暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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自分を常識人と称する人間は得てしてどうしようもないものです。現実でもそうですし、この作品世界でもそう。

本作のスールは過去にはそうでした。それを……常識人を称する馬鹿さ加減を今は分かっているので、誰の過去を笑う事もありません。


1、砂漠縦横

エントランスに集合。アルトさんとプラフタさんは知り合いらしく、にこりと笑みをかわし合うだけだった。

 

或いは深淵の者の幹部なのかもしれない。二人揃って。

 

アルトさんはそうだと確定しているし。

 

プラフタさんも、フィリスさんが強いと認めるほどであるならば、その可能性が低くは無いのだ。

 

「プラフタ殿の話は、騎士団でも噂になっているのです。 非常に精密な仕事をする錬金術師だとか」

 

「ちょっと気が利かないけれど、優秀な錬金術師だよ。 才覚なら僕より上かな」

 

「コホン、アルト。 貴方は私と才覚で同格の錬金術師と何度も言っているでしょう」

 

「ふふ、そうだね」

 

なるほど、古いつきあいなのか。

 

どちらもまだ若く見えるのだけれど。

 

アンチエイジング処置をしているのかも知れない。

 

ともかく、装備を確認し。

 

不思議な絵画に入る。

 

ルーシャはもの凄く警戒しているようだけれど。生真面目で精密なプラフタさんは、あまり気にしていない様子だった。

 

なお、不思議な絵画に入ると。

 

以前雷神戦で展開していた、一対の巨大な腕を空中に展開する。

 

拡張肉体としてはかなりの異形だが。

 

まあ実用性があれば何でも良いのだろう。

 

「それで、どちらに進むのですか」

 

「東から順番に攻めてみようかと思っていて、前から方位針の示す通りに東に進んでいます」

 

「……此処が不思議な絵画だと言う事は分かっていますね?」

 

「えっと?」

 

プラフタさんは、少し目を細める。

 

それだけで、強い威圧感を感じた。

 

スールは思う。

 

怖い。

 

この人、きっともの凄く厳しい人だ。まあ性格からも分かるけれども。アンパサンドさん並みに厳しいかも知れない。

 

「す、スーちゃん。 きっとだけれど、不思議な法則が働いて、それでも無駄に終わるかも知れないんじゃないかって、プラフタさんは言っているんだよ」

 

「でも、不思議な法則ってなんだろう……」

 

「この瓦礫、壊しても再生すると言っていましたね」

 

「はい。 試した後です」

 

頷くと。

 

プラフタさんは、自分用らしいポーチから絵の具を取りだすと、瓦礫に目立つ赤色で丸を書いた。

 

瓦礫が破損したわけではないから、丸は消えない。

 

なるほど、こう言う手もあるのか。

 

いや、違う。

 

瓦礫に書かれた丸は、強い魔力を帯びていて。

 

むしろ空中に、丸という図形が固定されているように見えた。

 

「液体の空中固定ですわ……」

 

「行きましょう。 もしも仮説が正しいのなら、探索をある程度短縮できるかも知れませんよ」

 

「はいっ」

 

有無を言わさず、移動を開始。

 

あまり好戦的ではないとはいえ、大きな蚯蚓の獣もいる。

 

それにレンプライアが此処には兎に角多いのだ。

 

プラフタさんは見たところアルトさんと同格くらいの実力者のようだし、不安はないけれど。

 

しかし、それでも戦力が足りるかどうか。

 

砂丘を一つ越えた辺りだろうか。

 

早速周囲をレンプライアに囲まれた。

 

真っ先に敵陣に突入するアンパサンドさん。フィンブルさんとマティアスがそれに続く。

 

敵を攪乱した所に突入。

 

包囲を撃ち抜き、追いすがって来る敵に、ルーシャが光弾を連射、アルトさんが大量の剣をばらまく。

 

見るとプラフタさんは本を拡げ。

 

寄ってくるレンプライアを巨大な拡張肉体の拳で右へ左になぎ倒しながら、詠唱を実施。

 

凄まじい魔力が収束していく。

 

銃を乱射しながら戦っていたスールだが、思わず危険を感じて跳び離れる。

 

瞬間で、敵陣が溶けた。

 

超高出力の魔力砲がぶっ放されたのだと、遙か向こうが大爆発して気付く。からからとアルトさんが笑った。

 

「容赦しないね、相変わらず」

 

「醜い悪意の塊に容赦する必要などありませんよ」

 

