暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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次はロジェさんです。

本作では関係修復にしっかり成功しているので、それなりの試験を出してきます。

それなりの。


2、お父さんのA級試験

二番目に回す事にしたお父さんの試験。開始は、国への物資納品を終えてすぐ。国への物資納品も、これで何度目か分からないが。いずれにしても、役人は笑顔で受け取ってくれる。もう、質については心配されていないようだった。

 

それはありがたい。

 

そして、ここからが本番だ。

 

いつ国の事業への参加が要求されるか分からない。いわゆる三傑ですら、相当に忙しい状態なのだ。

 

この間のような、ダーティーワークの依頼がいきなり来る可能性も、決して低くは無いのである。

 

だからこそ、仕事は的確に。

 

かつ素早く終わらせなければならない。

 

お父さんに、試験の話をすると。

 

しばらくレシピを黒板に描いてああでもないこうでもないと呟いていたお父さんは。静かに振り返った。

 

「そうか、そんな時期か。 パイモンというベテランと、ルーシャの次はお前達か」

 

「二人はもう受かったの?」

 

「ああ。 それほど難しい試験にはしなかったからな。 見たところ、どちらもAランクに相応しい実力は有していたし、それならそれを見せてもらうだけでいいだろう、というのが俺の判断だ」

 

確かにそれは、ある意味合理的である。

 

頷くと、試験をして欲しいと、もう一度言う。

 

お父さんは少し考え込んだ後。

 

試験内容を口にした。

 

「俺と出来を争った霊薬あっただろう」

 

「うん。 あれがどうかしたの?」

 

「もう一度作れ。 ただし、半分の時間でな。 それを試験とする」

 

「えっ……うん」

 

言葉に詰まる。

 

実のところ、作る事自体は簡単だ。入手が難しい素材や、中間生成液などは、コルネリア商会に登録してある。

 

今でも欲しいと言えば、すぐに出してきてくれるはずだ。

 

問題は、お父さんの事だから、半分の時間で。

 

前よりも質を上げてくることを要求してくる、という事である。

 

それくらいは、お父さんが正気に戻った現状、スールでも分かる。

 

お父さんは実際に使える薬を求めている。

 

緊急時に、あの霊薬を使えないと意味がない。

 

そういう風に考えて。

 

即座に用意できるかどうか。

 

それをテストにして来た、と言う事だ。

 

必要な時に。

 

必要な薬が作れなかった。

 

お父さんに取っては、それはとても悲しい過去の出来事だ。それによってお母さんまで喪っている。

 

それはお父さんの責任では無い。

 

摂理に反しない範囲の薬では、どうしようもない病気だったのだ。それこそ、三傑にもっと早く出会っていれば、どうにかなった、というような状況であって。多くの不幸が満ちているこの世界には、ありふれた不幸の一つ。

 

それを今のお父さんは、受け入れられている。

 

そして、それについて。

 

スールも不満を零すつもりは無い。

 

昔は駄目親父とか思っていたが。

 

そんな風な思考は、もうとっくに捨てたし。昔の自分に今出会ったら、問答無用で殴り倒している。

 

スールは人の哀しみも痛みも、もう知ったからだ。

 

だからこそ、お父さんは。

 

お薬を必要な時に作れる事を要求してきた。

 

それならば、その試験、受けて立つだけである。

 

リディーと頷きあうと、すぐにコルネリア商会に出向く。リディーはリディーで、前に使ったチャートを引っ張り出してきて。そこから、またお薬を作るためのタスクを精査するのだ。

 

中間生成液も、どうしても必要なものだけ。

 

現状、手元にない薬草を使ったものや。時間が極めて掛かるものだけを買い取る。

 

それだけでも結構な出費になるのだが。

 

お金を落とす事は、それだけ周囲の益になる。

 

お金は独占するべきものではない。

 

周囲に流れるようにするべきものなのだ。

 

そんな事も理解出来ていない馬鹿が、お金を独り占めして、多くの人々を苦しめることになる。

 

阿呆共の真似をするつもりは無いし。

 

稼いだお金はどんどん周囲に流す。

 

勿論必要な貯金はするけれど。

 

使う時にけちるつもりもない。

 

それだけだ。

 

中間生成液を必要な分購入して、戻ると。

 

