暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ 作:dwwyakata@2024
本作のソフィー先生は深淵の申し子。
それをもう知っている双子にも、やはり容赦はありません。
フィリスさんのアトリエを訪れる。フィリスさんが、金属と会話していた。文字通りの意味である。勿論狂人の仕草では無い。
「ふーん、なるほどね。 じゃあコレなんかどうかな。 うんうん」
そう言って、インゴットを粘土のように自在に加工している。どう見てもあれはハルモニウムなのだが。
そしてリディーにも聞こえるのだ。
気むずかしいハルモニウムが喜んでいるのが。
ハルモニウムを加工しているときは、基本的に兎に角気むずかしい声しか聞こえない。それがフィリスさんが触るとどうだ。常に嬉しそうにしている。そしてフィリスさんには極めて具体的にハルモニウムの要望が聞こえている。これはほぼ確実だった。
しばしして、ハルモニウムをバングルに仕上げたフィリスさんは満悦した様子で、待っていたらしい獣人族の傭兵に手渡す。捧げ受け取ると、傭兵はいそいそと出ていった。深淵の者の関係者だろう。そして、深淵の者の関係者にも、フィリスさんが怖れられているのは、あの光景を見るだけで確実だった。
フィリスさんが調合や、それに類する事をしているのはあまり見ていなかったが。
やはりギフテッドなのだと再確認させられる。
それも超ド級の。本当に、鉱物やその類とは、友達も同然なのだろう。
山をつるはし1丁で粉砕するわけである。
「試験終わったってね。 お疲れ様ー」
「ありがとうございます。 フィリスさん、ソフィーさんに会いたいです。 どうすればいいですか?」
「あたしなら此処にいるけれど?」
背筋が凍り付く。
スールは、少しちびったようで。顔色が完全に真っ青になっていた。
後ろから掛かった声。
そして、いつの間にか至近距離の前に、ソフィーさんはいた。
順番に目を覗かれる。
その目は、まるで深淵の権化。
至近距離から覗かれると、そのまま心に黒い手が入り込んで来て。滅茶苦茶に陵辱されるかのようだった。
感情が薄くなってきている今でも、恐怖が胸郭の中を踊り回る。
ドラゴンなんか、比べものにならない。
中級のドラゴンですら、弱体化無しで下せたのに。
とてもではないけれど。この人に勝てる道筋なんて、見えるはずも無かった。
「リディーちゃんはもうちょっと。 スールちゃんはまだひと押しいるかなあ。 フィリスちゃん、どう思う?」
「わたしはもういっそ、予定の邪神よりももっと強いのと戦わせるべきだと思いますけれど、ソフィー先生」
「うーん、この実力だと流石に勝ちの目がないかなあ」
ソフィーさんとフィリスさんがさらりと恐ろしすぎる会話をしている。
邪神。
まさか、次の試験は邪神が相手なのか。
ファルギオルは、病み上がりの上、極限まで弱体化を受けていて、やっと勝負になった。それでも後ちょっとで負けていた。不確定要素も含めて、運がとても良かった。正直な話、現在の状況でも勝てる可能性は極めて低いだろう。
ましてや、他の。
病み上がりでは無い邪神と戦えというのか。
ひっと、スールが悲痛な悲鳴を上げた。
ソフィーさんがスールの目を覗き込みながら、恐ろしい事をいっているからだろう。恐ろしすぎて、身動き一つできないスール。嗚呼。リディーも、どうすることも出来ない。
「……とりあえず予定通りだね。 遅れは何かしらの方法で取り戻させよう」
「はあい。 それと、さっきのバングルは気に入っていただけました?」
「うん。 流石に金属加工は素晴らしいね」
会話を終えると。
フィリスさんはいつの間にかツヴァイが持って来ていた鉱石を手に取り。そして、また鉱石と話し始めていた。
ソフィーさんは目を細めてその様子を見守っている。
優しい先生の目だ。
この恐ろしい、邪神よりも恐ろしい深淵の化身も、あんな目をするんだ。そう思ったのも、一瞬だけだった。
不意に、周囲が真っ暗になる。
