ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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三十五話

「準備は出来てるー?」

 

 いよいよ始まる六回目の認定試験、試験官は目の前の水着姿の綺麗なお姉さん。

 前段階のテストを担当してくれた彼女が、バトルの相手もしてくれるようだ。

 

「すみません先生、質問いいですか?」

「何かしらー?」

「ポケモンに道具を持たせてもいいですか?」 

 

 テスト後の小休憩中に戦う準備は終えているのだが、聞きたいことが一つだけある。それはポケモンに『どうぐ』を持たせてもいいのかだ。

 この試験にはオーガポンに出てもらうつもりなのだが、彼女はお面をつけて戦うのだ。

 なくても戦えはするだろうが、彼女には万全の状態で戦ってもらいたい。

 

「大丈夫よー、公式と同じルールだからねー」

 

 試験場なのだから大丈夫だろうと思ってはいたのだが、仮に禁止されていてそのせいで不合格になっては堪らない。

 そう思い確認したのだが、どうやらここも公式ルールを採用しているようで良かった。

 

 この世界の公式ルールでは道具の持ち込みを許可されている。

 ポケモンの中には武器を持っている子もいるし、そういう子は持ち物を放したがらない。

 生態にも係わってくるので、そういう子達に合わせてルールが作られたのだろう。

 

「質問は他になーい?」

「はい、ありません」

「それじゃー始めましょーか」 

 

 コートの反対側に歩いて行く試験官のお姉さん。際どい水着からおしりのお肉が少しだけはみ出している。

 視線を気取られないように注意して、しかししっかりと目に焼き付ける。

 足を前に出すたびに左右に揺れる形のいいおしり。一緒に揺れている水着姿に少し不釣り合いな、ベルトに取りつけられたボールホルダー。

 中には六個のボールが入っていて、今からあの中の三匹と戦うのだ。

 

 六回目の試験は前回までと変わらず三匹を相手に戦うのだが、どちらも事前に三匹を決める必要はない。

 最大六匹までなのは同じだが、それ以下であれば何匹つれていてもいいのだ。

 前回までの試験では状況が悪かったとしても出す順番しか変えられなかったが、今回はどちらも相手に合わせてポケモンを選べる。

 テストで出てきたフローゼルも、出るかもしれないし出ないかもしれない。戦闘の状況次第でいくらでも変わるという訳だ。

 

 そんなお姉さんと同じくこちらの腰元にも、ボールホルダーが取り付けられたベルトが巻かれている。ボールの数もしっかり六個で、みんなと一緒に戦うのだ。

 ポニータもお母さん達と一緒に見学席で応援してね。戦う事は出来なくても、力にはなっているからね!

 

 見学席に向かって手を振れば、ガラスの向こうでは母が微笑みながら小さく手を振り返してくれている。

 膝の上にはポニータのボール。揺れて落ちそうになったところを、母に慌てて押さえられている。どうやら元気いっぱいのようだ。

 瀬川さんや先程の少女達にその親御さんも見てくれている。

 みんなが応援してくれているのだ、絶対に合格して見せる。

 

 コートの反対側に着いた試験官のお姉さんが、こちらに向かって手を振っている。どうやらいつでも始められるようだ。

 オーガポンのボールに手を添えて、開始の合図を待ち構える。

 

「白雪くーん、いくわよー。六回目の認定試験、かいしー」

 

 ―――みんなが応援してくれてるよ!頑張ろうね、オーガポン!

 試験官の開始の合図に、両者が同時にボールを放る。

 

「ぽにおーん!」

「ペリリ!」

 

 光の中から飛び出て一声、やる気十分オーガポン!

