ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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十四話

「エースバーン、最初は軽めでね」

「エバースッ!」

 

 空は綺麗に晴れていて、気持ちのいい風が流れている、今日は絶好のランニング日和。玲はエースバーンと一緒に走ろうと、家から自転車で三十分の距離にある、大きな公園に来ていた。

 先週の土曜に認定試験に合格したことで、ポケモンを外で出せるようになった。なのでこれを機に、みんなと一緒に楽しみながら、体力を向上させようと思ったのだ。

 

 そんな第一回目のパートナーは元気な返事をしていて、少し不安に思ってしまう。学校で走っているとはいえ、種族の違いがある、あまり飛ばされると付いていけなくなるのだ。

 だが走ってもいないうちから不安に思っていても仕方がない、エースバーンに声をかけ足を動かす。

 

「それじゃあ始めようか、エースバーン」

「バスッ!」

 

 顔を下に向け自分の恰好を見る。真新しい白いジャージと、同じく白いランニングシューズ。母が自分のために買って来てくれたものだ。新しい物に身を包むと、気分が高揚してくる。

 エースバーンもこちらの体力を考えていてくれているようで、ペースを合わせてくれている。走っているのが楽しくなってきた。

 

「フッフッ、ハー」

「バースバース、エバース!」

 

 走りながら周りを見れば、他にもポケモン連れの人達がいた。

 おっぱいがぷるぷる揺れているお姉さんの横では、ヨーテリーが一緒に走っているし。引き締まったおしりをフリフリさせているお姉さんの隣で、チャーレムが共に踊っている。他にも何匹ものポケモン達が、主人と共に過ごしていた。

 なんて素晴らしい光景だ、今日ここに走りに来て本当によかった。大事な子といられるし、体力向上にもなる。何て充実した時間だ、明日からも続けよう。

 

 おっと周りを見すぎてスピードが落ちていたようだ、エースバーンが笑顔で背中に手を当ててくれている。主人の体力が切れてきたと思ったのだろう。

 だが安心して欲しい、学校でも授業で走っているのだ、これくらいで体力が尽きる事はない。彼女に安心してもらうために、少しスピードを上げる。

 エースバーンもそれで安心したのだろう、手を放し嬉しそうに鳴き声を上げた。暖かな手が離れて少し残念だが、彼女の笑顔が見れたのだし良しとする。

 

「バースッ!バースバース、エバース!」

「フッフッ、ハー」

 

 エースバーンと仲を深められるし、とても充実した時間なのだが、さすがにそろそろ終わりにした方がいいかもしれない。公園の時計を見れば、走り始めてから一時間は立っている。

 まだ体力に余裕はあるが、今日は一回目のランニングだ、少し抑えておこう。初回から飛ばしすぎては、嫌になって次回に続かなくなるかもしれない、こういうのは楽しんで毎日続けた方がいいのだ。

 

「エースバーン、今日はもう終わりにしようか」

「バースゥ…」

「大丈夫だよ、これからも走るからね」

 

 終わってしまうのが残念なのだろう、エースバーンが悲しそうに鳴き声を上げる。

 そんな彼女を抱きしめて、頭を撫でてあげる。心配しなくていい、明日からも続けるつもりなのだ。彼女達は順番になるが、それでもこれからも一緒に走るのだから。

 彼女もそれに思い至ったようで、次第に顔が輝きだす。どうやら上手く機嫌を取れたようでよかった、彼女の悲しそうな顔を見るのは心が痛む。

 

 それにしても慰めるためとはいえ、抱き着くのは止めた方がよかったかもしれない、走って汗をかいているのだ。彼女が嫌がっていないので問題はないのかもしれないが、あとで一緒にお風呂に入って洗ってあげよう。

 

「少し休んでから帰ろうか」

「バスッ」

 

 ベンチに座って少し休むことにする、汗をかいたままにしては風邪をひいてしまうかもしれない。それは家族のみんなに心配をかけてしまう、絶対に避けねばならないのだ。

 

「はい、エースバーン。ゆっくり飲むんだよ」

「エバース!」

 

 渡邊さん印のスポーツ飲料、ランニングバッグから小さな水筒を取り出しエースバーンに渡す。彼女に合わせて甘さ控えめ、好みの味なようで美味しそうに飲んでいる。

 そんなエースバーンを眺めながら自分用のものを飲み、汗をタオルで拭いていく。

 

