誤字報告もありがとうございます、いつも助かっています。
これからも応援よろしくお願いします。
「―――おはよう、オーガポン…」
「ぽにお」
瞼を開けば目の前にはオーガポンの可愛い笑顔。同じ布団の中に一緒にいるという状況、昨日の夜は彼女と抱き合って眠ったのだ。
そんな彼女は主人が起きたことを知り、布団に潜り嬉しそうに胸に頭を擦りつけてきて、その様子を見て心の中で息をつく。どうやら元気を取り戻してくれたようだ。
昨日の夜、オーガポンは落ち込んでいたのだ。
認定試験の合格祝いで軽いパーティを開いてもらったのだが、みんなが笑顔の中で彼女だけが寂しそうにしていた。
もちろん彼女もみんなと一緒に合格を喜んでくれたが、それでもどこか表情が暗かったのだ。
理由はすぐに分かった、試験に出してあげられなかった事だ。
オーガポンはこの世界に来てから一回も戦えていない。我が家にやって来たのが三番目で、比較的早いにもかかわらずだ。
さらには前々から試験のメンバーに選んでいて、直前にも出るかもしれないと準備までしてもらっていた。主人のために頑張ろうと気合を入れてくれていた彼女に、酷い事をしてしまったのだ。
彼女は悲しかっただろう。もしかしたら嫌われてしまったのでは、そうも思ってもいたかも知れない。
そんな訳がない、オーガポンを嫌うなんて事は絶対にないのだ。
そのような誤解で悲しませたままにしておきたくなくて、全力でオーガポンを可愛がった。君の事が大好きなのだと、嫌いで出さなかった訳ではないのだと。精一杯の想いを込めて、強く優しく抱きしめた。
もちろんそれだけでは足りはしない、彼女はそれだけ悲しんだだろうから。一緒に寝る順番をユキメノコに変わってもらって、ベッドの中でオーガポンが眠るまで抱きしめ続けたという訳だ。
どうやらそのかいがあって、オーガポンは元気を取り戻したようで、嬉しそうにこちらの顔を見つめている。
もう二度とあんな悲しそうな顔をさせないように、気を付けなければならない。
「オーガポン元気だね、いつ起きたの?」
「ぽ、ぽにおー」
それにしても朝はいつもベッドの中でお眠な彼女が、この時間に元気だなんて珍しい。聞いてみれば気まずそうに眼を逸らす、さては大分前から起きていたな。
「だめだよ、しっかり寝ないと。寝不足は可愛いお顔の天敵なんだよ?」
「ぽに…」
「それじゃあ、もう少しだけ寝てようか」
「ぽにー、ぽにおー」
早く起きて眠いだろうオーガポンに、もう少し寝てていいと促す。しかし彼女は胸に顔をイヤイヤと擦りつけてくる、どうやら一緒に起きていたいようだ。
「しょうがないなー、オーガポンは。眠くなったら、ちゃんとボールに戻るんだよ」
「ぽ、ぽにー…」
寝たくないなら仕方がないと、オーガポンと一緒に起きようとするが、彼女は胸に顔を当てたまま動こうとしない。もしかしてこのままベッドで甘えていたいのだろうか。
「ベッドで一緒がいいの?」
「ぽに…」
「大丈夫だよ、イヤじゃないから」
「ぽにお!」
「それなら目だけでも閉じてようか。大丈夫だよ、寝ちゃっても一緒にいるから」
オーガポンが申し訳なさそうにするが、一緒にいるのが嫌な訳がない、甘えてくれて可愛いではないか。それにまだゴールデンウィークで時間に余裕があるのだ、何も問題なんてない、どんとこいだ。
だが目だけは瞑っていてもらおう、開けたままでは脳が疲れてしまう。寝てしまっても一緒にいるので安心して欲しい。
というかオーガポンの体温が心地よくて、一緒に眠ってしまいそうなのだ。
「ぽにー…、ぽにー…」
「―――」
やはり眠いのを我慢していたのだろう、オーガポンはすぐに寝息を立て始めた。
さて、それではこちらも寝るとしようか。彼女の寝顔を見ていたい気持ちもあるが、子守歌のような寝息に抗えそうにない。おやすみ、オーガポン。
「ぽに、ぽにおー」
「僕も大好きだよ、オーガポン」
そして二時間が経って、現在は九時すこし前、自分もオーガポンもどちらもバッチリ起きている。しかし未だにベッドの中で、抱き合ってイチャイチャしているのだった。
もちろんオーガポンに寝不足の心配はない、今回は一時間ほど先に起きて確認している。睡眠不足はお肌の天敵、主人としてはしっかりと見てあげないと。彼女の寝顔はとても可愛かった。
