ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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いつも応援ありがとうございます。


三十九話

 月曜日の最初の授業はポケモンバトルから始まった。

 現在、体育館のコート前。いつもの友人達と一緒に、壁を背にして座っている。

 視線の先には町田とその相棒のふわわんちゃんがいて、クラスメイトと戦っている彼女達を、みんなで応援しているのだ。

 

「ふわわんちゃん凄いね」

「テリリーン」

「テブリムのお陰だって喜んでくれてたよ」

 

 

 もちろんポケモン達もいて、みんなの周りでそれぞれ応援している。自分の足の上にもテブリムが座っていて、元気に鳴き声を上げている。

 人が多くて辛いかもと心配していたが、応援に夢中で気になっていないようで良かった。

 

 いつもなら何もなければユキメノコに出てもらっている所だが、今日は理由があってこの子に出てもらっている。

 なんとふわわんちゃんが、とうとう『めいそう』を覚えることが出来たのだ。

 

 テブリムにはふわわんちゃんの目の前で、授業中に何度も実演してもらっている。師匠としてもお友達としても、彼女が技を使っているところを見たいだろうとそう思ったのだ。

 

 そんなふわわんちゃんは現在バトルコートの上で技を積み、敵の攻撃に耐えている。相手は特殊技を使う子なので、硬くなった今の彼女には大して効いていないようだ。

 恐らく物理技も覚えてないだろうし、このまま何事もなく試合は終わるだろう。

 テブリムもお友達が頑張っている姿を見て、とても嬉しそうだ。

 

「すごいよねー、ふわわんちゃん。相手の攻撃、ぜんぜん効いてないみたい」

「だね。もともと特殊攻撃に強い子だけど、今は更に硬くなってるよ」

「あの技って特殊攻撃も強くなるんだよね?」

「そうだね、一度に二つ上がるから」

「すげーよな!ゴウタにも覚えさせるか…?」

「ゴウタくん、別の技を覚えてるんじゃ?」

「そうだよなー…、せっかく覚えてるんだし、やっぱこのままいくか」

 

 どうやらゴウタくんに『めいそう』を覚えてもらうのは止めたようだ。

 彼はあの技を覚えることが出来ないので、その事をどう伝えようかと少し悩んでいたのだが、その必要はなさそうで良かった。

 

「わたしは試してみようかなー。ピーちゃんに良さそう」

「え、ピーちゃんに覚えてもらうの?」

「うん。えっと、ムリそうかなー…?」

「いや、そんな事はないよ」

 

 ピーちゃんは既に『ちいさくなる』を覚えている。積み技が二つになるのではと思ったが、別に技数に制限はないのだ。うちのマスカーニャも五つの技を使っているのだし、使いこなすのは大変だが特に問題はなかった。

 それにデメリットもあるのだし、使い分けが出来ていい良いのではないだろうか。

 

「でも先にトライアタックを覚えた方がいいんじゃない?同時は大変だよ」

「むーん、そうだよねー…」

「どう?上手くできそう?」

「ピハー…」

「もう少しだと思うけどー…」

「何かあったら言ってね。できる事ならなんでも手伝うから」

「ありがとーね、レイくん」

「ピハッピハー」

 

 同時進行で技を覚えるのは大変だろう。今は『トライアタック』を覚える事に集中した方がいいと思う。

 自分に出来る事なら何でもするつもりなので、何かあったら遠慮なく言ってほしい。

 

「終わりそうだな」

「ほんとだー。ママちゃん、満足そうな顔してる」

「いつもあの目なら怖くないんだけどな」

「…ま、町田さんは怖くないよ」

「いやいや。スダーンも昔は怖がってただろ」

 

 今まで何も言わずに試合を見ていた相田。彼の言う通り、もうすぐ決着がつきそうだ。

 同じ光景が続いていたので少しだけ目を離していたが、見れば満足げな顔をしていて、どうやら町田は満足したらしい。

  