既にリディーがチャートを作ってくれていた。此処からは、時間との勝負になる。

 

前はほぼ一月ほどだったけれど。今度は二週間で、同じ事をしなければならない。幾ら一度やった事を再現するのがある程度得意とは言え。前にこの薬を作ってから、そう時間は経っていない。

 

かなり厳しい勝負になるけれど。

 

それでもやらなければならない。

 

お父さんの事だから、何度でも挑戦しろと言ってくるだろうけれども。しかしながら、そもそもお父さんは、必要な時に必要なお薬を作れずに、お母さんを喪ったのだ。それを考えると。

 

一度で試験は成功させたかった。

 

摂理を越えたお薬は、その内何とか手がけたい。

 

ソフィーさんくらいになると、死んだ人を蘇生させることも可能だろうか。

 

いずれにしても、この間見たイル師匠の使ったお薬。

 

あのレベルになってくると、もう完全に摂理を越えていたし。

 

イル師匠よりも更にソフィーさんの方が格上という事だから。

 

きっと、死者を復活させることに近い事が、出来る可能性は高い。

 

だが、それでも限界はあるだろう。

 

外で顔を洗い。

 

手を消毒殺菌すると。

 

作業開始。

 

釜を綺麗に洗っているリディーを横目に、自分もチャートを確認。

 

この間以上の質で。

 

神秘の霊薬を作り上げなければならない。

 

そして作ったお薬は死蔵させるのでは無く。

 

騎士団に納入して、現場で使って貰う。

 

実際問題、前回の試験でお父さんとリディーとスールが納品したお薬は、激戦の中で騎士団が利用。

 

重傷者を助けることに成功したという。

 

お礼の手紙も来ている。

 

本当に助かった。騎士を引退しなければならない程の傷だったが、それも帳消しに出来た。

 

感謝してもしきれない。

 

それどころか、持病まで幾つか治った。

 

奇跡の御技に乾杯。

 

そう短い手紙が届いて。

 

二人で感激したのを、よく覚えている。お父さんは、少し寂しそうな顔をしていたが。悲しい訳ではないようだった。

 

呼吸を整えると、調合を開始。

 

此処からは、交代しながら、一気に作業をしていくことになる。

 

最初の方の作業は飛ばすけれど。

 

それはそれ。

 

以前とは技量も違ってきているから。

 

それも可能な限り生かす。

 

「この素材使って」

 

「合点」

 

薬草を丁寧にすり潰し、不純物を全て落とし、固形分を濾し取った液体を、リディーから受け取る。

 

やはり、どうもリディーは素材の声が聞こえているらしい。

 

薬草を採るとき。

 

何ら迷いが無かったからである。

 

また、以前は代用品として用いていた素材の内。

 

本来のレシピに記載がある、必要な薬草も幾つか確保できている。例えば、以前踏破した雪山や。

 

或いは、不思議な絵画の中で。

 

それぞれ回収出来たのだ。

 

これらも用いる。

 

代用品とでは、やはり薬の出来が根本的に違ってくる。これは素晴らしいと、思わず呟いていた。

 

釜から光が溢れるようだ。

 

三日間、交代で作業をほぼぶっ通しで行う。

 

その間、スールはプラティーンを作成して、今までよりも更に純度が高いものを作る事に成功していた。

 

ハルモニウムには、まだ技量が足りない。

 

そう言われていたことは覚えている。

 

だから作業引き継ぎの時に、気付いたコツなどを聞いて。それを参考にする。リディーが作ったプラティーンのインゴットを見て、新しく使った技量も、ある程度勘で分かるようになってきている。

 

四日目。

 

少し休憩を入れるようにと、お父さんに言われた。

 

言われた通り、少しまとまった睡眠を取る。

 

現状では、多少余裕のある状況で、タスクを処理し続けられている。無理をすれば、失敗する確率も上がる。

 

そんな事で失敗するくらいならば。

 

しっかりベストのコンディションで、成功させなければならない。

 

今作っているお薬は、趣味のものではない。

 

戦いの最前線で使われ。

 

多くの人の命に、実際関わるものなのだ。

 

焦って作ってはいけないし。

 

勿論手を抜いてもいけない。

 

休憩を終えた後は、再び作業に戻る。リディーが調合をしている間に、スールは裏庭で体を動かし。

 