何か訳が分からない空間に連れ込まれたのは確実。
音もしなかった。
限界が来たのか。
スールが、へたり込んでしまう。
ソフィーさんは、ゆっくりと身動きできないリディーとスールの前を横切るように歩きながら、いう。
「さて、あたしからの試験だよ。 これから二週間後に、邪神を討伐して貰います。 相手は青花の侵食神。 下位の邪神だけれども、まあ今の二人には、準備をしてやっとどうにか出来る相手かな」
思わず小さな悲鳴が漏れかける。
下位とは言え邪神。
まともにやり合えというのか。ソフィーさんがやれば良いのに。だけれども、恐らくそうはいかないのだろう。
「それより意外なのはルーシャちゃんなんだよねえ。 もう少しであたしの試験を突破出来そうでね。 パイモンさんはもう突破したし、今回はみんな出来が良い」
後ろに回り込んでいるソフィーさんが、嬉しそうに言うが。
分かる。
顔は絶対に口だけしか笑っていない。
この人はもう、リディーとスールを何かしらの目的で利用することしか考えていないし。
深淵の者も、利益になるからそれに協力している。
その目的は、長期的には世界の詰みを打開する事、である事は知っている。
だがそれ以上の事は。
アルトさんに聞かされた話を、未だに良く理解出来ないのだ。話は聞かされてはいるけれど、どうしてもぴんと来ないのである。
深淵のものが紡ぐ言葉だから、だろうか。
いずれにしても、もはや闇の中に幽閉されているという意味では、リディーはこの空間に常時いるのも同じか。
スールもきっと、近々そうなる。
「とりあえず今回はルーシャちゃんだけではなくて、パイモンさんも行ってくれるように声は掛けておくからね。 その間に少しでもマシに仕上げたハルモニウムを使って、戦力を強化しておくように。 試験が終わったら、最上級の錬金術素材が仕入れられる不思議な絵画に入れるように、便宜を此方から図っておくよ」
「……」
「返事は?」
「はい」
殆ど、反射的に頷かされた。
逆らうという選択肢は絶対に存在しない。
もし下手な事をしたら、お父さんもルーシャもその場で即座に殺される。イル師匠やフィリスさんは一万回、ソフィーさんは二十三万回以上世界の終わりを見てきているというけれど。
だからだろう。
多分この人は、失敗なんて何一つ怖れてはいない。
駄目だったら方法を変えてやり直せば良い。
この人には、それだけなのだ。
普通の人間だったら心が折れる。
だけれどこの人は、もう普通の人間なんて、鼻で笑う存在でしか無い。ただ、それについてはリディーも少し分かる。
「みんな」に対する不信感は、強まるばかりなのだから。
いつの間にか、闇の空間から解放され。
フィリスさんのアトリエから放り出されたようで。近くのベンチに、スールと並んで座っていた。
スールは失神寸前。
肩を掴んで揺らすと。ようやく意識を取り戻し。
みるみる目に涙をため、そして顔を拭い始めた。
怖い。
素直にそう口にするスール。だけれど、多分普通の精神の人間があの状態におかれたら。精神が崩壊するはずだ。怖い、という程度で済んでいる時点で、スールはもう壊れ始めている。
そして壊れ始めている心にとどめを刺すために。ソフィーさんは、徹底的に、最善手をとっている。
そういう事だ。
ソフィーさんにとっては、自分すら駒なのだろう。
この世界の詰みを打開するための。
この世界が詰んでしまっていると言う事は何となく分かる。このまま世界が推移しても、良い時代が来るとはとても思えない。
話には聞いている。
優れた錬金術師がたくさんいるラスティンでさえ、フィリスさんが一年で百年分のインフラ整備を進めたという。
それは逆に言えば、しかるべきインフラ整備がなされていなかったという事である。
アダレットに至っては論外。
ミレイユ王女という不世出の傑物が出ている今はいい。
先代の庭園王のような無能な為政者が出れば、またこの国は駄目になる可能性が高い。深淵の者が尽力してさえ、リディーとスールが錬金術を始めた頃の状態にするのが精一杯だった状態に、いつでも戻りうると言う事だ。