 町田は相棒が新しく技を覚えたのが嬉しかったのだろう。既に相手を倒すには十分なはずなのに、更に技を積み続けていたのだ。

 上昇値が実際に目に見える訳ではないので別におかしな事ではないし、あの技を使うのは今日が初めてで、見ていて楽しくなってしまったのだろう。気持ちは良く分かる。

 『めいそう』を繰り返しお願いしている時の彼女の笑顔は怖かったが

 

 そうしてこちらが心の中で震えている間にも、目の前の試合は終了に近づいていく。

 対戦相手のポケモンに向かって、技を出すようふわわんちゃんにお願いする町田。 

 ふわわんちゃんの『マジカルシャイン』。最大威力まで高まった技による虹色の光によって、相手の子は倒れてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

「ママちゃん、おかえりー」

 

 先生に挨拶してからこちらに戻って来た町田。穏やかな表情をしている彼女を、みんなで迎え入れる。

 

「ユッキー、テブリムちゃん、ありがとうね。あの技、最高だったわ」

「どういたしまして。気に入ってくれてよかったよ」

「テリリー」

 

 今の町田は本当に落ち着いているようだ。テブリムを見ても穏やかな表情のままだし、この子も特に辛そうな顔をしていない。この様子なら、出してあげたままでも大丈夫だろう。 

 

「ふわわんもお礼を言おうね」

「プーイッ、プイプーイッ」

「どういたしまして。頑張ったねふわわんちゃん、凄かったよ」

「テリリーン」

 

 町田のボールから飛び出すなり、こちらの足の上に飛び乗って来るふわわんちゃん。テブリムを巻き込み抱き着いてくる彼女を受け止め、優しく頭を撫でてあげる。

 こんなに喜んでくれるなんて、町田に技を教えてよかった。テブリムも嬉しそうに笑っている。

 

「まッ、まさみさん…。おめでとう、あの技すごかったよ」

「えっと、ありがとう…、きいつくん」

 

 おや?何やら須田が町田の事を名前で呼んでいる。先週の金曜まではいつも通りの呼び方だったと思うのだが、もしかして土日に何かあったのだろうか。

 町田も嬉しそうだし、初々しい感じがとても良い。

 彼女やふわわんちゃんだけでなく、須田も頑張っていたのだろう。

 

「全員終わったから、次は相田くんね。対戦相手は笠沼さん、二人とも前に出てきて」

 

 そうして心の中で彼らの青春に頷いていると、先生が全員に聞こえるように声を上げる。どうやら次の戦いは相田の番のようだ。

 

 授業で戦うのは五十音順だが、対戦相手は戦績が近い者から選ばれる。

 町田の後にもまだ他に数人の生徒がいるが、どうやら以前の戦いで選ばれていて、順番が最初に戻って来ていたようだ。

 

「俺みたいだな。行ってくる」

「頑張ってね、相田くん」

 

 セイくんを一度ボールに戻し、試合のために立ち上がる相田。

 だがそんな彼にどうやらお客さんのようだ。対戦相手の笠沼が笑顔で歩み寄って来るのが目に入る。

 先生の元へ歩き出そうとした相田も気付いたようで、彼女を待つために足を止めた。

 

「よろしくね相田くん、負けないからね」

「こちらこそ負けない。今日も勝たせてもらう」

「わぁー、自信あるんだね。寝ぐせがなければカッコよかったと思うよ」

 

 自信満々に言い放つ相田への、ふんわり笑顔の笠沼からの言葉での一刺し。試合前の挨拶かと思ったが、どうやら既に戦いは始まっていたようだ。

 

 だがその口撃にこちらまで巻き込まないで欲しい。髪が乱れていないか気になってしまうではないか。一緒に聞いていた須田も、不安そうな表情で髪に触れて確認している。

 

 いや、別に彼女にそんなつもりはないのだろう。相田に対して言っているだけで、こちらが勝手に不安に思っているだけだとは思う。

 だがそうだと分かってはいても、どうしても髪が気になってしまうのだ。

 

「レイくんは大丈夫だよー」

「本当、ササラちゃん?」

「うん、バッチリ!」

「テリリーン!」

「プーイ!」

 

 自分の髪は大丈夫かと触れて確認していると、紗更からのお墨付きが出た。テブリムとふわわんちゃんも頷きながら鳴き声を上げてくれているし、どうやら髪に乱れはないようだ。

 須田も町田に見てもらって不安を取り除いてもらったようだし、笠沼の口撃による被害は周りにはなかったようだ。

 

「……」

「あ、ごめんね…。そんな顔で見つめられても、わたしのタイプじゃないから…」

 

 キリッとした表情はそのままに、自分の頭の上で手を動かし寝ぐせを確認する相田。そこに繰り出される笠沼の追撃。彼女からの口撃はまだまだ続く!

