暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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ではバカンスのゲストである海竜との決戦です。

エリーのアトリエ以来の伝統ですが、アトリエシリーズでは海竜も強いのです。


2、竜狩りの準備

実験は成功した。

 

思いつきだったけれど、やってみれば出来るものだ。これで、一つ勝機が出来た。この勝機を、更につなげていく必要があるけれど。それはそれ。相手はドラゴンなのである。普通に戦ったら、人間では絶対に勝てない。

 

錬金術の装備で出力を上げ。

 

道具で火力を上げ。

 

やっと倒せる究極最強の獣。

 

戦う前に、あらゆる準備をしておくのは、当たり前である。

 

実験につきあってくれたドロッセルさんに礼を言うと、アトリエに戻る。モフコットの研究を続けているリディーが、音を上げていた。

 

お料理は出来ても。

 

どうもお裁縫はあまり得意ではないらしい。

 

元々糸繰りというのは、専門の技術者がいるくらいで。

 

布を作るのは更に難しい。

 

そして錬金術で強化した糸で、魔法陣を織り込むようにして布を作るのだから。

 

その難易度は格別だ。

 

モフコットは、錬金術の布としてはごくごく低ランクのものらしいのだけれど。やはり初見はリディーでも苦戦するか。

 

まだまだだ。

 

こればかりは、仕方が無い。スールも一緒になって悩む。

 

素材はある。今まで羊や山羊は、散々野外で殺してきた。毛皮から毛糸を刈り取るのは難しく無い。

 

「ねえリディー。 糸繰りは専門の人に任せようよ」

 

「繊維だけ刈り取って?」

 

「うん。 ただ、繊維も多少は加工しないと、門前払い貰うと思うけれど」

 

「そうだね……」

 

一応レシピにもそうあるのだけれども。

 

加工がえげつなく難しいのだ。

 

糸繰りの人に渡すまでもがそもそも大変。

 

下手に繊維を強化していると、糸繰り機そのものがバラバラになってしまう。

 

最高位の錬金術布として知られるヴェルベティスなどは、この傾向が非常に強いという事で。

 

そのまま繊維を糸繰り機になんか掛けたら。

 

瞬時に機械をバラバラにしてしまうそうだ。

 

ましてや糸繰りは人の手も介在する。

 

指から先が無くなるだろう。

 

レシピを幾つか見てみるが。

 

基本的に繊維が柔らかいものに関しては、糸にしてから加工するのが簡単、とある。

 

しかし繊維の状態で既に加工していると、最終的な完成度が跳ね上がるらしい。

 

今度の戦いでは、防御面で錬金術装備以外の追加が欲しい所で。

 

モフコットにしてももっと上位の布にしても。

 

野外の獣の毛を繊維として用いると。

 

強い魔力を最初から帯びているし。

 

どうしても危険になる。

 

諦めて、最初は普通の羊毛を毛糸に加工し。

 

それをモフコットに加工し直すという手もあるのだが。

 

そうするとやはり、強靱さに桁外れの差が出てきてしまうと言うのだ。

 

リディーが困り果てているのを見て。

 

スールも困る。

 

最初の加工の段階で。

 

それくらい分からないのに、このレシピを見るなと言うような感触で、突き放しているものが多いのである。

 

最初に市販の糸を使う初心者向けのレシピと。

 

いきなり繊維から加工する一人前向けのレシピで。

 

あまりにも差がありすぎるのだ。

 

もっと早い段階から、布の加工に手をつけるべきだったと、今更ながらに後悔するけれど。

 

しかしながら、出来ないものは出来ない。

 

時間もあまりない。

 

元々あの絵の調査が出来ないと、Cランクからの昇格試験は受けられないという話だし。

 

何よりドラゴンがいつまであの場所でのんびりしていてくれるか分からない。

 

もたついていると、移動を開始して。

 

海の中でばったり遭遇、という最悪の事態になりかねない。

 

その場合戦いにさえならず。

 

