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「ただいま」
「おかえりなさい。レーくん、どうだったの?」
「あ、うん。喜んでもらえた」
家に帰り帰還の挨拶、リビングまで届くように大きな声で。その声に母が急いで玄関まで歩いてくる、どうやら息子の初デートの結果が待ち遠しかったようだ。
その後ろから渡邊さんが歩いて来て、朗報を聞き二人一緒に喜んでくれる。その姿に嬉しい思いはあるが、同時に少し恥ずかしい。
「よかったわ。レーくん、がんばったのね」
「さすがです。お坊ちゃんなら当然の事で御座いますが」
「よ、よかったよ…喜んでもらえて。服を選んでくれてありがとう」
「いいのよ、楽しかったもの」
「ええ、至福の時間で御座いました」
喜んでくれるのはとても嬉しいし、服をたくさん買ってもらえたのは有り難いが、ファッションショーはとても疲れた。
渡邊さんの目が少し怖かったし、恐らく次のデートもあれが待っているのだろう、今から少し憂鬱だ。
「渡邊さん、大丈夫?もう遅いけど」
「ええ、何も問題は御座いません。結果を聞くまでは帰れませんので」
「そ、それならいいんだけど。暗いから気を付けて帰ってね、渡邊さん」
「心配して頂き、ありがとうございます。お坊ちゃん」
どうやら渡邊さんは、デートの結果を聞くまで帰るつもりはなかったようで、問題ないと言っている。
しかし子供達の恐喝事件で、大分時間が遅くなっている。女性の一人歩きはとても心配だ。
「大丈夫ですよ、玲様。一花は私が送っていきますので」
「そうだったんだ…よかった」
「一人は危ないもの、瀬川さんにお願いしたのよ」
よかった、渡邊さんは瀬川さんが家まで送ってくれる、母が頼んでくれていたようだ。瀬川さんは運転が上手いので、事故の心配も恐らくない。
「よかったね、かっこいい渡邊さん。玲様に心配してもらえてるよ」
「ええ、無上の喜びに御座います」
「…ちょっと、私にその話し方はやめてって言ってるでしょ…」
渡邊さんは未だ、普段の口調で話しかけてくれない、嫌う事なんてないと言ってるのに。瀬川さん相手でも、自分の前では徹底しているのだ。
「それでは奥様、玲様、失礼します」
「奥様、おぼちゃん、失礼致します」
そんな二人は自分達に挨拶して、白雪家を後にする。親子で仲良く手を振って、二人を笑顔で見送った。
しかしそこで、ふと彼女達の普段の会話が気になってしまう。前に見たダウナー気味の渡邊さんと、そんな彼女と昔からの付き合いの瀬川さん。彼女達は今、どんな話をしているのだろうかと。
悪いとは思いつつ、ドアを音が立たないように少しだけ開けた。
「いつまでしてるのよ。もういいでしょ、戻しなって」
「うん…」
「玲様の前でもそれで大丈夫よ、嫌われないから」
「いいの…。レーくんの前では、あれで…」
「絶対そっちの方が喜んでくれるって…」
「……。いいの…」
―――ドアを閉める。渡邊さんは心の中では、自分の事を母と同じ様に呼んでくれていたのだな。息子の様に思ってくれているみたいに感じられてとても嬉しい。
しかしこの事は忘れることにしよう、渡邊さんも知られたくはないだろうから。
「だめよ、レーくん。ぬすみ聞きしちゃ」
「うん。ごめんなさい、お母さん」
盗み聞きを謝りながらも、玲は嬉しそうに母と二人でリビングに歩いて行った。
家に帰ったらこれをしないと、ルカリオを家族に紹介するのだ。渡邊さんには明日になるが、それは仕方がない。もう外は暗いので、これ以上帰るのを遅らせる訳にはいかない。
「この子はルカリオ。みんな、よろしくね!」
「カオーン」
「カニャ」
「ぼわお」
長女のマスカーニャと、我が家を長年守ってきたバウちゃんが前に出る。他のみんなは今は待つ様子。何やらこの家のポケモン達には、ルールがあるようなのだ。
