ポケモンが現れた世界に生まれて   作:ダダダッダ

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時間が一気に飛びました


六話

「レーくんは何がすきかな」

「ママがスキィ」

 

 2月の寒空の下、玲は母と一緒に家への帰り道を歩いていた。

 首には母お手製のマフラーを巻き、手袋をはめた右手を伸ばし、母と手をつないでいる。

 歩く速度は息子に合わせているため遅い。しかし、かかる時間を楽しむようにゆっくりゆっくり歩いていた。

 

「ありがとぉ、ママもレーくんが大好きよ。他に好きなものある?ママに教えてほしいな」

「んー、ポケモンがスキィ。ボールなげてね、いっぱいともだちになるの」

 

 玲は思った、これはアレだなと。プレゼントのリサーチだなと。

 来月には4歳の誕生日がある。

 両親から、もしくは祖父からの誕生日プレゼント。それを何にするか決めるための質問だなと予想する。

 

 可能性が高いのは祖父のほうかなと思う。

 両親は息子が何を好きなのかは知っている。ポケモン関係なら問題ない、変な物でなければ大抵喜ぶのだ。

 祖父もそれは知っている。だが叔父と張り合っていて、プレゼントを贈る機会があれば、少しでも孫の喜びを大きくしようとリサーチを欠かさないのだ。

 

 ちなみに誕生日ではないが、叔父は去年のクリスマスプレゼントに、ポケモンリーグ決勝の観戦チケットをくれた。圧勝だった。

 観戦には母と渡邊さんの三人で行った。だが気付いたら終わっていて、渡邊さんの背中で寝ていたのだ。

 録画してくれていたので見ることは出来たのだが、生で見たかった。とても悔しい。

 また行こうねと言った時、二人は苦笑していた。

 

 玲は今何が欲しいかと聞かれたら、ポケモンと答える。しかしそのまま伝えることは出来ない。

 この世界ではボールを使ってポケモンを捕まえることが出来るのは、五歳からという決まりがある。

 さらに家族が捕まえて子供に渡すという裏技もある。

 もしポケモンが好きとそのまま答えたら、『ワシの考えた最強にかわいくて孫に似合うポケモン』をプレゼントされてしまう。

 

 しかし玲はポケモンは自分で捕まえたいのだ。ゲームなら交換で人からもらったポケモンを使うこともあった。だが折角ポケモンのいる世界だ、手持ちは自分で捕まえて育てたい。

 なので母の質問にはこう答える、自分でボールを投げて捕まえたいのだと。

 

 しかし困った、今何が欲しいかと言われても特に欲しいものが思いつかない。 

 タブレットが欲しいと言えば欲しい。ネットに繋げて調べものはもちろん、専用のアプリでポケモンを管理したり、通信交換したり出来る凄いものだ。

 かがくの ちからって すげー!

 

 祖父に頼めば買ってもらえるだろう。祖父は自分に甘いのだ、好感度を上げるために甘えすぎてメロメロにしてしまったのだ。

 しかし今そんな物を貰ってもつらいだけだ、五歳まで我慢できなくなりそうだ。

 だめだ思いつかない、答えはもう少し待っていてねママ。

 

 

 

 

 

 

「いけー、バウちゃん」

「ボワオーン!」

「いまだー、たいあたりぃ」

「バフッ」

 

 バウちゃんのたいあたり!効果はバツグンだ!

 玲は今ポケモンバトルごっこをしていた。

 母に喜んでもらおうと始めたはずなのに、時間を忘れて遊んでいた。意外と楽しい。

 バウちゃんも楽しんでいる。クッションの上にひっくり返り、バタバタ小刻みに手足を動かして遊んでいる。

 

「レーくんはトレーナーさんになりたいの?」

「うんっ」

「それではお勉強をしなくてはいけませんね」

「ごほん読んでおべんきょーね」

 

 渡邊さんがバウちゃんからクッションを取り上げている。ごめんなさい渡邊さん、大人しくします。

 バウちゃんも頭としっぽを下げ悲しそうだ。

 

 母の横でポケモン図鑑を開き、バウちゃんと一緒に見ながら思う

 勉強は大事だ、図鑑にはそのポケモンが何を食べてどう生きているかが書いてある。

 

 自分のポケモンを捕まえたけれど、育てられないは通用しない。

 ゲームとは違う、気に入ったから集めたけど、預けてそのままというわけにはいかない。

 