向こうが一方的に此方を捕捉して。

 

あげくブレスでアウトレンジ攻撃。何もできずに全滅、という可能性も想定しなければならない。

 

そんな事になったら、フィリスさん以外誰も生き残らないだろう。

 

あの人は、ドラゴンのブレスが直撃した程度でどうにかなるとも思えないが。他の人まで気前よく守ってなどくれない筈である。

 

やむを得ない。

 

イル師匠の所に行く事を提案。

 

しばししてから、リディーも承諾した。

 

もうこれは悩んでいる場合では無い。分からないと言うよりも、今までこの分野には触れてこなかった。

 

ならば触れてきただろう、努力の人であるイル師匠の所に行くしか無い。

 

悔しいけれど。他に方法が無いのである。

 

すぐにイル師匠の所に出向く。

 

今回は、時間がないのだ。そもそも、ドロッセルさんだって、専属契約の期間が限られているし。

 

国からお仕事だって来る。

 

戦略事業になると、一週間くらいはすぐに吹っ飛ぶ。

 

自分の思い通りに出来る時間は、今後アトリエランクが上がるほど減ると考えるべきであって。

 

逡巡は敵だ。

 

イル師匠は、話を聞くと。

 

すぐにため息をついた。

 

「錬金術の基本は?」

 

「ものの意思に沿って、ものを変化させる技術です」

 

「ですっ」

 

「よろしい。 それならば、今回の件は、どうしてレシピが分からないのかしら」

 

口をつぐむスール。

 

リディーもそれは同じだ。

 

イル師匠はしばらく様子を見ていたが。やがて顎をしゃくって、実例を見せてくれるという。

 

今回は単純な布。植物繊維を使ったものを見せてくれるそうだけれども。

 

これも、最初の繊維の段階で変に加工してしまうと、糸繰り機と使い手の人間をもろとも切り刻む恐怖の殺戮糸と化すと言う。

 

かといって、最初に加工をしないと、市販の布に毛が生えた程度の性能しかでない。

 

ならばどうするのか。

 

「答えは簡単。 まず最初に、ものの意思については、区別して考える」

 

「区別」

 

「そう区別よ。 最初に繊維を、こうやって加工すると、繊維は「強靭になりたい」という意思を持っているわけ。 でも此処で強靭に加工してしまうと、繊維を糸にすることが出来ない。 まず最初にするのは、繊維を加工した後、その繊維をコーティングする事よ」

 

「あ……」

 

そういう、事か。

 

つまり繊維を危なくない状態にすれば良い訳だ。

 

続けてイル師匠は実例を見せてくれる。

 

幾つかの素材。

 

スールと並んでメモをとる。

 

煮込んで成分を抽出し。

 

これで繊維を煮込む。

 

そして、糸繰り屋に出せる繊維の完成だ。

 

続けて、イル師匠は完成した糸を見せてくれる。糸繰り屋が、糸にしてくれた状態である。

 

今度は此処で機織りをするのだけれど。

 

糸の状態で、コーティングをし直すという。

 

「コーティングが入ったままだと駄目なんですか?」

 

「駄目。 何故かというと、本来の糸に不純物が紛れている状態だから。 まずコーティングを落とし、また糸の上からコーティングをし直すの」

 

「うわ、手間暇が……」

 

「その分の効果は出るわよ」

 

イル師匠が、作業について説明。

 

繊維の時よりも、更に大変だが。

 

それでもまずは、順番にこなして行かなければならない。コーティングをした糸を、今度は機織りに出す。

 

機織りに出す時、そもそも布に魔法陣を刻んで貰う。

 

防御強化や体力の継続回復が基本だが、身体能力の増強を組み込むことも出来ると言う。勿論布を加工するとき、魔法陣を切らないようにする必要がある。

 

そうして出来た布がこれと、イル師匠が見せてくれる。

 

まあ糸繰りや機織りは本職の仕事だし。

 