 可愛らしいポケモンと自分の休憩姿に、目の前を走っていく綺麗なお姉さん達が、笑顔で手を振ってくれる。顔がいいとこのような報酬もあるようだ。お母さん、カッコかわいく生んでくれてありがとう!自分に出来る最高の笑顔で、お姉さん達に手を振り返す。

 

「お、レーちゃん!」

 

 と、そんな風に笑顔で手を振っていたら、男の子が近くにやって来た。自分に手を振っていると思ったのだろう。その子は知り合いで、お姉さんにデレデレしている姿を見られたくなかったので、勘違いしてくれて本当によかった。

 

「ポケモン出してる!なになに、試験受かったの?よかったなー!おめでとう!」

「うん、ありがとう!今日はどうしたの?」

「あー、チョー太と散歩だよ」

 

 公園でオタチのチョー太くんを出していた子供。彼はどうやらチョー太くんのために、この公園に散歩しに来ていたようだ。しかし彼の相棒はどうしたのだろうか、腰のホルダーには一つしかボールが入っていない。チョー太くんは彼の母親のポケモンだったはずなのだが。

 

「チョー太くんだけ?」

「ああ…あいつは家で寝てるよ」

「そっか…挨拶したかったけど、気持ちよく寝てるなら仕方ないね」

 

 残念だ、あの子もとっても可愛いので、ナデナデしたかったのだが。寝ているなら仕方がない、次回を楽しみに待っていよう。

 

「え!まじで!?二回目の試験、受かったの?早いなー」

「せっかく行くんだからね、一緒に受けちゃった」

 

 どうやら彼は目敏く見つけたようだ、腰元のボールホルダーに付いているピンバッジを!

 とはいってもこれは本物ではない、似せて作られたレプリカだ。なんと沙織父はシールだけではなく、ピンバッジのレプリカも売っていたのだ。商売上手なんだから!

 

「さすがポケ校の生徒!俺は一回で受かんなかったよ」

「え?苦手なところで受けたの?」

「あー、違う違う。ちゃんと水で受けたんだけど…怖がってなー」

「そっかー…バトルに慣れていないと怖いよね」

 

 彼はポケモンの事を学ばない、普通の学校に通っているのだ。彼の相棒も授業で戦う事がないので、バトルに慣れていない。試験官が育てたポケモンは強いので、経験の少ないポケモンには怖く見えるのだろう、どうやら一回で受かることは難しかったようだ。

 

 ちなみに合格するために、試験官のポケモンを倒す必要はなかった。二回目の試験なのだ、本来ならあまり育っていないポケモンで相手をしていたはず。

 ある程度の力を見せればよかったのだが、マスカーニャが強すぎて瞬殺してしまったのだ。

 

「ま!合格出来たからいいんだけどな!…次が難しいけど」

「あー、二匹だけだと厳しいよね」

 

 三回目の試験は、あらかじめ最大三匹のポケモンを決めて、試験官の二匹のポケモンと戦うようだ。彼の手持ちは相棒の一匹、チョー太くんを入れても二匹だけ。どちらもあまり育っていないようだし、三回目の試験に合格するのは少し難しい。

 

 一般家庭では自分のポケモンを何匹も持てないのだろう、家族のポケモンと一緒に受けているようだ。小さい頃から一緒に育っているのだ、ポケモンもいう事を聞いてくれる。

 最初の方の試験はポケモンとのコミュニケーションと、試験官のポケモンに対応する知識を試しているのだろうし、問題にはなっていないようなのだ。

 育てる力を試すのはもっと後の試験なのだろう、家族のポケモンを借りるのにも限界はあるのだし、育てられないようではそこまで先には行けないと思う。

 

「レーちゃん、いっぱいポケモンいるみたいだし。やっぱポケ校だと違うのかな」

「みんな育ててるの一匹だよ」

 

 ポケモンの学校だからといって皆が皆、多くのポケモンを育てているわけではない。もちろん中にはいるが、殆どの生徒は一匹だけを大事に育てているのだ。

 愛情を注ぐのもそうだが、育成計画を立てなければいけない。学校なので勿論データはあるが、それも絶対ではない、全てが解明されている訳ではないのだから。みんな自分のポケモンを目で見て、探り探りで育てているのだ。

