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今日は金曜で月テストの最終日、現在は一時間目の国語の時間。
目の前にある問題用紙の解答欄は全て埋められている。見直しても特におかしな所はない、百点満点は間違いなしだろう。
先生に怪しまれないよう注意して周りを見てみれば、紗更も問題を解き終えたようで、筆記用具を机に置いている。ピースサインを送れば、彼女も返してくれて、そのまま小さくおててフリフリ。
うむ、とっても可愛い。テスト中なのに和んでしまう。表情が崩れないように注意してこちらも小さく手を振り返した。
「先生に見つかるわよ。イチャイチャするのは休み時間にしなさい」
「ち、ちがうよー」
おっと、後ろからは今のやり取りが見えていたようだ。町田が注意してくれた。確かにテスト中にすることではない、反省しなくては。
幸いハルカ先生は少し離れた場所で生徒たちの様子を見ている。この距離なら怪しまれてはいないだろう。
だが念のためテスト用紙を裏返しておく、問題は解き終わっているとアピールだ。これ以上声を出すつもりはないが、カンニングを疑われたくはない。
しかしやることがないので暇である、テストは既に何回も見直しているのだ。時計を見れば終了時間まで残り五分少々、もう少しの辛抱のようだ。
「ぐ、うぅ…覚えたろ…思いだせ…」
そんな時、通路を挟んだ隣の席で高貴が唸っていた。
何やら彼は覚えたはずの答えが思い出せないようで、頭からひねり出そうと必死に唸っている。
分からない問題は後回しにした方がいいと伝えてあるし、暗記もテスト前に確認した時は問題なかったので、目標点数には届いているだろう。
だが用心のために少しでも点は取っておいた方がいい、ケアレスミス等もあるだろうから。残り時間はあまりないが頑張って欲しい。
「はい、そこま―――」
「あッ、あぁぁっとぉ、…セーフですよね?」
「…セーフでいいから、筆記用具を机に置いてね」
ハルカ先生の終了の合図と同時に、急いで手を動かす高貴。合っているかは分からないが、ギリギリで問題を解けたようだ。先生に認められたようで良かった。
「テストを前に回してね」
後ろから回ってきた問題用紙を、自分のものと一緒に先生に渡す。
他の生徒たちの分を回収しにいった彼女の背中を視界の端に捉えながら、机に突っ伏している高貴に話しかける。
「どうだった?コウキくん」
「二つ書けなかった…」
「それくらいなら大丈夫だよー」
「そ、そうだよな!二つなら大丈夫だよな!いやー、安心したわー!」
「分かんないわよ?名前を書き忘れてたり。…ちょっと、大丈夫よね?」
「えッ、まッ、嘘だろ!?…いや、書いた。絶対だ!」
よかった、名前の書き忘れで目標を達成できない何て事態にはならなそうだ。絶対と言っているのだし、書いたのは間違いないのだろう。
二問だけ問題を解けなかったようだが、それくらいなら配点が高かったとしても目標には届くはずだ。
「それじゃあ少し早いけど、これで国語の授業は終わりね。委員長、号令をお願い」
「はい。起立」
一つの授業は四十五分で、テスト時間は四十分。用紙回収などの時間もあるので早いと言っても数分だ。
それでも次のテストの確認があるので、高貴にとってはその数分はとても大事な時間だろう。
委員長の号令により、我がクラスの生徒全員の声が重なる。
挨拶を聞いたハルカ先生は、テスト用紙を手に持って扉から出て行った。
「国語は大丈夫そうだな」
「多分。いや、絶対に大丈夫だ」
「それならよかった。あと一つだ、気を抜くなよ?」
そうして先生が居なくなると、少し離れた席の相田もこちらにやってくる。彼も高貴の事が心配だったのだろう。
「テスト、午前午後で分けてくれればいいのにな」
「昼休みにテストの確認出来たらいいよね」
確かに須田の言うように、昼休みに問題の確認ができたら楽だったろう。小休憩では時間が短すぎる。
今日の午後はバトルの授業があるので、午前中がテストになるのは仕方がないのだが。
ポケモン関係の授業の多くは纏まった時間が必要なので、午前か午後のどちらかが潰れてしまう。そして我がクラスでは金曜日にはほぼ毎回、何かしらのポケモン関係の授業が入っているのだ。
月テストは金曜に行われるので、昼を挟んで行われることは今後も恐らくないだろう。
「分かるけど言っても仕方ないでしょ。それよりあんたは理科の見直ししときなさい」
「おー…」
せっかく授業が早く終わったのだ。決まっている時間割の事を話すより、今は次のテストに備えた方がいい。
午後にはポケモン達との楽しいふれあいの時間が待っている。それを励みにして頑張って乗り切ろうではないか。
「あー…頭に入んない…」
「おい、夏木。燃料切れが早すぎるだろ」
「あ、チャイムなったよー。頑張ってー、なっつん」
どうやら高貴は国語のテストだけで脳の栄養を使い切ったようだ。虚ろな目で理科の教科書を眺めている。