此処でリディーとスールが見る必要もない、と言う事なのだろう。

 

それに、とイル師匠は追加で言う。

 

「今、貴方たちはとてもお金を持っているの。 そのお金を、糸繰りや機織りをしている人の所に流通させるのは、とても大きな意味を持っていることよ」

 

「ええと、つまり」

 

「一部の者だけが贅沢をするためにお金を蓄えても、経済というのは動かないの。 貴方たちは扱うお金が大きくなっているから感覚が麻痺していると思うけれども、貴方たちがお金を使うことで、そのお金で生活が出来る人が出てくるということよ。 教会にお金を入れて、孤児達の生活費になるのと似ているわね」

 

なるほど。

 

お金は蓄えるだけでは駄目で。

 

的確に使っていかないと、むしろ周囲に害を為すという事か。

 

確かに欲を掻いたヒト族の役人や商人が、碌な事をしないという話は良く聞くけれども。それには理論的に説明できる駄目な理由があった、と言う事か。

 

メモをとる。

 

そして、クロースと呼ばれる、簡単な布。

 

モフコットも見せてもらう。

 

イル師匠が作った品だ。勿論見ただけで別格と分かる。クロースでさえ、強い魔力を帯びていて、輝くようである。魔力が見えるようになった今はなおさらだ。

 

以前一度見せてもらったヴェルベティスも改めて見せてもらうが。

 

凄い魔力が満ちていて、近付くだけで暖かくなるほどだ。

 

生唾を飲み込んでしまう。

 

これを服の裏地に仕込めたら。

 

確かに、ドラゴンとの戦闘も出来るかも知れない。

 

フィリスさんやイル師匠は、元から異次元の実力があるのに加えて、これらの布の助けも借りている、と言うわけだ。

 

ヴェルベティスの場合は、布にした後も特殊なコーティングを施すらしいのだけれども。

 

その上で、下位の布で守る事によって、直接肌には触れないようにするのが安全であるらしい。

 

コーティングそのものも、非常に高い技術を使うそうで。

 

生半可な錬金術師では、材料が揃っても到達できないのは、それが理由だとか。

 

そもそもヴェルベティスの材料自体が、極めて貴重らしいのだが。

 

なるほど、納得がいった。

 

メモを取り終えると、イル師匠に頭を下げる。

 

イル師匠は、あまり嬉しそうにはしていなかった。

 

「悔しいけれど、やはり師匠がいなくても良い天才と凡才には大きな差があるわね。 私も後者なのだけれど、嫌いで仕方が無い実家にいた頃覚えた事が、随分と後で力になっているのを感じるわ。 貴方たちはどちらも私と同じタイプよ。 とにかく何でも良いから、情報を徹底的に頭に入れなさい」

 

「はい……」

 

「いい、貴方たちは選ばれた天才じゃ無い。 それを何度も思い出しながら、試行錯誤を繰り返しなさい。 今の事も、私は自分で見つけた訳じゃ無い。 先人達の知恵を借りたり、天才達のやり方を見て覚えたのよ。 私が自力で見つけた法則は殆どない……それが三傑なんて言われる私の現実よ」

 

イル師匠は、決して自分を凄いとは言わない。

 

だから、厳しい言葉も、耳にしっかり入ってくる。

 

二人で家に戻る。

 

まずはコーティング用の液剤の調合から始める。

 

モフコットからやるのではなく。

 

普通の植物繊維を使ったクロースからやるべきだろう。

 

それについても、二人で意見が一致した。

 

凄い師匠がいるのだ。

 

話を聞いて良いのだ。

 

ならば、その利点を最大限生かして。凡人としてできる事を最大限までやっていくだけの事。

 

イル師匠は謙遜していたが、あの人は弱体化していない雷神とまともに渡り合うほどの実力者。

 

いや、あの戦場では、手加減していた可能性もある。

 

そんな人が、直接教えてくれているだけで、とんでも無い幸運なのである。それを生かして、更に先に行くべきだろう。

 

