ボコボコにされるのが怖かったので…
変な所があってもご容赦を
今日は二話分投稿します、残りはいつもの時間で
よろしければ見てください
―――十二月某日。
現在玲はお出かけ中、天気は心を中を表すかのような快晴だ。右手には母の手のひら、左手には渡邊さん。三人で仲良く手を握って歩いていた。
視線の先には大きなドーム型の建物、東京ドームが見えている。今日は大事な試合を観戦しに来たのだ、ポケモンリーグ決勝戦を観戦しに来たのだっ。
いや東京ドームでいいのか?覚えていないが大分形が違う気がする。まあポケモンがいる世界だし、建物くらい変わるか。そんなことよりも確認することがある。
「わたなべさんチケットあるっ?」
「勿論です、こちらに」
ここまで来て観戦できずに帰るなんて出来ない、渡邊さんに確認するとその左手にチケット二枚。叔父がくれた大事なチケット、少し早いクリスマスプレゼント。重大な忘れ物がないことに、玲は安堵した。
早く行こうと二人を促す、しかしそこで招かれざる客が。
「ねえねえ。そのチケット、ペアだよね。私のと交換してくれない?」
「すんません、家に忘れちゃって」
どうやら片方がチケットを忘れたらしい。しかしそれは困る、こちらは指定席なのだ。一人が離れて見るなんて嫌だし、そんな非常識な提案をする二人と近くにいたくない。
渡邊さんが断ってくれている、そうだよねと玲は安心した。しかし二人は怒鳴りだす、馬鹿にされたと思ったのだろう。渡邊さんの目の鋭さと、言葉の硬さに。
「待った待った待った。お姉さん、ちょっと待った」
「はぁっ!?誰よあんた!?」
「通りすがりAだよ。それよりお姉さん、それはおかしいでしょ」
「なにがぁ!?」
困っていたら、通りすがりAさんが助けに来てくれた。髪を真っ赤に染めていて、眼鏡をかけている。鍛えているのかしっかりした体つきの男性だ。その奇抜な髪色に玲は警戒したが、こちらへの思いを感じすぐに力を抜いた。渡邊さんと母もそれは同じのようで、男性に事の成り行きを任せたようだ。
片側だけが熱くなっている話し合いは、長く続かなかった。
心配したがどうやら上手くいったようだ、女性たちが捨て台詞を吐いて歩いていく。
「だいじょうぶですか?すいません」
「いえ、感謝いたします」
「ありがとうございます、助けていただいて」
「ありがとぉ、おにいちゃん」
助けてくれたのに、なぜか申し訳なさそうにしている。本当に悪いと思っている様なその態度に、玲達は男に感謝を伝える。
「あー、少年。嫌な事あったけど、これから凄いの見れるから忘れちまいな」
「うんっ、ボク楽しみにしてたんだっ」
「そうか、頑張んないとな。それじゃ未来のライバル、楽しい思い出作っていきな」
男は玲達に挨拶して歩いて行った。
いい人に会った。嫌な事もあったけど、そんなこと気にならない程のいい出会いだ。応援頑張れと激励までされたのだし、気合を入れないと。そう思いながら母達と手を繋ぎゲートを潜っていく。
目に入るのは様々なポケモン。来客者を迎えるためだろう、笑顔で手を振っている。知っている、どんなポケモンかは。しかし現実で初めて見るそのポケモンの笑顔に、玲の意識は興奮で遠くなる。
玲はそこから先の事を覚えていない―――
―――チャンピオンに対しますは、最速クリアのこの男。
眩しい光、轟く歓声。揺れる会場、熱い実況。広い広いスタジアムの中、男はコートの先に居る相手を見る。己が夢見たその場所に、王のように立っているその相手を。
大きな体に威圧的な顔。年齢は公表されているもので四十五。男は今日この相手を倒しに来たのだ。
「楽しみましょーや、チャンピオン」
「楽しませるつもりはないがね、さあ始めよう」
それで会話は終わってしまった。男は残念に思った。こんな広い会場で、こんなに応援があるのにと。自分と違い、相手は楽しんでいない。目の前の男を倒すのを、作業のごとく思っているのだと。
男は考えるのをやめた、自分は相棒たちと楽しめばいいと思ったのだ。
そこでふと気づく、観客席の様子に。上段にある特別席、試合が一番見やすいその場所で。先ほど会った少年が、ガラスに張り付いて応援しているのを。
見ていてくれな少年、そうつぶやき男は顔に笑みを作る。眼鏡を外し、髪を頭上でまとめる。
―――気合十分、準備万端。始めようかチャンピオン!
