ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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二十五話

 今日は五回目の認定試験の日。せっかくのゴールデンウィークということで、二日連続で試験を受けに来ていた。

 続けて受ける事になったのには理由がある、なにもあえてこの様な日程にしたわけではない。

 ここは昨日の会社とは違い、すぐに空きが埋まる程の人気のある試験場のようなのだが。試験を受けてみたいと思っていても、なかなか空きが出なかった。

 ひと月ほど前にようやく見つけ急いで申請したが、この日までの全てが埋まっていたのだ。

 昨日の試験場は他の日に受けるのは都合が悪く、それでこの様な日程になってしまったという訳だ。

 

「おにーちゃ、みてー」

「とっても可愛いよ、ヒカリちゃん」

「れ、レイレイ!ポニータ大丈夫だよな?な?」

「大丈夫だよコウキくん。ね?ポニータ」

「ポニィー!」

 

 ここは『あおぞら明石きょうしつ』といって、試験官の方が河原の近くにあるグラウンドの使用許可を取って、休みの日に運営するという体制をとっている。

 グラウンドなのでポケモンを遊ばせたりもできるし、家族以外も見学することが出来る。なので学校の友人を呼ぶことも出来るのだ。

 

 他にも教室とあるように、分からない事を質問したりも出来る。周りは同じ初心者ばかりで、緊張する事も少ないだろう。

 他人に試験を見られたくない人も勿論いるだろうが、初めての試験だったりで自信のない人には人気があるようなのだ。

 

 十五歳までという年齢制限はあったがこちとら十歳、特に問題もなく受け付けてもらえた。

 

「バカねあんた、ポケモンなのよ?」

「で、でもよ?ヒカリちゃん重くないかな…」

「は?何あんた…、女の子に失礼でしょ!」

「ち、ちがッ!ご、ごめん…」

 

 せっかくなので自分も家族や友人達に来てもらっている。今も姫光がポニータに乗って仲良く遊んでいて、そんな彼女達をみんなが見守っていた。

 

 とそんな時、何やら聞き捨てならない言葉が聞こえる。姫光が重い?何を言っているのか。

 

「おにーちゃ、ヒカリおもいの?ポニータだいじょうぶ?」

「大丈夫だよヒカリちゃん、ポニータも楽しそうでしょ?」

「ポニィー」

「そうだよー、ヒカリちゃん。女の子はねー、とっても軽いんだよー」

「このお兄さんは気にしなくていいのよ?頭に何も入ってないから」

「いつもお兄ちゃん、抱っこしてるでしょ?ヒカリちゃんはとっても軽いから大丈夫!」

 

 ポニータを心配して悲しそうな顔をする姫光、そんな彼女をみんなで元気づける。

 どうやら妹はそれで元気を取り戻したようだ、嬉しそうな顔でポニータの頭に頬をスリスリしている。よかった、姫光が傷つくなんて事態は回避された。

 

「ご、ごめんよ、ヒカリちゃん!」

「ヒカリ、へいきだよ」

「そ、そっか…よかった…」

 

 ポケモンも含めた少女達全員から厳しい目を向けられている高貴。

 しかしこれ以上責めるのは少し可哀そうだ。しっかり謝ったのだから、彼の事はもう許してあげよう。

 

「れいくん、僕たちは気を付けないといけないね」

「そうだね、キーツくん。気を付けよう」

「コモコモリー」

 

 須田と彼の相棒のハミル君と、三者で深く頷く。

 我が家は女の子の方が多いのだ、言ってはいけない言葉がある、気を付けなければならない。でないと高貴みたいに針の筵になってしまうだろう。

 

「お父さんも気を付けようね」

「僕は大丈夫、遥か昔に通った道だから」

「そ、そうなんだ…」

「それより玲くん、本当に大丈夫?疲れてない?」

「大丈夫。みんなのおかげで緊張しないし、これくらいでは疲れないよ」

「それならいいけど。でも今のうちに休んでおくんだよ?ポニータは見ててあげるから」

「うん、わかった。ありがとうお父さん」

 

 二日連続の試験だ、父が心配するのも分かる。普通の子供だったら、作戦を考えたり緊張だったりで疲れていただろう。

 自分はそこまで考える事はないので疲れていないが、それでも父が心配してくれているのだ、好意は素直に受け取らなくては。

 今日はこの様な試験会場なので、みんなと楽しむために早めに来ている。今は別の受験者がバトルしていて、自分の番はまだまだ先だ。待ってる間に燥ぎすぎて疲れるなんて事のないように気を付けないと。