それからしばらくはクロースを作る事に専念。

 

糸繰り屋と。

 

機織り屋にも足を運んだ。

 

大きめの街には何処にでもあるらしいのだけれど。

 

公認錬金術師がいる街になってくると、錬金術師が錬金術製の繊維や糸を持ち込む事があると周知されているらしく。

 

リディーとスールが足を運んだ場所でも。

 

すぐに色々質問された上で、受けつけてくれた。

 

どうやら、他にも利用している人がいるらしい。そして、此処で働いている人には、何年か前にリディーとスールがお世話になった教会をでた人も混じっていた。

 

お金はしっかり払って。

 

まずは糸に。

 

布にして貰う。

 

最初に布を作るまで一週間かかった。

 

それから、やっとレシピが理解出来た。

 

多分だけれども、中間地点くらいにいる錬金術師は、布は買ってしまうのだろうと思う。或いは、ノウハウが無くて、色々作る程の知識を身につけられないのかも知れない。リディーとスールには、師匠がいて。論理立てて教えてくれる。それが如何に幸運なのか、こう言う時も思い知らされる。

 

ほどなくクロースから、モフコットに移行。

 

外ででる、強大な魔力を纏った獣の毛から繊維を取りだし。

 

これを布にするまでの過程は、クロースの比では無い難易度だったが。

 

しかしながら、強い獣由来の強力な魔力。

 

中和剤でそれを更に強化。

 

魔法陣を組み込むことで、更に更に強化という過程を経て。

 

それぞれ何種類か、モフコットを作って見ると。

 

確かにこれは必須だという結論しか出なかった。

 

服の裏地に仕込むだけで、能力を錬金術師の装備品一つや二つを遙かに超える強化を持ち込める。

 

全員分は作る時間がないが、少なくともリディーとスールの分だけでも作りたい。更に上位の布に手を出している余裕は無い。最上位のヴェルベティスに至っては、それこそ今まで散々やってきた金属加工の最上位、ハルモニウムより難しいと考えるべきかも知れない。

 

ともかく、このモフコットの質を可能な限り上げて。

 

服の裏地に仕込む。

 

念のために触ってみたけれども。

 

やはり肌に直接触れるとあまり好ましくないという結論になる。

 

元は獣の毛なのだ。

 

強い魔力を帯びているとは言え。

 

肌に直接触れると、やはりちくちくする。

 

とはいっても、コーティングをしている状態だと、これはこれでちょっとごわついて肌触りが良くない。

 

肌触りなんて、それこそどうでもいいと思えるかも知れないが。

 

長時間の戦闘では、こういった要素がどうしても問題になってくる。

 

考えたあげく。

 

リディーは魔力の強化と体力継続強化。

 

スールも魔力の強化と、防御力の強化。

 

これをモフコットに仕込んで。

 

服の裏地に貼り付け。

 

更にモフコットの下地にクロースを入れることにした。このクロースには、「温湿度低下」の機能も入れる。

 

モフコットはかなり熱を蓄えるので。

 

その熱を相殺するためだ。

 

ただ、二重に裏地を入れた結果。

 

少し服が大きくなった。

 

このため、採寸をちょっとやり直さなければならなくなり。

 

それでも時間を取られてしまった。

 

この服そのものは、お母さんが作ってくれたもので。絶対にこの服から変える気は無い。少なくとも錬金術師としての正装は、この服以外にあり得ない。だから、どんな凄い布を入れるとしても、あくまで裏地に、である。

 

準備が整ったのが。

 

ドロッセルさんと契約した期限の一週間前。

 

予想通りというか。

 

途中に何度か入ったインフラ工事や。

 

試行錯誤の結果。

 

相当に時間が掛かってしまった。

 

ドラゴンが、まだあの場所にいてくれればいいのだが。それについては、祈るしか無い。

 

準備はこれで充分な筈。

 

皆の戦力は足りている。

 