先にマスカーニャが前に出て、新しい家族に手を伸ばす。
どうやらルカリオはマスカーニャと握手をし、その強さを感じ取ったようで、頭を下げている。
そんなマスカーニャも、彼女の強者の風格に頼もしいと感じたのか、何度も頷いている。
「カオン!」
「ボワオ!」
次にルカリオはバウちゃんの方を向く。そして彼女の瞳を見た瞬間、カーペットに片膝をついた。目と目を合わせて何かを感じ取ったのだろう、彼女達はその拳を合わせ互いに鳴き声を上げる。
二匹とも嬉しそうに笑っていて、何やら分かりあっている様子。
恐らくその後は自由なのだろう、他のみんなが彼女達の挨拶が終わった瞬間、元気に駆け寄っている。同郷のエースバーンが楽しそうに肩を叩いているし。同じく同郷のテブリムは周りが煩いはずなのに、嬉しそうにミーニャちゃんと一緒に挨拶している。
オーガポンは彼女達の周りで元気に可愛く鳴いていて、その光景はとても賑やかだ。
「ユキメノコ、ポニータ、お姉ちゃんに一緒にあいさつしようか」
「ユキィー」
「ポニー」
ルカリオはこの二匹からみて姉になる。我が家に来たのは後なのだが、原作の関係で年上という事になるのだ。
テブリムもそうなのだが、彼女の時は上手く誤魔化した。だが今回はこの子達には既に説明して、タブレットから出るところもボールの中から見ている。
不思議な現象はみんな気にしないみたいで秘密にしてくれるようだが、複雑な姉妹関係には思う所はあるだろう。だがこの子達にもルカリオと仲良くして欲しいのだ。
なので挨拶のために家の中だがポニータにも出てもらって、ユキメノコと一緒にルカリオの元へ行こうとしているのだ。
もちろん両親には、ポニータを出す許可は取ってある。
「ルカリオ。みんなの妹、ユキメノコとポニータだよ」
「ユキー」
「ポニー…」
「カォン」
「ポニー?」
ポニータはルカリオの強そうな見た目に、最初は怖がってしまっていた。だがその震える姿を見たルカリオの優しい微笑みで、次第に緊張が解けてくる。そして何とポニータは、自分から新しい姉に頭を擦りつけたのだ。
ユキメノコもその光景を見て、ルカリオの事を優しい姉だと認めたのか、嬉しそうに鳴き声を上げている。
姉妹三匹が仲良く鳴き合っている姿を見てとても嬉しい気持ちになる。
よかった、どうやらポケモンの皆にはルカリオは受け入れられたようだ。
「ありがとうね、マスカーニャちゃん」
「カニャ」
「カオンッ」
「あら、ルカリオちゃんも手伝ってくれるの?ありがとうね」
「カオ。…カオーンッ」
「バ、バース…」
家族への紹介が終わり、何時もより大分遅い夕飯もみんなと食べて、今はリビングでまったり中。マスカーニャが母の手伝いで食器を重ね、ルカリオも一緒に片づけ始める。
エースバーンはソファーでのんびりテレビを見ていて、そんな彼女の姿に、同郷のルカリオが手伝いなさいよっ!とでも言うかのように鳴き声を上げていた。
「いい子が来てくれたね、玲くん」
「うん。いい子だし、すごく可愛いんだ」
「カ、カオン…」
慌てて手伝い始めるエースバーンと、目を光らせるルカリオ。そんな光景を見ている時にかけられた父の言葉に力強く頷く。ルカリオはすごくいい子で、とっても可愛いのだ。来てくれて本当によかった。
主人に褒められ照れたことで、手に持つ皿が揺れてしまう。しかし武道の心得のおかげか、少し動くだけで見事に元通り。積み上げられた皿を両手に、ルカリオはキッチンに歩いていく。
「すごいね…強いよ、あの子」
「うん!駅で見かけて、思わず追いかけちゃった」
「それで公園にいたんだね…気持ちは分かるけど、暗いと危ないから気を付けないと駄目だよ?」
「うん、ごめんなさい。次は時間も気にする」
約束の時間に駅にいなかった理由もこれで大丈夫だろう。