チャイムも鳴ってしまって、テストまでの残り時間は十分しかない。最後のテストなのだ、高貴には頑張って欲しい。
「えっと、夏木くん。これ食べる?」
「んお?貰っていいん?」
「うん、いいよ。頭を使った時は甘いものがいいみたいだから」
とそんな時、諸岡が小さめの菓子袋を手に話しかけてきた。どうやら中身は甘いもののようで、脳を酷使したらしい高貴には、糖分接種になるのでありがたい。
ちなみにこの学校では休憩時間に限り、軽い飲食を許可されている。
私立小学校なのでここの生徒は近くに住んでいる者ばかりではない。遠方から通っている者も多く、そういう子達は朝ご飯が早くなってしまうのだ。それではしっかり食べたとしても昼まで持たない子も出てきてしまう。
ポケモンだって我慢出来ない、人間以上に食べる子なんて当たり前にいるのだから。
そういう事情が考慮されて飲食を許されているのだ。
もちろんゴミの処理はしっかりとしないといけないが。
「それ、たべモングミでしょ?CMが新しくなってたね」
「うん。チルチーがあの踊りを気に入って、少し前からこれをあげてるの」
たべっこモンスターグミ。デフォルメされたポケモン達の形をしたグミで、ロングセラーの大人気商品だ。ポケモンと一緒に楽しく食べようというのがコンセプトで、人間もポケモンもどちらも食べられるように栄養が整えられている。
最近CMが新しくなり、可愛らしいポケモン達が楽しそうに躍るというその内容に、こちらの心が躍ってしまう。
我が家のポケモン達にも大人気で、みんなと一緒にテレビの前で楽しく舞っている。
以前の諸岡は別のお菓子を持って来ていたと思ったのだが、どうやら彼女は相棒のチルチーちゃんのために買ってあげたようだ。
「ありがとな、ロカちゃん!」
「ううん。みんなも食べる?」
「それじゃあ一個もらうね」
友人達の手のひらの上に、袋を傾け軽く振る諸岡。そんな彼女の様子を見ていると、CMのメロディーが頭の中で再生される。
「みんなーは、どんなー子が、好きなーんだい」
「あのCM可愛いよねー。ピーちゃんがよく踊ってるんだー」
「うちの子達もだよ。僕も一緒に踊ってる」
「白雪も踊ってるのか…」
「うん、楽しいよ。相田君もどう?セイくんも喜んでくれるよ」
「いや、俺はいい」
みんなあんなに楽しそうに踊っていたのだ、おやつで買ってあげたら喜んでくれるだろうか。いやしかし、間食は栄養バランスが偏らないだろうか。とても悩む、帰ったら渡邊さんと話し合おう。
「ほら、補給は十分でしょ。教科書読みなさい」
「おう!」
ポケモンも食べられるものなので糖分は控えめだ。それでも栄養補給は出来ただろう。
最後のテストだ、頑張ろうねコウキくん。
「おつかれー」
「おつかれレイレイ!」
理科の時間が終わり、これで全てのテストが終了だ。隣の高貴に声をかければ、彼の表情は明るかった。どうやら今のテストに相当な自信があるらしい。
今回の理科のテストは思ったより易しかったので心配はしていなかったが、目標を達成できそうで良かった。
「オレ、理科が得意だったみたいだ。絶対に百点取った」
「あのね、今回の理科は…。ううん、何でもない。おめでとう、なっつん」
「ありがとー、ママちゃん!みんなもな!」
クラスのほぼ全員が高得点のテストだろうが、高貴には言わなくていいだろう。彼に自信がついたなら良いではないか。
「次はレイレイだな!頑張れよ!」
「頑張ってねー、レイくん!」
友人達が次は僕の番だと応援してくれる。実は次の日曜日に六回目の認定試験を予約しているのだ。
どの子を出すかは決めているし、試験場も相性を考えて選んだ。油断するつもりはないが、彼女達がいて不合格になる事はまずないだろう。あまり緊張などはしていないが、みんなに応援してもらえるのはとても嬉しい。
「まあ、なんだ…。頑張れよ、応援してる。……笑うなよ」
「ごめんね、嬉しくて。みんなありがとう、絶対に受かってくるよ」
特に相田。
彼から応援される事なんて今まで無かったので、ついつい表情が緩んでしまった。
「今回は応援に行けないの?」
「えっと、前回とは違って屋内だから…」
別に屋内だからといって応援出来ないという事はない。実際に行ったことがないので分からないが、施設的に見学用のスペースはあると思う。
無関係の者なら入れるかは怪しいが、友人達だと説明すれば入れてはもらえるはずだ。
だが今回の試験では友人達の応援はなしで受けたいのだ。
「そっかー、それじゃあ仕方ないねー」
特に紗更には、あまり試験中の姿を見て欲しくない。
今回の試験場は屋内プール、スイミングスクールの施設内で行うのだ。
案内によると試験中は濡れてもいいように水着に着替えるようで、専用の物を一式貰えるらしいのだが、その水着に問題があった。
ブーメランパンツ。
普通の服で戦う姿ならいくら見られても構わないが、際どいあれを履いている姿は出来れば見られたくないのだ。