スールが落ち着くのを待ってから。
アトリエに戻る。
しばらく考え込む。
まず、邪神の名前は出た。青花の侵食神。名前は聞いたこともないが、兎も角調べる。世界を不思議な絵の具で塗り替えられれば、対邪神戦は一気に有利になる。それは前にファルギオル戦で、病み上がりでも手に負えない状態だったファルギオルが、戦えるレベルにまで弱体化した事で実証済みだ。
続けてハルモニウムだ。
ドラゴンの血を入手したことで、最高の中和剤が作れるようになった。
話によると、三傑や、アルトさんも、ドラゴンの血を中和剤として用いているという。要するに、究極レベルの中和剤素材、と言う事だ。
入手したドラゴンの血を確認して見たが。
確かに炸裂するような魔力が籠もっているのがよく分かる。
ものを、ものの意思に沿って変質させるのが錬金術だ。
その基本となる中和剤として、最高の品が手に入れば。
それは土台がしっかりした建物を作るようなもので。当然素晴らしいものが出来上がる筈である。
そう。
今度は、武器に。
それも、恐らくマティアスさんや、アンパサンドさん用の武器としても。更改が出来る筈。
出来ればリディーとスールも武器を更改したいけれど。
二週間と期限を区切られた。ソフィーさんの事だから、アダレットもその期限で動かざるを得ないだろう。
あの人には。
アダレットが総力を挙げてもかなうまい。
深淵の者全てを凌ぐという話なのだから。
真っ青なまま下を向いているスールに、リディーは順番に、ゆっくり話をしていく。頷くと、スールはふらふらと裏庭に出ていった。
リディーはまずは、見聞院に。
邪神「青花の侵食神」について調べなければならない。
ハルモニウムについては、既に二度作っている。
此処にドラゴンの血を中和剤として用いる事で、更に品質を上げられることは確実である。
もう、誰にも助けなどは求められない。
此処からは、自分達でやらなければならないのだ。
スールも体を動かして、すっきりしたようなので、改めてチャートを組む。まず、二人がかりで、ドラゴンの血を使って中和剤を作る。これは凄いと、思わず息を呑んでいた。中和剤は、錬金術師が最初に作るものだ。流石にもう目をつぶってでも出来ると思ったのだが。ドラゴンの血が、あまりにも凄まじい魔力を持っている。だから、中和剤を作るのでさえ、緊張させられた。
冷や汗を何度も拭いながら、魔法陣に掛けていた中和剤を卸す。
これで、中和剤そのものは出来た。
問題はドラゴンの血がいつでも確保できるとは限らない事である。
そして、今までに得た深核が幾つかある。
今後の計画として。
装備品を、究極まで強化する事を考えた方が良いだろう。
そんなときには、コアには宝石では無く、深核を用いるべきだとリディーは思う。性能を文字通り極限まで上げられるはずだ。
多分だけれど、ソフィーさんを一とする三傑は。今のリディーとスールでは、考えられないような品質の装備を、考えられないような素材を用いて身に纏い。元から意味不明な身体能力を、理解不可能な次元にまで高めているはず。
フィリスさんはファルギオル戦で、口笛のような超短時間詠唱で魔術を連続発動していたが。あれすらも遊びだった可能性が高い。一万回以上も世界の終わりまで繰り返して、その知識や、世界の終わりまでに改良を続けた装備を身に纏っているというのなら。まあそれくらいは出来て当然なのだろう。
ましてやイル師匠もフィリスさんも、当たり前のように時間を止めることも出来るのだ。
実際に体感している時間は、想像より遙かに長いと見た方が良い。
ソフィーさんに至っては、更にとんでも無い事をやらかしそうである。もっと無茶苦茶な感覚の中で生きているだろう。
まずは、そういった人外の世界に、一歩踏み出し。
最低でも、対抗できるようになるためにも。
動かなければならないのだ。
スールと話しあった後、順番に動く。