 

 平静を装っているが、相田の背中からは動揺が感じられる。どうやら彼への被害は甚大なようだ。試合前の軽いやり取りにしては、ちょっと威力が高すぎやしませんかね。

 

「耳の後ろが少しハネてるだけだ!目立たないから気にすんな相田!」

「気付いてたなら教えてくれてもいいだろッ」

 

 高貴の言う通り、相田の寝ぐせは本当に目立たないものだった。

 残念ながら笠沼に目をつけられてしまったようだが、自分もこのやり取りがなければ気付く事はなかっただろう。

 高貴が言わなかったのも、恐らくあのくらいなら気にする程の事でもないと思っていたのだろうし、笠沼に見つかったのが不運だったのだと思うしかない。

 

「相田くん、先生が呼んでるよ?寝ぐせは良くても、遅れるのはみんなに迷惑がかかるよ?」

「ッ、…今行くッ」

「が、頑張ってね相田くん」

 

 先生に呼ばれコートに歩いて行く笠沼。

 そんな彼女に続く相田に、みんなで声援を贈る。

 これは気合を入れて応援してあげねばならない。女の子に身だしなみを駄目出しされるのは堪えるのだ。

 

「テブリム、まだ大丈夫そう?」

「テリリ!」

 

 辛そうならボールに戻ってもらおうかと思ったが、まだまだ大丈夫のようだ。応援するのが楽しいのか元気に鳴き声を上げている。

 そういう事ならこのまま一緒に相田を応援してもらおう。美少女の声援なのだ、彼も喜んでくれるはず。

 

「インチョー、何かあったんかな?」

「まだ月曜の午前中なのにね」

「まぁ試合で発散すれば戻るでしょ。相田くんには悪いけどね」

 

 今日の笠沼は少し不機嫌なようだが、普段の彼女は言葉に少し毒はあるが、優しくてとてもいい子なのだ。

 そうでなければ学級委員長という皆のまとめ役として認められていないだろう。クラスメイトの何人かから『インチョー』と呼ばれるくらいには、何年も務めているのだ。

 

 今週はまだ始まったばかりだが、恐らく何かストレスがかかるような事が起こったのだろう。出来れば早く元に戻って欲しいので、相田には悪いが発散相手になってくれる事を願う。

 セイくんには相性の悪い相手だが、相田は彼女の戦い方を知っているし、一方的な戦いにはならないと思う。気分転換にならない何て事はないはずだ。

 

「どっちが勝つかなー」

「難しいね。最初のあれが効かなければ、相田くんが勝てるとは思うけど」

「効いたらまずいな。勝てるように応援しようぜ!」

「むーん…、どうしよう。沼ちゃんも友達だしー…」

「両方でいいんじゃないの?わたしは、沼ちゃんも応援するわ」

 

 紗更は笠沼とも仲がいいので、どちらを応援するか迷っているようだが、町田の言う様に両方を応援してもいいと思う。

 今回は寝ぐせで傷ついている相田だけを応援するが、それがなければ僕も笠沼の事も応援していただろう。

 

「それでは二人とも、ポケモンを出してね」

「はい」

「分かりました」

 

 いよいよ始まるようだ。先生の指示に、二人が同時にポケモンを出す。

 相田のボールから飛び出したのは、もちろんリオルのセイくん。最近は主人とのコミュニケーションが取れているので、嬉しそうにしっぽを振っていて可愛い。

 

 対する笠沼のボールからは『ヒドイデ』のシーナちゃんが飛び出した。彼女は試合前だというのに、主人のように穏やかな顔で微笑んでいて、髪のような太い触手を振ってセイくんに挨拶している。