「……そうだったね」

 

プラフタさんはあまり表情を見せなかったが。

 

この悪意に対する凄まじい怒りは別だった。

 

レンプライアに対しては徹底的な怒りを感じるらしく。

 

文字通り、容赦なく殲滅した、という訳だ。

 

いずれにしても、これは心強いかも知れない。

 

回収出来る範囲のレンプライアの欠片を集める。

 

乱戦の中、多少の負傷者は出ていたが。

 

そもそもお薬の質が段違いに上がっているのだ。

 

不意を突かれたルーシャの手当を終えると、すぐに次へ。

 

黙々と、砂漠を東に進む。

 

大きな砂丘に出た。

 

アンパサンドさんが先行して周囲を調べるが、すぐに戻ってくる。構えていると、案の定かなりの数のレンプライアを引き連れていた。

 

兵士の奴だ。

 

かなりの数が槍を揃えて突貫してくる。

 

スールは試してみたいと思ったことがあるので、リディーに頷き。

 

そして空中に躍り上がると。

 

足場を作成する。

 

新しい靴で出来るようになった、空中での足場作成。

 

アンパサンドさんはもう完全に使いこなして、空中を自由自在に跳躍して敵を攪乱しているけれど。

 

彼処まで出来ないにしても、砂漠に足を取られること無く、空中を行くと。

 

明らかに柔らかい砂の上を走るよりも早い。

 

真横に回り込むと。ルーシャとタイミングを合わせて、十字砲火の中心に敵を引きずり込む。

 

一気にマガジンにある弾丸全部を敵陣に叩き込み。

 

更にルーシャが光弾を連射。

 

十字砲火に晒された敵は、こうも脆いのか。

 

モロに体勢を崩し。

 

其処に踊り込んだオイフェさんとフィンブルさんが、一気に薙ぎ払った。

 

マティアスは。

 

マティアスは、近くで大きいのを一人で食い止めてくれていた。一動作で砂嵐を起こすような奴だ。放置は出来ない。

 

横っ飛びに空中機動しながら、弾丸を再装填。奴の脇腹に集中して連射連射。体勢を崩した上半身だけの巨大レンプライアに。渾身の唐竹割りを叩き込むマティアス。

 

だが、それでも死にきらず、体を半ば真っ二つにされつつも、豪腕を振るってマティアスを吹っ飛ばす巨大レンプライア。

 

だが、その体に大穴があく。

 

飛んできたプラフタさんの巨腕だった。

 

爆発四散するレンプライア。

 

宝石が、周囲にぼろぼろと散らばった。

 

着地。

 

この瞬間を、一番気を付けろ。

 

そう、鍛冶屋の親父さんにも言われた。

 

魔術で空中機動する戦士は、いないこともないらしい。

 

だけれども、空中機動を終えて、着地した瞬間、どうしても感覚の違いから、油断してしまう。或いは頭の切り替えが出来ない。

 

その隙を突かれて、敵に刺されたり。或いは地面から躍り出てきた獣に食われたり、というケースがあるらしい。

 

周囲を念入りに伺ってから、皆の所に戻る。

 

レンプライアを片付けて、戦利品を回収中。

 

兵士型の中からも、貴重な鉱石や薬草がかなり出てきていた。

 

リディーは状況に応じて、支援魔術を皆にかけていたから、へとへと。

 

巨大な砂丘の下にいた敵も一掃したので。

 

砂の流れを確認。

 

砂に埋もれない位置で、小休止をとる。

 

戦利品をルーシャと分割しながら、軽く話した。

 

「どうだった、さっきの十字砲火」

 

「良い感触ですわ。 銃弾の火力が上がっているから、敵の注意をそらせますし」

 

「レンプライアも、流石に多方向からの同時攻撃には対応しづらいみたいだね」

 

「今後はもっと錬磨していきましょう」

 

頷く。

 

ルーシャとの連携技になるのか。

 

こんなに綺麗に決まるとは思わなかった。やってみるものである。

 

マティアスの怪我もそれほど酷くはなく。

 

怪我の手当が終わった所で、再び砂漠を歩き始める。瓦礫が相変わらず山のようにあるけれど。

 

どれも共通して。

 

破壊しても即座に修復されるようだった。

 

足を止めるプラフタさん。

 

釣られて足を止める。

 

そして、思わずあっと声を上げていた。

 

「リディー、止まって!」

 

「どうかしたの……て、ああっ!」

 