まずリディーは、コルネリア商会に出向く。コルネリアさんのお父さんだけれども、まだ手がかりがないそうだ。
ただ。この様子だと、恐らく長い間探しているのだろう。
今更手がかりがないくらいで、落ち込むようにも見えなかった。
むしろ商売の話をすると、即座に頭を切り換えて、生き生きとしている様子を見せてくれる。
ドラゴンの血による中和剤を見せて、複製を頼む。
しばし目を細めて中和剤を見ていたコルネリアさんだけれども。頷いて、金額を指定してきた。
かなりとんでもない金額だったが。
粗悪品ハルモニウムに比べれば、それこそ何十倍も違う。ある程度は現実的な金額だった。
ちなみに、この金額、どうやって算出しているのか、少し興味がある。
そう素直に話してみると。
コルネリアさんは、表情も変えずに言う。
「自分くらいになると、ものを複製するときにどれくらい消耗するかが一発で分かるのです。 現在コルネリア商会で雇っているホム達に複製させるときに、消耗から回復するのも含めて工数として計算しているのです。 くだらないものなら即興で複製できるし、難しいものなら下手をすれば数日は動けなくなる。 うちの従業員達は優秀なのですけれども、だからこそ工数と回復に掛かる食料代などは高いのですよ」
「な、なるほど……」
「人材は無限などではないのです。 育てなければ人材にはならないし、そもそもどんな逸材だって万能では無いのです。 はっきりいうと、得意分野だけ出来ればそれでいいのであって、お店に立つのは接客に向いている人材がやればいいし、戦うのは戦うのが得意な人材がやればいいのです。 覚えがあるのでは?」
「はい、何となく」
頷くと、コルネリアさんは、顎をしゃくる。
どうやら客が来ているらしく。礼をすると、そそくさとその場を離れる。
そうだな。確かにその通りだと思う。
この間、一緒にダーティーワークをしたあのティアナさんという人。戦い以外には何一つ出来そうに無い人だった。そもそも会話が成立していたのかさえも、今になってみると怪しい。でも、あの人が匪賊に対してあげている戦果は、おそらくどんな戦士が束になってもかなわない程のものだろう。
人材としては、それで良いのだ。
ティアナさんは生き生きと仕事をしていたが。
余計な事はしなくていいから、そうなのだろう。
ホンモノのシリアルキラーであり、人を殺すのが大好きだろうあの人も。雇い主……恐らく深淵の者かソフィーさんは、完璧に使いこなしている。それで莫大な成果を上げている。
ティアナさんに余計な事を求めれば、多分戦果は著しく落ちる。
世の中にある、何でも出来なければならないという風潮が、どれだけ恐ろしいか。ティアナさん自身には一切合切感心も共感も出来ないけれど。しかしながらあの人が成し遂げている凄まじい戦果を考えると。考えざるを得ない。要するに、社会の仕組みに問題があるのだ。
少し考えながら王城に。
手続きをして、アンパサンドさんとマティアスさんにアトリエに来て貰う。武器について、確認しておく必要があるからだ。
時間についてはそれほどとらせない、という事を説明し。
出来るだけ早くに来て貰う事を約束する。
アトリエに戻ると、スールが呼んだフィンブルさんは既に来ていた。フィンブルさんは、ハルモニウムの武器を欲しいかと聞くと。
生唾を飲み込んだ後、しばし黙り込んだ。
「前に配布された装備品、あれだけでも凄まじかったが。 まさか、武器の方もハルモニウム製が作れるのか!?」
「はい。 ドラゴンの血が採取できたので、前のとは品質を一段階上げられるとも思います」
「それなら欲しいに決まっている!」
「……は、はい」
凄い剣幕だが。
この人はそもそも戦士だ。
そして、今は多数の戦闘経験を積んで。格上の相手とも嫌と言うほど戦い続けて着ている。
ならば分かっている筈だ。
そもそもあらゆる要素が戦いには絡み。
その全てが勝因になる。
良い武器を持っていれば勝てるという訳でも無いが。勝つための確率は少しでも挙げた方が良い。
ましてや、武具となれば。