 

 玲のポケモン達はもう強くなっている。この世界に来て少しの調整は必要になったが、それでも他のみんなと違い育成計画を立てる必要はあまりない。ユキメノコの事は知っている、どう育てていくかはもう決めているのだ。

 

「そうなのか…まあ、どっちみちウチじゃ育てられないか。でもなぁ!…あ、チョー太ごめん!」

「チチィ!」

 

 チョー太くんを出してあげるのを忘れていた彼が、急いでボールを前に投げている。ボールから飛び出したチョー太くんは、そんな彼に抗議の鳴き声を上げていた。

 

「チィ!チッチィ!」

「チョー太くん元気だった?」

「チィー!」

 

 ボールの中から見ていたのだろう、抗議もそこそこに彼はこちらに甘えだす。そんな彼を抱きとめて、頭をナデナデしてあげる。昔から変わらないその愛くるしさに、とても癒される。

 

「バース…」

「チ、チィ…」

 

 だがそんな風にチョー太くんに癒されていると、エースバーンが鳴き声を上げる。どうやら知らない子を抱きしめている姿に嫉妬しているようだ、彼女がいる時にチョー太くんとは会ったことがなかったのだ。いつもニコニコの彼女でも知らない子に対しては思うところがあるのだな。 

 そしてそんなエースバーンの鳴き声を聞き、チョー太くんも怖がってしまう。彼女は強そうだしそれも仕方がない。

 

「エースバーン、この子はチョー太くん、友達なんだ」

「バースゥ?」

「チイィ…」

「小さい時から遊んでくれたんだ」

「バース!」

「チィ?」

 

 何だ良い奴じゃないか!そう言うかのように、チョー太くんの背中を何度も軽く叩く、ニコニコ笑顔のエースバーン。主人に良くしてくれた事が嬉しいのだろう、どうやら良い子認定してくれたようだ。

 チョー太くんもそんな彼女に、不思議そうに首をかしげながらも、笑みを浮かべている。

 

「その子、すげー強そうだなー」

「バスバース」

「やっぱりポケ校いいなー、戦えるんだろ?」

「授業でやるからね」

「授業で戦えるなんて最高じゃね?」

 

 どうやら彼は、エースバーンが授業で強くなったと思っているようだ。元から強かったとは言えないし、勘違いしたままでもいいが。

 

 それにしても彼はポケモン学校に憧れが強いようだ。それだけ自分のポケモンを強くしたいと思っているのだろう。

 おそらく彼の親も普通の学校に通っていたのだ。チョー太くんはまだオタチのままで進化できていない。進化条件はレベルで、それもあまり高くない。ポケモンの学校に連れて行っていたらすぐに進化していただろう。

 卒業してからの付き合いだったとしても、野生を倒していけば進化している。学校で知識を得た者が、理由もなく進化させないという事はないだろう。

 上手い戦わせ方が分からないから、チョー太くんを進化させてあげられないのだと思われる。原作とは違いターン制バトルではないのだから。

 

 親から教えてもらう事は期待できないし、学校の友達は自分と同じような知識しかない。

 三回目の認定試験を突破できないかもしれない状況。ポケモンが強くなれば合格できるかもしれないと考える彼は、バトルの授業がある学校に憧れてしまうのだろう。

 

「えっとね、一番強くなる方法は、ポケモンと仲良くなることだよ」

「なかよく?」

 

 ポケモンと仲良くなれば、得意な技や出来ない事が分かってくる。自分の事は、仲のいい相手には知ってもらいたいはず。そうやって相棒が何を出来るかを知って、その技に合わせて戦術を考えていく。

 自分の事を想って主人が考えてくれた戦術だ、その子も嬉しくて頑張ってくれる。ポケモンが気持ちよく戦えれば結果に反映される。主人が上手く指示できなかったとしても、それだけで違ってくるはずだ。

 苦手な事でもやりたがる子はいるので、絶対とはさすがに言えないが。

 

「まずはお散歩を忘れないようにね。チョー太くんも怒っているよ」

「チィ!チチィ!」

「バスバース!」

「ご、ごめんて…」

 

 

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