 

「始めるわね。バトルスタート!」

「行けッ、セイッ」

 

 先生の開始の合図に相田がセイくんに指示を出す。『でんこうせっか』で走るセイくん、先制攻撃で殴りかかる。

 他の技では半減されてしまうし、カウンターは笠沼の戦い方では今は使いえない。これしか選択肢がないのが辛いが他の技と威力はさほど変わらないので、等倍なだけで十分だろう。

 シーナちゃんは硬い子だ、生半可な攻撃では堪えない。それでもセイくんが素早く殴り続ける事によってダメージは積み重なっていく。

 

 これに堪らずシーナちゃん、『どくばり』をセイくんに向けて打ち出した。彼はその攻撃を避けることが出来ずに、太い針を体に受けてしまう。

 

「どうなった!今のは効いてるのか!?」

「効いて…ないみたい。苦しんではいないね」

「ヨシッ!」

 

 笠沼の戦い方は、まず初めに相手を毒にする。その後は『かみつく』で相手を怯ませたり、回復したりで時間を稼いで勝ちに行く。大技も持っているが基本はこれだ。

 

 怯みが期待できないセイくん相手なのだ。それを今までの授業で知っている笠沼は、もう一回毒を狙いたいと思っているはずだが、殴られ続けて被害が大きくなってきている相棒の姿を見てうかつに指示を出せないようだ。

 

「シーナちゃん!」

「今だセイ!」

 

 相棒が殴られ続けるのを嫌った笠沼の指示。『どくばり』を出すことは出来ないが、どうにか流れを変えようと大技を出すことにしたらしい。シーナちゃんはセイくんに向かって、水を纏わせた触手を振り抜いた。

 

 しかしシーナちゃんの技はクラスのみんなに知られている。相田ももちろん知っているので、セイくんに指示を出している。

 セイくんは、主人の指示を聞きカウンターの構えを取っていた。

 

 みずタイプの『アクアブレイク』。セイくんにとっては等倍だが、威力が高いので大きな痛手を負ってしまう。

 それでも彼は倒れる事はなく耐え抜いて、シーナちゃんに向けて倍のダメージを叩き込んだのだった。

 

「そこまで!この勝負は相田くんの勝ちね」

 

 セイくんの反撃を受け倒れて動かなくなったシーナちゃん。そんな彼女の姿を見て先生が試合終了の合図を出す。どうやら無事に勝てたようで良かった。

 

「やったな!勝ったな!」

「うん、勝ったね!」

「セイくん、凄かったねー!」

 

 最後の技にはヒヤッとしたが、セイくんも嬉しそうに相田に駆け寄っているし、痛みはあるようだが元気そうで何よりだ。

 相田もそんなセイくんの頭を優しく撫でてあげているし、彼らの仲が良いようで大変喜ばしい。

 

「キャ、ンキャ…」

「ど、どうしたッ、セイッ?」

 

 そうして友人達と彼らの勝利を祝っていると、何やら相田が焦ったような声を出す。

 見ればセイくんはふらついており、上手くバランスが取れていない様子。今の試合でのダメージによるものだろうか。

 もしかして気付かなかっただけで毒を受けていたのかもしれない。そうだとしたら早く治療してあげて欲しい。

 

「ンキャー…」

「セイッ!」

「大丈夫よ相田くん。おめでとう」

 

 とうとう立っていられなくなったのか、床に膝をついてしまうセイくん。そんな相棒の体を支えてあげようと相田が触れた瞬間、セイくんの体から光が溢れ出す。

 

 進化だ。

 光に包まれたセイくんの輪郭が、徐々に大きくなっていく。

 自分の時もクラスメイト達の時も、何度も経験しているが、ポケモンの進化の光景はとても神秘的だ。

   

 そうして変化が止まり光が完全に治まった時、そこに膝を着いていたのは、リオルからルカリオに進化したセイくんだった。

 

「セイくん進化できたね!」

「うん!かっこいいねー!」

「ゆっきーのルカリオちゃんで知ってたけど、結構違うわね」

 