 主人に磨いてもらった『いどのめん』をかけて、嬉しそうに左右に揺れている。

 対する相手が繰り出したのは、みずどりポケモンのペリッパー。この子が場に出てきたことで、静かに雨が降り出した。

 

 プールの高い天井付近から振ってくる雨。特性の『あめふらし』によって起きた現象だと分かっているのだが、雲もないのに不思議な光景だ。

 だがこれで相手のやりたいことは分かった。思い通りにはさせやしない。

 

「大きいのいっちゃってー」

「防いで、オーガポン!」

 

 ニードルガード―――

 雨が降っている事で絶対に命中する、ペリッパーの『ぼうふう』。

 しかし残念、オーガポンには届かない。彼女の前に生み出された棘付きの盾によって防がれてしまうのだった。

 

 直接攻撃ではないので、ペリッパーに棘によるダメージはない。

 しかしそれで構わない。これで相手の頭の中には直接攻撃は危険だと植え付けられた。

 

「ウッドホーンだ、オーガポン!」

「びゅんびゅん飛んでー!」

 

 『でんこうせっか』の速さで飛んでくるペリッパー。その勢いのまま大きなくちばしで、オーガポンに突撃!

 しかしそんな素早い攻撃も、オーガポンには大した痛痒を与えられていない。

 すかさず突き出されたオーガポンの角による反撃によって、ペリッパーはコート上に落ちてしまう。

 僅かに与えられたダメージも吸収効果で回復されてしまうのだった。

 

 守ってくれれば天候の残り時間を減らせたのだが、そう上手くはいかないようだ。

 原作と違いターン制ではないので、五手で雨が止むかは分からない。それでもそれくらいは降ると考えて、次の相手で時間を稼ぐとしよう。

 出てくるのは間違いなくあの子だろう。雨はまだまだ続くのだ、恩恵を捨てる理由はない。リベンジさせてもらうとしようか。

 

「次もお願いね、オーガポン」

「ぽにおー!」

 

 まだ戦えると知って嬉しそうに鳴き声を上げるオーガポン。

 クルクル回ったり飛び跳ねたり、そんな姿を見ていると、こちらまで嬉しくなってくる。

 

「もういっかいお願いねー」

「フロ、フロロロ!」

「ぽにー!」

 

 試験官の二匹目のポケモンは、思った通りフローゼルだった。テストでの結果からたやすい相手だとでも思っているのか、手を叩いて喜んでいる。

 確かにフローゼルは速い、特性の効果も合わせたら追いつくのは困難だろう。

 だがオーガポンだって速いのだ。水中では難しくても、コート上では問題ないのだと教えてあげようではないか。

 

「オーガポン、あれだよ」

「ぽに!」

 

 相手の特性は恐らく、いや間違いなく『すいすい』だ。だがそれはコート上においては雨が降っている間にしか効果を発揮しない。

 向こうからすれば天候を活かして攻撃技を選びたくなるだろう。

 しかし相手の頭の中には先ほどの『ニードルガード』の件がよぎっているはず。

 フローゼルは特殊技を覚えていないだろうし、そうであるのならば使えるのは普通に覚える技の中には直接攻撃のものしかない。

 守られるどころかダメージを受ける、それは嫌だろう。

 だとすると、ここは無駄打ちさせようと変化技でくると予想する。その結果は―――

 

「スピードアーップ!」

 

 ―――予想的中、フローゼルは素早くオーガポンの周りを走り回っている。これは恐らく『こうそくいどう』だろう、段々スピードが上がっていく。

 ガードして欲しかったのだろうが、残念だがオーガポンは踊っている。『つるぎのまい』で攻撃力アップだ。

 

「オーガポン、一回守って」

「はしってー」

 

 ここで倒せば次の子に雨の恩恵を与えてしまう。一回守って時間を稼ぐとしよう。

 試験官のお姉さんも、時間稼ぎでこちらが守ってくる事は分かっているだろう。聞かれてしまっても問題ない、分かりやすさ重視でオーガポンにお願いする。

 

「今よー!冷え冷えで噛みついてー!」

 

 ガードが崩れるのを待っていた試験官の指示によって、フローゼルが飛び掛かってくる。指示の内容からこれは恐らく『こおりのキバ』だ、用心しておいてよかった。

 

 みずタイプの試験場なのだ、くさタイプへの対策はしていて当然だ。

 テストでフローゼルを見ているし、オーガポンのタイプも当てられていたので、こおり技を使ってくるだろうと『いどのめん』をつけてもらっていたのだ。

 

「オーガポン、ウッドホーンだ!」

 