また、受け取ってきた大型荷車に飛行キットを取り付けて。

 

自分で操作を実施。

 

きちんと動くかどうかを確認しつつ、トラブルが発生したときの対応についても、低高度で試していた。

 

実際問題、傾けすぎて落ちると言う事は無い。

 

重心が崩れたと判断した場合、飛行キットが自動的に立て直すようになっているのである。

 

このレシピ、相当洗練されている。

 

故にスールではまだ手を入れられないなと思うだけなのだが。

 

それでも、一つずつ危険かも知れない事については、試しておかなければならない。

 

何が出来るのか。

 

それは全てメモにとっておく。

 

速度を上げながら壁に突っ込もうとしたり。

 

或いは地面スレスレで傾けて、翼が地面に接触しそうな状況を作って見たりと。

 

色々試してみるが。

 

あらゆる悪意に満ちた実験を。

 

するりするりと、飛行キットはかわしていく。

 

実験内容をメモにとり。

 

そして、荷車を着地させ。そして油紙と皮でカバーを掛けて覆っておく。全自動荷車の機能もついているので。

 

基本的に盗まれる恐れは無い。

 

スールの指示で、停止を掛けているからだ。

 

荷車に何か積んでいれば、それをとられるかも知れないが。少なくともこの荷車は、スールの言う事しか聞かない。

 

アトリエに戻った後。リディーにメモを見せ、幾つか話し合う。頷いたリディーは、実験内容について、幾つか質問をして来たので。それについても話をしておく。

 

それから引き継ぎを受けて、調合を開始。

 

前は三人がかりでやっとお父さんに勝ったが。

 

一度やった事は、上手に再現出来るのがスールの強みだ。

 

こういう失敗が許されない薬については、その強みを最大限に生かせる。

 

今度はリディーが裏庭に出て、飛行キットの実験を開始する。一度だけスールは外に出て、荷車の主導権をリディーに引き渡して。それから調合を続けた。

 

更に三日。

 

再び休むようにお父さんに言われる。

 

チャートをしっかり確認し。

 

問題が無いことを再確認。

 

タスクは確実に処理出来ている。

 

また、薬の品質も確実に上がっている。

 

以前も自分で作ったものなのかと、信じがたいほどの魔力を放っていたが。今回もアトリエが暖かくなるほどの強い魔力を感じる。

 

昔は魔力なんか分からなかったが。

 

今はそれも違う。

 

見る事も感じる事も出来るから。

 

以前より更に凄い薬になっていることが分かるのだ。

 

中間生成液を回収して、一旦また休む。

 

疲れが溜まってきていたからか、ほぼ一日、二人揃って眠ってしまった。この辺りは、まだ体力のペース配分が甘いと思うけれども。

 

それでも、以前より雲泥の速度で作業をやれている。

 

ルーシャの補助も無い事を考えると。

 

格段の進歩だとも言える。

 

短期間でこうも腕が上がった理由は。

 

あまり考えたくないけれど。

 

恐らく、深淵に引きずり込まれて。世界の真実を見せられてしまったことが原因なのだろう。

 

リディーに至っては人格まで大きく豹変しつつある。

 

スールも、きっと。

 

自覚がないだけで、狂気に蝕まれつつある筈だ。

 

首を横に振って、雑念を追い払い。

 

あらゆる技術を駆使して、徹底的に細かく作業を進めていく。

 

そして、十三日目。

 

中間生成液が、全て揃った。

 

最後の仕上げだ。

 

前に作った霊薬とは、比べものにならない品質……とまではいかないが。ぐっと品質が上がっている自信はある。

 

これならば、きっと。

 

前以上に。酷い怪我をした人だって、助けられる。酷い病気だって、体から追い出す事が出来る。

 

そう信じ、二人で最後の調合を行う。

 

混ざり合い。そして、本来ならあり得ない要素が混じり合った結果。

 

霊薬が完成する。

 

安定しているのを見て。

 

ほっとした。

 

最高純度まで高めた蒸留水で洗った薬瓶に、霊薬を移していく。お父さんは地下室で作業をしていたが。

 

どうやら薬が出来たと察したらしく。

 

上がって来た。

 

「どうやら、仕上がったようだな」

 

「うん。 今瓶に移しているところ」

 

「見せてみなさい」

 

