暗黒錬金術師伝説8 暗黒!リディー&スールのアトリエ   作:dwwyakata@2024

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4、即位に向けて

ドアをノックする音がする。

 

もう昼近くだ。

 

起きだして、何とかドアに向かい開けると。アンパサンドさんだった。アンパサンドさんも、疲れが取れきっていないように見えるが。それでも、スールを見て、小さく嘆息した。

 

「ドアを開けるなら、もう少ししっかりした格好をするのです」

 

「……ごめんなさい」

 

「さっそく、国からの仕事なのですよ」

 

頷く。

 

リディーも起きだしてきたので。二人ともパジャマ姿のまま、話を聞く。

 

スクロールを受け取る。

 

スクロール自体はいつも受け取っているが。これは使っている紙からしても、相当な高品質なものだ。

 

余程の依頼と見て良いだろう。

 

「ええと、王冠の作成……!?」

 

「中で話すのです」

 

アンパサンドさんがドアを閉じ。

 

そして、家の中で話す。リディーが杖を取ってきて、魔術を展開。家を遮音フィールドで覆った。

 

ソフィーさん達のような規格外には無力でも。

 

それでも、普通の人に聞かせられる話では無い。シールドは張らなければならない。

 

「先代王、つまり庭園王が崩御したことは知っていると思うのです」

 

「はい。 マティアスさんに聞きましたし、それでお城も色々大変そうでしたし」

 

「……先代王がこの国で為した悪行の数々はわざわざ数えるまでもないのですけれども、その中の一つ。 歴代に伝わっていた王冠を、「美しくない」という理由で廃棄したというものがあるのです」

 

まあ正直な話、王冠なんぞどうでもいいと思うのだが。

 

話によると、その王冠、高純度のプラティーンで作られていた国宝であったらしく。それを美意識から廃棄した(それも海に捨てさせたらしい)先代王の行動は、褒められたものではないだろう。

 

「デザインは此方で。 素材は、ハルモニウムで。 鍛冶屋には頼まず、加工をして欲しいのです」

 

「ハルモニウム製……」

 

「元々の王冠は、アダレット創設の時期に作られたもので、王権の象徴だったものなのです。 先代王の作った黄金製の悪趣味な王冠よりは、武の国の王冠として、ハルモニウム製の方が好ましいのです」

 

確かに、それはある。

 

そしてレシピを見る限り、自動でシールドを展開する魔法陣も刻まれている。

 

王冠としても、兜に近いデザインで。武の国の主が被るのに相応しい代物だろう。

 

頷く。

 

ハルモニウムを装備品に加工するのは前からやっていたし。それに、更に力がついた今、もう少し基幹とするハルモニウムのインゴットの質を上げて欲しい。

 

報奨金を見る限り、さほどの負担にはならない筈。

 

頷くと、二人で依頼は受けた。

 

「それと、予備も兼ねて、二つ作って欲しいのです」

 

「それはかまわないのですけれど、マティアスさんもつけるんですか?」

 

「ミレイユ王女が、女王として即位した後。 忙しくて来客に対応出来ないときに、接待をするケースが想定されるのです。 その場合……滅多にないでしょうが。 その時のために、作っておくのです」

 

「……マティアス、今なら良い王様になれると思うけどな」

 

ぼそりとスールが呟くと。

 

アンパサンドさんは、咳払いした。

 

「その類の言葉は、二度と口に出してはならないのです。 国家の頂点は一人である方が好ましいのですよ。 今は深淵の者がしっかり抑えているとは言え、王宮内では少し前まで聞くもおぞましい権力闘争が繰り広げられ、無駄な人材の喪失と、それ以上に無駄な予算の浪費が行われていたのです。 風通しが良い仕組みは必要ではあるのですけれども、頂点に立つ女王ミレイユは絶対である事が好ましい。 マティアス王子は、確かに昔とは比べものにならないほど成長為されたけれども、本人が権力を得ないことを望んでいるのです。 自分はあくまでスペアでいいと」

 

分かる。

 

今後もマティアスは、ずっと風よけでいるつもりなのだろう。

 

ミレイユ王女は。今後も優れた治世を敷くだろう。悪評はマティアス王子が引き受ければ良い。

 

マティアス王子の真意は。

 

近しい者だけが知っていれば良いのだ。

 

「それでは。 丁度それが完成する頃に、あの不思議な絵画も修復が終わる筈なのです」

 

「……分かりました」

 

この言葉、勿論交換条件、という意味だろう。

 

アンパサンドさんはリアリストだが。冷酷では無い。彼女が考えた事ではあるまい。

 

ともかく、まずは目を覚ます所からか。

 

それに、材料も揃った。

 

ヴェルベティスの作成にも取りかかりたい。

 

一つずつ順番にこなし。

 

最終的には、ソフィーさんに何もかも好きに蹂躙されるのでは無く。意見を出して、話を出来る所まで力をつけたい。

 

ソフィーさんは確かに正しい。

 

だが、必ずしも正解が一つとは限らないし。

 

ソフィーさんが人材を望んでいると言う事は。要するに、ソフィーさんだけでは、この世界の詰みを打開できないという事でもあるのだから。

 

まず顔を洗うと、裏庭で軽く運動して。

 

そして、調合に取りかかる。

 

もうAランクのアトリエになったのだ。王室関連のお仕事が来ても不思議では無い。

 

今は、ただ。

 

目の前にある仕事を。

 

可能な限り、完璧に仕上げる。それだけだ。

 

 

 

(続)




王冠を作る。

それはある意味とても名誉な仕事ではあります。

双子はそれを任されるところまで腕を上げたのです。

経緯はともかくとして。
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