 弱点ではなくなった不一致技だ、大したダメージにはなっていない。

 攻撃したことで動きの止まったフローゼルは、軽々と耐えきったオーガポンの角による反撃を受け、コート上に倒れてしまうのだった。

 

「強い子ねー。んー、雨は止みそうだし、どうしようかしらー」

 

 プールの天井を見て見れば、確かに雨は弱まってきている。

 だが五手ずつ行動はしているのに完全に止んでいないところを見ると、やはり原作とは違うのだろう。

 

「あら、完全に止んじゃったわねー」

 

 と思ったのだが、雨は完全に止んでしまった。どうやらそこまで大きな差はないようだ。

 だがそれなら丁度いい。人前で濡れるのを嫌がるマスカーニャを出してあげられる。

 雨を嫌がって戦いたがらない何てことはないが、出来れば雨が降っていないときに出してあげたいのだ。

 

「頑張ってくれてありがとうね、オーガポン。ボールの中で休んでいてね」

「ぽにおー」

 

 笑顔で頷くオーガポン。

 気持ちよく戦えたからか特に嫌がるような事はなく、素直にボールに戻ってくれた。

 

「あら、他の子と交代するのねー」

「出してあげたい子がいるので」

 

 今までマスカーニャには我慢させてしまっていたのだ、この機会に楽しんでもらいたい。

 前の時と一緒で戦う相手は一匹だが、今回は六回目の試験で育っている子が出てくるはず。遠慮せずに思いっきり技を出してほしい。

 いや、前も遠慮をしている様子はなかったが。

 

「悩むわねー。んー、それじゃー、この子で」

「お願いね、マスカーニャ!」

 

 試験官のお姉さんに合わせて、マスカーニャのボールを放る。

 バトルコートに現れた彼女は、嬉しそうな笑顔をこちらに向けてくれた。

 

 対する相手のコートの上、光の中から飛び出す影。試験官の三匹目のポケモンは、みずうさぎポケモンのマリルリだった。

 もしかしてとは思ったが、本当にこの子が出て来るとは。特訓していてよかった。

 

 以前から考えてはいたのだ。マスカーニャに戦ってもらう時、マリルリが相手だと読み合いが難しいと。

 マリルリの夢特性は『そうしょく』で、仮に持っていたとしたら『トリックフラワー』は無効化されてしまう。

 この世界ではまず居ないだろうが、絶対にとは言えないのだ。

 そしてそれを嫌がって別の技を選ぼうにも、他の三つは半減されてしまうし、『トリプルアクセル』なんて特性が『あついしぼう』だったら更に半減だ。

 だからといって他の選択肢はないのだ、『はたきおとす』か『かわらわり』で少しずつ削るしかない。

 しかしそれでは、特性『ちからもち』による二倍の威力で攻撃されるという可能性が出てきてしまう。

 

 得意なみずタイプでこれは不味い。ただでさえマリルリは可愛くて人気があるのだ、大ヒット映画に出ている事で更にトレーナーが増えることが予想される。

 そう思いマスカーニャに頑張ってもらっていたのだが、本当に良かった。

 

「マスカーニャ、あれお願いしてもいい?」

「カニャン」

 

 任せてくれと言うかのように、カニャンと鳴いてくれるマスカーニャ。

 その返事がとても頼もしい。

 

「しっぽで殴ってー!」

「マスカーニャ!」

 

 こちらに向かい走ってくるマリルリ。指示内容を考えれば、これは『アクアテール』だろう。

 なかなか威力の高い技だし、タイプが一致している。相性がよくても特性によっては、とんでもないダメージを負ってしまう。

 だがそれは技が決まればの話だ。マスカーニャが大人しく食らう訳がない。

 

 シャドークロー―――

 マスカーニャの五つ目の技。

 闇を纏った彼女の爪が、反応できてないマリルリの横を通り抜けざまに振るわれる。

 

 原作とは違いこの世界では、ポケモンは技の数に制限を受けていない。

 覚えている技を錆びつかせないように訓練したり、主人との意思の疎通などで沢山の技を使いこなすのは大変だが、出すこと自体は出来る。

 この『シャドークロー』もわざマシンで覚えてもらった後は、他の技と一緒に錆びつかせないよう我が家の庭で素振りをしてもらっているのだ。

 