 

「ったく…」

「ひどいよねー」

 

 他の人の試験でも見るかとベンチに座ると、隣に町田と紗更がやってくる。

 どうやら彼女達はまだ高貴に思う事があるようで、顔をしかめている。それだけ乙女的に許してはならない言葉だったのだろう。

 だが高貴も反省している、ここは大親友として話題を逸らしてあげよう。

 

「えっと、…今日は来てくれてありがとうね!」

「ううん、わたしもレイくんのバトル見たいからー」

「そうね、他の子の戦いも見てみたいし。いつもユキメノコちゃんだけだから」

「あー、でも、あんまり楽しめないかもしれないよ?」

「そうなのー?」

 

 今日の試験ではルカリオを出すつもりなのだが、彼女は強すぎて昨日の様にすぐに終わってしまうだろう。彼女達にとってはあまり楽しめないのではないだろうか。

 せっかく来てくれたので彼女達には楽しんでもらいたいのだが、手加減するのは相手に失礼なので、そういう訳にもいかない。

 

「ルカリオは強いから、すぐ終わると思う」

「もうそんなに強くなったんだー」

「すごいわね、急に育つと言う事を聞かなくなるって聞くけど」

「いや、育ててはいるけど、ルカリオは最初から強い子だったんだよ」

「あの子、なついていたわよね?もっとすごいじゃない」

「ねー、レイくんのこと大好きみたいだよねー」

 

 強いポケモンを捕まえて戦わせることに特に問題はない。その様な子に指示を出せるというのは、信頼してもらえているという事で、トレーナーとしての実力があるという証だからだ。

 彼女達もルカリオの普段の様子を知っているので、感心してくれている。

 

「愛情を持って接しているからね!」

「あー…まあ、すごく可愛がってるわね」

「あんなに大事にしてもらえたら、お願い聞いてあげたくなっちゃうよねー」

「それでも、そんなにすぐ終わる?五回目の試験よ?」

「強いし相性もいいから。ああ、…でもどうだろ」

 

 すぐ終わるかと思ったが、よく考えると少し分からなくなってきた。

 今までの試験は手加減してもらっていたようなのですぐ終わったが、ここからは五回目で半分を過ぎるのだ、これまでの様に簡単にはいかないかもしれない。

 しっかりと戦術を使ってくるだろうし、『いわタイプ』で頑丈な子が多い。甘く見過ぎると痛い目に合うかもしれない。

 

「どうしたのー?」

「甘く考えてたけど、五回目だから…苦戦とまでは言わないけど少し時間が掛かるかも」 

「五回目は甘く考えていい試験じゃあないわよ…」

「そっかー。それじゃあ頑張って応援するねー!」

「負けてる姿が想像できないけど、がんばってね」

 

 試験に落ちる事はまずないだろうけど、それでもしっかりと考えておかないと。甘くみて苦戦するなんて姿、せっかく応援しに来てくれた皆に見せられない。

 

「ごめんね、白雪くんで合ってる?」

「あ、はい、白雪です。なんでしょうか?」

「認定試験のテストの事なんだけど。今だいじょうぶ?」

「はい、大丈夫です」

 

 とそこで、三十代と思われる女性が話しかけてきた。

 どうやら彼女は認定試験のテストについて話があるようだ。

 これは大事な話だ、しっかり聞かないと。紗更達には悪いが少し離れててもらおう。

 

「向こうでポケモン達と遊んでるから」

「またあとでねー、レイくん」 

 

 町田と紗更は話の邪魔をしないように、手を振ってみんなの元に歩いて歩いて行った。

 女性は紗更達が離れたのを確認すると、用件を話し始める。 

 

「ごめんね白雪くん、うちでは五つ目の試験ではテストをやっていないの」

「え…、やっていないって、どういうことですか?」

「えっとね、ここに来るのは小学生や中学生だけだから―――」

 

 この女性が言うには、ここは試験に不安を覚えた者が来るような試験場なので、五回目の試験を想定していなかったらしい。

 認定試験自体は受けられるが、前段階のテストは受けることが出来ないようなのだ。

 だがこちらとしては試験が出来るなら何も問題はない。むしろ戦う事だけに集中できるので、そちらの方がいいのではないだろうか。

 

「テストは出来ないけど、白雪くんに何か不利がある訳じゃないから」

「わかりました」

 

 どうやら他の受験者と違う対応に、こちらが不安を覚えるのではないかと心配して、説明しに来てくれたようだ。

 たしかにここは年齢制限のあるような試験場だ。ここに来る子供からしたら、自分だけ違う対応というのは、何が起こるか分からなくて少し怖いかもしれない。

 