 捕まえたからには、その子に幸せになってもらいたいと思う。

 生命を預かるのだから、しっかり覚えないと。図鑑を眺めながら気合を入れた。

 

(名前は前のままでいい、舌嚙むわッ)

 

 名前までは勘弁してほしい、覚えきれる自信がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玲は将来のことを考えて、己の型を見定めた。落ち着いた雰囲気のさわやかイケメンだ。

 どっしり構えて柔らかな笑顔のHPとくこう特化だ、残りはすばやさに振る。

 家族に自分は健康に育っていると知ってもらうために、弾ける笑顔を振りまいてはいた。しかし恥ずかしかったのだ。このまま育っては、羞恥心で死んでしまう。

 もともと自分の性格はおとなしい方なのだ、無理はするものじゃない。

 

 それに笑顔を周りに振りまいたりするのは、小さい子供だからかわいいのであって、大きくなってもしているのはキツイ。キラキラ笑顔の三十路の自分を想像して、吐きそうになる。

 

 型変更が少し遅れたが、ここには『もち』なんていう劇薬は存在しない。振った分の努力値は、すっぱりあきらめよう。今ならまだ間に合う。ご近所さんに、白雪さんちの玲君は大人しくて可愛らしいというイメージを植え付けよう。

 

「わたなべさん、いつもありがとぉ」

 

 足に抱き着き恥ずかしげな顔をする。しっかり顔を見て思いを伝える。 

 渡邊さんの顔を見ると、口元がムニムニ動いていた。

 

 攻撃技を何度も打ち、体力切れを狙うのだ。

 変化技に不安はない、普段からの言動で好感度はばっちりだ。

 親譲りのイケメン顔の先制技も、もちろんある。

 

 渡邊さんの反応をみて自分の思惑の手ごたえを感じながら、ソファーへと歩いていく。

 母が抱き上げ横に座らせてくれる。反対隣りにはバウちゃんがいて、今ではここが自分の定位置だ。

 母の膝に座ることもある。柔らかいしいい匂いもする、心地よいし今更恥ずかしがることもない。

 しかし少しずつ離れるようにしている。母のスキンシップが多いのだ。大好きなのだが、四六時中抱き着かれているというのは心が休まらない、なので横が今の定位置だ。

 

 バウちゃんに抱き着く。嬉しそうな顔をしている、時おり玲の顔を舐める。バウちゃんも玲のことが大好きなようだ。

 

(はやくポケモン欲しいな)

「ボワオ?」

 

 バウちゃんを見て思う。自分に懐いている姿を見て、自分のポケモンが欲しいと。もちろんバウちゃんに飽きたというわけではない、そんなこと思うわけがない。バウちゃんのことは大好きだ。

 しかし、自分のポケモンという言葉の誘惑には抗えないのだ。まだ見ぬポケモンと自分がたわむれている姿を、妄想してしまうのだ。

 今は二月、あとひと月で四歳。ポケモンを捕まえることが出来るようになるのは、五歳の誕生日からだ。一年先がはるか遠くに感じる。

 しかし、子供の成長は早い。五歳なんてすぐだ、たとえ精神が大人だとしても、それは変わらない。楽しい日々に、時間はすぐに過ぎ去っていくだろう。玲のポケモンが来る日も近い。

 

 そういえばと思う、父はポケモンを持っているのだろうか。バウちゃんは母の手持ちらしい、子供のころからの付き合いだ。何という事だ、この自分がポケモンの事に気付いていなかったなんて。父が帰ってきたら絶対に聞かないと、玲は決意した。

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、パパのポケモンはどこにいるの?」

「ここにいるよ、でも今は出せないんだ」

「なんでっ、ぼくみたい」

「んー、少し元気な子なんだ。それに玲くんは怖がるかもしれないよ」

 

 ちょっと待ってよ、見くびらないでほしい。このボクだ、ちょっとやそっとでポケモンを怖がることはない。部屋の中では厳しい子なら、外で見せてほしい。もう夜だから今日は無理だが、休みの日にでも見せてよパパ。

 

「わかったよ、次の休みにね」

「ありがとうパパ、やくそくだよっ」

 

 次の休日が楽しみだ、今日は興奮で眠れないかもしれない。どんな子なんだろう、想像が止まらない。怖がるという事は、あくタイプかゴーストタイプかな。

 その日の玲は眠る時間が少し遅くなった。

 

 




明日の昼頃、一話多く投稿するかもしれません
ちょっと書きたい話があるので
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