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夜のリビング、ソファーに座り目の前の父と話す。母と妹は両親の寝室に行っていて今はいない。ポケモンのみんなはボールに入って、自分の部屋にいる。何やら父が大事な話があるようで、二人だけにしてくれているのだ。
そんな父の話は三回目の認定試験の話題から始まった。
「こんなに早く試験に合格するとは思わなかったよ」
「みんなが頑張ってくれたからね」
「お父さんが三回目の試験を合格したのは…十二歳だったかな、中学一年の時だね」
「そうなんだ」
「それまではギンガくんだけだったからね」
どうやら父は小学生の間はギンガくんだけを育てていたようだ。中学生になって新しい子を家族に迎えてから、二匹で三回目の試験を突破したらしい。さすがにギンガくんだけでは、二匹のポケモンを相手にするのは難しかったようだ。
「玲くんは、これからも試験を受けていくんだよね?」
「もちろんだよ」
「大会とかにも出たい?」
「せっかく出られるんだからね。出来たら優勝したいかな」
認定印は出来たら八個欲しい。そうしたらポケモンリーグに出場できるのだから。
小さい大会も出れるのなら、もちろん出たい。相手はあまり強くないかもしれないが、それでも戦える機会は逃したくない。
それに強い人も中にはいるだろう。ポケモン学校の上級生やOBが出るだろうし、もしかしたら普通の学校にも強者がいるかもしれない。自分の知らない戦術を使ってくる人がいる可能性もあるのだし、出ないなんてもったいない。
「…玲くんは新しい子が来て欲しい?」
「お父さん?」
「玲くんを見てれば分かるよ、もっとポケモンが欲しいって」
どうやら父にはお見通しのようだ。いや、別に隠している訳ではないが。新しい家族が増える度に大喜びしていいる、それだけ嬉しい事なのだから。そんな姿を見ていれば、ポケモンを欲しがっている事は分かるだろう。
「この先に進むなら多くのポケモンがいた方がいい」
「うん」
「でも家族のポケモンを連れていくことも出来る。お父さんも昔そうやってたからね」
家族のポケモンを連れてこの先に進んでいく。試験に合格する事だけを考えるなら寧ろその方がいい、自分で育てきれない数のポケモンを連れる方が問題なのだから。リーグに出場しないのであれば、そこまで多くのポケモンは必要ないのだ。
しかし自分は違う、大事な子達が待っている。全ての家族を出してあげるのが目的なのだから。
「それは…ちょっと」
「自分の育てた子達と一緒に戦いたい?」
「うん。ギンガくん達が悪いわけじゃないんだ。けど自分のポケモンと一緒に戦いたい」
バウちゃんもギンガくんも大好きだ、一緒に戦いたくない訳ではない。彼女達とのバトルも楽しいだろう。だが一緒に戦うなら大事なあの子達とがいい、絶対にここで頷くわけにはいかないのだ。
「分かったよ、玲くんが思うように捕まえてきなさい」
「いいの?お父さん」
「しっかりと面倒を見れる子だけだよ。後先考えず捕まえるのは駄目だ」
「そんな事しないよ」
「玲くんなら大丈夫だとは思ってるけどね」
この世界は原作とは違うのだ。捕まえて終わりではないという事は、今まで生きてきて思い知っている。まだ目覚めて九年だが、それでもポケモンの家族達と生活してきたのだ。
どうやら父は、そんな息子の姿を見てきて、今回の判断に踏み切ったようだ。信じてくれてとても嬉しい、この信頼を裏切らないようにしないと。
「いるんだよ、沢山ね。捕まえたけど面倒を見られなくなって、捨ててしまう子が」
「やっぱりいるんだね…」
「お父さんももう一匹いたら、もしかしたらそうなっていたかもしれない。それだけ大変なんだ」
ギンガくんをあんなに可愛がっている父が、もしかしたらでも、捨ててしまっていたかもとまで言うのだ。金持ちの家に生まれても、それだけ大変なのだろう。自分はポケモンのみんなが育っているから出来る事なのだ。
「もちろん、家族のみんなで協力はするよ?でも面倒を見るのはあくまで玲くんだから」
「うん、わかった。ちゃんと自分で面倒見れる子だけ捕まえるよ、約束する」
「うん、信じてるよ」
今は家族の協力があって皆の面倒を見ていられるけど、ポケモンが一気に増えれば、この先どうなるか分からない。いつか全員出すことは譲れないが、それでもしっかりと先を見据えて、計画を立ててから出してあげよう。
「ポケモンを一人で捕まえてもいい?」
「いや、まだ一人は…んー…」
「大丈夫だよ、お父さん。授業でやってるから」
「でもねー…、まだ早くないかな」
まだ十歳、子供一人でポケモンを捕まえるのは危ない、親が息子の心配するのは当然だろう。自分に子供が出来たとしても、同じように心配すると思う。だがそれでも、ここは何としても頷いてもらわなければならないのだ。