この人の実力は、もう並みの騎士を凌いでいるだろう。それも遙かに。
ハルモニウム製の武器にも、力負けはしないはずだ。
あまりにも分不相応な武器を手に入れると、人斬りになってしまうような事があるらしいのだけれど。
これだけの戦歴を積み重ねた人が、そんなに簡単に落ちるとも思えない。
「分かりました。 出来るだけ早く用意します」
「うむ……うむ……! 頼むぞ」
興奮した様子で、フィンブルさんは大股でアトリエを出ていった。まあ、気持ちは分からないでもない。
流石にあの人も、ハルモニウム製の装備を持っているなんて口にするほどアホではないだろうが。
興奮を晴らすために色町にでも行くのか。それとも自室でひたすら飲むのか。まあ、その辺りは大人のやり方だ。リディーには関係無い。
程なくスールが戻ってくる。鍛冶屋の親父さんも、話をしておいて貰ったのだ。ひょっとしたら、三つ。武器が必要になる。
リディーとスールの武器更改は最後で良い。現時点でスールの銃は、充分な火力を持っているが。フィニッシャーになれるほどでは無いし、スールもそれは割切っている。また、リディーの杖に関しても、現時点の杖で充分。ハルモニウム製にすれば更に魔術の火力が上がるだろうが。それよりも、戦術の組み立てが現地では急務だ。
夕方近くになって、マティアスさんとアンパサンドさんが来る。
ハルモニウム製の武器の話をすると、マティアスさんが、半笑いのまま固まった。
「ま、待て待て。 この間の装備品、粗悪品のハルモニウムだって話だよな。 今度は、武器……!?」
「それも粗悪品じゃないよマティアス。 最低限の品質は維持できるはず。 ネージュの作ったものと比べるとどうかは分からないけれど……いつも使ってるその剣、国宝らしいけれど多分プラティーンだよね?」
「あ、ああ、多分そうだと思う。 最高品質のプラティーンを粗悪品のハルモニウムが上回る事は分かっているが、ちょっと待ってくれ。 心の整理をさせてくれ。 俺様、ちょっと今、興奮しすぎて頭が働かねー」
「アンパサンドさんは?」
少し考え込むアンパサンドさん。
此方は元々感情が薄いホムという事もあるのだろう。ホムの中では、アンパサンドさんは激情家になるようだが。それでも、ヒト族から見れば極めて冷静に見える。
「このナイフには思い入れもあるのですが、しかしハルモニウム製のもので、しかもあの鍛冶屋の親父どのが作ってくれる武具であるのなら……欲しいのです」
「分かりました。 次の戦いまでに、用意します」
「お願いしますのです」
マティアスさんは。少し悩んでいたが。それでも、やはり剣士としての欲が上回ったようだった。欲しい。そう言った。それだけで充分。頷くと、用意すると明言した。
さて、ここからが勝負だ。
一週間で、ドラゴンの血を使い、更に前に持っていた竜の鱗よりも品質が上のものを素体にして。品質が格上のハルモニウムを作る。そして鍛冶屋の親父さんに頼んで、主力になってくれている三人の武具を作成する。
ハルモニウムの次はヴェルベティスだが、それはまだ素材さえ手に入っていない。
今度紹介して貰えるらしい不思議な絵画で、手に入るだろうか。
もし手に入るのなら。
国宝の武と。国宝の守が。ともに手元に来る事になる。
呼吸を整える。
要するに、ここまで来た、と言う事だ。そしてここまで来たからには、やり遂げなければならない。
お父さんの研究がどこまで進んでいるかは分からないけれど。
レンプライアの性質を考えると、お母さんの残留思念がいる可能性が高いあの絵は、今非常に危険な事になっている可能性が高い。
準備は、どれだけしても足りないくらいだ。
頬を叩くと、改めてチャートを作る。もし時間が余るようなら、装備品の更改も少しはしたい。
相手は邪神。
それも病み上がりのファルギオルとは違う。下位とはいえ、侮れる訳がない。それに試験を出してきたのはあのソフィーさんだ。どんな罠があるか知れたものではない。
気合いを入れ直すと。
黙々とスールと一緒に、ハルモニウムの改良を始めた。