だけどいい加減、そろそろ起きないといけない。いくら休みで、しかも両親が出かけているからといって、いつまでもベッドの中というのは不味い。渡邊さんも起きてこない事を心配して見に来てくれている。
その時はオーガポンが気持ちよさそうに寝ていて、そんな彼女と抱き合っている姿を見て頷いてくれた。しかしこれ以上は彼女に迷惑をかけてしまうだろう、朝食の用意などもあるのだから。
それに他のポケモンの家族たちも寂しがっているはずだ、オーガポンと一緒にみんなに元気に朝の挨拶をしよう。
「オーガポン、そろそろ下に行こうか」
「ぽに…」
もう少しベッドで甘えていたいらしいオーガポンが残念そうな顔をする。しかし安心して欲しい、甘い時間はまだまだ終わらないのだ。
「お腹すいたなー。大好きなオーガポンに、アーンしてもらいたいなー」
「ぽ、ぽに!ぽにおーん!」
主人のお願いに、元気に鳴き声を上げるオーガポン。可愛らしく気合を入れている姿に、口元が緩んでしまう。
早く行こうと言うかのように、嬉しそうに手を引っ張ってくる彼女と一緒に、みんなの元へ向かうためにベッドから起き上がるのだった。
「ごめんね、みんな。もう少しだけ待っててね」
「カニャン」
大事な話があるとポケモンのみんなに呼び掛けたのだが、まだ朝ご飯を食べ終えていないのだ。急がなくてもいいとも言ったのだが、もう全員ソファーの周りに揃っている。
「ぽにおーん」
「ユキィー」
現在オーガポンとユキメノコに挟まれながらソファーに座り、二匹から朝食のパンをアーンしてもらっていた。
みんなを待たせてしまって心苦しいが、もう少し続けさせて欲しい。
オーガポンにはこちらからお願いした手前、もういいなんて言って嬉しそうな彼女の顔を曇らせたくない。
ユキメノコは一緒に寝る順番を変わってもらっていて、そんな優しい彼女にもこのままアーンを続けさせてあげたいのだ。
この時間をもう少し堪能していたい、そんな気持ちももちろんあるが。
「…お昼ご飯も誰かにしてもらいたいなー、誰かいないかなー」
しかし二匹だけというのは羨ましそうに見ている皆に悪い、昼ご飯の時にも別の子にお願いしよう。
そう思ったが止めとけばよかったかもしれない。笑顔で立ち上がるマスカーニャと、エースバーンにルカリオ。テブリムとポニータもボールの中で震えているし、全員分はさすがに多い。
遅い朝ご飯のあとでは消化しきれていないだろうし、それではあまり入らないと思う。
もちろん嫌な訳ではない。とっても嬉しいし、みんなのためなら頑張って食べる。だが顔が引きつってしまうのは許してほしい。
でもポニータは無理じゃないかな。満足するまでアーンしてあげるから、それで勘弁してね。
「ありがとうね、オーガポン、ユキメノコ。美味しかったよ」
「ぽにお!」
「ユキ!」
「そうだね、またお願いしようかな。今日じゃないよ?別の日ね」
二匹が満足するまで食べたのでお腹が少し苦しい。またしたいと言うかのように鳴いてくれるのは嬉しいが、今日は他の子がしたがるので別の日にしてもらいたいのだ。
アーンの順番はあとで決めるとして、今は集まってもらった皆に話をするとしようか。
両親は今は出かけているし、妹とバウちゃんは渡邊さんに大事な話があると伝えて一緒に離れてもらっている。別に聞かれて不味い話をするつもりはないが、自分と彼女達だけの方が話しやすいのだ。
「それでは、第一回レイモン会議を始めます」
レイとポケモン達の会議、略してレイモン会議。レイポケ会議の方がいいだろうか。まあ不評だったら後で変えればいい。
「僕はみんなの事が大好きだよ」
「カニャン…」
マスカーニャの目を見たタイミングで言ったため、彼女が照れてしまった。
その顔はとても可愛い、抱きしめていっぱいナデナデしたい。だが今は我慢だ、大事な話を続けさせてもらう。
内容は、みんなに与えていた不平等について。オーガポンの様子を見て、話さなくてはと思ったのだ。
「この言葉は嘘じゃないよ。今までみんなを同じように大事にしてきた」
「カニャ」
「それでも、どうしても同じように出来ない事もあった」
学校で戦えるユキメノコと、今まで出番のなかったオーガポンなど、他にも様々な場面で平等にしてあげられない事もあった。
「今までみんなには不安を与えていたと思う、ごめんね」
「バース!」
「ありがとう、エースバーン。でもいいんだ」