「これ、どうかな」

 

スールが手渡すと。

 

お父さんはしばしお薬を上から下から見ていたが。目を細めて、やがて頷いてくれた。これなら良いだろう、と。

 

「前はルーシャと三人がかりで俺を越えたが、二人がかりで俺よりいいものを作れるようになったな。 これならば、もう何処に出しても大丈夫だろう。 Aランクのアトリエを任せるのに相応しい人材だよ」

 

「ありがとう、お父さん!」

 

「やるでしょ、スーちゃん達!」

 

「調子にのるな。 まだまだ世の中には上が幾らでもいることを、お前達自身が良く知っているだろう」

 

しっかり釘を刺してくるお父さんだが。

 

少しだけ、笑顔は優しかったかも知れない。

 

相談をした後。

 

お薬の三分の一はコンテナにしまい。

 

残りの三分の一は、コルネリア商会に売りに行く。神秘の霊薬は非常に貴重な品だと言う事で、コルネリアさんも喜んでくれた。

 

勿論、かなりのお金を払ってくれたので。

 

喜んで受け取る。

 

これは正当な売買で得たお金であって。

 

受け取る資格がある。

 

そして受け取ったからには。

 

きちんと生かさなければならないお金でもある。

 

無能な金持ちなんかと同じように死蔵させてはいけないし。お金が足りない人の所には、回るように工夫しなければならない。

 

更に三分の一は、直接王宮に持っていく。

 

お薬は幾らあっても足りない。そういう話は聞いているし、喜んで貰えると思ったのだけれども。

 

案の定喜んで貰えたので、嬉しかった。

 

後で品質を検査した後、代金を払ってくれるという。

 

まあこれについては。それほど不安視しなくても大丈夫の筈だ。

 

お金の一部を使って、本と布、それにお菓子を幾らか買った後。

 

シスターグレースの教会に持っていく。

 

服を直に買うよりは、布を買っていった方が良い。今いる子供にあわせて、シスター達が服にしてくれるからだ。

 

以前そういう話を聞いていたので、こういう処置をしたのだが。

 

シスターグレースは、気が利いていると言って喜んでくれた。

 

そういえばパメラさんがいない。

 

その話を聞くと。

 

シスターグレースは言う。

 

「パメラであれば、力が必要とされて、今この国三番目の都市に出向いています。 来月までは帰って来ないでしょう」

 

「パメラさん、魔術か何か使えるんですか?」

 

「使えるも何も、凄まじい使い手ですよ。 此処でずっと働いてくれれば、子供達に食事の種になる魔術を教えてくれるのですけれど」

 

残念そうにシスターグレースが言う。

 

後は、多少のお薬もついでに引き渡しておく。応急処置などの時に役立つだろうという判断からだ。

 

これも随分喜んで貰った。

 

お世話になったのだし、これくらいは当然である。

 

後はうちに一旦戻る。

 

アトリエでは、お父さんが珍しく料理をしていた。ちゃんと美味しい料理を作ってくれる。

 

リディーやお母さんほどではないけれど。

 

少なくともスールが作る料理とも呼べないナニカよりはぐっとマシだし。ちゃんと食べていて美味しい。

 

だから、今では。お父さんが作る料理も、スールは好きだった。

 

しばし、三人で食卓を囲む。お父さんも心の傷が少しずつ回復しつつあるのか。食事の時に、喋る事が多くなってきていた。

 

世間一般で言われているように、大勢で食卓を囲むのが一番だというのは。それは価値観としては偏っているとしかいえない。

 

一人で楽しみたい食事だってある。

 

ただ、スールは今、こうしてリディーとお父さんと食卓を囲むのが嬉しい。

 

他の人には強制しない。

 

それだけで充分だ。

 

「そういえばお父さん。 この間調べた不思議な絵画でね、お父さんとお母さんの過去の映像が出てきてね」

 

「そうか、変わっていないんだな」

 

「え……!?」

 

「俺も昔彼処に調査で入ったことがあるんだよ。 エテル=ネピカとかいうタイトルの絵だろう?」

 

待った。

 

確かお父さんが現役だった時代となると、恐らく先代王の頃の筈だ。

 

そうなってくると、先代王の時代にも。錬金術師の調査が、不思議な絵画に入っていたのか。

 

