんうん、とっても可愛いよ。大好きだよー」
「ぽにおーん!」
「すごい可愛がり方ね…これが秘訣かしら」
おっと、デレデレしすぎたか、あまりだらしない姿を見せたくないのだが。まあいいか、オーガポンの方が大事なのだから、多少呆れられるくらい何てことないさ。
「…」
「ンキャ」
それにクラスメイトの相田がこちらをじっと見ている、ライバルのポケモンが気になるのだろう、彼には見てもらった方がいい。
さあ!もっと見てくれ、そして相棒のセイくんに愛情を注いであげてくれ。
「はい、そろそろ時間です。みなさん席に戻ってください」
「オーガポン、もう時間だって。横に立って一緒にあいさつしようね」
「ぽにおー…」
「大丈夫だよ、家に帰って一緒に遊んであげるからね」
オーガポンを抱きしめて、ほっぺたスリスリしていたら時間が来たようだ、ハルハルセンセーが席に戻るように皆に呼び掛けている。
このまま続けていたいのは確かなのだが、みんなに迷惑をかけるわけにはいかない。オーガポンには一回離れてもらう。彼女は悲しそうに鳴き声を上げていたが、家に帰っても遊んでもらえると知り、素直に横に立ってくれた。
「それでは笠沼さん、号令をお願いします」
「はい、―――起立、気を付け―――」
学級委員長の笠沼が生徒に号令をかけていく。クラスメイト達がそれに合わせて、立ち上がり姿勢を正す。
初めての学校での挨拶が楽しみなのだろう、笑顔のオーガポンの横に立ち、彼女と一緒にその時を待つ。
「礼―――お疲れさまでした」
ぽにおーん!
オーガポンの元気な鳴き声が教室に響き渡った。