「それじゃあ白雪くん、がんばってね」

「ありがとうございました」

 

 説明を終えた女性は応援の言葉を送ってくれて、手を振って歩いて行く。

 恐らく次の受験者の元へ向かうのだろう、手元の書類を確認して周りを見回していた。

  

「なあ、さらさら、もっとポニータと一緒にいちゃダメか?」

「だめだよー、二人にしてあげよー」

「二人って…みんないるだろ?」

 

 テストの分の空き時間を何で潰そうかと考えていると、女性と入れ替わるように高貴と紗更が来て、ベンチの両隣に座る。

 しかし何やら高貴が少し悲しそうな顔をしている、何かあったのだろうか。

 

「おかえりササラちゃん、コウキくんどうしたの?」

「ただいまー。えっとね、あれ見てー」

 

 紗更の指さす方向を見ると、ポニータとその背に乗る姫光、町田の相棒のふわわんちゃんも一緒だ。みんな楽しそうに笑っていて、そんな美少女たちの笑顔を見ていると、こちらまで笑顔になってしまう。

 ちなみに父も近くにいて、危険がないように見ていてくれている。安全管理はばっちりだ。

 

 だが違うな、紗更の言いたい事はそれではない、その横で彼女達を見守りながら楽しそうに話す町田と須田だ。

 なるほど、すべて理解した。紗更のこの判断には全面的に賛成しよう。

 

「そうだね。ポニータに蹴られるよ、コウキくん」

「ええ!なんで!?」

「ねー、邪魔しちゃだめだよねー」

「ねー」

 

 いや、ポニータは優しい子なので、人を蹴るような事はしないが。それでも町田と須田の邪魔をしてはいけないのだ。

 何やら高貴は良く分かっていないようだが、二対一では分が悪いと思ったのか何も言わずに頷いた。

 

「なあ、テスト受けるんだろ?ここで話してて大丈夫か?」

 

 とそんな時、一人の少年が話しかけてきた。背が高くて正確には分からないが、顔は若く見える、恐らく中学生くらいの子だろうか。

 どうやら彼は、テストを受けるはずの子供がいつまでも友人達と話しているのを見て、心配して話しかけてきてくれたようだ。

 

「えっと、テストは受けなくていいみたいなんです」

「え?あれって全員受けるものだけど。受けなくていいなんて初めて聞いた」

「ここの事、詳しいんですか?」

 

 テストは受けなくてもいいと言ったら、彼は不思議そうな顔をした。もしかして試験の内容に詳しいのだろうか。

 

「あー…、ここ、うちの親がやっててさ。さっき話してた人も母親なんだ」

「それでいつも来てるんですね」

「手伝わされてな…」

 

 なるほど、親の手伝いでいつも来ているのか。それなら他の受験者とは違う扱いを、彼が不思議に思ってもおかしくはない。

 

「なんで受けなくていいの?あ、聞いてみただけで、文句があるとかじゃないから」

「えっと、五回目のテストは用意していないみたいで…」

「……え?五回目って試験?…はあ!?嘘だろ、年いくつだよ!」

「…十歳です」

「ありえねーって!」

「レイくんは凄いもんねー」

「レイレイ、学年一位なんですよ!」

 

 どや顔の紗更と高貴。自慢してくれるのはとても嬉しいのだが、人前で両腕に抱き着かれるというのは少し恥ずかしい。

 それに色々なところが成長してきている紗更の柔らかさに、胸がドキドキしてしまうのだ。

 あと高貴は紗更の真似をしなくていい。

 

「ポケモン学校か…いや、それでもおかしいって。え、もしかして普通なの?二人も?」

「俺は受かったのはまだ二回です」

「わたしもそうです」

「三回目を受けに来たのか…」

「あ、俺は応援に来ただけで」

「わたしもです。三回目は別の場所でって」

 

 高貴は小学生の間はゴウタくんだけを育てたいらしく、三回目の試験はしばらくは受けるつもりはないみたいなのだ。

 

 紗更はピーちゃんの技のために、昨日の『はがね』タイプの試験場で受ける事にしたらしい。ピーちゃんだけでは三回目は厳しいと思ったのだが、どうやら親のポケモンを連れて行くようだ。

 

 あの技を使えるかは作品ごとに変わるし、体の違いもあるので本当に覚えるのか不安がある。それにこの世界では前例がないので、絶対に覚えるとは彼女に言ってあげられない。

 それでも彼女は行くと言ってくれたのだ。そのことが自分を信じてくれていると感じられて、申し訳ない気持ちもあるが、それ以上に嬉しかった。

 