「でも一緒にいたいと思う子は急に出てくるから」
「それは分かるけど…」
「大丈夫、マスカーニャ達は強いから」
「んー、…わかった。いいよ、絶対に無理しないようにね」
よかった、許してもらえた。両親の近くで怪しまれないでポケモンを出す方法が、もう思いつかなかったのだ。あのタブレットを押した瞬間に溢れ出す光が悪いよ。あんなのどうしたって目立つ。
「気を付けるんだよ?いくつになっても危ないのは変わらないんだからね」
「うん、気を付ける。ありがとうお父さん!」
「気持ちは分かるからね…お父さんも最初は一人で捕まえたかったんだ」
ジヘッドを一人で捕まえるのは無理だろう、いくら何でも無謀だ。いや、昔の事だからモノズか、それでも危ない。
「お父さん、一人でギンガくんを捕まえるのは危ないよ…」
「あ、いや、ギンガくんの事じゃないよ。最初は別のポケモンを捕まえようとしてたんだ」
「…そりゃあそうだよね」
いくら興奮している子供だからって、危険な事は分かるか。だがそうすると、結局その子は捕まえることが出来なかったのか。その子の事が少し気になるが今はいいか、ここで学名を言われても絶対に分からない。
「家族と一緒に探しに行った時にはもう居なくなってたんだ」
「そうだったんだ」
「でも、お爺ちゃんがギンガくんを連れてきてくれたから、今は良かったと思ってるよ」
どうやら孫大好きお爺ちゃんは、息子にも甘かったようだ。悲しんでいるからってドラゴンポケモンを連れて来るなんて。さすが誕生日にポケモン図鑑をプレゼントしただけはある。息子も孫もハートを鷲掴みだ。
「そういえば、お父さんの他のポケモンはどこにいるの?」
「一匹はお父さんの実家にいるよ、玲くんのお祖母ちゃんの面倒を見てくれてるんだ」
「他にもいるの?」
「もう一匹いて、その子は甥が連れているね。見てみる?この子達なんだけど」
「―――おお…」
祖母に撫でられている笑顔のセゴール。エレキギターを構える高校生くらいの男子の横で踊るジャランゴ。どうやら父はドラゴン使いだったようだ。この子達とギンガくんに加えて、状況に応じて家族のポケモンを連れて戦ってきたのだろう。
「お父さんは、三匹制の試合で戦ってたの?」
「そうだね。試験は六つだけしか合格出来なかったから」
「六つはすごいと思うけど」
認定印を八個持っていないと、ポケモンリーグには出場出来ない。なので父は、それ以外の大会で戦ってきたようだ。いや、六個でも凄いことなのだが。
六つあれば決められた場所ではなくても、ポケモンを出すことが出来る。それだけ厳しい審査が待っているらしい。持っていれば信用が得られるだろうし、ポケモン関係の仕事に就職するのにも有利なはず。
もちろん多くの人が持ってはいるだろうが、それでも誰もが得られるというものではない。
「六匹制は出たくなかったんだね」
「うん…そうだね、あれはちょっとね」
小規模な大会でも六匹制のものは一応ある。でもそれは、あまり出たいと思うようなものではない。基本的に、出れる試合は出たいと思う自分でもそうなのだ。
これはポケモンリーグに出られない人が、六匹制のバトルを経験するために出場するような大会で。それはつまりここに出たがる人は大抵、多数のポケモンを育ててきていない。それまでの試験では六匹も連れる必要がなかったからだ。
それなのに数合わせにポケモンを捕まえるから、どの子にも愛情を注ぎ切れていない。ポケモンが指示を聞かなかったり、負けた自分のポケモンに罵声を浴びせたり。果ては試合中にポケモンが逃げ出したり、ネット動画で見て悲しくなってしまった。
もちろんリーグに出れる人や、しっかり愛情を注いで育てている人も、この大会には出られる。
しかし出ても育っていない子が相手では得る物は少ないだろうし、悪評も立っている。そういう人たちは出ようとは思わないようなのだ。
「僕も三匹制だけでいいかな。リーグに出られたら出るけど」
「そうだね、そうした方がいいよ。…それじゃ皆を呼ぼうか。気をつけるんだよ、玲くん」
「うん。ありがとうね、お父さん」
話は終わったようで父は自分の部屋に歩いて行く。
父が息子を想って時間を取って言ってくれたのだ、蔑ろになんて出来ない。考えなしにポケモンをタブレットから出したり、危険を顧みない行動はしないようにしないと。
それでもせっかく父が許可を出してくれたのだ、新しい家族を一匹だけ出すことにしよう。テブリムが我が家に来てから一年たった。今の生活にも大分なれてきて、新しい子の面倒を見る余裕は出来てきたと思う。
だがさすがに今日明日という訳にはいかない。慎重に選んであげなければいけない、今は出してあげられない子もいるのだから。逸って出したせいで一緒に生きていけなくなるなどあってはならないのだ。
今は先にポケモンのみんなに教えてあげよう、新しい家族が来ることを。きっと喜んでくれるだろう。