 視線の先で感動からか相田に抱きしめてもらっているセイ君の姿。同じ種族だが、遠目からでも違いが結構分かる。

 うちのルカリオは、綺麗さと可愛さが同居していてとても美しいが、セイくんは大きくて凛々しい感じだ。いや、うちのルカリオにもカッコよさはあるし、セイくんにも可愛らしさは勿論あるが。

 

「進化ってすげーな。あんなに変わって」

「そうね…。次はあんたの番ね」 

「お、おお…」

「どうしたのよ?お父さんに石を買ってもらうんでしょ?今日テスト返ってくるわよ」

「いや、石はもう買ってもらった」

「え、テスト全部返って来てないのに?」

「ああ。先週のテストを見て大丈夫そうだからって、昨日一緒に買いに行った」

 

 もしかして高貴のお父さんはテストの点数に係わらず、石を買ってあげるつもりだったのではないだろうか。

 バトル以外の成績が悪い息子を心配して、勉強を頑張ってもらうために石を理由にしたのだ。想像でしかないが、もしそうだとしたらなんて良いお父さんなのだ。

 まだ数度しか会ったことがないが、高貴と一緒に石を買いに行って、微笑んでいる彼のお父さんの姿が想像できてしまった。

 

「良かったじゃない。なら何でそんな顔してるのよ」

「いや、進化させるつもりだったけど、良く分かんなくなってよ…」

「どういう事?」

「えっとな、見た目がすげー変わるだろ…?」

 

 なるほど、高貴の考えていることは分かった。原作でも何度も悩んだし、この世界でも経験している。気持ちは良く分かる。

 

「ゴウタなのは変わらないし、どうなるかは知っててカッコいいって思うけど…」

「あー、そうね…、わたしも分かるわ」

「今のゴウタが好きだからさ…その、よく分かんなくなって」

「ココハナ…」

 

 ゴウタくんやふわわんちゃんは、進化するのに特別な道具を必要とする。主人の意志で進化させるか決められるので悩んでしまうのだろう。

 

 ゴウタくんの一回目の進化は戦い終わってすぐだった。体にどんな悪影響があるか分からない進化キャンセルなんて、相棒を大事にしている高貴が出来る訳がないので、その時は受け入れて喜んでいた。

 だが今回は違う、自分で選べるのだ。

 

「すぐに決める必要はないし、ゆっくり考えようよ」

「でもよ、せっかく勉強おしえてもらって、急いで買ってもらったのに」

「そんなの気にしなくてもいいよ。納得できないまま進化する方がダメだよ」

 

 高貴とゴウタくん、彼らが自分達の想いで石を使わないと絶対に後悔する。

 勉強会を開いてまで急いで買ってもらったのに、すぐに進化させないのは悪いなんて、気にする必要はない。そんなことで文句を言ったりしないし、進化させないと彼等が決めたとしてもそれは変わらない。他の友人達も恐らく同じことを言うだろう。

 石を買ってくれた彼の父だって、息子を想ってくれているようだし、怒りはしないと思う。

 

「そうだね、そんな事気にしなくていいよ」

「成績が上がったなら別にいいわよ。点取れてなかったら、一回くらいは叩くかもしれないけど」

「そ、それは大丈夫!…悪い、少し考えてみる」

 

 石を使わないならそれでもいいし、使うならゴウタくんとの思い出を今のうちに作って欲しい。自分達のことは気にせずに、ゆっくりと時間をかけて。

 

「なんか少し暗くなってたな!相田を呼んでやろうぜ!」

「そうだね。せっかくセイくんが進化したんだから、いっぱい祝ってあげないとね」

 

 今もコートの中で、進化したセイくんを抱きしめている相田。そんな彼にみんなで声をかける。

 クラスの全員が自分を見ている事に恥ずかしくなったのか、相田はセイくんと一緒にこちらに駆け寄ってくる。気持ちはわかるが、新しい姿になったセイくんとの初めての思い出だ。大事にして欲しい。

 

「ありがとうな、セイ」

「キャオン!」

 

 恥ずかしがっていても、それでもしっかりと手を繋いでいる相田とセイくん。

 そんな彼らをみんなで一緒に、笑顔で迎え入れるのだった。

 

 

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