後はバトルミックスと、このモフコットによる強化。

 

更には。今までの装備品の刷新。

 

モフコットによって、今まで毛皮を使っていた装備品を、数段強化出来ることが分かったので。

 

それらを全て更改。

 

これで戦力は、出来る範囲で極限まであげる事に成功したはずだ。

 

だが、それが主観では意味がない。

 

二人で検証。

 

実際に使ってみて、本当に効果があるかは、何度か試す。

 

ドロッセルさんに手伝って貰って。

 

不思議な絵の中に入って、素材を集めつつ。

 

何度も検証試験をして。

 

問題ないと結論が出るまで、客観的にデータも集めた。

 

リディーとスールは、所詮凡人。

 

錬金術の才能はリディーの方が優れているけれど。それでもフィリスさんのような天才ではないし。

 

ソフィーさんのような規格外でもない。

 

ならば、データを積み重ねて。

 

それで戦いを有利に運んでいくしか無い。

 

徹底的な準備をしても。

 

予期せぬトラブルで、地獄絵図が顕現すること何て、珍しくも無い。

 

それは経験として、今まで戦って来た獣や、ファルギオルで。嫌でも思い知らされている。だから不安要素を、徹底的に削り取るのだ。

 

スケジュールの調整もあって。

 

ドロッセルさんの雇用期限一週前に、皆に集まって貰い。

 

そして海の絵へ再び挑む。

 

今度は、この戦いで。勝負を決める。

 

気合いはどうしても入る。

 

エントランスに集まった皆に、更改した装備品を渡す。特に獣の腕輪は素材をモフコットに切り替えた結果、更に色々な能力を強化出来るようになった。その他にも、ナックルガードを一として、他の装備品も前より性能を上げている。時間を掛けて準備したのである。ドラゴン戦なので、当たり前だ。

 

先に安全なネージュの要塞に入って。

 

要塞の外側の、平穏な場所で、皆にそれぞれ動いて貰う。

 

一番最初にコツを掴んだのは流石アンパサンドさん。

 

体を徹底的に動かし尽くして知り尽くしているからだろう。

 

スペックが変わっても、それで困る事はない、というわけだ。

 

逆にフィンブル兄はかなり四苦八苦していたが。

 

それでも半日ほどで、どうにか慣れてくれた。

 

マティアスはというと、マイペースに剣を振るっていたが。ある程度でコツを掴んだらしく。

 

大丈夫と頷いてくれる。

 

ドロッセルさんは、現状の装備で問題ないらしい。

 

現状の装備で、既に皆より強いのだから色々反則な気もするが。まあそれだけ、昔フィリスさんに貰っただろう装備が強いのだろう。

 

フィリスさんは、ルーシャと話があるとかで、絵の外で待っていて。

 

そして準備が終わった後。

 

エントランスで再合流した。

 

さあ、此処からだ。

 

嫌でも緊張する。

 

更に。

 

戦いの前に、フィリスさんが笑顔で言うのだった。

 

「前に見せられたあのドラゴン、海棲ドラゴンでは異例なほど小さいから、それは覚えておいてね」

 

「えっ……」

 

「確かに前に交戦したドラゴネアと大差なかったのです」

 

「でも、すげえ強そうだったぞ」

 

アンパサンドさんとマティアスが口々に言うが。

 

フィリスさんは優しげな笑顔を浮かべているだけ。

 

さあ、どう攻略する。

 

そう言っているように、スールには見えた。

 

目が濁っているフィリスさん。

 

前は多少情緒不安定だったけれど、純真だったと、パイモンさんに聞かされている。

 

ということは、だ。

 

やはり錬金術を極める過程で深淵に触れていき、こうなったのだろう。

 

「……行きます。 ドラゴンが移動しているかも知れません。 海底ではくれぐれも注意してください」

 

リディーが音頭を取る。

 

さあ、此処からだ。

 

いよいよ、錬金術師としての鬼門となる、ドラゴン狩りの時が来た。

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