「やはりそうでしたか」

 

プラフタさんがぼやく。

 

其処の壁には。

 

最初にプラフタさんが書いた丸が、くっきりと残っていた。

 

 

 

一度不思議な絵画から出て。

 

応接室を貸してもらい、安全に休憩する。

 

合計六回、レンプライアと戦い。その間ずっと空中機動で苛烈な回避盾をこなしてくれていたアンパサンドさんは。

 

やっぱりこういう小休止休憩があると、その度に横になって休む。

 

やはり弱みは見せたくないのか。

 

毛布にくるまって、向こうを向いて眠ってしまうし。寝息も聞かせない。

 

プラフタさんはそれを一瞥だけして。

 

そして話し始めた。

 

「恐らくあの不思議な絵画ですが、東西、南北でつながっていると見て良いでしょう」

 

「いつのまにか絵の端から端へと飛ばされてるって事ですか?」

 

「違いますよスール」

 

「うっ」

 

次の探索で説明すると言う。

 

いずれにしても、物資の残りを確認。六回の戦闘を経ても、まだまだ充分な物資がある。

 

爆弾やお薬は毎回仕事の合間にせっせと作っている。

 

現在はドナーストーンを更に圧縮した雷撃爆弾、ドナークリスタルや。

 

レヘルンを更に増幅させた氷爆弾、シュタルレヘルンも製造している。

 

これらは今後、状況に応じて戦闘に投入していくつもりだ。

 

今回も持ち込んできているが。

 

バトルミックスをする必要性もないレベルで戦闘が安定していたので。結局試す必要がなかった。

 

やはり一線級の人が一人来てくれると助かる。

 

「それでプラフタ、君はどう見る」

 

「絵のタイトルはエテル・ネピカと言いましたか。 500年以上前の不思議な絵画だと言う事を考えても……描き手があの砂漠と代わらない世界に求めていたのは、恐らく「永遠」でしょうね」

 

「永遠……あの砂漠がですか」

 

「そうです。 人がいない、静寂の世界。 そして記憶だけがそこにある都合の良い自分だけの永遠。 それを形にすると、ああいう砂漠になるのでしょう」

 

なんだそれ。

 

思わず不快感が喉からせり上がってきた。

 

スールも、世の中にはろくでもない人がたくさんいることくらい分かっている。匪賊だって実物を見たし。そもそも、自分達が昔はそうだった。今だって、それから脱し切れているかは分からない。

 

だけれど、例えばネージュのように、外敵から身を守るために要塞を作るというのならまだ分かるのだ。

 

あの絵は、なんというか。

 

全てに対する虚無というか。

 

破滅的な思想の塊に思える。

 

むっとしているのに気付いたのか。

 

スールがフォローしてくれた。

 

「スーちゃん、今此処にいるみんななら、きっと聞いてくれるよ。 話してみて」

 

「……うん。 プラフタさん。 この世には、本当にどうしようも無い人がたくさんいるとスーちゃん思うんです。 スーちゃんも、自分から見て気持ち悪いとかそんなどうしようもない理由で、多くの人を苦しめたりもしました。 今ではそれが本当にどうしようもないことだったと思っています。 でも、世の中では、自分から見て気持ちが悪い相手には何をして良いって本気で考えている人間がたくさんたくさんいて、それがむしろ当たり前だってのが事実だと思うんです」

 

「その通りです。 人間という生物が平均的にどうしようもないのは事実ですね」

 

「ふふ、スーも分かってきたね」

 

プラフタさんは反発するかと思ったけれど。

 

ぶちまけてみると、意外に綺麗に同意してくれた。

 

そうか、それならば。

 

何か答えが見つかるかも知れない。

 

「あの絵はその結実に思いました。 自分から見て気持ち悪いから、みんな消えちゃえ、みたいな。 そんなのって、ありなんでしょうか」

 

「考えるだけならどんなことでも自由です。 ただしスール。 貴方が思ったように、気持ち悪いと思っただけで相手を迫害する。 それほど邪悪な人間の性質は他にありませんし、人間は何年経ってもまったくその愚かな性質から抜け出せていないのも事実です」

 

「プラフタさんも、何か見ているんですか」

 

「私の比翼とも言える錬金術師は、容姿が「気持ち悪い」という理由で、実力をまったく評価されませんでした。 あげく嫉妬され、暗殺者まで送りつけられたことがあります」

 

アルトさんは笑みを浮かべているが。

 

何となく分かった。

 