レフェリーが試合開始の合図を送り、両者同時にボールを投げる。
「一番槍は任せたシュート!あいつの度肝を抜いてやれ!」
光の中から飛び出す影。この世界で知る者は一人しかいないが、その子の名前はエンニュート。対する相手が繰り出すは、はがね、ひこうのエアームド。
「力を見せつけろ」
「おっとシュート、動かすなっ」
ねこだまし―――
技を出そうとしたエアームド、しかし男が一枚上手。技をだすことが出来ない。シュートは『かえんほうしゃ』で止めを刺す、相手は何もすることが出来なかった。
シュートが雄たけびを上げる、歓声に負けないように強く強く。舐めるんじゃない、己はそんなに弱くない。何も考えず来るなら痛い目を見せると。
「…次だ」
チャンピオンの次の手は、みず、あくのシザリガー。挑戦者のポケモンは、ほのおタイプで水に弱い。何も出来ないだろうと、舐めてかかった。
「舞え」
「ごめんよ」
どくどく―――
シザリガーの力がぐんと上がる、しかしその代償は大きかった。猛毒に侵されてしまう。まずい、このままでは調子付かせてしまう。チャンピオンがシザリガーに相手を倒せと指示をする。
「チッ、噛み殺せ」
「させるかよっ、踊ってな」
アンコール―――
躍り続けるシザリガー。これでこの子は何もできない、交代するしかないだろう。ここで男は交代を選んだ。相手が何を出すにしても、有利な子で来るだろうと。少し早いと考えるが、男はこいつに任せると決めた
「まかせたぜ、リッキー」
繰り出すは、男が最も信じる相棒。ほのおタイプのブーバー。
そこでチャンピオンが鼻で笑う。タイプ相性も知らないのかと、よくここまで来れたなと。
男は馬鹿にされたことなど気にしていなかった。そんなことよりも気になっているのだ。
「ふっ、馬鹿が」
「そういうあんたは、変えてやらないのかい?」
「王者がこれくらいで引いてどうする」
「ッチ、リッキー楽にしてやってくれ」
チャンピオンは交代をしなかったのだ。
男は許せなかった。大事なことなのは分かる、だからって見栄のためにポケモンを犠牲にしていることが。
だから指示をした、己の相棒に。あの子を楽にしてやってくれと。
かみなりパンチ―――
「なんだとっ!?」
「こいつは賢くてな、見て覚えた」
「そんな馬鹿な事あるかっ」
男も驚いたのだ。DVDを何回も見て、急に出来るようになった相棒の姿に。
少しチャンピオンが可哀そうになるが、それ以上にポケモンの子が可哀そうだ。
早く楽にしてやらないと。主人の為に攻撃を耐えている姿を見て男は決意した―――
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とある日の日曜日、玲は母と買い物に出かけていた。教育番組のとあるコーナーで欲しいものがあったのだ。
『ピカッチちゃんとオリガミであそぼー』
やるしかない、玲は折り紙を探した。しかしなかった、家の何処にもなかったのだ。ならば買ってもらうしかない、玲はおねだりしたのだった。
聞くところによると、この世界にはポケモン折り紙なるものがあるらしい。母は言ってくれた、一緒に選ぼうと。行くしかない、どんなものがあるか楽しみだ。
「あ…」
「どうしたの、レーくん」
そして現在、買い物が終わってその帰り道、玲は公園の前で立ち止まった。その光景がどうしてか気になったのだ。
ベンチの前で、子供達が遊んでいた。小学生高学年ほどの少年が一人、周りに三人の子供達。少年は右手にモンスターボールを持っていて、どうやら弟か妹にポケモンを見せてあげるようだ。
なるほどと思う、あの少年は試験に合格したのだなと。この世界では資格がない者は、持っている者の監督下でないと、ポケモンを外で出すことが出来ない。なのでジムの様な場所で試験を受ける。
一つ合格で公園等の決められた場所でだけ、ポケモンを出すことが出来るようになるのだ。
ちなみに試験内容は、ポケモンが主人の言う事を聞くかの確認だけ。十歳になったら受けられる。
そこで玲は気付いた、そのうちの二人に見覚えがあったのだ。もしかしてと思う、この先に起こることに玲は期待する。
少年がボールを放り投げる、そこから飛び出てきたのは。
(チョ、チョー太君だぁあああああ)
「レーくん、遊びたいの」
「あっ、う…でも」
「いいのよ、いってらっしゃい」
母が遊んで来いと言ってくれている。いいのだろうか、見る限りあの時のお母さんはいない。しかしチョー太君はいるし、子供達にも面影はある。母は気付いているだろう、母の顔を見てなんとなくそう思った。
「チィ?チ、チチィ」
チョー太君がこちらに走ってくる。どうやら覚えていてくれたようだ、昔遊んだことを。昔は自分の方が小さかったのに、今は下にある頭を優しく撫でる。
そうしてると子供たちがこちらに走ってきた。少年はチョー太君が勝手に走り出したことに慌てている。
「ごめんなさいっ!チョー太、ダメじゃないか!」
「チィ…」
「あの、チ、この子をおこらないで…」
少年がチョー太君をしかる。待ってほしい、この子は悪くないんだ。
少年が慌てる気持ちもわかる。自分が出したポケモンが、知らない子供に向かっていったのだから。しかしこの子は、久しぶりに来た友達と遊びたかっただけなんだ。
しかし、どうしよう。何人かは遊んだことがあるのだが、初対面みたいなものだ。まさか覚えているはずがない。
チョー太君の事も、とっさに呼び方を変えたし。少し悲しい顔をしていることに胸が痛む。
「だれー?」
「あの…レイって言うの、この子かわいいね」
「ありがとっ、うちの子なんだよ!チョー太君っていうの」
「チョー太くんよろしくね。さわっていい?」
「いいよいいよっ」
子供たちが集まってくる。みんな不思議そうな顔はしてるが、嫌がってはいないようだ。玲は子供たちと名前を交換していく。
よかった、これで名前を呼ぶことが出来る。チョー太君を呼んだときの笑顔も見れたし、今日はとてもいい日だ。
見れば母は少し離れた場所にあるベンチに座っている。微笑んでいる母を見て、玲の心は軽くなった。
気にしていたのだ、小さい頃の事を。自分が怖がって話さなかったせいで、母が馬鹿にされたことを。まだあの時のお母さん達はいないので、会ってどうなるかは分からない。しかし子供たちと会うだけなら、母が傷つくことはないと知り、玲は安心したのだ。
「ふわふわだぁ」
「チチィ!」
「チョー太君はねっ、耳のとこコショコショすると喜ぶよっ」
どの子もみんな笑顔だった、玲も一緒に笑ってた。離れたベンチに座る母の、その表情は幸せそうだった。
バトル描写は試行錯誤中なので、この先変わっていくかもしれません