「オネットと一緒にな。 ただあの先代王の強欲爺めが、直接金になりそうにないと判断すると即座に俺たちを引き上げさせやがった。 今は幽閉されているという話だがいい気味だ。 永遠に閉じ込められていろとしかいえんな」

 

「……」

 

「今話題にしたと言うことは、俺とオネットが幸せだった頃の映像だろう? どうだった」

 

「……それ以上、言う事は無いかな」

 

そうか、というと。

 

お父さんは、それ以上その話には触れなかった。

 

それにしても、本当に先代の庭園王は。芸術家を気取って、要塞の機能を持っていた王都を滅茶苦茶にし。

 

挙げ句の果てに近視眼的な行動で、不思議な絵の真の価値も引き出せさえしなかったのか。

 

確かにミレイユ王女が幽閉したのも納得だし。

 

二度と出てくるなという言葉しかない。

 

いっそのこと、誰も気付かないうちに餓死でもしてくれればいいのだがと思ったが。流石にそれはやり過ぎか。

 

もしも死ぬのであれば。

 

正式に法に沿って裁きを受け。その結果、死んで欲しい所だ。

 

いずれにしても、この間の事故を見ても思ったが。国の最上位に立つ人間が無能だと、それはそのまま災厄になる。

 

王という存在一人に全てを押しつける仕組みが正しいのかは、議論が続いているらしい。見聞院でちらっと読んだのだけれど。そういう議論については、古い時代からあるそうだ。

 

ただ現在の状況では、どうしても王が権力を握るのが現実的。というのが結論であるらしく。

 

もしも権力をもっと分散して、凡人でも国を動かせるようにするためには。

 

もっともっと世界が安定して。

 

人間が安全に暮らせる世界が来なければ無理だろう、という結論も出ていた。

 

それについてはスールも同意だ。

 

そもスールも、リディー同様「みんな」何てものはこれっぽっちも信頼していないし。彼らに任せてこの世が良くなるなんて幻想だとさえ思っている。

 

「みんな」の一人だったからこそ分かるのだ。

 

夕食が終わった後、リディーに声を掛けられる。

 

「難しい顔で考えてたけれど、どうしたの?」

 

「誰か一人が国の最高責任者になるとして、別にそれは血縁者で無くても良いよね」

 

「うん。 でも、前に見聞院で読んだでしょ。 色々と問題も起きるって」

 

「……いずれにしても、まだスーちゃん達でどうこう関与できることじゃないね」

 

頷かれる。

 

眠ろうと言われたので、提案に従う。

 

そろそろ、国のお仕事がある筈だ。時間もごっそり取られる。

 

アダレットも、三傑が大暴れしているとは言え、末端までその凄まじい力は行き届いていない。

 

人手はまったく足りていないし。

 

幾らでも物資は必要な状況。インフラの整備だって不十分だ。

 

だから、力を得たからには。

 

働かなければならないのである。

 

案の定、翌朝。

 

マティアスが来て、仕事である事を告げてきた。

 

やはり来たかと思いながら、飛行キットつきの荷車の試運転とする。

 

城門前に降り立った、翼持つ荷車を見て、マティアスは驚き。フィンブル兄も、流石に困惑したようだった。

 

「こういうものがあるとは聞いていたが。 これに乗って移動するのか」

 

「低空で移動するので大丈夫です。 大物以外なら、攻撃も初撃は確実に防げます」

 

不安そうなフィンブル兄。

 

アンパサンドさんは逆に、興味津々に色々聞いてきて。そして、機能に満足したのか、頷いていた。

 

今回はルーシャとオイフェさんがいないが、代わりにパイモンさんがいる。

 

パイモンさんは、この飛行キットを何度も使ったらしく、とても懐かしがっていた。目を細めて、色々な思い出話をしてくれる。その思い出話は少し長かったけれど、どれも参考になった。

 

さて、仕事の内容だが。インフラ整備作業の護衛である。ちょっと厄介な山の中に道を通すらしく、その途中で襲い来る獣を全て駆除するのが仕事だ。騎士団の部隊が既に現地にいるらしく、彼らとの連携任務になる。

 

お薬は充分。爆弾もばっちり。

 

では、このお仕事が終わってから。

 

次はアルトさんの試験を受けよう。そう、スールは、事前にリディーと決めていた。

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