ひょっとしてそれ。

 

アルトさんの事ではないのだろうか。

 

というか、アルトさんを見ていて、前から不思議だったのだ。

 

この人、イケメンにしてもあまりにも出来すぎていないか、と。

 

アルトさんのアトリエの周囲には、女の子が集まってキャーキャー騒いでいるが。

 

実際にアルトさんと話してみると、おじいさんみたいな言動だとリディーも指摘するように、老成している。

 

アルトさんは多分だけれど、見た目通りの年齢でも姿でもない。

 

口をつぐむスールに。

 

プラフタさんは、なおも言う。

 

「記憶が呼び起こされるという事でしたね。 あの砂漠を歩いていれば、きっと色々と発見があるでしょう。 いずれにしても、先ほどの探索で、大まかな広さについては大体見当がつきました。 全体の探索には、恐らく四日……五日ほどはかかるでしょう」

 

「ほう、プラフタ、流石だね。 もう其処まで見抜いたのか」

 

「ええ。 それよりもアルト、もう少し戦闘に参加しなさい」

 

「ふふ、相変わらず君は厳しい」

 

アルトさんは余裕のある笑みを浮かべるが。

 

マティアスは引きつっていた。

 

マティアスからしてみれば、暗殺者とか、色々洒落にならないから、なのだろう。

 

ルーシャが挙手して、技術的な問題を幾つか聞き始める。

 

立て板に水を流すようにプラフタさんはそれに答えてくれて。

 

非常に参考になるので、スールもリディーと一緒にメモをとった。最近はかなり専門的なことも分かるようになってきた。用語はまだ苦手な部分もあるけれど、勘である程度は補完できる。

 

話を少しした後、フィンブル兄に休むように言われて。

 

頷いて、横になる。

 

そういえば、フィンブル兄は、今傭兵としての評価はどんな感じなんだろう。

 

まあ休めと言われた以上、今聞くのはあまり良い事ではないか。

 

しばし眠って。

 

時間と同時に、プラフタさんに起こして貰う。

 

第二ラウンド開始だ。

 

 

 

絵の中に入る前、アンパサンドさんとプラフタさんが話をしていたが。

 

絵に入ると、二人は即座に行動を起こした。

 

いきなり二人して、上空に飛んでいったのである。

 

これは打ち合わせていたことらしい。

 

まあプラフタさんだ。

 

空を飛べてもおかしくない。何しろ普段から、浮きながら移動しているくらいなのだから。

 

しばし飛んで行ったのを見送り。

 

そして、降りてくるまで周囲を確認。

 

壁に書かれた丸は、今では大きな存在感を放っていた。

 

程なく、二人は戻ってくる。

 

「やはり仮説は間違いないですね」

 

「……高い山の上に上がると、確かに地平線はうっすら丸みを帯びている事があるとは聞きましたが」

 

「え、何の話」

 

「簡単に説明すると、今我々は球体の上に立っています」

 

プラフタさんが説明してくれる。

 

ぽかんとしてしまった。

 

一度絵を出る。

 

そして、エントランスで、話を詳しくされた。

 

プラフタさんが取りだしたのは、球体。地球儀、というらしい。

 

「こう言う話を聞いたことはありませんか? 高い山などの上から地平線、水平線を見ると、丸みを帯びていると」

 

「あ、それ聞いたことがあります」

 

リディーが挙手。

 

そういえば、そんな話を聞いた気もする。

 

頷くと、プラフタさんは教えてくれる。

 

「驚かないで聞いてください。 この世界そのものが球体なのです。 我々は、巨大な球体の上に立って歩いている、と思ってください」

 

「えっ!」

 

「ええーっ!」

 

驚くリディーとスール。

 

プラフタさんは地球儀を浮かせると説明してくれる。

 

ものが集まると重力というものが生じる。

 

更に回転すると遠心力というものも生じる。

 

この我々がいる世界は、あまりにも巨大であるが故に引きつける力が生じていて。故にその上を歩いていられる、というのである。

 

確かに、山の上から地平線を見ると、それがうっすら丸みを帯びているのであれば、それはあり得る話ではある。

 

だが、あまりにも凄すぎる話だからか。

 

スールは頭がくらくらした。

 

「ええと、世界は丸くて、それで……」

 

「仕方が無い事ではあります。 一部の学者や高度錬金術では当たり前の事なのですが、そもそも知識というのは必要がなければ触れません。 知らないのは、仕方が無いとも言えます」

