暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、蠱毒の果てに

深淵の者本拠地。魔界にて、軽く会議が行われる。

 

今回は首領であるルアードが仕事中なので、リーダーシップは事実上のナンバーツーと見なされているプラフタがとる。

 

彼女は対立の末に500年かけて和解したとはいえ、元々ルアードの比翼の盟友。しかも互角の実力を持っていた錬金術師。

 

現在でも、自身が錬金術を使えなくても、その知識と道具を使いこなすことに関しては、屈指の腕前である。

 

ルアードが最も認める錬金術師。

 

それだけで、深淵の者が従うには充分だ。

 

ソフィーはあくまで食客であり。最高顧問という形の存在である。

 

ソフィー自身も深淵の者を好きに動かそうと言う行動は取っていない。別にそんな必要もないし。

 

何より、利害が一致しているからだ。

 

まず最初に発言したのは、シャドウロードだった。

 

「獣人族の故郷の世界に行って来たよ。 資料は可能な限り集めて来た」

 

「うむ。 聞かせて欲しい」

 

「良いんだね、聖獣王」

 

「かまわない。 先祖の罪を知る事も、我等獣人族の王たるケンタウルス族のつとめだ」

 

頷くと、シャドウロードは、残された遺跡から集めて来た情報を開示してくれる。

 

獣人族達の世界は、戦いと強さだけを求める世界だった。

 

それ故に、力によって滅びてしまった。

 

皮肉な事に、個人の武力ではどうにもならない、技術力という力によって、だったが。

 

ヒト族に似た猿の獣人族が作り出した数々の兵器は、屈強な獣人族でもどうにもならず。いずれもが、徹底的な殺戮の報復として容赦なく獣人族達に向けられ。

 

そしてそのわずかな生き残りがパルミラに救出されてからは。

 

同族に向けられた。

 

そもそも、相手を服従させるという概念がない世界だったのが災いだった。

 

殺すか殺されるか。強いか弱いか。

 

そういう単純な価値観の世界で、強力すぎる兵器が作り出されたのが最悪だったのである。

 

かくして獣人族の世界は。

 

新しい覇者が立つも、それから百年とせずに滅びてしまった。

 

「遺跡はどれも激しく損壊していてね。 最後に生き残ったらしい連中の痕跡も見つけたけれど、我々は最強だとひたすら書き残していたよ。 そしてそいつらの間でも、最強を巡って殺し合っていたらしい」

 

「……獣人族の悪しき面を凝縮したような世界だな」

 

「いずれにしてもはっきりしたことがあります。 暴力を最上とする価値観では、すぐに世界は滅びると言う事です」

 

プラフタが指摘。

 

確かにその通りだろうと、ソフィーも思う。

 

だからこそに。

 

毎回の周回で、新しい方法を模索しているのだ。

 

勿論人間の可能性を信じた周回もあるが。

 

その全てで裏切られた。

 

「続いてソフィー。 貴方は」

 

「此方があたしの調査結果」

 

すっと指を動かすと、データが出る。

 

一応、まだ魔族の先祖がいた世界は滅びていないが。

 

其処はあまり目に優しくない世界になっていた。

 

とにかく白い。光に満ちている。

 

世界に存在するのは規律のみ。完全な規律に沿って世界は動いていて。唯一神を自称する至高神と、その下僕たる「天使」によってのみ管理が行われ。人間は思考する事すら許されず、命じられたまま行動するようになっていた。繁殖すらも、指示通りに行わされ。わずかでも反抗すれば、その場で塩の柱にされる。そんな世界だった。

 

「あたしが侵入した途端、前にこの世界に攻め寄せた天使とやらがわんさか仕掛けて来たから全部返り討ちにしたけれど、まあそれは別に良いよね。 とりあえずこの世界は、参考にはできないわ」

 

「同感ですね。 これは一個の最強による自己満足の世界です」

 

「……パルミラはこうしてみると、まだ我等に好意的で、しかも平等な神であるのだな」

 