だが父には遅くなったことを怒られてしまう、反論はできない。思わぬ襲撃があり逃げられなかったとはいえ、遅くなったのは事実。
別の日に出来なくて、予定を詰め込むしかなかったのはこちらの都合。父が心配して言ってくれているのだ、素直に受け止めよう。
「まあ遅くなった理由は、瀬川さんに聞いているけど」
「あ、うん…」
「ポケモンを欲しがる子供は多いし、そういう事も結構あるみたいだけど…」
「そんなにあるの?意味ないのに…」
「家族にポケモンがいないと自分で捕まえられないから。知っていてもやるんだろうね」
「もしかしたら逃げないかもしれない…って?」
たしかに家族がポケモンを連れていないと、野生を捕まえる事は出来ないだろう。可能性があるとしたら、ほとんど動かないような無害なポケモンだけだ。
そのポケモンも、ボール自体が高いので親に買ってもらわないと捕まえられない。高い金を払って買ってもらっても、捕獲失敗したらそこで終わりだ。体力を減らす手段がなくては難しい。
その様な子供達は、逃げないかもしれない可能性にかけて、人から奪うのかもしれない。
「仮に上手くいったとしても危ないんだけどね」
「家族に教えてもらわないと分からないよね」
人間とポケモンは違う、食べ物一つ取ってもそうなのだ。良かれと思って人間と同じものを与え、もしその子の身体に害があったとしたら、その子は自分に危害を加えるために、そのような物を食べさせたと思うだろう。その子は相手を敵と判断して攻撃すると思われる。
そのポケモンが分かってくれたらいいが、信頼関係が何もない状態なのだ、期待は出来ないだろう。
「さて、そろそろお風呂に入って来なさい。沸いたみたいだよ」
「お父さんは?」
どうやらお風呂が沸いたようだ、給湯器からメロディが鳴っている。
我が家では入る順番は特に決まっていない、ポケモンの家族を入れる順番で前後するからだ。水風呂になるので一番最初に入るユキメノコと一緒の日は、父が最後になってくれる。
他の日も基本的に父が最後に入ってくれるが、最初の日も普通にあるのだ。
「僕は後でいいよ。それとも先に一緒に入る?」
「ダメですよ、あきらさん。レーくんはわたし達と一緒に入るんですから。ね?ヒーちゃん」
「うん。おにーちゃとママ、いっしょ」
「そうか…うん、わかったよ」
我が家のルール、子供と一緒に風呂に入るのは母親。父も母の愛には逆らえないのだ。
自分としては、どちらと入っても見られるのは一緒だ。恥ずかしがる事はもうない、その段階は少し前に通り過ぎた。父とは母が出産で入院している時にしか入ったことはないが、恐らく見られても照れることはないだろう。
見られるのが一緒なら、大きくて綺麗なおっぱいが見たい!姫光の笑顔で癒されるし、そちらの方が絶対にいいね!
そうと決まったら準備を急がなくては。母が風呂の準備を終えている、姫光は早く入れてあげないと眠くなってしまうのだ。どうやら今日も、父が最後に風呂に入るの日のようだ。
「カオン」
「どうしたの、ルカリオ?」
「レーくんの背中を、洗ってあげたいんじゃない?」
「カオッ」
なんと!それは素晴らしい、是非にお願いしたい。
みんなとても良い子だ。マスカーニャもオーガポンも、エースバーンも洗ってくれる。
残念ながらユキメノコは先に水に入れてあげたいので遠慮していて、テブリムは大きさが足りない。しかしそんな彼女達も主人の背中を洗おうとはしてくれる。
そこにルカリオも加わてくれる。なんて主人思いの素晴らしい子達なのだ。
「ありがとう、ルカリオ!お願いね、大好きだよ!」
「カ、カオォン…」
「それじゃあ、お母さんはヒーちゃんを洗うわね」
「僕がお母さんを洗ってあげるね」
「ありがとう、レーくん。お願いね」
さて、楽しもうか。
笑顔の母と妹と一緒に、ルカリオと手を繋ぎ歩いて行く。