 

「うう、なんだろう。 この凄く恥ずかしい気分……」

 

「まあそれは良い。 とにかく、頭を切り換えて」

 

アルトさんは優しく言うが。

 

目が笑っている。

 

この状況をあからさまに楽しんでいる。

 

悔しいけれど。

 

しかしながら、そういう物的証拠があるなら認めなければならないし。

 

何よりも、プラフタさんが嘘をつくとも思えなかった。

 

そのまま、順番に話を聞く。

 

どうやらこの不思議な絵画では、その世界が忠実に再現されているらしい。本来の世界ほどの大きさではないが。

 

さっき、上空から計測したところ。

 

丁度直径にして50000歩ほどの球体の上に立っているという。

 

上空から地平線の様子を計測。

 

それに、先ほどプラフタさんが、丸から丸に戻るまで、歩いて掛かった距離などを計算すると、ほぼ間違いないとか。

 

その球体の上を調査し尽くすとなると。

 

確かに四日や五日はかかってくる。

 

「勿論、全ての箇所を調査する必要はないでしょう。 何カ所かで上空から状況を確認し、何か目だった場所があれば其処を調べる。 それでかまわないかと」

 

「わ、分かりました……」

 

「頭がおかしくなりそう」

 

本音を零すスールだが。

 

ルーシャもそれには苦笑いした。

 

悔しいが、ルーシャは知っていたのだろう。

 

フィンブル兄は小首を捻っていたが。マティアスとアンパサンドさんは平然としている。或いはマティアスは知っていたのかも知れない。

 

不要な知識は。

 

基本的に趣味でもない限り取り込まないのが人間だ。

 

別に知らなかった側の方が異常、と言う事は無い。

 

ただ、リディーとスールは、知識を必要とする立場だ。

 

最初から、きちんとした師匠についていれば。

 

こんな恥ずかしい勘違いをする事も無かったのかなと思うと、少しばかり悔しかったのも事実である。

 

逆に言うと、自分達が馬鹿だともっと早くに気付いていれば。

 

此処でこんな恥をさらすことも無かったかも知れない。

 

かなり悔しい。

 

本当に昔の自分達を、助走をつけて殴りたかった。

 

まっさらの球体を出してくる。プラフタさんは。そこに線を引いて。幾つかの点を打っていった。

 

「この通り、全部で16箇所ほどの上空から調査すれば、絵の全体は把握できるかと思います。 それで地図も作れるでしょう。 記憶が呼び起こされた地形に、何か特徴はありましたか?」

 

「強い魔力が通っていたくらいです」

 

「なるほど、それは私が上空から探査しましょう」

 

「プラフタ、いいのかい? 過保護にするとソフィーが怒るよ?」

 

アルトさんが肩をすくめて、スールはぞくりとした。

 

プラフタさんとソフィーさん、やはりあまり上手く行っていないのか。

 

ただ、アルトさんとプラフタさんがやると言っている以上、仕方が無い。此方に責は無いはずだ。

 

再び、砂漠の絵に入る。

 

そして、プラフタさんの言うとおり、まずは北に向かって歩き出す。

 

レンプライアは多いが、プラフタさんが加わってから、格段に楽になった。

 

勿論加減はしているのだろうが。

 

それでもアルトさんよりも、ずっと積極的に戦闘に参加してくれる。

 

近距離では一対の巨碗で。

 

遠距離では高火力の魔術で。

 

不意を打たれようが乱戦だろうが、確実に安定して戦ってくれる。好戦的かというとそうでもないが。

 

ただ、敵には容赦も呵責もなかった。

 

相手がレンプライアだと言う事もあるのだろうか。

 

それより何より。

 

この人は、人の悪意に対して、凄まじい怒りを覚えているようにも思えるのだ。戦いを見ていると、なお強くそう感じる。

 

予定の一箇所目に到着。

 

かなり精密な測量を要求されたので、凄く緊張した。プラフタさんは教え方が丁寧で論理的だけれど、その分イル師匠以上の鬼教官だ。

 

上空にプラフタさんとアンパサンドさんが最初に上がる。

 

どうやら計算をアンパサンドさんに頼んでいるようで。

 

ホムの得意分野の有効活用である。

 

降りてきたアンパサンドさんが、難しい計算を暗算でぱぱっと片付けると、地図を開いて、其処に色々プラフタさんが書き込んでいく。

 

そして、東を指さした。

 

「彼処で、また記憶を見られると思います」

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