「そうなるね。 問題は人間の方だってことだよ」

 

ソフィーが肩をすくめると、イフリータさんが不快そうに鼻を鳴らす。

 

気持ちは分かるが、こんな神のために魔族は忠誠を尽くしていた。あげくに用済みになったら消された。それでは良い気分などしないだろう。

 

これらの世界の調査については、実は今までの周回ではあまり積極的にはやってこなかった。

 

手持ちのデータを整理しながら試行錯誤するのが精一杯だった、というのもある。

 

パルミラほどの処理能力があるのならともかく。

 

ソフィーも人間を逸脱しているとは言え、あくまで限界がある存在なのだ。

 

だからデータを精査していくのには、どうしても時間が掛かる。

 

そして、今。

 

ようやく外の世界を見られるようになった。この世界の詰みを打開するために。

 

「後はホムの故郷の世界を、あたしが確認してくれば終わりかな。 その間の此方はプラフタ、任せるよ」

 

「……あまり無茶はしないように」

 

「ふふ、平気。 まあちょっと偵察した感じだと、一度壊れた後に復興した世界みたいだし、今までにない貴重なデータが取れるかも知れない。 戦いになるなら、その時はその時だしね」

 

くつくつと笑うと。

 

会議をプラフタが締める。

 

そして、解散の後。

 

プラフタは大きく嘆息した。

 

「ソフィー。 貴方なら、別に他世界の住人に気付かれずに調査するくらいは出来たでしょうに」

 

「ああ、ばれてたか」

 

「どうせ天使や神の実力を知りたかったのでしょう?」

 

「流石に長いつきあいだねプラフタ。 結論から言うと、あの世界を滅ぼして移住するのもありだよ。 なんなら一日であたしが滅ぼしてくる。 とはいっても、どうせ対処療法にしかならないけどね」

 

天使はすっかり平和ボケしていて、抵抗できない人間を管理する事しか出来ないデク人形になり果てていた。

 

今のソフィーなら、文字通り薙ぎ払うことが出来る程度の相手だ。実際に四大だの七大だのえらそうな肩書きの天使も一息に薙ぎ払った。

 

神も、そもそも多重次元が重なりあった宇宙そのものであるパルミラには到底及ばない程の力しかない。

 

以前攻め寄せた天使の軍勢が、瞬時に全滅したというのも納得である。

 

パルミラには、今のソフィーでも勝てない。

 

だが、あの世界の神。唯一神と不遜にも名乗る存在になら圧勝できる。実力は、実際に見てきた。

 

ただ殺してしまっては、世界そのものを壊す事になる。

 

それは流石に傲慢だ。故に力だけを見て、抵抗した者だけを殺し。神に力を見せつけ怖れさせて、戻ってきた。

 

それだけである。

 

「じゃ、早速ホム達の故郷を本格的に調べてくるよ。 その間、双子の事はよろしく」

 

「……」

 

口を引き結んでいるプラフタ。

 

ああ、とソフィーは一つ付け加えた。

 

「魔族の故郷の世界で面白い情報を見つけてね。 概念そのものを操作する力を、更に強化出来る可能性が高い」

 

「!」

 

「プラフタ、人間に戻れるよ。 まあ少し後だけれどね。 検証もしたいし」

 

無言のままのプラフタ。

 

軽く手を振ると、その場をソフィーは後にする。

 

さて、一度滅びから立ち直った世界。興味がある。

 

この先のためにも。周回をこれ以上無意味に増やさないためにも。

 

情報は幾らでも必要なのだ。

 

 

 

(続)




ソフィー先生は既に他の宇宙に出張することも可能な実力を有しています。

だからこそ「人間四種族」の始まりの地を調査しています。

今回は上手く行く可能性が出て来た。

故に「成功」の事例では無く「破滅」の事例についてもデータを収集しておきたいのです。

大まじめに問題に取り組んでいる点では、ソフィー先生もみなと同じです。

精神性がもうとっくに人間のそれではありませんが……
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