 マスカーニャの特性は『へんげんじざい』で、使った技のタイプに変われる。

 ゴーストタイプの技なのであくタイプと範囲が被るが、弱点が三つ無くなるし、『かくとう』なんて無効化だ。

 マリルリの弱点を突くことは出来ないが、マスカーニャの強さがあれば等倍でも問題ない。それよりも耐性を増やす事を選んだのだ。

 現にマスカーニャの爪をその身体に受けたマリルリは、起き上がることが出来ずにバトルコートに倒れ伏してしまっている。

 

「立てそうにないわねー。お疲れ様、これでバトルは終わりよー」

「ありがとうございました」

 

 立ち上がることが出来そうにないマリルリの姿を見て、試験官のお姉さんはバトル終了の合図を出す。

 そんな彼女の言葉を聞き、マスカーニャをボールに戻すことにした。

 戦ってくれてありがとうねマスカーニャ、とても綺麗だったよ。またお願いね。

 

 

 

 

 

 

「白雪くん。今の戦いで少し聞きたいことがあるんだけど、いいかしらー?」

「はい、何でしょうか?」

「これは試験結果に係わるから慎重に答えてねー」

 

 マリルリをボールに戻して歩いてきたお姉さんは、そんな事を言う。

 試験結果に係わる質問とは何だろうか。先程の戦いで何か問題のある行動をしただろうか。

 上手く戦えたと思っていたので、思い当たる事が特にない。

 これで不合格になるかもしれないなんて、緊張してしまう。

 

「今の、…えーっと、猫みたいなポケモンだけど。くさタイプよね?」

「はい、そうです」

「くさタイプの技は覚えているわよねー?」

「えっと、はい。覚えています」

「どうして使わなかったのー?」

 

 なるほど、みずタイプのマリルリに、相性のいい一致技を使わなかったことを不思議に思っているのか。

 

「えっと、ポケモンにはくさタイプの技を無効化する子がいるんですけど」

「あー、確かにいるわねー」 

「ここはみずタイプの試験場なので。くさタイプへの対策で、もしかしたらと思ったんです」

 

 夢特性のポケモンは、普通の手段では手に入らない。

 絶対にとは言えないが、恐らく野生で出てくることはないので、『そうしょく』を持っているマリルリがいるとは説明できない。

 しっかりと説明したいのだが、そういう訳にもいかない。どこで知った情報なのだと聞かれても答えられないのだ。

 

「ちゃんとした理由があったのねー」

「用心し過ぎかなとは思ったんですけど…」

「ううん、用心は大事よー。理由と結果がちゃんとあるなら、問題なんてないわよー」

 

 よかった、全てを話すことは出来なかったが、試験官のお姉さんには納得してもらえたようだ。

 これで不合格なんて事にはならないはずだ。

 

「ごめんなさいねー。六回目の試験だから、厳しくしないといけないの」

「いえ」

 

 この試験に受かれば、一般道などでもポケモンを出すことが出来る。その審査なのだから厳しくなるのは当然だ。

 何しろポケモンは力が強い。もし間違った指示をして、事故なんか起こしてしまったら大問題だ。

 そのような問題が起こらないように、受験者の行動で疑問に思ったことは追及するようにしているのだろう。

 

「他は大丈夫そうだし、試験は合格でよさそうねー」

「ありがとうございます!」

 

 やった、これで六回目の認定試験は()()合格だ!

 まだやることは残っているが、今はここの試験に受かったことを喜ぼう。

 見学席を見て見れば、みんなが喜んでくれている。音は聞こえていないが、動きで合格したことが分かったのだろう。

  

「早くお母さんに会いたいかもしれないけど、先にシャワーを浴びて行ってねー」

「あ、はい。分かりました…」

 

 微笑まし気な表情をしているお姉さん。

 母に合格したと言いに行きたいのは確かだが、態度に現れていただろうか。少し恥ずかしい。

 まあいい、家族仲が良い事に問題なんて何もないのだから気にしない事にしよう。

 今は言われた通り、シャワーを浴びに行くとしようか。

 

 

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