 ちなみに試験場のことは今日ここで会った時に伝えたのだが、その時にも腕に抱き着かれた。前にマフラーを一緒に巻いた時から、彼女のボディータッチは激しくなっているのだ。

 少し恥ずかしそうにしながらの美少女のありがとうは、心臓にとても悪い。

 

 

「それでも十歳で二回目に受かってるんだろ?早いって」

「二回目は普通じゃ?」

「だよねー?」

「それはポケモン学校で、小さい時から戦えるからだって。俺のポケモンは」

 

 少年はボールを取り出し地面に放る。中から光に包まれ飛び出してきたのはイワンコ、いわ単タイプの子犬型のポケモンだ。

 

「こいつは五歳の時に親からタマゴで貰ったんだけど」

「長い付き合いなんですね」

「八年一緒にいるけど、それでも二回目に受かったの最近だぜ?」

「え!なんで!?」

「ポケモン学校に行ってないと、休みの日くらいしか戦えないんだよ」

 

 自分達は授業で戦えるが、ポケモンの学校に通っていない子供は、監督者がいないと戦えない。休みの日に親と出かけるくらいしか方法がないし、戦うために野生にわざと襲われるなんて論外だ。

 十歳になって一回目の試験に合格し、ポケモンを一人で出せるようになっても、戦うのまでは危なくて保護者が許さないだろう。

 それに上手い戦い方を教わっている訳でもない、二回目に合格出来るだけの実力はすぐにはつかないのだ。

 

「俺は家がこうだろ?だから休みの日に戦えないんだよ」

「あー、手伝いって言ってましたもんね」

「それでも戦い方は教えてもらってたから、なんとか受かったけどな」

 

 もしポケモン学校に通っていなかったら、休日に疲れている父に無理を言って、困らせていたかもしれない。

 ユキメノコやポニータ、友人達にも会えていなかった。学校に通わせてくれと頼んだ過去の自分と、頷いてくれた両親に感謝しなければ。

 

「だから十歳で二回目合格は、十分早いってこと」

「七歳の時から、レイレイにボコボコにされててよかった」

「…言い方悪くない?」 

「いや、悪い意味じゃないから!いろいろ教えてくれるし、ありがとうな!」

「ありがとーね、レイくん!」

 

 いつも授業では手加減しないで戦っているので、間違っている訳ではないが、どうにも納得がいかない。

 だが感謝の言葉に嘘はないようなので、努めて気にしない事にしよう。

 

「あまり育ってないのに合格したのか。おまえ凄いんだな!」

「イワワン!」

「このポケモンはね、勇敢な子なんだよ」

「そうなんだー!」

 

 イワンコは進化先の見た目に惚れて、いつか育てたいと思っていたのだ。

 残念ながら実際には育てていないが、それでも育成方法を考えてみるくらいには大好きな子だ。

 

「進化に気を付けないといけないけど、人懐っこい子で初心者にオススメみたいだよ」

「え?何かあんの?」

 

 イワンコは進化する時間と特性で、進化先が三つに分かれる。どの姿にしたいか決まっているなら、気を付けないといけない。

 さらに進化が近づくと気性が荒くなるし、一時的に主人の元からいなくなるらしい。

 

「進化したら戻ってくるみたいなので、逃げたとは思わないであげてください」

「お、おお…ありがとな。知らなかったら絶対に落ち込んでた」

「こんなにいい子なのに、暴れちゃうのー?」

「性格の違いがあるから絶対じゃないとは思うけど…」

 

 この世界はゲームではないので、性格の違いによって変わってくるかもしれない。絶対に凶暴になるとは言い切れない。

 

「まあ、気を付けておくよ。…親父も教えてくれればいいのに」

 

 進化するのは大分先になりそうだし、親御さんも不安にさせないように、今は黙っているとかではないだろうか。想像でしかないが。

 

 とそんな時、コートの方から自分の名前を呼ぶ声が聞こえる、どうやら順番が来たようだ。

 家族や友人にポケモン達も、声を聞いてこちらに歩いて来る。

 

「順番が来たみたいだな」

「レイくん、応援してるね!」

「がんばれよ!レイレイ!」

「うん、絶対に受かってくるよ!」

「いろいろ教えてくれてありがとな!応援してるから!」

「イワワン!」

 

 みんなが応援してくれるのだ、落ちる訳にはいかない。絶対に合格して見せる。

 

 

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