エースバーンは否定の鳴き声を上げてくれるが、彼女だってオーガポンと同じく、最近まで戦えなくて不安に思っていただろう。
彼女が我が家に来たのは二番目で、マスカーニャとほとんど同じタイミングなのだから。
「それに試験も厳しくなるだろうし、簡単には勝てなくなってくる」
「カオンッ」
「みんなを出してあげたいけど、戦い方の違いで出番が偏ってくると思う」
昨日のようにタイプ相性のいい試験場を選んでも怪我をしてしまう。相手も強くなってくるし、戦いなのでそれは仕方のない事だ。しかしそれでも、なるべく被害は少なくしたい。
そのためには、これまで以上に気を付けて、戦う子を選んであげないといけない。どうしても出番は偏ってしまうだろう。新しい子も増えてくれば、なかなか戦えない子も出てくるはずだ。
「だけどそれは、嫌いで出番が少ないわけじゃないから」
「ぽにおー」
「そんなことは絶対にない、みんなの事は大好きだよ。不安に思わないで欲しいんだ」
隣に座っていたオーガポンが抱き着いてくる。そんな彼女を撫でながら、真剣な表情のみんなを見回し、想いを込めて話を続ける。
「それでも不安に思ったときは教えて、全力で応えるから」
「カニャン」
マスカーニャが鳴き声を上げると、それに続き他の子も元気よく鳴く。みんな嬉しそうに微笑んでいて、そんな彼女達の表情から主人への信頼が感じられて、嬉しくて泣きそうになってしまう。
「ポニータも安心してね、戦いたくなくても嫌いになったりしないから」
「―――」
ポニータの表情はボールに入っていて見えないが、戦いの話をしていて不安に思っていただろう。
だが安心して欲しい。ポニータを無理に戦わせることはしないと我が家に来た時から決めているし、そんな事で嫌いになんてなりはしない。
嬉しそうに震えるポニータのボール、どうやら安心してくれたようだ。
「マスカーニャもごめんね」
「カニャ?」
「最初の試験場で少しだけしか戦えなかったでしょ?」
「カニャニャ」
マスカーニャは二回目の試験の時の一回しか戦っていない。テブリムも少ないが、彼女は二匹目の途中まで一応は戦っている。この中で戦った回数がオーガポンの次に少ないのは、ポニータを抜けばマスカーニャなのだ。
気にするなとでも言うかのように首を振っているが、少しは思う事はあるはずだ。
「次の試験はオーガポンに頑張ってもらおうと思ってたけど、マスカ―ニャもいいかな?」
「カニャン!」
「ぽにお!」
胸を叩き鳴き声を上げるマスカーニャ。やはり戦いたかったのだろう、その表情はとても嬉しそうだった。オーガポンも試験に出れると知って、気合を入れている。
「戦いだけじゃなくて、他のどんな事でも教えてね」
戦い意外でも思う事はいろいろ出てくるだろう。
もちろん皆に不安を与えないように注意はするが、完璧に出来るなんて決して言えない。彼女たち自身にも教えてもらいたいのだ。
「みんなからは何かあるかな?」
「―――」
「それでは、これで会議は終わりです。みんな、これからもよろしくね」
どうやら皆からは議題にしたいほどの話はないようだ。それなら会議はこれで終わりとしよう。何事もなく終わって良かった。
「バス、エスバース!」
会議が終わった瞬間、エースバーンが勢いよく立ち上がった。
彼女はテーブルを回ってこちらに近寄り、目の前に置かれていた何も乗っていない皿を手に取り、ニコニコ笑顔で鳴き声を上げる。
その顔を見れば一目瞭然、彼女の言いたいことは分かるのだった。
「そっか、エースバーンがアーンしてくれるんだね」
「バス!」
「でもごめんね。お昼までまだ時間があるから、もう少しだけ待ってね」
お昼ご飯をアーンしたいエースバーン、しかしもう少しだけ待ってほしい。まだ時間はそんなに経っていないのでお腹は減っていない。それに昼まで少し時間があるのだ。
「カオン!」
「バ、バース…」
「ユキ、ユキィ」
「そうだね、今のうちに順番を決めようか」
抜け駆けは許さないと鳴き声を上げるルカリオと、もう一回したいらしいユキメノコ。他のみんなも真剣な表情でこちらを見ている。
テブリムとポニータもボールを震わせ様子を伺っているし、これは簡単には決められそうにない。
嬉しいのは間違いないのだが、少しだけ悩ましい。みんなを平等にというのはとても難しい事なのだった。